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1541 話し込んでいる間に

「まったく……」


 ハイラントが仏頂面で嘆息した。

 考えはまとまったようだが。


「忙しい時に仕事を持ち込んで悪かったな」


「いや、こういうのは迅速に動かねば碌なことにならん」


 気合いが入っているのか鼻息を荒くさせながら言った。


「だが、ハルト殿に任せてしまった方が早く終わりそうなのがな」


 どうやらサリュースとの話に聞き耳を立てていたようだ。


「そちらの面子を潰すつもりはないぞ?」


「そんなものはどうでもいい」


 フンと鼻を鳴らしてハイラントが言った。

 何気にドヤ顔である。

 自慢げにする意味が分からん。


「おやおや、ハイラントくんは言い切るねー」


 サリュースが茶化すが、当のハイラントは何処吹く風だ。


「面子など犬にでも食わせておけばいい。

 そんなことより少しでも早く解決する方が重要だ」


「犬に食べさせるのはどうかと思いますよ」


 スタークが苦笑しながら言った。


「ものの例えだ」


 ルータワーがツッコミを入れる。


「承知していますよ。

 ですが、品位の問題があるでしょう」


「へっ、それこそ犬に食わせておけ」


 ランスローが鼻で笑いながら言った。


「まったく、ランスローさんは下品なんですから」


「お前がお上品すぎるんだよ」


「やめんか」


 ルータワーが間に入る。


 まあ、じゃれ合いは放置で問題ないだろう。

 俺はハイラントに向き直った。


「それじゃあ、ササッと片付けて構わないんだな」


「もちろんだ」


 胸を張って言うことではないと思うのだが、そこはスルーしておこう。

 スマホを使って皆にGOサインを送った。

 今までは手出しを控えていた部分もあったが、ここからは自重なしである。


 フュン王国側の面子を気にしなくていいなら証拠品の確認だけじゃなく回収も行う。

 もちろん誘拐されていた人たちを救出して安全な場所へ移送するのも遠慮なく実行だ。


 泥棒貴族とその一味の逮捕だけは保留だけど。

 それは留守番している面々に任せることにする。

 最後の仕上げって訳だな。


 末端の犯罪者組織に所属する連中は衛兵詰め所の牢屋に送るけどね。

 それはキースたちに指示してあるし。


「じゃあ、それで動くようにしたけど──」


「待った待った、動くようにしたってどういうことかな?」


 サリュースが俺の言葉を途中で遮ってきた。


「どうって言われてもな。

 連絡を取る手段くらいはあるんだよ」


 5国連合の面々が目を丸くさせた。


「何を言ってるんだ?」


 ランスローが訳が分からんと顔に書いた状態で聞いてきた。


「何かしら方法があるとは思っていたが……」


 ルータワーはそれよりは少しマシな状態のようだ。


「魔法でしょうか?」


「どんな魔法があるというんだ?」


 スタークの推論を否定するようにハイラントが疑問を被せる。


「魔法じゃないかな。

 それしか考えられないのだよ」


 見当はつけられない様子を見せながらもサリュースがハイラントの意見を否定した。


「しかしな」


 粘るハイラント。


「では他に何があると?」


「ぬっ」


 サリュースの問いにハイラントが答えに詰まる。


「そちらこそ魔法だと証明できまい」


 しばし唸ってから苦し紛れに切り返した。


「そちらよりはマシだと思うがね、ハイラントくん」


「ぬわんだとぉ」


「他に説明がつけようがないじゃないか」


 人差し指を立ててサリュースが諭すように語る。


「何よりもまずハルト殿は言葉を発していない」


 己の推理を披露し始めた。


「これは無詠唱で魔法を使ったと考えられるのではないかな?」


 倉に入れたスマホを思考操作しているだけですが?

 まあ、スマホの存在を国民以外に明かすわけにもいかないので黙っているけどね。


「ぐぅっ」


 問いかけられたハイラントは悔しそうだ。


「先程ツバイク殿と内緒話をしていた時も我々には声が聞こえてこなかった」


 ガッツリ観察されていたようで。


「これも何らかの魔法の効果だろう。

 声を届かなくさせるなど驚嘆に値するがね」


「ということは逆もあり得るのでは?

 だとすれば今回の連絡手段ということも考えられますよ」


 スタークが横入りしてきた。

 自分の推理にやや興奮気味である。


「それは可能だろうけれど、今回使った魔法とは違うはずだ」


 サリュースは一部を認めつつもスタークの推理を否定する。


「言葉を発していないからな」


 そう言ったのはルータワーであった。

 口パクぐらいはするはずだと言いたいのだろう。


「あ、そうでしたね」


 ションボリと沈没していくスターク。


「無詠唱なのはともかく伝えるべきことまで唇が動かないのは説明がつきません」


「何か他の方法があるのだろうね」


 サリュースが俺の方を見た。

 一応は頷いておく。

 種明かしまではしないけどな。


 スマホのことは明かせないのでミスリードしておくしかない訳だ。


「ふむふむ、やはり魔法だったか」


 勝手に誤解してくれたので助かる。


 そして俺が頷いたのを見たハイラントもさすがに観念したようだ。

 まあ、そんな魔法があるということに戸惑いを感じているようだけど。


 これでお抱えの宮廷魔導師に話を聞くだろう。

 念話との答えが返されるのは、ほぼ確定と言っていい。

 スマホのことを知る者はいないしな。

 クラウドやカーターならFAXを渡しているので魔道具の可能性も考慮するかもだが。


 なんにせよ5国連合の面々は些か動揺気味であった。

 無理からぬことだ。


 影渡りでも充分に刺激だったはずだからな。

 更に追加があるとは思っていなかっただろうし。


 そんな様子をカエデは諦観を感じさせる眼差しで見ていた。

 その戸惑いは理解できると言わんばかりである。

 少しは慣れてきたと言えそうだ。


 影渡りで移動させれば、また驚くとは思うけどね。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 Pバーで簡単に夕食を済ませた。

 宿屋の従業員には強制的に眠ってもらっているしな。

 用意ができない訳ではないが、状況が状況なので手早く済ませることを優先した訳だ。


 5国連合の面々がPバーの味と手軽さに驚いていたもののスルーした。

 これから忙しくなるからな。


 とりあえず第1弾だ。


「こんなん出ましたけどぉ」


 影渡りで帰ってきたアニスが短めの刀袋を手にしていた。

 その長さから察するに中身は小太刀のようだ。

 スマホのSNSウィスパーでの報告にあった代物である。


 即座に鑑定してみたが、思った通りのブツであった。


「それはっ!」


 カエデが飛び上がらんばかりの勢いでアニスに迫る。


 そりゃそうだ。

 盗まれたはずの宝物が目の前にあるんだからな。


 他人からすれば、薄汚れた細長い袋に入った棒状の何かでしかないんだけど。

 思い入れがあるだけにカエデの迫りっぷりは鬼気迫るものがあった。


「うわあっ!?」


 アニスが悲鳴を上げて焦るほどだ。

 おまけに影から出きっていなかったことで避けようがなかった。

 仰け反って遠ざかろうとするのが精一杯。


 下半身が固定されたも同然の状態だから仕方がないけどな。

 カエデはお構いなしに肉薄しているが。


「そない慌てんでも返すがなっ」


 必死に叫びながら、どうにか踏ん張ってバランスを取るアニス。

 カエデの勢いにすっかり圧倒されてしまったようだ。


 そして刀袋を手放した。

 シュバッと風切り音が聞こえてきそうな勢いで掻っさらうように刀袋を手にするカエデ。


 その場に座り込むと刀袋に頬ずりし始めた。

 大事にしていた家宝が戻ってきた喜びは何物にも代えがたいようだ。

 笑みを浮かべながら泣いてるし。


 事情を知らなければ刀フェチの変態かと誤解してしまっただろう。


「勘弁してえな~」


 アニスもへたり込んでいた。

 無理もない。

 カエデの鬼気迫る表情と殺気にも似た気迫を浴びながら目の前に迫られたんだからな。


 リアルでモグラ叩きのモグラの気分を味わったんじゃなかろうか。

 当人にしてみれば、モグラ叩きの方がまだマシだと思うかもしれないが。


「すまんな」


 カエデに代わって謝っておく。

 とはいえカエデがすべて悪い訳ではない。

 彼女も被害者だしな。


「見つけたんなら急いだ方が良いと思ったんだが」


「ハルトはんが謝ることやあらへん」


「いや、こうなることは想定しておくべきだった」


 俺の配慮不足だろう。


読んでくれてありがとう。

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