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1749 つくってみた『マギミシン』

「もしかして儀式魔法でないと実現できないとか?」


 サリュースの勘の良さはさすがと言える。

 なかなか鋭いところを突いてくるものだ。


 いや、これは思考に基づくものか。

 いずれにしても察しがいいのは間違いない。

 グリューナス法王が睡眠時の回復魔法を再現できるかどうか。

 その結論に至るための鍵に気付いた訳だからな。


 根拠のない推測だとは思われるが。


「絶対ではないが、儀式魔法の方が実現しやすいだろうな」


「そりゃまたどうしてだい?」


 やはり根拠はなかったようだ。

 裏付けるように疑問を口にしたサリュースがハッと何かに気付いた表情をのぞかせた。


「いやいや、専門的なことは分からないから聞いても意味がなかったね」


 ハハハと乾いた笑いを漏らして照れ隠しをしている。


「そうでもないさ」


「えっ?」


 意外なことを聞いてしまったという顔でサリュースはこちらをまじまじと見てくる。

 信じてないな、これは。


「細かい話をすると難しくなるがな」


「というと、誰にでも分かるような単純な理由があると?」


「ああ、つきっきりで回復魔法を使う訳にはいかんだろう」


「あ……」


「だから睡眠の術式に回復魔法を被せる。

 目覚めてしまうと回復も途切れるから眠らせる方も手を抜けない。

 どちらも難度が高い上に同時行使しなきゃならんから制御力を要求される訳だ」


「いやいや、参ったね。

 儀式魔法が必要になる訳だよ」


 サリュースは苦笑するばかりであった。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 一件落着でノーム法王国から帰ってきましたよ。

 もちろんサリュースもインサ王国に送り届けてからね。


 帰るなりドッと疲れが押し寄せてきたさ。

 安心したというか気が抜けたというか。

 とにかく張り詰めた緊張感が解けた途端にバッタリさせていただきましたよ?


 俺的にはラスボスは赤リッチじゃなくてグリューナス法王だったな。

 赤リッチを始末して「はい、終わり」なら片手間仕事ってところだったんだけど。

 新人3人組のパワーレベリングには、さほど苦労もしなかったし。


 まあ、世間的には赤リッチがボスなんだよなぁ。

 状況的にも俺の主張が理解してもらえるとは思えないのが悩ましいところだ。


 が、レベルや強さは関係ないって声を大にして言いたい。

 病み上がりなのに頑固だし褒め殺してくれるし。


 あ、しまった。

 せっかく忘れていたのに法王の褒め殺す姿が頭の中に再浮上してきたぞ。

 脳内再生される動画が何度もリピートされる。


「ぐわぁ~~~~~~~~~~っ!」


 俺には叫びながら自室の畳の上でゴロゴロと転げ回って悶絶するしかできなかった。


 些細な切っ掛けで思い出して動画再生が始まると簡単には消えてくれないのだ。

 まるで呪いである。


 あの褒め殺しは確実に黒歴史だな。

 何かの作業に没頭していないと悶え死にそうだ。


 とはいえ、することがなぁーんにも無いしなぁ。

 帰ってきたばかりで何処かに出かけるなんて気にはなれないし。


 旅行に行くのだって気力をチャージする必要があるのだ。

 仕事をしている時などは旅行に出かけることをモチベーションにつなげたりするけどさ。


 それは仕事のやる気を維持させるだけじゃない。

 旅行への期待感も増幅させる行為でもあるのだ。


 今は仕事を抱えていない状態だし。

 しかも一緒に帰ってきた面々に今日1日はゆっくりするように言ってある。

 ここで俺がガンフォールの手伝いとかに出てしまうと発言に矛盾が生じてしまう。


 新人3人組を鍛えるのは3人にも矛盾に付き合わせてしまうことになるし。

 いわゆるダブスタってやつだな。

 王様がそんなことをしてちゃいかんだろう。


 まあ、自分で気付かないうちにダブスタ状態を作り出したりはしてるかもしれんが。

 分かっていてやるのはダメだな。


 となると、できることは限られてくる。

 学校の様子を見に行くのは視察と勘違いされるだろうし。


 下手をすると暇そうだからって講義を依頼されかねない。

 生徒たちは俺が休みであることを知らないから無理もないのだが。


 忙しいならともかくブラブラしている時に断るのは罪悪感がドンと上積みされそうだ。

 外聞も悪いだろうしな。

 冒険者ギルドに顔をのぞかせるのも似たようなものだろう。


 これはもう部屋でおとなしくしてろってことか?

 することできることを考えなくなった途端に黒歴史的動画再生が脳内で復活する。


「ぐうぉ~~~~~~~~~~っ!」


 ゴロゴロも復活だ。

 バカみたいだが、こうでもしていないと耐えがたいのは事実である。


「何か、何かないのかぁ」


 悶え転がりながら俺にできそうなことを脳内検索。

 縛りが多すぎて、そうそう簡単にはヒットしないんだけどな。


「しょうがない」


 ゴロゴロをストップさせて座り込む。


「何か作ろう」


 問題は何を作るかだ。

 パッと思いつくものがない。

 趣味の範疇で収めるならプラモデルとかだろう。

 ジオラマとか作って……


 却下だな。

 今の不安定なメンタルだと逆にハマりすぎて3日は止まらなくなる自信がある。


「そういや、前に作ったミシンはそのままだったな」


 人力で動作する足踏みミシンだから構造も単純にするしかなかったんだよな。

 あれを発展させてロックミシンを作るのはありかもしれない。


 ロックミシンは布止めをするかがり縫い専用のミシンだ。

 普通のミシンでも擬似的なかがり縫い機能はあったりするけど、ほつれやすいんだよな。


 しかも伸縮性のある素材はロックミシンじゃないと扱えないし。

 それでツバキが愚痴っていたのを思い出した。


 まあ、最近は高レベルであることを生かして超高速で精密な手縫いをしてるけど。

 そんな真似は誰にでもできる訳じゃない。

 ロックミシンを国内に普及させれば、国民の間にもっと色々な服が広まるだろう。


 いくらツバキでも全国民の服を用意するのは無理があるからな。

 ただ、さすがにロックミシンを作るとなると輸出は無理だ。

 人力では出力を一定にさせづらいから魔石を用いた魔道具ということになるのでね。


 それよりも問題なのは実用的なものを作ることになるということか。

 そうなると仕事ということになってしまいそうな気がするが背に腹はかえられん。

 黒歴史的脳内自動再生から逃れるためだ。

 自分の部屋でやることで趣味の工作ということにしておこう。


 そうと決まれば話は早い。

 いきなりロックミシンを作るんじゃなくて足踏みミシンの魔石動力化からやっていこう。

 足踏み機構が不要になるからコンパクトにして持ち運びもできるようにする。


「……ほい、マギミシンの完成だ」


 やっぱり物作りは楽しいね。


読んでくれてありがとう。

明日の投稿から感想欄でお約束していた設定資料をアップしていきます。

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