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1658 パワーレベリングしよう

 オセアンが困惑したままである。

 深く考える必要などないというのに。


 パワーレベリングに意味を求められても困るのだ。

 経験値を稼ぐという概念がないせいなのだろうか。


 だとすると、こうなってしまうのも仕方ないのかもしれない。

 今度から新規で国民になる者にはパワーレベリングの知識を真っ先に伝えるとしよう。


 うむ、反省終了。


「それにカエデの援護にもなる」


「どういうことでしょう?」


「カエデのような攻撃ができるか?」


 西方の神官には浄化系の魔法を飛ばして当てるという概念が薄いからな。

 荼毘に付すような時に光属性の炎を対象に触れずに着火するなんてのはあるようだけど。


 そういうのは攻撃には不向きだ。

 射程が短い上に威力も高くはない。

 そこだけカスタマイズするなんて発想もしないようだし。


 放出系の魔法だから応用も利きづらいというのもあるだろう。

 術式をいじらなきゃならないから知識も技量も要求されるのでね。


 下手にいじろうとすると暴発する恐れがある。

 故に術式には手を出さないのが西方の常識だ。


「いいえ」


 俺の問いにオセアンは頭を振りながら答えた。


「じゃあ、マスゴーストを相手にできることは何だ?」


 更に問いを続ける。

 手持ちの札を確認しておく必要があるからな。


「浄化の祈りくらいしか……」


 オセアンは自信なさげにゴニョゴニョと言った。

 神官としては定番中の定番のはずなんだが。


 マスゴーストに通用するかどうかを気にしているようだ。

 あの様子では抑え込むのが限度で滅することはできないとか考えていそうだな。


「それでいいんだよ」


「ですが、あんな強力なアンデッドを浄化しきれるものではありません」


 思った通りの返答であった。


「だから援護だって言ってる」


「え?」


「向こうだって簡単に浄化されまいと抵抗するだろうよ」


「それだと浄化どころか抑え込むことができるかどうかではないかと思うのですが」


「充分だ」


 それだけでも攻撃しているに等しいから経験値が入ってくる。

 パワーレベリングは成功を約束されたようなものだ。


「完全に押さえ込めなんて言わない。

 動きを鈍らせれば、攻撃はカエデがしてくれるからな」


「「あ……」」


 カエデとオセアンの2人がハモるとは思わなかった。

 両者ともに俺の狙いに最後まで気づけなかったとはね。

 話している途中で察しても不思議ではないと思っていたのだが。


 この現状に余裕がないせいだろうか。

 些か読み誤っていたようである。


 だが、予定は変えない。

 パワーレベリングは続けるさ。


 この2人にはちょうどいい獲物だからな。

 少しはレベルの足しになるはずだ。


 さすがに3桁レベルに到達させるには、かなり物足りなかったりするが。

 そのための足がかりにはできる。


 むしろ、そうすべきだというのが俺の考えだ。

 今のレベルから一気に引き上げるのは不安があるんだよ。

 カエデはともかく、戦闘経験も無いに等しいオセアンにはね。


 護身術を訓練か何かでした程度のようだし。

 実戦については皆無と言っていいだろう。


 今回はその経験を積ませるという意味合いもある。

 カエデの支援という形になってしまうが、そこは仕方ない。


 殺気を込め襲ってくる敵を間近で見られるだけでも意味があると思いたいところだ。

 肌で感じるってやつだな。


 これで腰を抜かすようなら本格的なパワーレベリングは先送りにしなければなるまい。

 安全第一は基本である。


 今のところは大丈夫なようだが果たしてどうなるやら。

 自分も矢面に立つとなれば違ってくるだろうしな。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



「我、願い奉る」


 オセアンが浄化の祈りを捧げ始めた。

 カエデの支援をするためだ。

 にもかかわらず立ち位置はカエデの隣である。


「後方からでは浄化の威力も落ちますから」


 2人でマスゴーストを相手するよう指示を出した時に聞いた話だ。

 あまりに前に出るものだから何事かと思ったんだよな。


 斬撃波を放つカエデはともかく、それを支援するオセアンが前に出る必要はない。

 後方に少し下がったのだとしても戦いの緊張感は充分に感じ取れるのだ。


 俺はそんな風に考えていた。

 オセアンの話を聞くまではね。


 結局、オセアンが気にしていたのは先の言葉通りのことだったのだ。

 接近しなければ最大の効果は発揮できないということらしい。


 効果範囲が狭すぎる。

 放出型の魔法使いならではの縛りだと言えよう。


 これで燃費も悪いから長期戦は無理だ。

 カエデも斬撃波を連発すれば似たようなものなのでバランスはとれているかもな。


 まだ内包型の魔法の使い方を教えていないから仕方のないことではあるが。

 次のパワーレベリングまでには、ちゃんと教えておきたいものだ。


「鎮めたまえ、清めたまえ」


 オセアンの呪文が続く。

 まるで祝詞のようだと思った。


 いや、リアルで祝詞を聞いたことはないんだけどさ。

 せいぜいがテレビとかで何かの拍子に見聞きした程度である。

 真剣に聞いていなかったから内容的に近しいかどうかなんて分からない。


 調べれば分かるだろうけど、そこまでして知りたい訳じゃないし。

 まあ、雰囲気的にそんな感じだと思っただけの話だ。


 とにかくオセアンの集中が高まっていくにつれてマスゴーストの動きが鈍っていく。

 浄化の祈りに抵抗しようとしている証拠だ。


 やがてマスゴーストの動きが止まった。

 よく見ればブルブルと小刻みには震えているのだが。


 カエデにしてみれば動かぬ的も同然である。

 そして魔力は既に練り上がっていた。

 オセアンが祈りを捧げ始めた時点から練り始めていたから余裕があった。


 故にマスゴーストの動きが止まったと見るや否や──


「はあっ!」


 練り上げていた魔力を斬撃波に変えて放った。


 マスゴーストはそれを見るや激しく抵抗し始める。

 どうにか逃れようとしているのが顔の動きで見て取れた。


 表面を激しく動き回ったり。

 めまぐるしく入れ替わったり。

 よじるように形を変えようともしているようだ。


 やっぱ嫌なんだな。

 自らの存在が削られていく訳だし無理からぬところだろう。


 が、オセアンの浄化の祈りが奴のあがきを妨げる。

 向こうが必死なら、こちらも必死。

 オセアンが表情を険しくさせているのは集中を高めている証拠に他ならない。


「……………」


 いつの間にか呪文は聞けなくなっていた。

 呪文さえ集中することの妨げになっているみたいだな。


 ただ、この調子だと本人は気づいていないかもしれない。

 あとで指摘すれば驚きそうな気はする。

 魔法には呪文がつきものという今までの常識をひっくり返される訳だからな。


 まあ、内包型を教えるのには好都合だ。

 今の状態を何度も繰り返せば体が覚えてくれる。

 最初の切っ掛けがつかめずに苦労する者もいるのでラッキーだと言えよう。


 怪我の功名? ではないな。

 何も痛い目を見た訳ではないのだし。


 この場合は棚からぼた餅と言うべきか。

 何にせよパワーレベリングさせて正解だったな。


 それはともかくオセアンの頑張りによってマスゴーストの動かぬ的状態は維持された。

 もちろん、これで斬撃波が外れる訳がない。


「「「「「オオオオオォォォォォォォォゥ───────────ッ!」」」」」


 斬撃波が命中するやいなや、マスゴーストが悲鳴を上げた。


「うわっ!」


 オセアンが姿勢を崩してたじろいでしまう。

 集中が乱れマスゴーストを抑え込んでいた浄化が途切れてしまった。


 自由になった奴は再び激しく飛び回る。

 ノエルの結界にも体当たりを繰り返していた。


 2度目の斬撃波も同じようにダメージが通ったことで危機感を募らせたのだろう。

 無駄なあがきなのは言うまでもない。

 マスゴーストがそれを理解できないのは、生前の思考能力を喪失している証拠である。


 残らず浄化して成仏してもらおう。


読んでくれてありがとう。

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