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1502 呼び出しておいて待たせるのか

 自信たっぷりという顔をするハイラント。


 まあ、今は剣士ランドの格好をしているんだが。

 王城内での振る舞いは王としてのそれだ。


 剣士ランドの設定を背景にしたロールプレイはしていない。

 声音や口調はほぼ変わらないけどな。


 それでも今は剣士の雰囲気はまるで感じられない。

 王としての自信に満ち溢れた振る舞いのせいだろう。

 仕草とかが違うのが大きい訳だ。


 見た目とのギャップが違和感を増幅させているけどな。

 そうでなくても発言は胡散臭かったけど。


『素晴らしいアイデアと言われてもな』


 鵜呑みにして信じるなどできはしない。

 それは呼び出された皆も同じだった。

 ミズホ組だけでなくツバイクたちも一緒になってジト目を向けていたもんな。


「な、なんだっ……」


 ハイラントがたじろいだ。

 自信があっただけに想定外の反応だったのだろう。


「そんなにワシのアイデアが不服なのくわっ」


 おそらく語尾は「なのか」と言いたかったんだろう。

 が、噛んでしまうほど動揺したらしい。


「ワシはまだ何も言っておらんぞ」


 その通りだが、聞くまでもないことだ。


「内容を聞く前から碌なことがないことだけは容易に想像がつくんだよ」


 俺の言葉にジト目勢が一斉に頷いた。


「うぐっ」


 気圧されたハイラントが呻き声を上げる。


「そもそもが、だ」


 強調して言った上で少し間を置く。

 一気に捲し立てるよりもハイラントにはプレッシャーになるはず。


「まだ誰も起き出してないような時間に迎えに来させる時点で普通じゃないだろう」


 皆が険しい表情で頷いている。


「そこは仕方がないのだ」


 渋い表情をするハイラント。

 呼び出されてから初めての反応かもしれん。


「何処が仕方ないんだよ?」


 問いかけはハイラントに対してだったが、俺は皆の方を見渡した。

 何か仕方のない理由に心当たりがあるかとアイコンタクトを送るためだ。


「「「「「……………」」」」」


 誰も反応しない。


 つまり、俺たちの側で何か問題があった訳ではないということだ。

 あまりにも些細なことで全員が忘れていたり気付かなかったりすれば話は別だが。


 おそらく、そういうことはないだろう。


 おもむろにハイラントの方へ振り返った。

 ぐぬぬな状態で返事ができずにいる。


『おいおい、ここはアンタのホームでしょうが』


 内心でツッコミを入れてしまったさ。

 宰相とか近衛騎士とかまで「そら見たことか」な目で見ていたからな。

 これじゃ、どっちがアウェーなのか分からん。


 が、これは好機だ。

 歯噛みしているハイラントをたたみ込んで宿屋に帰るとしよう。

 上手くすれば、朝食までに少しは仮眠が取れるだろう。


「ええい、援軍はまだかっ」


 焦れったそうにハイラントが言った。


「は?」


 訳が分からん。

 援軍とは何ぞや?

 このオッサンは一戦やらかすつもりかと一瞬だけ考えてしまったさ。


 まあ、それはない。

 俺が1人で肉塊BBAを完封したのは承知しているからな。


 それに普通なら宰相か近衛騎士に声を掛けるはずの言葉を使用人に向けていた。


「連絡がございませんので、もうしばし時間がかかるかと」


 タキシードのような服に身を包んだ初老の男が丁寧にお辞儀をして答えている。

 絵に描いたような執事だ。


 セバスチャンと呼びたくなったさ。

 もちろん声には出さなかったがな。


 拡張現実で表示されている名前はまるで違うものだし。

 ここで「セバスチャン」と呼びかけても混乱を生むだけだ。

 元日本人組には受けそうだけど。


 何にせよハイラントの言った援軍というのは言葉の綾なのだろう。

 とすると、素晴らしいアイデアとやらに関連する何かだと思われる。


「トモさんや」


 俺はそばにいたトモさんに声を掛けた。


「何だい、ハルさん?」


「嫌な予感がするのは俺だけかな?」


「奇遇だねえ」


 ハハハと乾いた笑いを漏らすトモさん。


「素晴らしくないアイデアを見せつけられる気がしてならないよ」


「ちょっとー、不吉なことを言い出さないでよねー」


 マイカがクレームをつけてくる。


「マイカちゃん、言っても言わなくても同じだと思うよ」


 すかさずミズキがツッコミを入れていた。


「そうですね、素晴らしいアイデアという言葉を聞いた時点で終わっているかと」


 フェルトがミズキの意見に同意した。


「それを言うなら、呼び出された時点で終わってるわよ」


 フンと鼻を鳴らすマイカ。


 自分で不吉と言った方へ進むのはどうかと思うのだが。


 まあ、言いたいことは理解できるさ。

 呼び出されたことを根に持っているからこそ苛立っているんだろうし。


 他の皆とも一緒になって素晴らしくないアイデアについて話し合う。


「素晴らしくないアイデアとは何だっ」


 ハイラントが頬を膨らませて抗議してきたけどな。


「言っただろ、碌なことがないって。

 そっちには良いものでも俺たちにとってそうとは限らんよな」


 そう反論すると、宰相と近衛騎士たちがうんうんと頷いた。

 彼らは内容を知っているっぽいな。

 聞けば答えてくれるかもしれん。


 が、さほど待たずとも分かることだし聞くまでもないだろう。


「お前たちまでーっ」


 グギギと歯噛みして悔しがるハイラント。

 結局、そのまましばらく待たされるのであった。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 どれほど待ったことか。

 時計を確認すれば王城に着いてから1時間は経過していただろう。

 それでも何も起きない。


 援軍と言ったからには人手を集めているのだとは思うが、誰も来ないしな。

 子供組などは立ったまま仮眠を取っている。


『俺もそうすりゃ良かった』


 既に眠気はなくなっているが、時間を潰すことはできたはず。

 周りを無視して朝食を取るということも考えたくらいだしな。


 まだ少し早い時間なので実行には移さなかったが。


「なあ、帰ってもいいか?」


 待ちくたびれてハイラントに聞いてみた。


「待たれよ、今しばしの辛抱だ」


「「「「「えーっ」」」」」


 俺を含めてミズホ組から不満の声が湧き上がる。

 ツバイクも声には出さなかったが、俺たちを見て苦笑していた。

 気持ちは分かるということだろう。


「そこを何とか、なっ、なっ」


 拝むように頼み込んでくるハイラント。

 いつの間にか王の風格が消えている。

 剣士ランドっぽくなってきた。


「しょうがないなぁ」


「おおっ、助かる」


「でないと宰相の寿命が縮まるもんな」


「ワシの心配はせんのかぁ」


 ハイラントが情けない声を出して抗議してきた。


「理由も説明せずに呼び出した奴に配慮する必要があるとでも?」


「うぐぐっ」


 急所を突かれたとばかりに弱り切った表情で唸るハイラント。

 だが、それでも理由は言えないと頑張っている。


 ハイラントの言う素晴らしいアイデアのミソがそこにあるようだ。


「さて、どうする?」


「せめて事情くらいは話してもらいませんと」


 これまで黙っていたツバイクも参戦してきた。


「ぐぐぐぐぐぐっ」


 ハイラントは脂汗を流すんじゃないのかと思うほどの忍耐感を前面に出した顔で唸る。

 こっちはとっくに限界を超えているんですがね。

 どうして向こうの方が耐えに耐えているような顔をするのやら。


 そんな風に皆で呆れていると……


「やあやあ! 諸君、お待たせ~」


 軽い調子で挨拶しながら入ってくる者がいた。

 女の声だ。


「本当に待たされたぞ」


 続いて辟易した感じのオッサンの声。


「全くだ」


 同じくオッサン声。


「まあまあ、女性は身支度に時間がかかるんですよ」


 最後も男の声だったが、若々しい感じだった。

 入ってきた面子を見る。


 軽戦士風のアラサーっぽい女。

 短槍を手にしたオッサン。

 盾を背負ったオッサン。

 そして長杖にローブという出で立ちの若者。


 他にもゾロゾロと入ってくるが、誰かの護衛と思われる騎士たちばかりである。

 どう見ても誰かの護衛をしているようにしか見えない。

 それが誰かと問われれば、先頭の4人だとしか答えられない状況だった。


 が、冒険者風の出で立ちの面子を騎士が守るというのは、どう考えてもチグハグだ。

 違和感が激しいなんてもんじゃない。


 まあ、何となくどういうことかは想像がつくけどな。

 要するにハイラントと同じような立場の者たちが同じようにコスプレしている訳だ。


 すなわち来賓の面々である。


読んでくれてありがとう。

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