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1723 悪の2段変身はこうなる

 真後ろまで回った赤リッチの頭部が正面を向く格好で起き上がっていく。


「ぬうっ」


 シヅカが顔をしかめながら呻いた。

 無理からぬことだと思う。

 なかなかのグロさを感じさせてくれるからな。


 シヅカでなくても見なきゃ良かったと思わせてくれるよ、ホント。


「ホラー映画じゃないんだからさぁ」


 思わず愚痴りたくもなるというものである。

 とはいえ、こんなツッコミを入れたところで赤リッチの変化が止まる訳ではないがね。

 キモい感じに首を変形させる間にも腕や脚もグネグネと大きく変化を始めていたし。


 いや、それだけじゃない。

 胴体もさほどではないとはいえ形状が変わっていこうとしている。

 もはや人体を模しているとは到底言えないようなグロテスクな形状になりつつあった。


 胴は複数の楕円形パーツをつなげたようなハチやクモを思わせるものに。

 腕も脚も細く伸びながら極端に折り曲げたくの字に。


 そして手足が肥大化し指先が鋭く尖っていく。

 束ねるように伸ばせば刃や槍になりそうだ。


 広げて使えばシュレッダーか?

 単発の攻撃じゃ切り裂いても情報漏洩は免れないだろうがな。


 2段変身で更にスピードアップしているはずだから切り刻んできそうだけど。

 より凶悪になって攻撃力を増したのだけは確かだ。


 そうして赤リッチの2段変身が終わった。

 当初、予測していたゴージャスな感じとはまるで違う見た目になっていたけれど。


 禍々しさは確実に増していると言えるだろう。

 変身中のグロさに比べれば、はるかにマシではあったがね。


 まあ、ゴージャスと言えなくはないのか。

 変身ヒーローものの悪の幹部っぽさが消えただけだ。

 終盤に登場する強力な怪人枠で考えれば……


 それにしたって理性を失っている時点で雑魚っぽく見えてしまうのが残念ポイントだが。

 変に俺様的オッサンの主張を聞かされないだけマシだということにしておこうかね。

 なんにせよ、そのお陰でイライラさせられずに済んだのは事実であるんだし。


「ツバキの言う通りであったな」


 顔をしかめさせたままでシヅカが苦々しげに言った。


「あの変わり様は見ていて不快極まりなかったのじゃ」


 それは言えている。

 ウザいオッサンの主張とどっこいどっこいかもしれない。


「せめて途中経過を見なければ、まだマシだったんでしょうけどね」


 カーラが苦笑交じりにそんなことを言った。

 まあ、今更である。


「そう言うお主は平気そうじゃな」


「虫系の魔物はずっと見てきましたからね」


 カーラは何でもないことのように言って、わずかに苦笑した。

 昔のことを思い出したのだろう。


 それは俺と出会う前に食糧確保のため唯一のダンジョンに潜っていた頃の話だ。

 メインで食べていたものは虫系の魔物か鬼面狼くらいだったはず。

 解体しなければ食べられないし、グロさに耐性がつくのも頷けるというものだ。


「あれを食する生活には戻りたくないものだな」


 ツバキがしみじみと言った。


「────────っ!?」


 シヅカが頬を引きつらせてドン引きしている。

 昆虫食には抵抗があるようだ。


 栄養価は高いけど慣れていなければ見た目や食感が良いとは言えないからな。

 慣れているカーラやツバキは平気でも、そうではないシヅカにはハードルが高い訳だ。


「それはともかく、あれはビルたちにはもはや手に負える存在ではなくなったようじゃぞ」


「クイズの答えも分からないままですね」


 シヅカの言葉にカーラが同意する。


「早く対応しないと、ビルやカエデが翻弄されることになるぞ」


 そしてツバキが俺の方を責め立てるように見てきた。


「対応? もう終わっているぞ」


「おわっているのだー」


 万歳しながら追随してくるマリカ。

 ほぼ同時にドルフィンも頷いている。


「「「なっ!?」」」


 シヅカたちは気づかなかったらしく驚きをあらわにして俺の方を凝視してくる。

 思わず苦笑が漏れてしまったさ。


「俺の方を見たって分からんぞ」


 既に終わっているんだから。

 結果は度重なる赤リッチの変身で第3ラウンドに突入しようとするビルたちの方にある。

 俺の言葉によって3人は一斉にビルたちの方を見た。


「むうっ、これは……」


「何時の間に……」


「さすがは旦那と言うべきだろうな」


 さすがにシヅカたちも気づいたようだ。


「可変結界じゃな」


 してやられたと目を閉じるシヅカ。


 そう、これこそがクイズの答えにして俺の用意した策である。

 この可変結界によって赤リッチの動きは間違いなく制限される。

 新人3人組の動きはほとんど制限されないのがポイントだ。


 あんまりやり過ぎるとデメリットが際立ってしまうのでゆるめに設定してあるけど。

 故に前衛のカエデやビルは楽には戦えないだろう。

 手に負えない状態はどうにかしたので頑張ってもらいたい。


「この部屋、結界だらけですね」


 カーラは苦笑している。


「気づかぬ訳だよ」


 ツバキはそれに同意して頭を振った。


「気を抜きすぎ-」


 マリカがそう指摘すると、3人そろって苦笑いだ。


「返す言葉もない」


 そんなことを言っている割には悪びれる様子のないツバキである。


「まったくじゃな」


 シヅカも似たようなものだ。

 ただ、こちらはフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまったが。

 俺が可変結界を展開した瞬間に気づかなかったのを一応は恥じているみたいだな。


「反省しきりです」


 しおらしくションボリするカーラさん。

 ちょっと萌えだと思ってしまったのは内緒である。


「それにしても動かないな」


 俺を現実に引き戻したのはツバキの一言であった。

 変身が終わった赤リッチはその場にたたずんでいる。

 即座に攻撃を開始しても良さそうなものなんだけど。


「カエデやビルを警戒しておる訳ではなさそうじゃがな」


 シヅカが2人を見ながら言う。

 あの2人は赤リッチが2段変身を始めた時点で前に進むのを止めていた。


 当然だ。

 何かするのだと気づいて警戒しない訳がない。


 先手を打って強引に潰そうにも相手は格上である。

 迂闊に突っ込むのは下策だと判断したのだろう。


 それに衝撃波が邪魔をしてくるしな。

 勢いのままに連打で完封とはいかない。

 何があっても対応できるように止まって警戒するしかできなかった訳だ。


「可変結界に気付いた訳でもないみたいですよ」


 少しでも動けば何かおかしいと気づくだろうが奴は微動だにしていないからな。


 それで動かないということは何かしら理由がある訳だ。

 十中八九、罠だろう。


読んでくれてありがとう。

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