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1624 依怙贔屓する時は強引に

 カエデをスカウトした時の真相がルディア様によって明かされた。

 本人がこのことを知れば、どんな反応を見せるだろうか。

 ちょっと想像がつかないところだ。


 一般的な女子であれば恥ずかしがるか怒るかのいずれかだと思うのだが。

 恥じらうカエデというのが想像できない。


 まあ、怒るところも同様なんだけどな。

 いずれも武人のイメージが強いせいか。


 そういう意味では同じ御先祖様を持つ身であるルーリアが近いと思うのだが。

 今のルーリアとは微妙に違うんだよな。

 出会った頃のルーリアに近いというか。


 最近のルーリアはそれなりに感情表現が豊かになっていると思う。

 周囲の話では俺の前ではという枕詞がつくみたいだけど。


 有り体に言うとツンデレってことか。

 別に俺以外に対して塩対応って訳でもないんだが。

 通常時より甘々になるのは間違いないようだ。


 え? のろけ話は不要だって?

 それは申し訳ない。

 爆発しろとは言われたくないので、これくらいにしておこう。


 そんな訳で、出会った当時のルーリアを具体的に思い出すのが難しかったりする。

 故にカエデと重ね合わせて考えるのは難しい。


 それならルディア様の方が近い気がするくらいだ。

 ザ・侍ってイメージのルディア様が恥じらうところなんて想像がつかないし。


 同様に怒るところも容易に想像できてしまう。

 ラソル様相手にしょっちゅう怒っているからな。


 ただ、その部分はカエデとは結びつかない。

 恥じらう姿が想像つかないという点ではジャストミートするんだけど。


 それだけに本当に恥じらうのであれば知られたくないだろうなとは想像できる。

 俺がその立場ならプチ黒歴史が確定するだろう。


 よって本人にこの話を振るのはナッシングだ。

 カエデにしてみれば苦渋の決断だったのだと思うし。

 実にカエデらしいとも言えるのだけど。


 ぼっちであるが故に遠慮したという点には共感がわいてしまう。

 もしくは輪の中に入りづらかったと言うべきか。

 本当は入りたかったというのに。


 そこだけを切り取って考えると恥ずかしいという気持ちが先行しそうだ。

 ただ、それだけではないんだよな。

 恥ずかしさ一辺倒では説明しきれない葛藤めいた心境になっていたはずだ。


 どうにも気が引けるというか。

 遠慮のような。

 怖じ気づいてしまうような。

 ひとことで言い表しきれない様々な感情がない交ぜになっていたのだと思う。


 どうやらカエデのことを単純に女子として考えたのが間違いだったようだ。

 別にカエデが男みたいだと言っている訳じゃない。

 一般的な女子とは趣味や嗜好が大きく異なることは否定できないとは思うが。


 男女で分類する前にぼっちであるか否かを検討すべきだったのだ。

 もちろん、カエデが否であるはずもない。


 その立場で考えると見えてくる部分が広がる気がした。

 それは先に説明したとおりだ。


 おそらく、ぼっちな諸氏からは共感されるのではないだろうか。

 他のぼっちではない者たちからすれば凄くもどかしく感じるのだろうけど。


 ルディア様も、もどかしく感じたと添付ファイルにしたためていたしな。

 失礼な物言いになるが、筆頭亜神だけあってぼっちではないのである。

 そこだけはカエデと大きく異なる点だと言えよう。


 故に再チャンスを与えたくなった訳か。

 その気持ちは、まあ分からなくもない。

 俺もルディア様の立場なら同じことをしたかもしれないし。


 何にせよルディア様はカエデのことがよほど気に入ったらしい。

 いつものルディア様なら、こんな依怙贔屓はしないはずである。


 普通に気に入った相手なら一言くらいはあるかもしれないけどね。

 こういうことだから少し考慮してやってほしいとかさ。

 ところが今回は強引に押し通す格好だもんな。


 まあ、そうでもしないとカエデも断り続けるであろうとは思うけど。

 じっくり考えれば何か手はあっただろう。

 回りくどいかもしれないが、その方がルディア様も納得したと思う。


 結果を性急に求めるのはらしくないもんな。

 そういうことをするのはラソル様の方である。

 つまり、それくらい考える余裕がなかったってことだ。


 想像もつかないほど忙しいみたいだな。


 そのくせ目をかけているカエデのことはなんとかしてやりたいということのようだ。

 今回の行動はジレンマの末に出した結論ってことになるのかね。

 どれほどカエデのことを気に入っているかが容易に分かろうというものである。


 似ているところが多いせいなんだろうな。

 ストイックなところとか。

 寡黙で不器用な部分があったりとか。


 雰囲気が侍チックだったりもするな。

 カエデは侍の子孫な訳だけど。


 何にせよルディア様好みではあるか。

 滅多なことではしない依怙贔屓をしているんだから。


 こう言うと叱られそうだけど。

 依怙贔屓ではなくて加護を与えているだけだなんて言われそうである。


 何にせよ、俺は指示通りに動くのみだ。

 まあ、スリープメモライズの魔法を使うだけの簡単なお仕事なんですがね。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 そんなこんなで何事もなく翌朝になりました。

 起きた途端に顔色を悪くしている約2名の人たちがいます。


「ルディア様から伝言だけど」


「「っ!」」


 俺の一言だけで飛び上がって土下座モードに突入である。


「出たっ、ジャンピング土下座っ」


 マイカは暖気に喜んでいる。

 こっちは申し訳なくて気が気じゃないってのに。


 とりあえずマイカは放置しておこう。

 俺が土下座されているみたいで居心地も悪いしな。

 こちらをどうにかするのが先決だ。


「ここにはルディア様はいないから土下座は勘弁してくれないか」


 これくらいで頭を上げてくれるなら苦労はしない。


 この後、どうにか説得して2人を正座の状態にまで持っていった。

 それだけのことに数分以上を要するとか先のことを考えると頭が痛くなりそうだ。


 肩身が狭そうな感じで身を縮めているしな。

 それを見ているだけで申し訳なくなってくる。


 本音を言えば逃げ出したいところだ。

 が、そうもいかない。

 ルディア様にすべてを任されているしな。


 それにここで投げ出すのは目の前にいる2人にも悪い。


 逃げれば、きっと罪悪感が怒濤のごとく押し寄せてくることだろう。

 そんなものに押し潰されたくはない。

 ならば最後まで任された仕事をやりきるのみだ。


 俺も正座して2人と向き合った。

 まずは……


「済まなかった」


 深く頭を下げる。


「いえっ、そんな恐れ多いっ」


「謝っていただくようなことではないと思いますが」


 オッサンもカエデも恐縮しきりである。

 恐れ多いというのは俺がミズホ国の国王だと知ったからだろう。


 カエデの言は決してそんなことはないと言わざるを得ない。

 こっちが恐縮したくなるくらいなんですがね。


「いや、謝らねばならないだろう。

 2人の許可を得ずに強引な真似をしてしまったのだからな」


 既に2人はミズホ国民である。

 オッサンにもカエデにも了承を得てはいないというのにな。

 なじられても文句は言えない。


 謝るべき理由はここにある。

 間違っても必要ないとは言えない。


 そして謝ったからと言って許される訳でもないだろう。

 責任はルディア様にあると思われるかもしれないが、俺にもある。

 2人に確認をとらずに加担した訳だからな。


 まずは謝った。

 まあ、オッサンもカエデも謝罪を欲してはいないみたいだけど。

 筋は通さないとな。


 で、次にすべきは選択肢の提示だ。

 これはルディア様からの指示に含まれている。


「強引なことをしたが、これを断ることもできる」


「「っ!?」」


 2人が同時に目を見開いた。


「その場合は引き留めたりしないことを約束しよう。

 この約束はルディア様からの指示によるものだとも言っておく」


 つまり、筆頭亜神の名にかけて2人を謀ることはないということだ。


読んでくれてありがとう。

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