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1491 本気になったらしい

 肉塊が魔法を放った瞬間に術式に干渉して書き換えた。


 サクッと終了。


 そもそも放出型の魔法は術式がむき出しだしプロテクトもかかっていない。

 魔力を被せて干渉するだけで簡単に書き換えられる。

 1秒にも満たない時間で終了だ。


 火球の根幹をなす火の部分を消去。

 これで火球は消滅し、一瞬で掻き消えた。


[は……?]


 意地の悪そうな笑みを浮かべていた肉塊BBAが今は呆気にとられている。


[え?]


 何が起きたのか理解できないのだろう。

 そりゃあ自分の得意な魔法を何の妨害も受けずに放ったのだ。

 発動した時点で必中を確信していたものと思われる。


 まあ、誘導などは術式に含まれていなかったから躱そうと思えば誰にでもできたが。


 普通は魔法というだけで驚いたり畏縮したりで回避できる者も少ないみたいだけどな。

 だからこそ、肉塊も勝利を確信していたのだと思う。


 が、結果は魔法の消滅だ。


[な……]


 呆気にとられていた肉塊の表情が見る見るうちに驚愕のそれへと塗り替えられていく。

 やがてワナワナと震えだし──


[なななななななな……]


 茹で上げられたのかというほど真っ赤に顔を染めていった。


[なんですってえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?]


 そして絶叫。

 キーンと耳に響いたような気がした。


 もちろん、錯覚である。

 音声ブロックは完璧だからな。


 それ以前に俺には【全耐性】スキルがある。

 熟練度こそ初期値の10のままではあるものの、これは神級スキルだ。

 魔力も乗っていない音声ごときにどうこう影響される訳がない。


 まあ、錯覚したのはイメージの問題だろう。

 実際にダメージは受けないが、背筋は凍るというか。


 何にせよ、肉塊の発したそれはフルパワーを遥かに超える叫びだったようだ。

 俺とズルギツネ以外は全員が泡を吹いて倒れていた。


 【音響耐性】持ちのズルギツネでさえガクガクと体を震わせているほどである。

 その表情など青ざめて恐怖一色に染まっていた。


『魔法より威力があるじゃないかよ……』


 耐性スキル持ちがいなければ最強かもしれん。

 ある意味、対軍兵器と言えるだろう。

 敵も味方もお構いなしではあるが。


 しかも今ので倒れた何人かは今のでPTSDを発症している。

 下手に殺すより軍隊相手にはダメージを与えられそうだ。

 死んだら放置されるが、生きているなら助けなきゃならんからな。


 とはいえ、この肉塊が戦場に出ることなどないだろう。

 出陣を了承するとは思えないからね。


 まあ、俺には関係のないことだ。

 それよりも、PTSDの方が問題である。


 せっかく、俺がトラウマを残さぬよう抑え込んだのに。

 台無しにしてくれるとは気分が悪い。


『しょうがないなぁ』


 治癒魔法を使ってチャラってことにしておこう。


 一方で肉塊は怒り心頭のようだ。

 俺が何かしたとまでは思っていないみたいだけど。

 自分が放った魔法が不発に終わったことで恥をかいたと思っているっぽい。


 肉塊が掴んでいたズルギツネの襟首を放り投げた。

 ズルギツネはフラフラヨロヨロと数歩ばかり歩いたところで──


[ぐえっ]


 と呻いてパタリと倒れ込む。

 そして、ガクリと体から力が抜けていった。


『失神したか』


 さすがの【音響耐性】持ちでも、超必殺技状態な怪音波は色々と削られたようだ。

 その前に殴られっぱなしのダメージが入っていたからな。

 トドメになったと言えるだろう。


 まあ、死んだ訳じゃないが。

 格ゲーで言うところのKO状態だろう。


 次のラウンドが始まったりはしないがね。

 もちろん次ラウンドで完全復活したり、なんてこともない。


 どのみち術式を刻み込んで呪いがかかったも同然の状態だ。

 ズルギツネに対して何かするつもりはもうない。

 放っておいても自爆するからな。


[フンッ]


 鼻を鳴らす肉塊BBA。

 ズルギツネを一瞥した後はこちらを睨みつけてきた。


 何やら喚き始めたが、俺の対応はスルー&シカト。

 テキストも読まなかったさ。

 どうせ碌なことを言わないのは分かっているからな。


 読めば不愉快な思いをするだけだ。

 確認が必要そうなら、その時に読めばいい。


 ようやく唇の動きが止まった頃には数分が経過していた。

 そして短杖を突き付けてくる。

 挑みかかる目は野獣のそれだ。


『養豚場の豚が野生化でもしたか』


 その台詞はとりあえず内心だけに留めておいた。

 奴に聞かせれば、再び怪音波攻撃が始まるだろうからな。

 いちいち付き合っていられない。


 そうでなくても何か哄笑し始めたみたいだし。

 実にキモい。


 大方、奴が最も得意とする魔法を使うつもりなのだろう。

 それを使えば俺などひとたまりもないとか自慢げに言っているに違いない。

 違ったとしても、そう大きな差はないはずだ。


 これを待つだけでも退屈である。

 退屈すぎてアクビが出てきたさ。


[──────────────────────────────!!]


 そしたら怒り始めるし。


 それっぽいテキストが出たので気付いた。

 最後の[!!]の部分だけチラッと見えたのでね。

 本当に面倒くさいBBAだ。


 ただ、怒らせたことは無駄ではなかったようだ。

 短杖を構えて呪文の詠唱を始めたからな。

 憤怒の表情で喚くように唱えているみたいだが。


 それだけ自信のある魔法をバカにされたと思ったのかもしれないな。

 こっちは術式の構築が始まるまで何の魔法を使うか知らないんですがね。

 向こうは宣言していたっぽいけど。


 だが、俺には伝わっていない。

 俺は怪音波を完全にシャットアウトしてる上にテキストも基本的に無視してるからな。

 この程度で確認したりするつもりもない。


 奴が構築する術式を見ればいいだけのこと。

 構築が遅すぎてアクビが出そうになったけど。


『今、アクビしたらどうなるだろうな?』


 肉塊がキレて集中を切らせたりとかあるかもしれない。

 魔法が不発で終わって魔力の無駄遣いなんてことになったら面白そうだ。


 あるいは魔法が暴走することもあり得るかもな。

 この場合は暴発して自爆状態になるか。

 あるいは威力が何倍にもなることも無いとは言えない。


 ただし、暴走しているので制御不能だ。

 何処に向けて魔法が飛んでいくかは誰にも分からないだろう。


 それはさすがにマズいかもしれない。

 無関係な一般人に被害が出るのは俺としても本意ではないからな。


 で、奴が構築していく術式を眺める。

 放出された魔力に纏わり付くように記述されていくが。


「はあ……」


 思わず嘆息してしまった。

 何のことはない。

 今回も火球呪文だったのだ。


 ただし、わずかに術式が追加されている。

 そう複雑なものではない。

 火球を放つ前の状態で待機するようになっているだけだ。


 そして同じ術式が並んでいく。

 要するに複数の火球を同時に発射するつもりなのだろう。

 面倒な術式の構築の仕方をしたものである。


 火球・待機・火球・待機・火球・待機・火球・待機・火球・待機・火球・待機……


 己が魔力を使い果たすまで繰り返すつもりのようだ。

 これで火球を構築するのに術式が何行分にも及ぶのだからバカバカしくもなる。


 溜め息が漏れてしまったとしても仕方ないよな。

 1発分でもそれなりに待たされたんだぜ。


 内包型なら一瞬で終わるのに。

 何発セットするつもりか知らないけど、バカバカしくなってきた。


 そもそも放出型でも個数をセットすれば詠唱は大幅に短縮できるのだ。

 コピペするみたいに同じ術式を繰り返すとか信じ難いにも程がある。


『よくもドヤ顔で自慢できたものだ』


 魔力量が自慢なのかもな。

 とはいえ2桁を超えたあたりで魔力の残量が残念なことになりつつあったけど。


 まあ、1ダース以上の火球が同時に飛んでくれば一般人には驚異か。

 発射時の配置しだいでは躱すこともできないだろうし。


 結局、肉塊は16の火球をセットした。

 魔力は枯渇寸前でヘロヘロだが、表情は怒りに染まったままだ。

 俺の嘆息もしっかりと見られていたらしい。


 猛獣が咆哮を上げたかのような形相で火球を一斉に発射。

 その直後にザマアな顔になっていた。


 今度こそ勝利を確信したのだろう。

 気が早すぎるけどな。


読んでくれてありがとう。

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