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1636 特筆すべきことがないと思ったのだけど……

 ひょんなことからオセアンが酒に弱いことが判明した。


 無理もないのか。

 神殿暮らしじゃ飲む機会なんてなかっただろうし。


 これから慣れてもらうしかない。

 ……なんかオセアンは慣れなきゃならんことが多い気がするな。

 前途多難かもしれん。


 まあ、酒に関しては無自覚なようだけど。

 念のためにスマホを使って皆に回覧しておく。

 情報を共有しておけば、不意のトラブルにも素早く対応できるだろうし。

 ショートメッセージをミズホ組に流しておいた。


 肝心のオセアンのフォローだけど、記憶にないんじゃ慣れてくれと言う他はない。

 急にぞんざいになったと思われないようにしないとな。


 オッサン1人に懇切丁寧。

 BL好きな腐女子が食いついてきそうで怖い。

 だからといって塩対応をするなどあり得ないのだが。


 もちろん、カエデもちゃんと見ないといけないのは分かっている。

 が、こちらはしばらくは大丈夫そうだ。


 5国連合の面々が冒険者風の変装していても動じた様子は見られなかったし。

 あの5人のやりとりを目の当たりにしてもオセアンのようにはならなかった。


 前者に関しては多少は驚いたようだけど、それだけだ。

 後者は昨晩の様子を見ていたこともあって受け入れている。


 オセアンとどっちが年上なんだかと言いたくなったさ。

 しかも、これで2回目だ。


 オセアンのフォローは思った以上に大変かもしれない。

 あるいはカエデの手のかからない度合いが際立っているのか。

 どちらも正解と言えるんだろうけど。


 オセアンは神殿暮らしの長さがネックになっているんだと思う。

 世間の荒波にもまれていないからな。

 些細なことで驚いてしまうのも、その影響なんだろう。

 故に想定外や突発的な事象に弱いと言える。


 1人で生きてきたカエデは、その真逆に位置する存在だ。

 オセアンと比べると、とにかく動じない。

 それだけ経験が豊富なんだと思う。

 結果的に胆力もついたんだろう。


 それは武王大祭での戦いぶりにも現れていた。

 実年齢では俺より少し上程度の年齢なのに老獪とも言えるような試合運びだったもんな。


 日常においても、あれを彷彿させる態度であるなら人生経験が豊富に見えるのも納得だ。

 そんなカエデに現状でフォローが必要とされるはずはない。

 オセアンにかかりきりになってしまうのも仕方のないところだ。


 え? オッサン相手に珍しいって?

 そうでもないぞ。

 いつものことだが自国民には過保護になってしまうからね。

 称号が[過保護王]というのは伊達じゃないのだよ。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 その後、遊びに出かけたはいいけど目立ったイベントはなく1日が終了した。

 楽しくなかった訳ではない。

 普通に遊べたと思う。

 昼食だって当初の予定通り普通に食堂で食べたし。


 味は可もなく不可もなくだったけど。

 マズくはなかったので御の字だと思っておこう。


 量も極端に多かったり少なかったりなんてことはなかった。

 皆でメニューをシェアする作戦で、色々と味わわせてもらいましたよ。

 良くも悪くも特筆するようなものは何もなかったけれどね。


 あえて難を言うなら回転率が高くて落ち着いて食べられなかったことか。

 まあ、祭りの期間中で客が行列を作っているんじゃしょうがない。


 そういう意味では普通の味で良かったのだと思う。

 マズいと食べきるのに一苦労だし。

 旨いと味わって食べる余裕がない。


 だからこそ淡々と食べて店を出られたのだと思う。

 料金は先払いだったので、これも回転率の良さに一役買っていたのかもしれない。


 店側としては食い逃げ防止が目的だったみたいだけど。

 確かに先払いなら、どんなに足が速かろうが関係ない。

 金を払わないなら食事を提供しないだけである。


 ただ、根っからの悪党はそんなことで諦めたりはしないんだけどな。

 先払いしたんなら、そのお金を戻す手を考えるだろう。

 食事の中に異物が混入していたとか因縁を付けるのは常套手段だ。


 その場合は支払った代金を戻してタダ飯にするだけではない。

 法外な慰謝料を請求してきたりする。

 悪党ってのは欲張りだからな。


 幸いにもフュン王国では衛兵が優秀である。

 そういう不届き者を見かけることは少ないようだ。

 皆無と言えないのが人口密集地での治安維持の難しさだろう。


 とはいえ西方では圧倒的に治安が良い方みたいだけど。

 だからこそ先払いという手も使えるってことだな。


 たまに揉めることもあるとランドから聞いたが、衛兵が迅速に処理するらしい。

 今回はそういうことにも巻き込まれなかった。

 称号[トラブル解決人]に引きずられることはなかった訳だ。


 いや、巻き込まれたいとは思わないんだけどな。

 今回はもう充分にトラブルに巻き込まれたし。

 規模的には小さめとか言われそうだけど。


 あんまり、こういう話をしているとフラグが立ちそうなのでパスだ、パス。

 食堂では何もなかった。

 それでいいのだ。


 観光的にも楽しませてもらった。

 露店であれこれと土産物を見たりな。

 それなりに時間をかけて吟味もした。

 どの店でも月の女神をモチーフにしたものを置いていたのには苦笑させられたがね。


 まあ、武王大祭において神事を奉納するのが月の女神だからなんだろうけど。

 そういうのばかりだと逆に他の店では扱っていないものを探してしまうのが俺だ。


 いや、訂正しよう。

 ミズホ組の皆が月の女神グッズを除外して探していたからね。

 うちには本人がいるのに買うの? って感じになってしまうんだな。


 お守りみたいなものにも効果は感じられなかったし。

 どうしても欲しいなら自分たちで作った方がってくらいの代物ばかりだった。

 細かなコメントが不要なのは言うまでもない。


 このあたりは食事より低評価ではあるな。

 可がなく不可だらけと言えば良いだろう。


 ツバイクたちアカーツィエ組が見向きもしない時点でお察しである。

 生まれながらの職人と言うべきドワーフたちが興味を持たないんだからな。


 購入している者もいたけど新弟子の指導教材にすると言っていた。

 要するに悪い見本ってことだ。


 とてもじゃないが、俺は手を出せなかったよ。

 ガブローへの土産として考えると及第点に達するものが無かったからね。


 今回はカエデとオセアンの転入手続きでガブローに迷惑をかけたし。

 事情が事情だけに冗談で粗悪品をお土産にするという手は使えなかった。


 お陰で苦労させられましたよ。

 なかなか「これだ」というものが見つかんなかったらさ。

 買い込んだ屋台飯の方がマシだと思う。


 ランドに聞いたら特産品とも言うべきものがなくて苦労しているんだってさ。

 隣国がドワーフの国というのが原因らしい。


 下手に経済力があると良い品を供給してくれる所から求めてしまうようだ。

 お金がないと自分でどうにかしようと頑張るからな。


 それなりに苦労しているのは事実のようだ。

 贅沢な悩みだとは思ったけれど。

 カーターが聞いたらなんて言うだろうか。


 歯噛みして悔しがるようなタイプではないから難しい。

 隣り合わせなら貿易の協定を結ぼうと言ったりしたと思う。


 残念ながら間に小国を挟んでいるので国境が接している部分はない。

 そうそう都合のいい話は転がっていないのである。


 俺たちの土産探しにおいてもな。

 結局、ゲットできぬままに1日が終わってしまったさ。


 帰りの足取りが重く感じたのは気のせいだと思いたい。

 実際、そんなに歩いた訳じゃないからな。

 体力がないオセアンに合わせて休憩しながらだったので消耗していなかったし。


 収穫なしはガックリくるってことだね。

 しょうがないと思っていたら……


「ハルト殿、少し良いだろうか」


 別れ際にサリーから声をかけられた。

 何か嫌な予感がするんですがね。


読んでくれてありがとう。

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