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148 つくってみた『自動車』

改訂版です。

ブックマークと評価よろしくお願いします。

 その後、バイクはデザイン違いで試作バージョンを増やしていった。

 昔のアニメを参考にしたのとかは受けが良かったな。

 その中には変形するのも含まれている。

 まあ、俺の趣味だ。


 戦闘機とバイクが出てくる旧作アニメのDVDボックスが参考資料だったりする。

 バイクがパワードスーツになるとかロマンがあるよね。


「ちょっとー、全然強くならないじゃない」


 試乗したレイナが文句を言ってきた。


「それだけレベルアップしてれば雰囲気を楽しむしかできないと言ったはずだが?」


「くっ、そういうことか」


 もっとレベルが低ければ強くなったと錯覚したことだろう。

 パワーと跳躍力はあるからね。

 ただ、その増幅した能力に振り回されて戦闘行動はまず無理だと思うけど。


「それやったらパワードスーツいうんは看板に偽りありってなってまうで」


「そうでもない」


「どこがやねん」


 ビシッとアニスのツッコミが入った。


「こいつは一定レベル以上の乗員がスーツ形態に変形させたらリミッターがかかるんだよ」


「なんで、そないなことを?」


「破損防止」


「あー、さいで」


「で、リミッターがかかると乗員に負荷がかかる」


「乗り手を鍛えるスーツやからパワードスーツや言うんかいな?」


「正解」


「もうええわ」


 なんだか漫才のようなノリになってしまった。


「これ、面白ーい」


「動画の世界が現実に」


「変形するっ!」


「スーツ形態が魔球養成ギプスっぽいよー」


「ホントだー」


 妖精組の受けは良いようだ。


「これで楽しめるのか……」


 リーシャなどは呆れていたけれど、これが妖精組クオリティ。

 しかも飽きるまでは徹底的に遊び尽くす。

 遊びだけじゃなくて装着したまま農作業とか漁に出たりもするくらいだし。


 なんにせよ色々とノウハウは得られた。


「この調子で車とか航空機でも色々とやろうかな」


「はーい! 変形する飛行機が作りたいでーす」


「えーっ、ブースト機能のある車の方がいいよぉ」


「合体ロボになるマシンがベストっす」


 迂闊なことは口走るものではないね。

 リクエスト殺到でパンクしそうだ。

 色々な予定が先送りになったのは言うまでもないことである。


「そろそろガンフォールの所に顔を出そうと思っていたんだがなぁ」


 数ヶ月は会っていないからミズホ酒が無くなって心待ちにされているかもね。

 シャーリーやアーキン、ボーン兄弟の様子も見ておきたいし。

 あと、西方のダンジョンにも行ってみたかったんだが。


 そういや梅の花をゆっくりと楽しむことができなかった。

 なんだかんだと忙しくやっている間に時期も終わり、じきに桜の開花が始まろうかという頃合いである。

 桜の花見は是非ともしたいところ。

 確かベリルママが帰ってくるのが春頃って話だったから、これも忘れてはいけない。

 うまくすれば花見が一緒にできるかもしれないし。


 もちろん遊ぶだけじゃなくて都市整備計画も進めるさ。

 バイクを作って車も作るとなれば交通ルールの徹底もして教習所も作らないとな。

 飛行機も考えているから空港の整備もしないとダメだろうし。


「思った以上に暇がないな」


 お遊びでバイクをあれこれとイジっている間に調子に乗ってしまった結果だな。


「くーくっくぅくっくくぅくー」


 またまた西方へ行けませーん、とか言われましたよ。


「そうだな。ゴードンあたりはヤキモキしてそうだ」


 何か俺にさせたがっていたっぽいし。


「主よ、西方といえば、お姫様がらみでも何かありそうな気がするのだが」


「HAHAHA! 全力でスルーしたい気分だぜぃ」


 まあ、いいや。なるようになるだろ。


「現実逃避してますね-」


 ダニエラの言葉が俺を現実に引き戻した。

 精神に10のダメージ。ぐはっ!


「という訳で今日は車を完成させる」


「どういう訳なんだか」


 なんていうレイナのツッコミは全力でスルーだ。


「バイクの完成が遅れている者はとりあえずそこでストップだ。

 これから単純な構造の自動車を作っていくので、よく見ておくように」


「「「「「はーい」」」」」


 休みの日でもないのに農業や漁業はお休みで全国民参加だ。

 今日の工作タイムを業務扱いにしてあるからだけど。

 でないと休みの日に働きかねない。

 そんなことしなくても食料は備蓄分や商売に使う用のがガンガン溜まってきている。


 これで技術が身についたら物作りも仕事として加えることにしよう。

 そんな訳で皆が見守る中、自動車の製作に取り掛かった。


「「どんなのができるんだろうね」」


 メリーとリリーの双子がワクワク顔で見ている。

 声には出さないだけで他の皆も似たようなものだ。


「ん? 主よ、今日の試作も模型サイズからか」


「ああ」


 バイクでのノウハウがあるから実車サイズから初めても支障はない。

 けれど皆にも挑戦してもらいたいから作りやすいものから始めるのだ。


「では私も作らねばな」


 短い返事から俺の意図を察したツバキが隣に座り込んで作業を始めた。


「デザインは動画で見たことがあるのに近い気がするのですが」


 そんなことを言ってきたのはカーラだ。


「だろうな」


 動画ではCMなんかも流すし参考にしている。


「色々と混ざっていませんか?」


 今度はキースが聞いてきた。


「まんまコピーじゃ面白くないだろ」


 全体的なフォルムは5ドアのファミリーカーを参考にした。

 車高を調整できるようにするので、上げるとSUVに見えなくもないと思うけど。

 サイズは大きめだが乗員となる自動人形を横に並べていない現段階では誰も気付いていない。


 モーターとホイールの一体型という発想はそのまま採用したけど思ったほど簡単ではない。


「主よ、モーターを回す以前にサスペンション機能の調整が厄介だぞ」


 ツバキが作業中にしては珍しく愚痴ってくる。


「2輪と4輪じゃ重量もバランスもまるで別物だからな」


「ふむ、まるで参考にならんと思った方が良いか」


 俺の一言ですぐに切り替えられるとは着実に成長しているな。

 西方の職人たちとの技術格差は広がる一方だ。


 この状況を上手く利用すればドワーフをスカウトできるかもしれん。

 希望者に技術指導して……

 まあ、まずはガンフォールに話を通してからになるか。


 色々と考えることが多いけど模型の方は順調に仕上がっていく。

 皆に見せるため作業スピードは速くないこともあって【多重思考】スキルを使わなくても余裕がある。


「ほい、完成」


 とりあえず色々な条件で走らせるためにコースを設置した。

 地魔法で格納庫内の一部にちょっとした山岳系のラリーコースをセッティング。


「「「「「おお───っ!」」」」」


 サイズがサイズだけに車の完成時にはなかったどよめきが起きた。


「バイクの時より本格的ニャ~」


「でも、これだと死角が一杯なの」


「大画面モニターで見られるようにするみたいだよ」


「「色んな場所に自動人形がいるの」」


 これで死角を潰す訳だ。

 ついでにドライバー視点とゲームのように車を斜め上から見下ろす視点も見られるようにする。


「きっとカメラマン代わりにするんだよ」


 子供組の観察眼は侮れないね。


 さっそく自動人形に乗り込ませる。

 シートベルトの代わりに用意したエアバッグパッドのバーを下ろした。

 デザイン的には大きく異なるがジェットコースターのバーを参考にしたものだ。

 両脇からバーが出てきてエアバッグパッドに接続。

 通常時はそこまでガチガチにホールドしないが強いGがかかった時や衝突が予測される場合などで柔軟に変化する代物だ。


「それじゃあカウント始めるぞ」


 ざわついていた周囲が静まりかえる。


「3・2・1・ゴー!」


 白い車が急発進でスタートした。

 多少ホイルスピンしたようだけれど、まずまずの滑り出しだ。

 荒れた路面だが力強く登坂していくのが頼もしい。

 ブレーキランプが灯り減速、そしてコーナリングを決めていく。


「ねー、陛下」


 シェルティーなパピシーのシェリーが背中の羽根をぱたぱたさせながら首を傾げている。


「何かな」


「どうして曲がる前に後ろが赤くなるの?」


「あれはブレーキランプだ。ブレーキペダルを踏んだときに灯るようにしてある」


「ふーん」


 歯切れの悪い返事はブレーキランプの必要性がわからないからだろう。


「必要ないように思えるか?」


「うん」


「だが、すぐ後ろに別の車が走っていたら?」


「追突するニャ」


「危ないの」


「「危ないよ?」」


「そっかー。だから赤いブレーキランプが必要なんだね」


 シェリーと一緒になって首を傾げていた子供組が全員で大きく頷いている。


 そんなことを話している間にも車はグングンと小さな山を登っていく。

 日本の一般道では考えられない急な坂なども力強く走っていた。

 そのうち登り切ってしまった車は下り坂に向かって加速する。


「さあ、面白いのはここからだぞ」


 皆キャーキャーと声援を送っている。

 下りに入って最初のコーナーでギリギリまでタイミングを遅らせたブレーキング。

 そこからテールを振り回す挙動でコーナーを抜けていった。

 4駆だからグリップで走ると思ったら大間違いなのだ。


「うわー、滑ってるニャ!」


 三毛猫なケットシーのミーニャも大興奮。

 他の皆も歓声を上げている。

 曲がるたびに歓声が上がるから、いつもは静かな格納庫内がやけに賑やかだ。

 山岳コースを1周する頃には最高のボルテージになっていた。

 作った甲斐はあったかな。


読んでくれてありがとう。

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