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1549 またしてもD

「今の方も王族ですか……」


 力なくカエデが聞いてきた。


「ツバイクのことだったら、そうだぞ。

 ドワーフの国、アカーツィエ王国の王太子だ」


「っ!」


 カエデの表情が強張った。

 とはいえフリーズ状態には至らない。

 どうにか耐えたって感じではあるがな。


 多少は慣れたのだろう。

 そうであってほしい。


 たびたび固まられてしまうと俺の罪悪感ゲージが振り切れっぱなしになりそうだし。

 メンタルがオーバーヒートでボロボロになるのは勘弁願いたい。

 現状でも充分にゲージは高止まりなんだが。


 それはカエデも同じ気持ちなんじゃなかろうか。

 度々、心臓を直撃するようなショックを受け続ければね。


「お忍びで来ているから普通に接してくれると助かる」


「は、はあ……」


 我ながら無理難題を言っていると思う。

 落ち着く時間も必要だろう。


 という訳で待つことしばし。

 カエデが小さく溜め息を漏らした。


「賢者というのは伊達ではないのだな」


 しみじみした感じで言ってきた。

 そんな風に言われると面はゆいものがある。


 ただし、嫌な予感も同時に感じたのだが。

 先程から感じていたのが、より具体的になったようなと言った方が正しいだろう。


「2ヶ国の王族と同じ場に居合わせることになるとはな」


 やはり誤解している。

 サリュースたちのことは護衛や側近だと思っているのだろうか。

 ハイラントとはタメ口だったのに。


 そこは正体を悟られないように芝居をしているとか解釈してそうな気はする。


 あと俺たちもミズホ国の王族なんですがね。

 王だけでなく王妃が全員いる状態だ。

 高級な宿屋とはいえ、普通では考えられないだろうしな。


 ちなみにトモさん夫婦も王弟夫妻ということで王族ということになっている。

 まあ、義弟なんだけど。

 細かなことは気にしてはいけない。


 ……カエデは気にしそうだ。

 これを明かしたらどうなるやら。

 ちょっと考えるのが怖い。


 少なくとも現時点でバラすのは危険だ。

 長時間、固まってしまいかねない。

 当面は黙っていた方が無難ということか。


 しかしながらエリスのような勘の良さがあれば自分で気付いてしまう恐れもある。

 そうした場合にどうなるかは読み切れない。

 ただただ嫌な予感が膨れ上がっていくだけだ。


 こんなんじゃ泥棒貴族を後先の考えられない愚か者とバカにはできんな。

 情けない限りである。


 で、俺が葛藤する間もカエデは話を続けていた。


「おまけに、この国の王様とは直に話をさせてもらったし」


「事情聴取だけどな」


 思わずツッコミを入れてしまった。


「何を言うのだ。

 直答を許されたのだぞ」


 そういう考え方もあるようです。

 というか、そのあたりの常識が抜けてましたよ?


 今まで各国の王様たちと普通に話をしていたせいだと思う。

 最初に話をした王様ってガンフォールだしな。


「そのくらいで舞い上がってどうするのよ」


 そんな風にツッコミを入れたのはレイナであった。


 が、俺はマイカの方を見た。

 先を越されたって感じで悔しがっている。

 思った通りだ。


 たまにはいいんじゃないかと思うんだがな。


「せやせや、レイナの言う通りやで」


 アニスが加勢に入っている。


「王様やったらここにもおるやん」


「ぶはっ!」


 思わず吹いたさ。


「ちょっ、おまっ……」


 しばらく伏せておこうと思ったのに台無しだ。


「あれ、言うたらアカンかった?」


「何にも聞いてないわよー」


 まあ、皆にそうするよう通達を出していなかった俺が悪いんだろうけど。


「は?」


 カエデがキョトンとした顔になった。

 数拍後、顔色が一気に悪くなっていく。


 血の気が引いた顔をギギギと擬音が聞こえそうな動きで向けてきた。

 まるで壊れかけのブリキのおもちゃのような挙動だ。


 そしてカエデと目が合う。

 不安そうな探るようなそんな視線が送られてきた。

 願わくば想像通りであってほしくないと言わんばかりの顔だ。


「あー、うん、俺も王と呼ばれる身だったりするんだな、これが」


「ミズホ国の君主」


 ボソリとノエルが補足した。

 あんまり意味があるとは思えないけどな。

 大事なことだから2回言いましたのバリエーション的な感じにはなったかもしれないが。


「………………………………………」


 カエデは無反応だ。

 完全に時が止まったかのように動かない。

 目の前に手をかざしてもダメ。


 ハッハッハと笑って誤魔化してみてもダメ。

 ……無意味に笑った分だけ虚しくなっただけだ。


「何やってるんですか」


 レオーネに呆れられてしまった。


「いや、フリーズされるとどうしようもなくてな」


「それで投げ遣りになったということですか」


 エリスにはクスクスと笑われてしまった。

 事実なので否定しようがない。


「しばらく待つしかないのではないでしょうか」


 この状況でのマリアの真面目な意見は厳しいものがある。

 渾身のボケが滑った上にツッコミを入れてもらえずスルーされたような気分だ。


「容赦ないわね」


「いやいや、あれで気遣ってるつもりだから」


 ABコンビがマリアの発言を解説している。


「だから容赦ないんだって。

 新型の天然って言えばいい?」


 アンネが妙なことを言い出した。


「新型の天然って何よ?」


 ベリーが問うのも無理はない。


「それに自分で言い出しておいて、どうして疑問形なのさ」


 更には連続してツッコミを入れているし。


「だって適当な単語を思いつかないんだもん」


「そこは普通に天然って言えばいいじゃん」


「微妙に違うでしょ、微妙に」


「言いたいことは分からなくもないけどさ。

 2回も繰り返して言わなきゃならないほどこだわる必要ある?」


「うぐぐぐぐっ」


 畳み掛けるように言われたアンネは悔しそうに唸っていた。


「まあまあ、2人とも」


 そこにクリスが参戦する。


「マリア姉さんは真面目だから結果が天然っぽくなってるだけじゃないですか」


 それではダメなのかと漫才状態になっていた2人に提案している。


「「……………」」


 アンネとベリーはポカーンと口を開いてしまっていた。

 よもや天然なクリスにそんなことを言われるとは思わなかったのだろう。

 それで腹を立てたりするようなことはなかったが、唖然とはしたってことだな。


 とはいえ、そこまで衝撃を受けた訳でもないのだろう。

 カエデのように固まりっぱなしではなかった。


「驚かさないでくださいよぉ」


 ベリーが苦笑しながらも抗議している。


「あら? そんなに驚くことだったかしら」


 ベリーが再び苦笑いして肩をすくめた。

 元祖天然少女がここにいるから仕方ないってところか。

 同意を求めて横を向いたベリーだったが、次の瞬間には怪訝な顔をしていた。


 アンネが真剣な表情で考え込んでいたからだ。


「マジでどうしちゃったのよ?」


「それよっ!」

「どれよっ!?」


「マジよ、マジマジ」


「なに言ってんの?」


 頭、大丈夫と言わんばかりにベリーがアンネの顔を覗き込んだ。


「さっきのはマジ天然」


「まだ、こだわってたのかっ」


「略してマジ天」


 ベリーのツッコミなど意に介さず造語を略してアンネは悦に入っている。


「平和だねえ」


 そんなやり取りを見てトモさんがボソッと呟いた。


「何処がだよ」


「悪党退治をしてスッキリした後の争いのない平和な王都だよ?」


「……確かに王都は平和だろうね」


 黒幕が使っていた犯罪組織はキースたちが潰してきたし。

 大本である泥棒貴族とその一味も断罪された。

 そういう意味では平和なんだが。


 生憎と俺が宿泊しているこの部屋は少しも平和に見えない。

 争いこそないけどね。


 だからこそ、あんな言い回しをしたのだろう。

 ズルいというか何というか。

 老獪と言ってもいいかもしれない。


 だが、ABコンビが漫才じみたやり取りをしている。

 いつの間にか皆も喝采を交えつつそれを見物してるし。


「カオスじゃないか」


「そうかい?

 普段通りだと思うけど」


「うっ」


 そう言われると反論しようがない。


 ただ、結果としてはそれが良かったのだと思う。

 真っ白状態でショートしたみたいになっていたカエデの意識が戻ってきたからな。


「んっ……」


 呻くように声が漏らされた瞬間、全員が反応していたさ。


「─────っ!?」


 そのせいでカエデを再び驚かせてしまった部分はあると思う。

 故に、それは不可抗力だとは思うのだが……


「どうして土下座するんだよっ」


 この状態だけは納得しがたい。

 どうしてこうなった……


読んでくれてありがとう。

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