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16 狂ったゴブリンが大量にポップしています

改訂版バージョン2です。

 ミズホ国の北端近くにある広大な森林地帯。

 大陸にある大森林地帯からすれば猫の額ほどもないけれど。

 そういう場所でゴブリンが敷き詰めたかのようにウジャウジャと蠢いていた。


 密集なんて生易しいもんじゃない。

 数十万匹はいるからな。


 そういう状況下で俺はゴブリン駆除に勤しんでいた。

 ベリルママから電話連絡を受けて迎撃のために文字通り北の果てまで飛んで来たのだ。


「ほいさっさと」


 ノリの軽い掛け声とは裏腹に右正拳突き&背面への左肘打ちが間髪を入れずに炸裂。

 前後から飛び掛かってきたゴブリンが吹き飛んでいく。


「頸骨骨折に内臓破裂っと」


 一撃必殺で終わる。

 ゲームでも定番の雑魚魔物だから当然か。


 先程から死体の山が幾つも積み上がるほど倒しているが終わりが見えない。

 これだけ倒しているとワンパンで倒してもフラストレーションが溜まっていく。


 わざとテンションを下げて掛け声を軽くし、苛つきを抑制しているほどだ。


「そらっ、次はこっちだ」


 山が積み上がったので雪崩を起こす前に移動する。


 ポコパコと木の棒で叩いてくるが面倒だから回避もしない。

 痛くも痒くもなければ躱すのさえ馬鹿らしくなる。

 レベル1024のステータスにものを言わせているから当然なんだが。

 おかげで熟練度が10程度だった【剛健】はMAX状態だ。


 そんな調子で片っ端からお掃除中である。

 こんな状況でもゴブリンどもは逃げ出さない。


 どいつもこいつも狂乱の状態にあるからだろう。

 子供ほどの背丈の醜い怪物が飢えた肉食獣を思わせる形相で迫ってくる。


「迫力不足なんだよっ」


 飛び込んできたゴブリンを残像が残るほどの連脚で片っ端から蹴り飛ばす。

 それでも鬱陶しいほど押し寄せてくる。


「数の多さだけは一級品だなっ」


 そんな訳で入場制限を実施中だ。

 自分を中心に半径5メートルほどの所に特殊な結界を作ってある。

 透明だが柔らかく分厚いため俺の周囲だけは鮨詰めにならずに済んでいる。


 まあ、放置すれば外の満員電車状態と同じになるのは時間の問題だが。

 故に侵入者には有無を言わさず死出の旅に出てもらっている。

 今も飛び掛かってきた3匹を蹴り上げて結界の外へ飛ばした。


「有象無象がっ」


 次から次へと蹴り出していくが、それでも押し寄せてくる。

 既に千を越えるゴブリンどもを吹っ飛ばしているのだけれど。

 少しも減ったようには思えない。


「忙しいったらねえな」


 ぼやきながら次々と蹴り出していく。

 山のように湧いているかのようだ。


『昨日の海竜戦の後に【格闘】の熟練度をカンストしておいて良かったー』


 血を流さず処理できているのは、そのお陰である。

 でなきゃ今頃はゴブリンの体液でドロッドロに汚れているさ。


「ウンザリだぜ」


 次のお客さんが左右から同時に飛び掛かってきた。

 知能が獣レベルで我を失ったコイツらに挟み打ちで連携なんてできるはずもないのだが。

 しかも跳躍して上から攻撃してくるぞ。


 数を相手にしていればこういう偶然も発生する。


「ならば相応の迎撃をしてやろう」


 奴らの高さに合わせ開脚しつつ同時に回し蹴りを炸裂させる。

 変則の旋風脚だ。


「あ、勢いつけすぎた」


 ただでさえイライラしているのに汚れるのは勘弁してほしいところ。

 故に直撃した直後の手応えから瞬時に蹴りの加減を切り替えた。

 どうにか頭部粉砕のスプラッタだけは回避。

 その分、挟撃してきた奴らは弾丸のように勢いよく吹っ飛んでいったが。


「やっちまったー」


 派手に飛ばしたせいで結界の外で巻き込まれる奴らが多い。

 今ので百匹近く仕留めたのは間違いない。


 しかも木にぶつかったゴブリンは爆散。

 実に汚らしい結果となった。


「いかん、後で綺麗にしておかないと」


 今ので立ち木も折ってしまった。

 せっかく周辺被害をゼロに近づけるべく頑張っていたというのに。

 実にイラッとする。


 が、ここでキレてしまうのは回避せねば。

 数十万匹を相手にプッツンしたら周辺被害がバカにならない。


「今日中に終わんねえだろ、これ」


 撃破カウントは既に諦めた。

 そんなことをしてもイライラが募るだけだ。


 え? 1人で相手する数じゃない?

 そんなのは百も承知だ。


 けど、狂乱したコイツらを放置すると国中が荒らされてしまう。

 終わりの見えないゴミ掃除に辟易しても放っておけるはずがない。


 そもそも、元を正せば1年前に俺がぶっつけ本番で家を作った錬成魔法が原因なのだ。

 あのときロスした魔力が地脈を通じて拡散した結果が現状に繋がっている。


 まず北にあるダンジョンの迷宮核と通称される中枢部分に拡散した俺の魔力が到達した。

 迷宮核はダンジョンの制御部であり製造工場でもある。


 通常時は周辺の魔素を吸い上げながら魔力に変換しダンジョンを維持している。

 魔物を作り出すのも、その一環だ。

 余剰が出た場合はダンジョンの外へ排出され野良魔物となる。


 外部から魔力を得た場合はダンジョンが拡張されるのが通常だ。

 その場合はダンジョンから弱い魔物があぶれやすくなり周辺に被害をもたらす。


 今回は迷宮核が異常活性して暴走。

 魔力を異常なまでに溜め込み限界を迎えた1年後に爆発した訳だ。

 ダンジョン全体ではなく迷宮核だけがが吹っ飛ぶのだが。


 ダンジョンは単なる地下構造物となり数多の魔物を外へと排出する。

 【諸法の理】によると、その数は数百から数千程度なんだとか。

 それだけでも西方では多大なる被害を出すだろう。


『数もさることながら暴走は魔物を狂乱状態にしてしまうからなぁ……』


 今回は俺の魔力が影響したせいで狂乱したゴブリンが数十万匹という結果になった。

 桁が違いすぎる。


『これが西方で発生してたらどうなっていたことか』


「考えたくもないな」


 つくづく島国を移住先にして良かった。


 とはいえ、それで残された問題が片付くわけではない。

 いくら始末しても終わらない。


『いつ終わるんだよ』


 殲滅するだけでいいなら時短は可能だ。

 例えば広域殲滅魔法とかな。


 が、火魔法を使った日には森林火災は免れない。

 水や風の魔法にしたって延焼で被害が拡大しないだけで結果は似たようなものだ。

 後始末が大変になる。


『せっかく建国したのに自分で国のものを壊してどうすんだ』


 ゴブリンどもにも壊させない。

 けれども終わりが見えない。


「やってらんないぜ」


 おまけに仕留め終わっても死骸は消えてくれない。

 放置すりゃ腐敗して悪臭を放つだろう。

 アンデッド化する恐れもある。


 もう一度この数のゾンビを相手に戦えとか言われたらキレるな、きっと。

 グチョグチョで最初から汚らしいし。

 なにより鼻の曲がる匂いもまき散らしてくるだろう。


 狂ってるだけのゴブリンを相手にする方がよっぽどマシというものなのだが……


「面倒くせー」


 ぼやきつつ無理矢理テンションを下げながらのサッカーボールキック。

 顎の骨を砕かれたゴブリンが結界の外へと飛んでいく。

 地面に頭から落下して首の骨が折れた。


 が、それを悠長に眺めていられる訳ではない。


「次から次へと!」


 裏拳で右から回り込んできたのを仕留め。

 背後から襲ってきた奴を肘で跳ね上げる。

 正面から来たのは回し蹴りで弾き飛ばした。


「鬱陶しいわっ」


 爽快感はない。

 力加減に細心の注意を払っているからだ。

 ゲームの作業プレイよりもチマチマしていてイライラする。


「脆弱すぎるんだよっ」


 アッパー、膝蹴り、旋風脚。

 流れを意識してみるが、あまり効果はない。

 これまで抑制していた分だけイライラが膨れ上がっていた。


「限界だぁ─────っ!」


 終わりが見えない作業ってのが良くない。

 フラストレーションを加速度的に蓄積させる。


 そして俺の努力を無視するようにゴブリンが仲間の死体を踏みつけた。

 あそこでもここでも至る所で。

 狂っているからこそ頓着しないのだろう。


 次々と殺到すれば損壊し血飛沫が飛んだりもする。

 運の悪いことに俺に向かって飛んでくるんだよ。

 汚れると分かっていて回避せずそのままでいるわけがない。


「汚えんだよ!」


 毒突きながら血飛沫を躱した。

 汚れの大本からもすぐに離れる。


「この野郎ぉ……」


 爆散の失敗よりもイラッとした。

 いくら俺が注意を払っても奴らによって汚染が拡がってしまうからだ。


『我慢に我慢を重ねていたというのにお前らは俺を嘲笑おうというのか』


「上等だ」


 俺は静かにブチ切れた。


読んでくれてありがとう。

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