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1637 帰るはずが旅の続行が決定する?

 1日遊んで宿屋に戻ろうとしたらサリュースに呼び止められた。


 何かのフラグを立てた覚えはないのだが嫌な予感がする。

 今のところは警報レベルって感じではなさそうだけど。


 とにかく改まって話さなきゃならないことがありそうな雰囲気ではあった。

 まあ、気にせず聞いてしまうんだけどな。


「何だよ?

 金を貸してくれなんて話ではなさそうだが」


 5国連合は経済的に潤っているそうだからな。

 個人的に散在してということもないだろう。

 サリュースを何日か見てきて、そういうタイプではないと感じている。


 他の面子も同様だ。

 態度や喋りはそれぞれに個性的なところがあるとは思うがね。


「アハハ、そういう話ではないね」


 サリュースが笑いながら返事をした。


 という訳で借金の線は消えましたよ。

 同時にシリアス路線まっしぐらな話でもないように感じた。


 真面目な話ならサリュースも笑ったりはしないだろう。

 自分から話を持ちかけた訳だし。


 話を聞く俺を気遣って笑ってみせたという感じでもない。

 芝居くささを感じなかったからな。


 念のため【千両役者】スキルでチェックしていたから間違いはないだろう。

 そうなってくると首をひねりたくなってくる。

 皆目、見当がつかないからだ。


 深刻な話なら荒事に手を貸して欲しいと言われるかもと考えたんだけど。

 その線は薄くなった。


 いずれにせよ完全に向こうの事情であるのは疑う余地もない。


 おまけに、このタイミングで話を持ちかけてきたのがね。

 遊んでいる最中にさらっと言えるような話じゃないってことだろ。

 必然的に警戒心を抱いてしまうんだよな。


「実は頼みがあるんだけどね」


「頼み?」


 ますます分からん。

 金を貸してくれって話でないことを聞いているだけにな。


 ただ、厄介ごとだと心のサイレンが鳴っているのは確かなんだよね。

 果たして何があるのやら。


 面倒くさくないといいんだけど……

 そういう訳にはいかないんだろうなぁ。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 帰りたいのに帰れなくなってしまいましたよ。


 いや、違うな。

 正確には大幅に寄り道をすることになったと言うべきだ。


 念のために言っておくと、ツバイクたちを送っていくことではない。

 俺たちが連れてきたのだから責任を持たねばならないのは当然の話だ。

 それを寄り道と言うのは違うだろう。


 サリュースが軽戦士サリーとして頼みがあると言ってきた時は何事かと思ったさ。

 ここまで大事になるとは想像だにしなかったと言うべきか。


「いやいや、凄い乗り物だね」


 召喚風に引っ張り出したバスを見て半ば唖然とした様子で感心するサリュース。

 まあ、馬車と比べてもデカいからな。


「こんなのが本当に動くのかよ」


 完全に唖然としているランスロー。


「ハルト殿だからな」


 驚きつつも受け入れる様子を見せるルータワー。


「にわかには信じられませんね」


 スタークが呆れたように頭を振っていた。


「どうだっ」


 何故かハイラントが胸を張ってドヤ顔で言い放った。


「なんで、アンタが自慢するんだよ」


 呆れたとばかりに嘆息を漏らしてツッコミを入れるランスロー。


「そうですよ」


 コクコクと頷いて同意するスターク。


「左様、貴殿の所有物ではあるまい」


 重々しく頷くルータワー。


「ぐっ」


 即座に3人から指摘されてハイラントは返り討ちにあった。

 それを見て──


「アッハッハ!」


 声を上げてサリュースが笑う。

 これから向かう先の事情を忘れているかのような満面の笑みである。


 サリュースのことだ。

 依頼の件を忘れてはいないだろう。

 失念している訳でもないはず。


 すべてを承知した上で切り離して考えられる。

 そういうことなんだと思う。


 少々のことでは動じない得な性格だと言える。

 単に楽観的なだけかもしれんがね。

 細かいことに頓着しないのだけは確かだ。


 俺には真似できそうにない。

 豆腐メンタルだからなぁ。


 気がかりなことがあると放置できないのだ。

 お陰で寄り道して帰ることになったのだけど。


 しかも、俺が呼ばれた訳じゃない。

 サリュースにとって必要なのはオセアンなのだ。


 フリーになったのを幸いに仕事を依頼しようと思ったら所属が変わっていました。

 そんな状況だったので俺に話を持ちかけてきたのだ。


「ハルト殿、オセアンくんを借りたいのだけどね」


 それが依頼内容である。


「そりゃまた、どうしてだ?」


「治療を依頼したいのだよ」


「ほーん、治癒魔法を必要とする誰かがいる訳か」


「そういうことだね」


「相手が誰かは聞いてもいいのか?」


「我々、5国連合が守るべき人だな」


「ん?」


 どういうことだ?

 そのあたりの背景事情なんかは調べていなかったからな。

 サッパリ分からん。


 このままではマズいと思ったので【多重思考】スキルで思考を加速させた。

 その上で情報を整理していく。


 歴史や地形情報などは先に調べてある。

 調べたのは、もう1人の俺たちなんだけど。


 まあ、もう1人の俺たちにしても調べっぱなしだったんだけどな。

 情報は集めただけじゃ意味をなさない。

 整理せずにほったらかしにしていたんじゃ宝の持ち腐れというものだ。


 まずは重複情報をカット。

 で、年代順に並べる。


 その上でガーッと速読していく。

 【速読】スキルが唸りを上げるぜ。


『……………』


 ふむふむ、なるほどね。

 地理的に見て5国連合に囲われた格好の国がある。


 やたら小さい。

 面積は初期のミズホ国よりもずっと狭くて形はほぼ円形。


 こんな変わった国は初めて見ると思ったら、それなりに理由があった。

 この国と併せて5国連合は元々ひとつの国だったんだと。


 中央に位置するこの国が王都だったそうだ。

 神のお告げにより国土を分割したという。


 ゲールウエザー王国に匹敵する大きさの国だったとは想像の斜め上である。


 それが何故分裂したのかは諸説あるらしい。

 古代文明時代に何かあったというのが学者の間では通説になっているようだ。


 そのあたりの話はどうでもいいけどね。

 現在はこういう格好になっているというだけで充分。

 元王都は今も5国連合によって守られているのが現実だ。


 地理的にもそうだが盟約があるらしい。

 5国連合は相互不可侵であり元王都を守らねばならないのだそうだ。


 それ以前に元王都は西方では幻の国と言われている。

 正確な地図が入手できない世界だからな。

 存在が世間には知られていないみたいだ。


 5国連合によって承認されなければ立ち入りできないというのだから徹底されている。

 しかも、国境線が城壁で閉ざされているような状態だ。

 元王都というだけのことはある。


 現在はノーム法王国というそうだが。

 国の名前からも分かると思うが宗教色の強い国である。


 まあ、国土分割の話からして神のお告げを実践したというのだから信心深いようだ。


 ちなみにそのようなお告げはされていない。

 念のために脳内スマホで確認のメールをルディア様に送ったら──


[覚えがない]


 とだけ記された返信があったからね。


 要するに神様の言う通りにしようねってことで強引に国土を分割したのだろう。

 信心深い者たちが相手なら反対意見を封じるのも難しくはなかったのではなかろうか。


 歴史関連の資料によれば分割前は権力闘争が激しくて内戦状態にあったようだし。

 これを解決するために神様をだしに使ったというところか。


 当時の法王はなかなか大胆な人物だったみたいだな。

 神様の御言葉なら従うでしょとばかりに大胆な真似をしたのだから。


 自分の言うことを聞かなくてキレただけかもしれないけど。

 このあたりは俺の勝手な憶測だがね。


 【天眼・鑑定】スキルを駆使すれば資料の真贋も見極められるから詳細も分かるだろう。

 ただ、そこまでして知りたいと思うような話でもない。


 要は5国連合に守られる人物が誰なのかが分かればいいのだ。


読んでくれてありがとう。

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