1751 フィギュアコンテストやろうよ
いよいよ本日、マンガUP!でコミック版「魂を半分喰われたら女神様に同情された?」の連載がスタートします。
原作ともどもよろしくお願いします。
「ハルさーん、暇かい?」
そんな風に言いながらトモさんが俺の部屋を訪れた。
「んー、何か妖怪?」
筆塗りの手を止めずに返事をした。
「ダジャレとはハルさんも暇なんだねって、おや?」
背後から俺の手元を覗き込むトモさん。
「なんだか細かい作業をしているね。何だい、それ?」
小さすぎてパッと見では何か分からなかったようだ。
まあ、指人形よりも小さいからね。
「5百分の1スケールのゲンブファーだよ」
「えっ!?」
驚きの声を発したトモさんが正面に回り込んでまじまじと見てくる。
「丸みを帯びつつもシャープなデザイン、特徴的なバーニア、形はまごうことなきゲンブファーだね」
「可能な限り本物に近づけたつもりだからね」
アニメ作品のメカに本物というのも変な話ではあるが。
「ショットガンやロケットランチャーなんかの武装まで再現しているのか」
「バズーカもあるよ」
「だけど色が違うよ」
「そこはif設定ってことで仮面の赤い人専用機にしたから」
「認めたくないものだな。自分自身に受領されなかった過ちというものを」
「うん、相変わらずクオリティが高いね」
「フハハハハ! ありがとう」
照れくさそうに笑ったトモさんだったが。
「ハルさんのフィギュアもクオリティが高いと思うよ」
「こちらこそ、ありがとうだね」
「筆塗りで塗装しているってことは、もしかして最初からハンドメイドなのかい?」
「補助的には使ってるけどね」
その気になれば錬成魔法でサクッと作れてしまうけど、それじゃあ楽しんで作る時間が短くなってしまう。
非効率だけど楽しむために作っているので、これでいいのだ。
「それだけ細かいのに手作業オンリーとか怖くない?」
「怖いよ。しくじったらやり直しだし」
特に仕上げ直前は下手をすると今までの苦労が水泡に帰すから徒労感が半端ない。
「よし、これでラスト!」
最後にメインカメラの塗装で終了だ。
これを残しておいたことに深い意味はない。
「まるでダルマだね」
「あー、やっぱりそう思う?」
「うん。違うのかい」
「最初はそんなつもりなかったけど、なんとなく最後はこれかなって思ったらダルマを連想した」
「なるほど」
トモさんと話をしながら魔法で塗料を乾燥させる。
そして作業机の上に寝かせるように置くと、トモさんが不思議そうに首をかしげた。
「まだ何かあるのかい?」
「こいつ……」
「うん」
「動くぞ」
理力魔法でゲンブファーを動かす。
某アニメの第1話のように。
「それグランダムだからっ」
すかさずトモさんのツッコミが入った。
「それと分かりづらいっ」
「クオリティが低くてゴメンね」
「いいや、高いよ。凄く高い」
「え?」
トモさんの言っている意味が分からない。
「このゲンブファー。頭頂高4センチない高さで可動範囲が凄いじゃないか」
「ああ、うん」
そっちのクオリティね。
「壊れないよう魔法金属を使ってるからね」
「あ、ホントだ。ミスリルを使ってる」
それが分かるということは【鑑定】スキルを使ったな。
「それで、この滑らかな動きってどうなってるのさ」
材質だけで細かなところまでは見ていないようだ。
「可動アーマーとか多重関節構造とか工夫したからね」
「何処まで細かい細工を追求すれば、そんなことができるんだよ」
「かなり細かくとしか言えないなぁ」
最小の部品は指関節だから下手をすると顕微鏡が必要になるからね。
「そこまでする必要あるかい?」
「ジオラマを小型化できる」
「そんなこと考えてたのか」
「ラストシューティング」
ゲンブファーにバズーカを持たせて真上に撃つポーズを取らせた。
「ポーズはまんまだけど、それグランダムのシーンだから」
すかさずトモさんのツッコミが入る。
「それと、たかがメインカメラをやられただけな状況じゃないよ」
部分的に物真似入りでさらなるツッコミが入った。
芸が細かい。
何だかんだ言ってノリノリである。
「あとバズーカじゃなくてビームライフルだよ」
「おお、三段ツッコミ」
ここまでやってくれるとは思ってなかったので実に嬉しい。
「そこまでされちゃあ黙っていられないねえ」
トモさんがそんなことを言い出した。
その台詞、俺のだと思うんだけど。
「何をするつもりだい?」
「もちろんフィギュアを作るんだよ」
まあ、そうなるのか。
トモさんの意欲に火をつけられたのであれば作った甲斐があったというもの。
「で、何を──」
「皆で作ってコンテストをやろう」
「ふぁっ!?」
ちょっとだけど斜め上のことを言われてしまいましたよ。
そんなのまるっきり想像してなかったんだけど。
せいぜい学校の弱小同好会的なノリで悦に入りながら思い思いのフィギュア製作をすることになるのだと思っていたのに。
「コンテストォ!?」
「そうだよ。レギュレーションを決めて人差し指くらいの身長のフィギュアで競うんだよ」
どうやらトモさんの頭の中では具体的な企画が組み上がりつつあるらしい。
フィギュアのサイズはさすがに俺が仕上げた赤いゲンブファーの倍以上にするようだけど。
それだけに本気であることがうかがえる。
「何処かで聞いたようなコンテストだね」
そんなのセールマールの世界でやったら訴えられそうだ。
「何のことかな? これはフィギュアを創作するコンテストだよ」
絶妙に単語を外してくるな。
「基準になるフィギュアは用意しないと?」
「当然だよ。創作するコンテストなんだからね」
ツッコミどころは色々ありそうだけどスルーしておこう。
「さっそくポスターを用意して……」
そんなことを言い出したかと思うと、トモさんは自分の倉庫から大きめの丈夫な紙を取り出して色々と書き込み始めた。
写真の部分は俺がポージングさせた赤いゲンブファーをそのまま使うようで魔法で転写している。
背景が寂しいので写真に合わせた感じで適当に描き込んでいるのが凄い。
「トモさん、画家にならないか?」
「やだなぁ、おだてても何も出ないよ」
苦笑しながら応募要領やらのテキスト部分を書き込んでいく。
仕上がったらポスターの複製をリクエストされそうだ。
「ハルさん、コピーして」
マジで依頼されましたよ。
「本気なんだね」
「もちろんだよ。こんな面白そうなこと皆で分かち合わないと」
そんな風に言われると断れないよな。
結局、結構な数のポスターを複製して国中に張り出すことになりましたよ。
いつの間にか国家プロジェクト規模になってるんですけど。
どうしてこうなった?
読んでくれてありがとう。
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