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162 残念美女はお呼びじゃない?

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。

 本気で有用な人材を求めて召喚したのに、やって来たのはフハハハハと大声で笑い続けている残念美人。

 出てくるなりこれじゃあ斥候向きとは言い難い。


「あー、来てもらったところ悪いんだけど還ってくれる?」


 そのまま送還することも可能なんだけど、先に一声かけた。


「なんじゃと!?」


 黒髪の美女が驚愕の表情で固まってしまった。


「俺が必要としてるのとは掛け離れてるんだよ」


 人前で恥ずかしげもなく高笑いできる時点で頭が良さそうには見えないもんな。

 魔法を使いながら登場したり高笑いしたりと目立ちたがりなのは嫌でも分かるし。

 やってもらう仕事の都合上、目立つのは厳禁だからなぁ。


 まあ、強くはあるのか。

 演出用とはいえ強めの制限をかけた魔方陣の中で苦もなく魔法を使ってみせるくらいだから相当な実力者のはず。


 他が残念すぎて使い物にならないけどね。

 色気はとびきりあるけど、そういうものは要求していないし。

 着物を着崩して人形を想起させる白い肌を露出するのはだらしないとしか思えない。


「そういうことだから還って」


 言いながら魔方陣の術式を反転させて軽く魔力を流したのだが……


「嫌じゃぁ───っ!」


 俺の断りの言葉に拒否の意を示す謎の美女。

 なんか泣き始めてしまったし送還がキャンセルされましたよ。


「主の魔法が止められただと……」


「魔方陣の封印は破られていませんが……」


 ツバキやハリーが唖然としている。

 俺もちょっと驚かされた。

 凄いのを呼んでしまったようだ。

 子供みたいに泣きじゃくってるせいで凄みは欠片も感じられないけれど。


 どうしたものかね。

 送還は拒否されるし大泣きされるし。


「還りとうないのじゃ───っ!」


 寝転がってジタバタと手足を振り回して更にヒートアップして泣きじゃくる。

 こうなると、だらしない感じも子供っぽく見えてきて俺が一方的に悪いように思えてしまう。


「そんなこと言われてもなぁ」


 割と強力な存在だし、油断していると魔方陣を突き破って来かねない。


「もう、あんな牢獄みたいな結界で囚われの生活は嫌じゃ─────っ!!」


 ちょ・っ・と・待て。

 いまシャレにならないことを言ったよな、コイツ。


「主よ、聞き捨てならん言葉を聞いた気がするのだが」


「気がするんじゃなくて現実だよ」


 どこかの結界に囚われていたのを召喚してしまったのかよ、俺。

 本気を出したら予想の斜め上でしたよ?


「凄いどころかヤバいのを呼んじゃったみたいだなぁ」


 見た感じ悪党って感じはしないんだが。

 強すぎるのに頓着せず振る舞っていたら周りに被害が出て封印されたってところか。


「如何にするのだ?」


「そこなんだよなぁ」


 ギャーギャーと泣きわめくのだけでも何とかしたい。


「泣き止まんと本気で送り還すぞ」


 ピタッ


 一瞬で止まってしまった。


「大人しゅうするから許してたもれ」


 一度泣き止むと嘘みたいに静かになったが、今の泣きっぷりのせいで災害級の大雨を降らせたのが封印されていた理由とかじゃあるまいな。

 封印で止めてるけど目の前の駄々っ子美女にはそれだけの力がある。


「何が原因で封印されていたんだ?」


「妾は知らぬ。元の姿で昼寝をしていただけじゃ。気付いたら陰気くさい場所に閉じ込められておった」


 本当に心当たりがないようだ。

 ならば別のアプローチで調べるしかあるまい。

 とはいえ正体を見極めて間接的に推測するしかできそうにないんだけど。

 そういう訳で【天眼・鑑定】スキルの出番だ。


[シヅカ/竜種・天龍/自宅警備員/女/不明/レベル312/残念美女]


 名前が和風だが、これはツバキもだから日本に由来するとは限らないか。

 種族が龍ってことは細長いタイプの東洋龍みたいなのが本来の姿みたいだな。

 この姿で眠っている間に封印されたと。


 でもって職業欄だよ。

 自宅警備員って、オイッ!

 強めにツッコミを入れたら解説が開いた。


[外に出られず連絡を取ることもできず寝ることしかできなかったが故のジョブ認定]


 適切な語彙がないからということらしい。

 ニートにならなかっただけマシかもしれないが神様のシステムも変な言葉を知っているな。


『RRRRRRRR』


 お、このタイミングで脳内スマホの電話か。

 発信者は……非通知かよ。

 こういう質の悪そうなことを仕掛けてくるのはラソル様だと思うのだが嫌な予感しかしない。


『もしもし?』


 出ないと延々とコールされそうな気がしたので出てみることにした。


『ハーロォウ』


 第一声は英語なんだけど、発音は日本人のそれだった。

 ちょっとふざけた感じはあるが声は妙齢の女性という感じである。

 でも、ベリルママじゃない。


『誰?』


『初めましてかな、ハルトくん』


 俺のことを知っているのに知らない声だ。


『私はセールマールの管理神エリザエルス。エリーゼと呼んでくれたまえ、フハハハハ』


 自己紹介で笑い出すとか今日は厨二病祭りでも開催されてるのか?

 それ以前に俺が元いた世界の管理神が何の用なんですかね?


『はあ、初めまして。今取り込み中なんで後にしてもらえませんか』


『あらぁ、せっかちねえ。そんなことだと女の子にもてないわよ』


 余計なお世話だ。


『いま余計なお世話って思ったでしょ、でしょ』


 なんか面倒くさそうな人だ。

 嬉しくないけど嫌な予感は的中した。


『思っちゃダメですか』


『あぁん、ストレートすぎぃ』


 いちいち癪に障るような言い方をしてくる神様だ。

 だが、役所で鉄仮面とあだ名された俺のスルースキルを舐めてもらっては困るな。


『暇じゃないんで単刀直入にお願いします』


『ちぇー、つまんない』


 通じないと悟ったのか明らかにテンションが下がった。


『まあ、いいわ。あんまりからかうのも可哀相だし』


 やっぱりかい……


『短刀を直輸入でお願いされたから結論から言うわね』


 日本語がおかしいが、断じてツッコミは入れない。


『ハルト、その子の面倒を見なさい』


 ふざけた入り方をしたのに本題で威厳バリバリの命令調。

 しかも神様だから抗えない響きがあった。


『理由を聞いても?』


 理由くらいは聞いておかんとな。


『可哀相だから』


 軽すぎる一言が命令に込められた強制力を打ち消した。

 何してるんだ、この神様。


『電話を切って天龍を送還します』


『ま、まあまあ、話は最後まで聞こうよ』


 俺の警告にエリーゼ様は慌てた様子で引き止めてきた。


『聞きましょう』


 そこからは、おふざけなしで説明がなされた。

 天龍シヅカが封印されたのは大昔の日本において大きな地震を起こしたからだそうだ。


『日本の龍だったとは……』


 道理で向こうの管理神が接触してくる訳だ。


『君が気にするのはそこかい?』


『地震の原因がアレでは龍に悪意がなかったのは間違いないでしょう』


 アレというのは、本来の姿で寝ている際に寝相が悪くて地面を尻尾でバンバン叩きつけていたことだ。

 それだけで大地震が起こるとは龍は半端ないね。


『断言するじゃないか』


『可哀想だと言ったのは誰ですか』


 俺自身の目で見てもシヅカは悪党ではないと感じたしな。


『アハハ、そうだったわね』


 もちろんすべての地震の原因となっていた訳ではないが、そんなことが分かるのは神様くらいのものだ。

 そんな訳で大昔の神官たちが集まって大儀式を行い厳重にシヅカを封印した。

 封印は破壊しようにも力を受け流して世界間の隙間に放出する特殊仕様。

 龍であっても壊せず自力で異世界へ行くことができないため脱出不能に陥ったという。


『もしかして送還すると元通りってことですか?』


『察しがいいね』


 対象がいなくなっても結界が維持されるとか執念深いにも程があるだろう。

 とはいえ異世界間の転移についてまでは考えられていないから召喚できた訳だ。


『で、なんで俺に押しつけるんです?』


 要は召喚を完了させれば良いだけのこと。


『その魔方陣を解除したら自動的にハルトの僕になっちゃうじゃない』


 そこから契約をキャンセルすれば裁判なしで無期の禁固刑となった状態からは解放されるはず。


『高位の龍はひとたび主を決めたら死ぬまで絶対に変えないのよ』


 頑固者なようだが俺に縛り付ける必要は……


『解放したら自ら命を絶っちゃうわね』


 嫌なことを聞いてしまった。


『まあまあ、その子は本来の姿の時の寝相が悪いだけだから』


 そこまで聞かされてしまうとな。


『わかりました。責任を持って天龍シヅカを引き受けます』


『あらぁ、聞き分けがいいわねえ。それじゃあ後よろしくー』


 そう言うなり回線を切断されてしまった。

 唖然とするしかない。


 とはいえ、いつまでも放置している訳にもいかんだろ。

 パチンと指を弾き鳴らして魔方陣を消し召喚を成立させた。


「主っ、それは!」


 ツバキにしてみれば俺が急に方針を変えてしまったようにしか見えないのだから驚き慌てるのも無理はない。


「セールマールの管理神から頼まれたからな」


「……それはまた凄い相手から頼まれたものだな」


 ツバキは疲れたような表情を見せながらも納得した。


 一方で天龍シヅカは訳が分からないという顔をしている。

 召喚契約が完了したこともそうだが覚えのない知識が頭に入り込んでいることに困惑しているのだろう。

 召喚時に必要最低限の知識が得られる術式があるお陰だがシヅカは知る由もない。


「元いた世界の神様に感謝するんだな」


 シヅカに声を掛けると困惑の表情を向けられた。

 行き成りこんなことを言われても訳が分からなくて当然か。


「お前の境遇を哀れんで、わざわざ俺に事情を説明してくれたんだよ」


「なんと……」


 天龍シヅカは驚愕に目を見開き、そして涙を流し始めた。


読んでくれてありがとう。

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