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181 ようやく本題

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。

 クーデレやツンデレは好物だがヤンデレは遠慮したいので神官ちゃんはスルーしておこう。


「さすが賢者様は博識ですね」


 王女様どころか他の皆も納得しているっぽい。

 さすが魔王とか勇者が夢物語とはならない異世界だ。


「賢者を名乗るからにはな」


 知恵がある方でもないし知識がないとなれば賢者を名乗ることはできまい。


「俺は誰かの予言を代弁をしているだけだ。ひょっとすると神託の類いなのかもしれんがね」


 俺が神託という単語を使ったことで、またしても神官ちゃんが反応した。

 見ない見ない、そちらは見ない。

 何か呟いても聞かないよ。


 一方でその他大勢も神託という言葉に神妙な面持ちで頷いている。


「言っておくが声の主が神だと名乗ったこともないし確かめようがない」


 だから予言であると言っておいた。


「ハッキリ言えるのは天罰と天災では明確な違いがあるということだけだ」


「天災の予言もあるのですか」


 クリス王女が身を乗り出して聞いてくる。

 王族としては大きな被害が出る話には敏感にならざるを得ないのだろう。


「ガンフォールが言ってた今回の予言がそれだから」


 ゲールウエザー組の顔色がお通夜のように悪くなる。


「それはどのような予言なのですか」


 王女が青ざめた顔色のまま気丈に振る舞い聞いてきた。

 未成年なのに頑張るね。

 ああ、でも来年の今頃は成人だし大人の自覚を持ち始めていると考えれば普通かな。

 ちなみにこの世界の年齢の数え方は日本の数え年に似たところがある。

 生まれた時は0才だったり、正月ではなく4月で年を重ねる違いはあるけどね。


「今のままでは干ばつ被害が出る」


「場所は何処ですか」


「ゲールウエザー王国中部地域。他国への輸出を止めてなお食糧自給が困難になるようだ」


「そんな……」


 王女は被害規模の大きさが理解できたのか言葉を失ってしまっている。

 いや、他の者も同様か。

 元王女やドワーフ王の縁者が証言者になって先に予言の信憑性について話をしていたお陰だな。


「よろしいでしょうか」


 冬の外気に晒されたかのように血の気を失ったマリア女史が聞いてきた。


「賢者様は天罰と天災では違いがあると仰いましたが」


 そこに一縷の望みを託すかのように瞳には力がこもっていた。


「言ったな。天罰は必ず下るが、天災は放置すれば見舞われるものだ」


「それは被害を減らすことが可能であるということですか」


「ああ、その通りだ」


 わあっと歓声が上がった。


「ただし、今からそちらで対処するのは難しいな」


「食料の備蓄をしただけでは無理ということでしょうか」


「規模が桁違いだろう。干ばつに強い作物を作っている訳でもなし」


 糠喜びに終わりゲールウエザー組の一同は一気に落ち込む。

 話は最後まで聞いてほしいものだ。


「予言の話をするだけなら俺がこの場に残る必要があるか?」


 答えは否だ。


「話はガンフォールがすればいい。現にそうだったろ?」


 返事も頷きもないが否定もされなかったので、このまま話を続ける。


「予言を証明するのは、その場に居合わせた者がいればいい」


 そのためにエリスやハマーがいるのだから。

 ゲールウエザー王国に行けば面倒くさいことになりそうだけど、この場に限って言えばエリスの元王女という肩書きは絶大な影響力があると思う。


「俺がここに居るのは対処する術を持っているからだ」


「「本当ですか!?」」


 王女とマリア女史がハモった。

 他の面々からも前のめりな雰囲気を感じる。


「まずは備蓄用の食料だな。保存の利く食料を既に確保している」


「「「「「なっ!?」」」」」


 ゲールウエザー組が衝撃を受けて固まった。

 大国が今から備蓄を開始しても間に合わないと言ったものを確保済みと言われれば無理もない。


「あとは新規で井戸を掘る準備がある」


「それはっ!」


「無茶です!」


 ダイアンとリンダの騎士コンビが慌てた様子で否定する。

 2人は中部地域で地下水を掘り当てることの大変さを知っているようだな。


「従来の井戸の深さじゃ無理なのは知ってるさ」


「深く掘れば水が出るのですか?」


 王女様が聞いてきた。


「ああ」


「だとしても、そんな深い場所から水を汲み上げるのは魔道具だよりにならざるを得ないのではありませんか?」


 マリアが被せ気味に問うてくる。


「魔道具は不要だ。ドワーフの職人だよりになるが作るのも修理するのも可能な代物だよ」


 ハンドルを回して空気を送り込み下から押し上げるタイプのポンプだ。


「それから秋に蒔いた小麦はともかく春蒔きの小麦は収穫できない」


「では、これから作る作物は他のものに切り替えないといけませんね」


 王女様は理解が早くて助かるよ。


「何を植えれば良いのでしょう?」


 さすがに干ばつに強い作物は知らないようだが。

 他のゲールウエザー組も顔を見合わせるばかりである。


「干ばつに強いのはトマト、スイカ、カボチャ、サツマイモあたりだが……」


 知らない作物ばかりらしく反応が薄い。


「こういうものだ」


 召喚魔法を装ってサンプルを出してみる。


「「「「「おおっ」」」」」


 どよめくゲールウエザー組はスルーしてトマトとスイカを試食できるよう準備してもらった。


「こ、これは……」


 ダイアンがトマトの切り口を見て固まってしまった。

 初見だと不気味に見えるかもな。


「心配無用、そのまま食べられる」


 言いながら先に食べてみせた。

 うん、自画自賛するようだが旨い!


「──────っ!」


 ダイアンが意を決したように目をつぶって口に入れるが、その直後に固まってしまった。

 食感が合わなかったか。


 その間にも他の面子がトマトを口にしていた。


「瑞々しいです」


 どうやら王女の口には合ったようだ。


「これだけ水気を含んでいながら干ばつに強いとは」


 マリア女史がしきりに感心している。


「こ、こちらの大きい方は甘いですよ」


「姫様、ぜひとも御賞味を」


 魔導師組は俺を否定するような態度に出ることはなく、しおらしい態度を見せている。

 再評価はあってもいいかもね。


「あら、これはまるで果物のように甘いですね」


 甘みだけで言えば確かに果物のようだが、分類すると野菜なんだよな。


 果物は木になるものという定義があるからリンゴやレモンは果物でイチゴやサツマイモは野菜と判断される。

 バナナは木になると思われがちだが幹と思われる部分を切ると実は葉っぱの集合した茎だ。

 ただし植物学上は野菜でありながら日本では多年草を果物としているので果物とされているというオチがつく。

 ちなみにスイカは一年草だ。


「こちらも水分を多く含んでいるとは」


 マリア女史が気になる部分はそちらのようだ。


「トマトは保存性が悪いので加工して密封保存するといい」


 ビタミンを確保するのが難しくなるし缶詰くらいは技術提供してもいいかな。

 飢えなくても壊血病とかで被害が出れば意味がない。


「スイカは切らなければ多少は保存可能だ。保存性はカボチャの方が上だがな」


 生では食べられないので試食は後になってしまうのが残念なところだ。


「最もお勧めなのがサツマイモだ」


「確かに水分が少なくて保存には適しているようですが」


 マリア女史はサツマイモのひとつを手に取って見た目だけでなく感触も確かめていた。


「一度、収穫してからでも土の中に埋めておけば長期保存が可能だからな」


「ですが……」


 反応は芳しくない。


「この国の芋料理が水を多く使うものばかりだからか」


「ええ、大変申し訳ないのですが」


「これは熱を加えるだけで食べられる」


 言いながら大きめのをひとつ手に取り、さり気なく取り出した大笹の葉で包む。

 後は電子レンジのイメージで熱を加えるだけだ。

 隙間から湯気が出てきてフワリと甘い香りが広がっていく。


「できあがりだ」


 魔法で切り分けて全員に配ろうと思ったものの皿がない。

 どうしたものかと思ったら給仕のオバちゃんが小皿を用意してくれていた。

 なかなか気の利くオバちゃんである。


「助かった」


 礼を言うとニッと笑ってサムズアップするオバちゃんだが、その間も動きは止まらない。

 テキパキした所作でサツマイモを切り分けて全員に配っていく。


「さて、それでは御賞味あれ。皮にも栄養があるのでそのままで」


 全員に行き渡るように切り分けたので一切れ程度のものだが、みんな口にすれば顔をほころばせていた。


「これは、また……」


「思った以上に水分がある」


 護衛騎士コンビが顔を見合わせて驚いていた。


「確かに……」


 マリア女史もそう言ったきり言葉を失っている。


「甘いですね」


「ええ、もっと味気ないものだと思っていたのですが」


 王女とエリスは別の感想を抱いていたが、こちらの方が普通の感想では?


「ふむ、これは我が国でも欲しいな」


「確かに」


 ガンフォールの呟きにハマーが頷いていた。


「欲しければ輸出するぞ」


「む、しかしな」


 逡巡する様子を見せるが、それはゲールウエザー王国への支援物資という認識だからだろう。


「俺を誰だと思っている」


「ああ、そうじゃったな」


 ガンフォールが苦笑いする。

 このやり取りを見て一瞬だがマリア女史が何かに気付いたように表情を変えていた。

 あとエリスが微かに反応していたな。


「さて、話を戻そうか」


 備蓄用の食料を保管する方法についての話をしていく。

 いわゆる氷室なんだが、氷属性の魔法使いを確保できるかが鍵になる。

 これには魔導師組が意欲を燃やしていた。

 精力的に働くというなら頑張ってくれとしか言えないな。


 あとは支援物資の輸送について聞かれたりもした。


「そのために召喚魔法を見せたんだが」


 物資大量輸送の切り札になるからと選択した魔法なのだ。


「「「「「おぉ─────っ!」」」」」


 ゲールウエザー組が驚きつつ感心するのは理解できるがジェダイト組までそこに混ざるのは何故なのか。

 色々と見てきているはずだろ?


読んでくれてありがとう。

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