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1574 試合が終わると評価が変わる?

 カエデの対戦相手が大技を繰り出してきた。


「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」」」


 観客たちも派手な技が繰り出されたことで一気に盛り上がる。

 スライディングからブレイクダンスで見るような動きへと転じたのだ。


 ウインドミルと言うんだったか。

 生憎とそのあたりの知識は皆無なので合っているのかは分からない。

 真似るつもりがあるならともかく、そんなつもりはないので調べるつもりもない。


 とにかく、その回転力を使ってグルグルと回りながら伸び上がる。

 ついには逆立ち状態となった。


 そして片手で逆立ちを維持しつつ回転を止めずに上から蹴り下ろしてくる。

 なかなかエグい技だ。


 殺意は感じないものの威力はそのレベルにある。

 回転の勢いはそのままに上から振り下ろすんだからな。


 カエデを相手に躊躇うのは御法度だと考えた末の用意していた奥の手だろう。

 おそらく回避しようとして回避しきれないぐらいに想定しているのではないか。


 大きな一撃が入ればダメージで動きが鈍る。

 そこに勝機を見出すしかなかった訳か。


 目論見通りに行かず反則負けになることも覚悟の上だと思われる。


「無茶するわね」


 呆れたようにマイカが嘆息した。


「それだけカエデさんを信頼してるんじゃないかな」


 ミズキが対戦相手をフォローするかのような発言をする。

 どうやら俺と同じようなことを考えていたようだ。


「だとしても、一か八かでしょうに」


 マイカは渋い表情をしたままである。

 カエデが技を食らうとまでは考えていないようだが。


 それでも相手が確実にそれを見越しているとは言えまい。

 あの男にそこまでカエデの能力を見極める目があるとは思えないからな。

 険しくさせた表情の中に不安が垣間見えていたし。


 であるにもかかわらず技を強行したことにマイカは憤りを感じているのだろう。


 当たるかどうかではないのだ。

 他人の命を担保に賭をするのが許せない訳だからな。


 まあ、気持ちは分かる。

 ミズキも同感なんだろう。


「それは否定できないけどね」


 渋めの苦笑いで返事をしていた。


 で、その会話がされている間に相手は転がされていた。


 跪座の状態でカエデが素早く間合い深くへ入り込んでからは電光石火であった。

 相手の回転を利用した払い流しで蹴りのベクトルを反転。

 そして腰から床に落とし込んでいく。


 両手を使った大技だ。

 あまり合気っぽく見えないかもしれない。


 座しての技自体が珍しいしな。

 少なくとも合気に縁のない者にとっては。


 ドスン


 投げ落とされた瞬間、鈍い音がした。

 もちろん大半の観客には聞き取れない程度の大きさではあるんだけど。

 【遠聴】スキルを使えば、そのあたりは問題ない。


「重そうなダメージが入ったニャー」


 ミーニャが見てられないと言わんばかりに痛々しいものを見る顔をしながら言った。


「しばらく動けないかもなの」


 ルーシーも同じような顔をしている。


「かもじゃなくて、動けないと思うよ」


 ツッコミを入れるシェリーもだ。


「「だねー」」


 同意したハッピーとチーは割と平気そうだけど。


「勝負あったー」


 マリカもそんな感じだ。

 子供組と違うのは、この試合が終わったかのようにいっている点だろう。

 対戦相手は場外に落ちた訳ではないのだ。


 それでも勝負ありと判断した根拠は投げのダメージにある。

 固い床に上から落とされるとシャレにならないからな。


 しばらく動けなくなるくらいは当たり前だ。

 カエデが加減していなければ、骨折や出血もあり得た。

 それだけ相手が無茶な攻撃をしていた訳だが。


 ここはカエデの技の冴えを称賛しておこう。

 瞬時の見極めで勢いを殺しつつ、ある程度は力が分散するように投げていたからな。


 対戦相手はピクリとも動かなかった。

 グッタリしているのは動き回った疲れよりもダメージの重さ故だろう。


 それを見たカエデがスクッと立ち上がって主審の方を見る。

 視線が合うと誘導するように相手の方へと視線を向けた。


「っ!」


 ハッとした主審が対戦相手に駆け寄る。

 しゃがみ込んで魔力を流し始めた。

 相手の状態を診断しているのは明白だ。


 その様子に観客たちがざわめき始める。


「どうなってるんだ?」


「分からん」


「何がどうなったんだか」


「あの姉ちゃんが罠にかかって攻撃されたんじゃなかったのかよ」


「そこから反撃したんだろ」


「だと思うが……」


「どうやったかが分からん」


「あっと言う間だったからなぁ」


 どこもかしこも首を捻るばかりの様相だ。

 となれば主審がどうするのかを見守る他はない。

 会場が徐々に静まり返っていく。


 そして主審がおもむろに立ち上がった。

 両手を挙げ交差させるように数回振る。


「それまでっ」


 試合終了だ。

 後は審判団の判定待ちである。


 他の武術大会ならカエデの勝ちがコールされているんだろうけどな。

 このあたりは武王大祭の間怠っこしいところであろう。

 これがあるから無茶をする選手が出にくいのも事実なので仕方のないところだ。


 この後、審判団の確認が入念に行われた。

 そしてカエデの勝ちが確定する。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 カエデの試合は好評のうちに終わった。

 次の試合までの休憩時間においても余韻に浸る観客たちは多い。

 そういうこともあって、とある集団にスキルを駆使して注目してみたのだが。


「さっきの試合、思ったより白熱したよな」


「おう、まったくだ」


「まさかここまで頑張るとは思わなかったぜ」


「あの兄ちゃんも準決勝に残るだけはあったってことだ」


 カエデよりも対戦相手の方が話題の中心になっているようだ。

 勝って当然と思われているカエデよりも健闘した相手の方が印象には残るのかもな。


「今回は運がなかった」


「3人も化け物みたいなのが出てきたんじゃしょーがねえべ」


「アイツらがいなきゃ優勝も狙えただろうに」


「いやいやいや、そいつは言い過ぎだろう。

 超速いのとかマッチョとかいたじゃねえか」


 なんだか懐かしささえ感じるような者たちの話題まで出てきたぞ。

 とはいうものの、彼らのことを知ったのはつい先日だ。

 本戦出場が決まるまでは知らなかったからな。


 武王大祭以外のところで色々とあったせいだろう。

 今回はトラブルだらけだったし。

 規模的には小さいものばかりだったけど、連続すると鬱陶しいったらありゃしない。


 まあ、本来であれば充分に大きな事件と言えるものばかりなんだが。

 国家を揺るがしたり国々を跨ぐようなものと比べれば可愛いものというだけのことだ。


 泥棒貴族に関しては、そんなに小さいとも言えないか。

 ハイラントが今も対応しているから、こんな話を聞かせると泣かれるかもしれん。


 なんてことを考えている間も観客たちの話は進んでいる。

 そのあたりは【多重思考】スキルで聞き漏らしてはいない。

 スピード派やチョビ髭のガチムチオヤジが話題に上ったところもバッチリだ。


「おおっ、アイツらも強かったよな」


「本戦で勝ち上がるだけはあったぜ」


「そうなると兄ちゃんには厳しいか」


「奴らにも勝てる気がしないもんな」


「どうだろうな?

 俺は別格の3人がいなけりゃ兄ちゃんにもチャンスはあったと思う」


「そうかぁ?」


「勝ち目は薄いと思うぞ」


「蹴りの達人もいたしな」


 確かに蹴り男のことも忘れてはいけない。

 最後は自爆に近かったが、決して弱くはなかった。

 相手が悪かっただけである。


「だよなぁ」


「速いのとかマッチョや達人が先に潰し合う展開もあり得るだろ?」


「なるほど、そういやそうだな」


「あの兄ちゃんはクジ運が良かった訳だし」


「なるほど、ここまで優勝候補とは当たってこなかったっけ」


「言われてみれば……」


「クジ運なら今大会最強だったかもな」


「違えねえ」


「そうか? あの姉ちゃんと当たったじゃないか」


「おい、なに寝ぼけたことを言ってるんだ」


「そうだそうだ。

 準決勝に残った連中が誰だか思い出してみろ」


「どのクジも当たりなのにハズレを引くとか不可能だろうが」


 上手いことを言うものだ。

 これが当たり付きのアイスキャンディとかだったら大変なことになるけどな。

 当たりくじの無限ループである。

 生憎と対戦相手にとっては嬉しくない当たりくじなんだが。


「……そうだった」


 疑問を抱いていた男は赤面するのみであった。


 なんにせよ、カエデの対戦相手は戦った後に評価を上げるらしい。

 そのうちジンクスとして語られそうである。


読んでくれてありがとう。

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