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1504 武王大祭を楽しむために

 なんだかんだで5国連合の面々と自己紹介してしまった。

 こうなると「はい、さようなら」とはいかない。

 結局は俺たちが面倒を見ないといけない訳だ。


『してやられた』


 こういう形に持ち込むのが向こうの狙いだったのだろう。

 実に面倒だ。


 ただ、ハイラントの手柄にはなるまい。

 不手際の連続だったからな。


 インサ王国のサリュースとかいう女王様がフォローしてなければ俺たちは帰っていたし。


 今の扮装からすると軽戦士サリーなのか。

 似合っていると言えば似合っている。


 誰も女王陛下だとは思うまい。

 アラサーだが、勝ち気な美人は若々しく見えるしな。

 なんてことを考えていたら……


 ギンッ


 一瞬だが、凄い圧で睨まれた気がした。

 どうやらアラサーという単語に反応したようだ。

 何も言ってないんだけどな。


『エスパーかよっ』


 そんなツッコミを入れたくなった。


「で、この面子で武王大祭を市民目線で楽しもうってのか?」


「そうそう、そうなのだよ」


 満面の笑みで返事をするサリー。


「こんな機会は一生に一度あるかないか。

 存分に楽しまねば、きっと後悔すること間違いなしっ」


 ビシッと言い切りましたよ。

 気持ちは分からなくもないけどね。

 立場が立場だからさ。


 故に……


「そうとも、ワシもハイラントの話を聞いた時はズルいと思ったからな」


「同感だ」


「普段は城を抜け出すなんてできませんからねえ」


 残りの3人も同意しているし。

 なんにせよ自由のない身だからこその意見だな。


 とは言うものの、簡単に「はい、そうですか」と了承する訳にはいかない。


「本戦の観戦も仕事だろう。

 そっちはどうするんだよ?」


 冒険者スタイルで観戦はするだろうが、そういうことではない。

 特別席で国王や来賓として公衆の面前に姿をさらしつつでなければ意味がないのだ。


「はいはい、そこはね」


 楽しそうに応じたのはサリーだ。


「代役を立てることにしたのだよ」


「代役ねえ……」


 自由行動が1日だけなら、ありなのか。

 自分の次に高い地位の者を代理として特等席に座らせる。

 何か大事な会談をする予定があるとか理由をつければ……


 それでもギリギリっぽい気はするが。

 セウトとアウフの境目くらいだと思う。


「おやおや、代役では不服かな」


 俺が訝しげな顔をしていることで懸念していると感じ取ったのだろう。

 サリーがそんなことを言ってきた。


「それで誤魔化しきれるなら好きにするがいいさ」


 本人のコスプレ的な変装がバレれば元も子もない。

 それでアタフタするのは俺たちじゃないからな。


「フッフッフ」


 サリーが不敵に笑う。


「心配無用なのだよっ」


 そして熱を込めているかのように断言した。


「根拠も示さずそんなことを言われてもな」


 俺には呆れるしかできない。


「フハハハハ!」


 何故か腕組み&仁王立ちで高らかに笑われてしまった。


「甘いっ、甘いのだよ、ヒガ王」


「ハルトでいいぞ」


 でないとヒガ男と呼ばれているように聞こえてしまうんだよな。

 変なニックネームみたいで嫌な方に馴れ馴れしく感じるから可能な限り却下したい。


「む、そうか?」


「ハイラントはそう呼んでいるぞ」


 一瞬だけサリーから視線を移すと──


「うむ、ハルト殿と呼ばせてもらっている」


 ハイラントがそう答えて頷いた。


「ほうほう、その方が親しげで良いのだよ」


 感じ入るように目を閉じたサリー。


「では、そう呼ばせてもらおうじゃないかっ」


 次の瞬間にはカッと目を見開いて宣言する。

 いちいちテンションが高めな女だ。


「そうしてくれ」


 付き合っていられないので俺の方は流し気味に返事をしておく。


「さてさて、代役の話だったね」


 気にした様子もなくサリーは話を続けてきた。

 面倒くさい感じで絡まれなくて助かったよ。


「そうだな」


「こういう感じではどうかな?」


 そう言ってサリーが部屋の入り口の方を振り返る。


「代役1号から5号よ、カモーン」


 フィンガースナップでパチンと指を鳴らした。

 それを合図に入ってくる5人組の男女。


 顔を見ても平凡で印象に残らない感じの面々だった。

 きらびやかな衣装を身に纏っているお陰で要人なんだなと認識できるがね。

 そのうちの1人はハイラントの服を着ていた。


「「「「あー、影武者かぁ」」」」


 俺を含む元日本人組が一斉に嘆息した。


「影武者だって?」


 サリーが首を傾げる。

 知識として身につけた記憶の中に影武者の概念がなかったのだろう。


「何だ、それ?」


 ランサーが隣にいるタワーに聞いていた。


「知らん」


 にべもなく答えるタワー。

 ランサーは気にした様子もなくスタンにも視線を向けた。


「私も知りませんよ」


 答えつつハイラントの方を見る。


「ワシにも分からん。

 ハルト殿たちにしか分からないことのようだな」


 その答えようからすると西方では通用しないようだ。


「変装して主の身代わりになる武官のことをそう言うんだよ」


「ほうほう」


 興味深げに説明に聞き入るサリー。


「なるほどな」


「ふむ、そういうことか」


 ランサーやタワーも頷いている。


「あのぅ……」


 首を引っ込めるようにして背を丸めながら小さく手を上げるスタン。

 居心地悪そうにしているようにしか見えないが、理由が不明だ。


「何か?」


「説明は理解できましたが、疑問点がひとつありまして」


「うん、それで?」


 聞くなら答えるという姿勢を見せると、少しだけ居心地の悪さが薄らいだようだ。


「それでですね、どうして武官なのかなと思ったしだいでして」


「は?」


 どんな想定外のことを聞かれるのかと思ったら普通の疑問だった。

 勿体ぶるから内心で身構えてしまっていたんだが。

 ハッキリ言って拍子抜けである。


「些細なことを気にしてすみません」


 ペコペコ謝るスタン。


「いや、いいけどさ」


「恐縮です」


 王族とは思えないほど低姿勢な兄ちゃんだ。


「影武者は武官が多いってだけで、そうでなきゃならんってことはないんだ」


「はあ……」


「で、武官が多い理由は胆力がある者が多いからってだけのことだぞ」


 本当はそういう理由ではないだろうが、それらしくでっち上げておく。


「ふむふむ、なるほど」


 サリーが相槌を打つ。


「つまり、バレにくくするためには堂々としているのが一番ということか」


「一理ある」


 ランサーやタワーも感心していた。


 が、問題はスタンである。

 スタンが納得できないなら、それっぽい説明を更にでっち上げないといけない。

 当人は何やら考え込んでいた。


「納得いかんか」


「いえっ、大丈夫です。

 自分の中で整理していただけですので」


 神経質というか、細かいことを気にする性分のようだ。


「はいはい、納得したら次だよね」


 サリーがぶった切ってきた。


「まだ何かあるのか?」


 警戒感丸出しで見る。

 俺だけじゃなくミズホ組全員で。


「えー、だってねえ」


 サリーとしては、まだ終わってないと言いたいのだろう。


「勿体ぶらずに言ってくれないか」


 含みを持たせた口振りをされると警戒感が余計に増すんですがね。


「影武者……だったわよね?」


 サリーが確認するように聞いてきた。


「ああ、ミズホ国では影武者と言っている」


 俺は頷いて答えはした。

 しかしながら、それを強要するつもりはない。


「別に無理に使う必要はないぞ。

 俺たちの国以外では一般的ではないようだしな」


「いいのいいの、特別感があるし便利そうじゃない」


 実に楽しげな笑みを浮かべて返事をするサリー。

 要するに気に入ったから使いたいってことなんだろう。

 別に画期的なものでもないと思うのだが。


 まあ、止めたって無駄なのは目に見えている。

 好きにしてくれとしか言えない。


「それで影武者がどうしたんだよ」


「うんうん、ハルト殿たちから見てどうかね?」


「「「「「似てない」」」」」


 その一言に尽きる。


「えーっ、そこを気にするのぉ?」


 意外な指摘を受けたとばかりに声を上げるサリー。


「当然だろう」


 影武者だと気付かれれば騒ぎになるからな。

 印象に残らない面子を使って誰にも疑われないようにしたつもりなんだろうが。

 そのつもりなら、最初から最後までそれで通す必要がある。


「既に公衆の面前で姿を見せてしまっているんだから、そこは考慮しないとな」


 俺の言葉に「あちゃー」と言わんばかりの顔をしている5国連合の面々。


『誰も気付いてなかったのかよ』


 呆れたものである。


読んでくれてありがとう。

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