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175 臭いものは元からシャットアウト

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。

 ミズホ刀に興味を示すジェダイト組は放置して月影の面々を見る。

 なんか全員の目がキラキラして刀を見ているんですが。


「皆、どうだ?」


 声を掛けると振り向くだけマシか。


「素晴らしい、実に素晴らしい。こんなにしっくりくる刀に出会ったのは初めてだ」


 童顔つり目なルーリアの目尻が下がりに下がって幼く見える有様だ。

 今までのクールな感じが微塵も残っていないのが逆に怖く感じてしまう。


「そ、そうか。それは何より」


 平常運転に近いノエルを見て落ち着こう。


「これ使いやすい」


「良かったな」


「ん」


 ダメだ。いつも通り無表情のはずが満面の笑みに見えてしまう。

 表情の変化に乏しいことに慣れてしまった弊害が……

 怖くはないが逆に嬉しすぎて落ち着かん。

 ならばアニスはどうだ?


「いやぁ、これええわー」


 頬ずりしそうなほどトロトロになってるよ。

 目を合わすと犬のように顔中嘗め回されそうだ。

 狐系ラミーナなんだけど。


 本当にそうなったら怖いので視線を外してレイナを見た。


「振り下ろした時のバランスが特に絶妙だよな」


「水平切りもいい感じですよー」


 ダニエラと2人でニヤニヤしてて入り込む余地がないぞ。

 ならばリーシャはどうだ?


「確かに今までの剣は何だったのかって思えるな」


 リーシャの絶賛に双子がうんうんと頷いて同意している。

 こっちも姉妹の世界が出来上がっている。

 なんか疎外感を感じるんですが。

 とか思っていたらポンポンと軽く叩かれる感触があった。


『くうくぅくー』


 アキラメロンって、ローズかよ。

 毎度思うんだが何処でそんな言葉を覚えてくるんだか。

 しかも霊体のまま理力魔法で叩く動作にシンクロさせるとか器用なことしてるし。


「新しい武器は実戦で使ってこそじゃないか?」


 ガンフォールからミズホ刀を回収しながら言ってみると月影の視線が一斉に集まった。

 一方ですがるような目を向けてくるのがジェダイト組だ。

 スルーして、さっくり倉庫へ収納したけどね。


 でないとダンジョン攻略が再開できないからな。

 荷物扱いされていたジェダイト組にしてみれば、ようやく開始なんだけど。


 48層はマッピングが終わっているそうなので49層へと下りていく。

 敵は残っているようだが、半減させれば上出来だ。

 この階層にまで来る連中はそうそういないとしても上の方のリポップにも影響するので程々にしておかないとな。


 49層に来て最初の遭遇は少し広めの部屋で6体のスケルトン。

 すべて片手剣とラウンドシールドで武装しており、カシャカシャと骨の音を鳴らしながらゆっくりと近づいてくる。


「ボルトくん、お手並み拝見といこうか」


「自分だけですか!?」


 俺の呼びかけに焦りを見せるボルト。


「1体、受け持てってことだよ」


「ええっ!?」


 残りはどうするのかと目で問い合わせてくる。


「残りの5体はジャンケンで決めればいいか」


「ちょっ、まっ、もうそこまでっ」


 ちらちらと振り返っているが集中しないと痛い目見るよ、ボルトくん。

 俺の指示通りに牧歌的な光景を展開させている月影の面々が気になるのは分かるけどね。


「よっしゃ!」


「勝ったで」


「ふむ、勝てたか」


「「勝ちましたぁ」」


 ジャンケンに負けたのはノエル、リーシャ、ダニエラか。

 3人ともションボリしているように見える。

 少しでも早くミズホ刀の具合を確かめたかったのだろう。


「うわぁ、来たぁ!」


 ボルトの情けない声が開戦の合図となった。


「このっ、来るな来るな来るな!」


 必死の形相で突きを繰り出しているボルト。

 だが、隙間が多いボディのスケルトン相手には有効とは言い難い攻撃だ。

 比較的狙いやすい頭部へ突きを集中させているため向こうもシールドで防御して近づけずにはいるけど。


「馬鹿者、焦りすぎじゃ」


 ガンフォールからお叱りの言葉が出るくらいだからボルトは狙ってやっている訳ではないだろう。

 一方で残り5体はジャンケンに勝った5人が一刀両断で終わらせていた。


「相手をよく見よ! 足元がガラ空きであろう」


「えっ? あっ」


 ギリギリ聞こえる状態だったらしく、ボルトは即座に反応して下段の薙ぎ払いを見舞った。

 この一撃でスケルトンの右膝を破壊。

 続いて流れるような槍さばきでボルトはスケルトンの頭蓋に石突きを叩き込んだ。


 少しは落ち着いたかと思ったが……

 ボルトは動きの鈍ったスケルトンの胸部を石突きで滅多突きにしていた。

 とにかくコアを破壊しようと必死すぎである。


 もしかしてお化けとか幽霊の類いがダメなのか?

 まあ、武士ではないが俺にも情けはあるから指摘はすまい。

 戦闘後のガンフォールとハマーの説教については知らん。耐えろ。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 そんなこんなで49層の攻略が進む。

 月影の面子は何処かノンビリした空気を漂わせ、ジェダイト組はピリピリしている。


「そんなに張り詰めていたら保たんぞ」


 するとガンフォールが溜め息をついた。


「お主ら、これが非常事態だと思っておらんじゃろう」


 ハマーとボルトが激しく頷いている。


「どういうことだ?」


「お主ら、アンデッドの怖さを知らんじゃろう」


「怖さと言われてもなぁ」


 ゾンビとかは病気を媒介したりするから厄介だとは思うけど。


「アンデッドの代名詞と言えばスケルトンとゾンビじゃ」


 それは知ってる。


「アンデッドが出るという時点でゾンビは大いに警戒せねばならん」


「病気を媒介するからだろ」


「知っておるのにそれか」


 呆れたと言わんばかりに溜め息をつかれてしまった。

 その様子から何となく察しがついたのだが感染者は殺すしかないと思い込んでいるみたいだな。


「心配いらんだろ」


「何じゃと!?」


「どうしたら病気をうつされるとかはわかるか?」


「いや、ゾンビと戦った者が病気になりやすいとしか知らん」


 やはりその程度の知識しかないのか。


「感染してるかどうかはガンフォールも分かるだろ」


「おそらくな」


「【鑑定】スキル持ってるだろ」


「ワシも感染者をじかに見たことはないんじゃ」


 この様子だと得体の知れない死病くらいの認識なんだろうなぁ。


「心配いらんと言ったのは治療可能な病気だからだぞ」


 薬でも治癒魔法でも治すことができる。


「「「なっ!?」」」


 ジェダイト組がそろって大口を開けている。

 おそらく感染地域ごと燃やすしかないと思ってたんだろうな。

 そんなことしなくても感染を拡大させない方法はあるが、言っても信じないか。

 いきなり感染経路だとか潜伏期間なんて言われても頭の中「???」状態になると思うし。

 それ以前に、こんな場所で講義を始める訳にもいかない。


「今回はアンデッドが出る状態を解消しようと考えているんだがな」


 ブリーズの街の冒険者たちでは対処しきれないと判断した結果だ。


「できるのか?」


「ああ」


 先頭を皆に任せている間に色々と調べておいたからね。


「60層にある迷宮核をいじればいいだけだ」


 【諸法の理】があるから不可能じゃない。


「「「なっ!?」」」


 ジェダイト組がまたもシンクロしてる。

 さっきの話より一段と信じがたいんだろうけど。


「じゃあ、さくっと行ってくる。皆はこの階層の攻略を続けてくれ」


 返事を聞かずに俺はダッシュした。

 同行者はローズのみ。

 というか霊体化して背後霊のように張り付いているだけなんだが。


 宣言通り、サクッと最深層に到着。

 アンデッドは汚物はすべて浄化ってことで光の壁を展開して押し潰してきましたよ。

 押し潰す前に消え去ってたけど。


 60層は天井が高くて広いフロアになっていた。

 いわゆるボス部屋なんだけど……


「よりによってコイツかよっ」


 俺の目の前には地竜のゾンビがいた。

 デカい上に全身グシャグシャで変な色の汁たらしてるのが辟易させられる。

 キモいだけじゃなくて、とてつもなく臭いんだよ。

 動きは緩慢なんだけどね。

 ようやく反応し始めたくらいだし。


「まともに相手なんかしてられるか!」


 腐った肉や体液をまき散らしながら攻撃されちゃたまらないからな。

 そんな訳で上下から特大の光の壁でサンドイッチだ、ドン!

 ものの数秒でコアだけ残して綺麗サッパリ浄化で消滅エンドだ。


読んでくれてありがとう。

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