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1752 第1回フィギュア大会、始まる

 どうしてこうなった? は続く。


『こちらは間もなく開催されようとしています第1回フィギュア大会の会場前です』


 モニターの前でテレビ局のリポーターが喋り始めていた。

 俺は局のスタジオで座らされているので大会には参加できていない。

 作品を提出すれば問題ないのではという声が聞こえてきそうだが、レギュレーションがあるため参加できないのだ。


[制作者が操作すること]


 この一文と大会の実況席に座る依頼を受けてしまったために代理人を立てることすら敵わない。

 誰だよ、こんな規定を提案して通したのは。

 大会運営を丸投げしたのと、実況でも解説でもないのにテレビ中継の席に座ることを安請け合いしたのが運の尽き。

 自業自得と諦めるしかない。


「いやー、開催まであっという間でしたねえ」


 実況アナウンサーが俺に話しかけてくる。


「皆で盛り上げてきたからね」


「そうですね。運営だけでなく、多くの国民が支持してくれたお陰と言えるでしょう」


 俺が丸投げした結果とも言えるのだけれど、皆が楽しんで今日を迎えられたのは喜ぶべきことだろう。

 もしかしてセールマールの管理神エリーゼ様もこういう感じで人々の成長を促すために丸投げ主義になっているのだろうか。

 ……違うような気がする。

 違わなくても信じたくはない心境だ。


 俺がそんなことを考えている間もアナウンサーは司会進行役として話を進めていた。


「それにしても当初の予定とは大きく異なった大会になってしまいましたが」


「そうじゃな。いかにサイズが小さかろうと動かぬものであれば、この規模の大会にはならなかったじゃろう」


 解説として招聘されたガンフォールが答えている。


「色々な競技が行われる訳ですが、皆さんは注目されている競技はありますか」


 まずは俺からのようだ。


「武者チャンバラかな」


 これは鎧武者の格好をしたフィギュアが刀を手に戦うスポーツチャンバラっぽい競技である。

 一定以上の威力で鎧に攻撃が命中すると、その部位の鎧が外れるようになっている。

 3個所外れれば負けというルールだ。

 相手のフィギュアを破損させると反則負けになるので力任せでは戦えない。


「何処が見所でしょうか」


「反則負けにならないように戦うためには操作の技量だけではなく駆け引きも必要になってくるところかな」


「なるほど。玄人好みの戦いが見られそうですね」


「中にはパワーファイターもいるみたいだけどな」


「戦いに幅がありそうですね。期待しましょう」


 このアナウンサー、なかなか上手いな。

 テレビ局が始まった当初からの面子として経験を積んできただけのことはありそうだ。


「続いてトモさんはどうですか」


 俺の隣の席に座るトモさんに話が振られた。


「季節外れのビーチフラッグでウハウハ」


「ウハウハって何だよ」


 つい、いつものノリでツッコミを入れてしまった。


「おおっ、すまないね。ムキムキだった」


「参加フィギュアはマッチョばかりかよっ」


「いいや、美少女並びに美女フィギュアしか出ていないのだが」


「どこがムキムキやねんっ。それを言うならムチムチじゃんか」


「フハハハハ、その通り。まんまと我が策にハマったね、ハルさん」


「くっ、謀ったな」


 してやられた。

 罠へと誘導されているとは思いもしていなかったさ。


「君のお父上がいけないのだよ」


 おまけにグランダムの赤い人の物真似でトドメを刺してくるし。


「あのぅ……」


 アナウンサーが遠慮がちに割って入ってきた。


「あ」


 ここで今更ながらにテレビの生放送中だということを思い出させられてしまいましたよ。


「すまない。我を忘れてしまった」


 詫びながら赤面してしまうのを避けられない。

 だというのにトモさんは余裕の表情である。


「お茶の間の皆さん、楽しんでいただけただろうか」


 真面目な顔でこんなコメントまでする始末だからなぁ。

 中身の方は完全にノリノリだ。


 誰だ、トモさんをゲストに呼んだのは。

 ……俺だったな。

 ゲストを引き受けたは良いけど、あがって我を見失わないか不安だったから道連れにしようとしてトモさんを呼ぶようにテレビ局のスタッフにお願いしたのだ。

 事前にこうなることは容易に予測できたのにね。

 ここでも自業自得になろうとは修行が足りん。


「おーっと、ここで視聴者の皆さんから端末を通してコメントが数多く寄せられています」


 前方に大きいモニターがカメラには映らないような格好で設置されているが、そちらにコメントが表示されていく。

 結構なスピードで流れているところを見ると、かなりの数に上るようだ。


[楽しませてもらっています。陛下との漫才コンビが特に良かった]


[さすが陛下のお友達。いいぞ、もっとやれ]


[おもしろい人ですね]


[翻弄される陛下とか珍しい。でも親近感があってますます好きになりました]


[赤い人の物真似が上手いですね。もっと見たいです]


[その問いの返答はイエス]


 否定的な意見はひとつもなく、こんな感じのメッセージばかりだ。

 喜んでもらえるのは嬉しいけど恥ずかしい気持ちも湧き上がってくるんだよな。

 漫才コンビとか抜粋したコメント以外にもチラホラと散見されるほどだし。

 俺が謀られた姿に対しても珍しさが勝るとかのコメントがそれなりにあったし。

 これじゃあ怒るに怒れないじゃないか。


 いや、それよりもトモさんを調子づかせてしまうことになりはしないかと内心で冷や冷やしているんだが。

 今のところは大人しくしてるけど、この先もそうだとは限らない。

 一体どうなることやら。


「ガンフォールさんはどの競技に注目されていますか」


「体操競技じゃな。フィギュアの造形が問われるだけではなく操作の技量も問われることになるじゃろう」


 自動人形のような自立型ではなくリアルタイムで操縦する形だからな。

 しかもオートバランサーは必要最低限のものしか許可されていない。

 ちょっとしたことでミスが出やすくなっているので見ている側からすると手に汗握る熱戦が数多く見られることだろう。

 ガンフォールのチョイスはそのあたりがじっくり見られる競技だと思う。


「渋いところを突いてくるねえ」


 トモさんも同意見のようだ。


「なるほど、見所はバリエーション豊かなようです。これは期待できますね」


読んでくれてありがとう。

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