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1724 主導権を握るモノ

「衝撃波が途切れる瞬間を待って……いる?」


 自説を打ち出しかけたツバキだが、最後は疑問形になっていた。

 考えにくいことだと思ったからだろう。


 魔法なんてキャンセルしようと思えばいつでもできる。

 そんなことを考えていそうだ。


 どうやらツバキは赤リッチのことを買いかぶっているみたいだな。

 あれが魔法をキャンセル?

 悪い冗談である。


 生憎と、赤リッチにそこまでの能力も発想もない。

 だろうという仮定の話ではなく断定だ。


 いくら不死王の錫杖というアイテムによって強化されたとはいえ中身が残念すぎる。

 元の中身は西方の常識に囚われたオッサンだということをツバキは失念しているようだ。


 新人3人組にしてみれば赤リッチが強いのは間違いない。

 が、だからといって魔法が使いこなせる訳ではない。

 西方人の常識に囚われたオッサンがベースなのだから。


 ベースがショボいと不死王の錫杖によって凄い魔法を使えるようになってもね。

 使えると使いこなせるは同じではないのである。


 そこは新人3人組にとってありがたいポイントだろう。

 でなければ、こうなる前に追い込まれていたはずだ。


 ただ、ツバキが赤リッチの狙いを自信なさげに言った気持ちも分からなくはない。

 本来であれば赤リッチが衝撃波が途切れる瞬間を待つ理由などないのだし。

 2段変身によってさらなるパワーアップを果たしたのだからな。


 まあ、パワーと言うよりはスピードアップと言うべきか。

 力はさほど増しているようには見えないし。

 その分をスピードにすべてつぎ込んだって感じだ。


 ただ、そのことも含めて攻撃力は大幅に増している。

 スピードに乗せた攻撃は大ダメージを叩き出す。


 しかも固定武装と言うべき手足が強化されているからな。

 これまでは鋭さがあるとはいえ普通の手足だったが、今のそれは完全な凶器だ。


 自我を残しているなら──


「切り刻んでやる」


 とか言いそうな指になってしまっている。

 武装は違うが某ロボットアニメの狂気に囚われた悪役と重なって見えてしまうほどだ。


 確かトモさんが好きな作品じゃなかったかな。

 悪役のことを気に入っているかどうかまでは知らないけど。


 それは主人公に倒され死んだと思われていた狂人的オッサンキャラだ。

 アクが強いキャラだから嫌いじゃないとは思う。


 軍人なのに元から異常者だったんだよな。

 目的の達成のために手段を選んで楽しむというか。

 弱者をいたぶることを何とも思わないのは序の口な奴だった。

 そこにこそ快楽があるような言動をしていたくらいだし。


 インパクトはあったけど初期のうちに死んでしまったんだよね。

 後期で再登場した時は更に突き抜けたキャラになっていて驚かされたけどな。


 台詞は主人公に対し狂気に近い復讐心を燃やして何でもありの戦いを挑んだ時のものだ。

 搭乗するメカの武装がレーザーのノコギリという風変わりなものだったけど。


 赤リッチの殺気にはその狂気に重なるものを感じる。

 不死王の錫杖は、そういう異常者の部分を意図的に残しているように思えてならない。


 やはり面倒な粗大ゴミだ。

 新人3人組が赤リッチを倒した後は確実に消去しておかねば。


 ともかく、ツバキには間違っていない旨を伝えておいた方が良さそうだ。


「それで正解だぞ」


「えっ?」


 意外な言葉を聞いたと慌てた様子で俺を見てくるツバキ。

 どういうことなのかと問いたげに見える。


 実際、そうなのだろう。

 赤リッチがそうする理由を思いつけないようだからな。


「奴は辛酸をなめさせられたと思っているんじゃないか」


「うーん」


 ツバキが渋い表情で唸っている。

 納得しがたいようだ。


「だから慎重になっているんだろうよ」


「果たしてそうだろうか?」


 少し考えてから、とてもそうは見えないと言いたげに問い返してきた。

 赤リッチが自我を失っているのはツバキたちも分かっているようだし。

 そんな状態では条件反射的な反応をするのがせいぜいだと考えてしまうのも無理ないか。


「奴自身が考えてのことではないさ」


「「「は?」」」


 素っ頓狂な声を出したのはツバキだけではなかった。


「どういうことじゃ、主よ?」


「意味が分かりませんが?」


 シヅカやカーラもツッコミを入れるように聞いてくる。


「謁見の間に入ってきた時に変身前の奴が持っていたものがあるだろう」


「おお、あの無駄にゴテゴテした錫杖のことじゃな」


 呆れた感じで苦笑いを浮かべるシヅカ。


「錫杖というあたりが微妙でしたよね」


 カーラも同意している。


「実用向きではないが魔道具の類いなのだろう。

 実際、奴が取り込んだことで強化されたようだしな」


 ツバキが己の推測を話すと、シヅカやカーラも頷いていた。


「旦那はアレがどういう代物なのか分かっているようだが?」


「ああ、あれは不死王の錫杖という古代の粗大ゴミだ」


「酷い言いようじゃな」


「そんなに良くないものなのでしょうか」


「旦那がそう言うからには、そうなのだろうよ」


 ツバキはよく分かっているな。


「そうだな、迷惑な代物だぞ」


「どう迷惑なのじゃ?」


「あの粗大ゴミが赤リッチの主導権を握っているんだよ」


「「「なっ!?」」」


 一瞬、驚きをあらわにした3人だったが……


「なるほどのう」


 すぐにシヅカが復帰してきた。


「それならば彼奴が自我を失っているのも容易に説明がつくというものじゃ」


 うんうんと頷いている。


「言われてみれば、そうですね。

 自我を失っているにしては無茶苦茶な暴れ方をしていませんでしたし」


「だが、そういう風に見えない瞬間もあるぞ」


 カーラが同意するもツバキはそうではなかった。


「現に今の待ちの体勢は何か策があるように見える。

 とてもではないが自我を失っているとは思えん」


「そこは不死王の錫杖がコントロールしているからだ」


「どういうことだ、旦那よ?」


「感情や記憶は赤リッチのものを利用しているんだよ」


「ほう、憎悪を利用して強化しようという訳じゃな」


 シヅカが魔道具を製作した者の狙いを読み解いている。


「思考は不死王の錫杖とかいうのが支配下に置く訳か」


 ツバキも同じように推理していた。


「最初は誘導する形だったんだろうがな」


「それって……」


 嫌な予感がすると言いたげなカーラさん。


「誘導し続ける間に依存するように仕向けておった訳か」


 カーラが懸念しているであろうことを、あっさりと言ってしまうツバキ。


「最終的には思考まで奪ってしまうとは確かに迷惑な代物じゃのう」


読んでくれてありがとう。

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