1428 何処にいる?
「うーん」
カーターがモニターを見ながら唸った。
何か納得のいかないことがあるようだ。
「だとすると、あの状態のまま放置しているのは何故なのかな?」
助からないのであれば攻撃を躊躇する理由がないとカーターは言いたいのだろう。
他の面子も頷きはしないものの同じことを感じている雰囲気である。
「色々と確認してるんだよ」
「動けなくしたのに?」
「ゴーレムどもは言葉を発していないのに連携が取れていたよな」
「そうだね」
「ということは念話のような連絡手段を持っていると考えるべきだ」
「「「「「おおっ」」」」」
驚きの声が周囲から上がる。
いま知ったかのような反応だ。
実際、そうなのだろう。
気付いていたのはカーターとヴァンだけだ。
カーターは静かに頷き、ヴァンは短く瞑目した。
「だけど、それとどういう関係が?」
さすがのカーターもそこから先は予想がつかないらしい。
「そういうのを使って遺跡ごと自爆することもないとは言えないんだよ」
「「「「「ええっ!?」」」」」
再び驚きの声が上がる。
今度はカーターも一緒になって驚いていた。
「大事なものはどんな手を使っても死守しようとするような奴が作ったゴーレムだぞ」
奴隷として登録した者に限るものの人間を部品としてしか見なしていない。
その冷徹さを忘れてはいけない。
「そうだったね」
自爆攻撃があり得ると知ったカーターは渋い表情になった。
「守り切れないなら破壊しても不思議じゃない訳だ」
絶対にそうだとは言わない。
が、人を道具扱いしている時点であり得る話として考えておくべきだろう。
「それでハルト殿はどれだけの被害が出ると考えているんだい?」
当然の疑問だろう。
特にモースキー組にとってはな。
シュワちゃんなんかは必死の形相で聞き入ろうとしている。
「それが分からないから、うちの面子が調べているんだよ」
「そうなのかい?」
「ゴーレムどもは全員で拘束している訳じゃない」
「「「「「えっ!?」」」」」
カーターやヴァン以外から驚きの声が上がる。
「拘束しながら調べ物をする方が難しいんじゃないかな」
苦笑しながら語るカーター。
ゴーレム本体だけを調べるなら、そう難しいことでもないけどな。
まあ、話がややこしくなるのでツッコミは入れない。
驚いていた面々も今の言葉で納得したようだし。
「あのゴーレムどもを拘束しているのは、ここに一度戻ってきた者たちだけだ」
「「「「「ええっ!?」」」」」
今度はカーターも一緒になって驚いていた。
カーターにとっても予想外だったようだ。
「一度戻ってきたって……
避難していた使用人たちを引き上げた時のかい?」
「それ以外に誰も戻ってきていないだろう」
「本当に彼女たちだけなんだ」
カーターは幻でも見てしまったかのように呆然とした面持ちとなっていた。
「地上に残っている気配はそれだけだから間違いないぞ」
「そんなことまで分かるのかい?」
「まあね」
その気になれば神級スキルの【天眼】を駆使することで丸分かりになるんだが。
そこまでするほどのことはない。
俺だけ見えても意味がないしな。
『ん?』
ヴァンが初めて落ち着かない素振りを見せた。
すぐに元に戻ったからカーターは気付かなかったようだけど。
「何か気になるか?」
故に俺の方から声を掛けてみた。
「いえ……」
まさか声を掛けられるとは思っていなかったのか、否定はするが言い淀んでいる。
「気になることがあるなら私も知りたいな、ダファル」
カーターから要求されると嫌とは言えないだろう。
ヴァンは観念したように話し始めた。
「今、ヒガ陛下は地上に残っている気配は、と仰いました」
その言葉にカーターが「あ」と短く声を漏らす。
他にもシュワちゃんが気付いたらしく、目を丸くしていた。
その他の面子はよく分かっていない者たちが多い。
首を傾げたり困惑した顔になったりしている。
「他の方々は地下にある遺跡に向かわれたということでしょうか?」
「正解だ」
俺の肯定を受けてモースキー組がギョッとした顔をする。
どうやって、いつの間に、という驚きに支配されているのは間違いあるまい。
「地魔法で侵入したのは魔力の流れで分かった。
ゴーレムたちが索敵を中断した隙を突いたからバレてない」
でなきゃ小ゴーレムが総出で探そうとしたりはしないだろう。
まあ、遺跡の方に侵入を察知するような警備システムがあればアウトだったとは思うが。
そこまでしていないであろうことは事前に想像がついていた。
でなきゃ、この国の連中はゴーレムを地上に持ち出すことはできなかっただろう。
それ以前に遺跡に侵入した時点で排除されていたはずだ。
警備はゴーレムで充分と古代人が判断したと考えられる。
となると、ゴーレムの持ち出しをよく許容できたものだとは思うがね。
おそらくではあるが、地上に出すだけならセーフだったのではないだろうか。
今回のように地上で迎撃することも考慮していたようだし。
ただし、地図上で遺跡の範囲外に出てしまうとアウトってところか。
戦争に持ち出そうとしていたら、どうなっていたことやら。
「被害がどれだけ出るか判明するのに時間はかからないと思う」
「さすがだね」
軽く苦笑いするカーター。
「つまり、自爆しないように処理できる訳だ」
「被害は少ない方がいいだろ」
この言葉を受けてモースキー組の方から一斉に安堵の吐息が漏らされる。
自国のことだから当然と言えば当然か。
「確かにね」
そう言いつつ頷いてからカーターは「あれ?」という顔をした。
「ハルト殿たちは被害規模の想定ができているのかな?」
「具体的に見積もっているわけじゃないさ。
ただ、何度か古代人の発掘品は見てきているからな」
なんとなくだが想像がつくのだという体で説明した。
「ちなみに最悪の場合はどうなっていたと思う?」
「王都は灰燼に帰しただろうな」
「「「「「──────────っ!」」」」」
モースキー組が声にならない悲鳴を上げていた。
「もちろん、最悪の場合はだ」
この言葉を付け足すことでパニックに陥ることだけは回避できたが。
「古代人は無茶苦茶だね」
苦々しげな顔をしてカーターが言った。
だが、古代人をひとくくりにして考えるのはどうだろうか。
「そうか?」
だから俺は疑問を呈した。
「え?」
俺の返事にカーターは困惑の表情を浮かべる。
予想外の返事だった訳だ。
カーターにしては考えが浅いというか雑すぎる。
おそらく遺跡の主であった古代人の極端な考えに心の均衡を乱されたのだろう。
「こういうことをするのは全体の一部かもしれないだろう?」
俺の言葉を受けてカーターは一瞬だけ目を丸くさせた。
「言われてみれば……」
思い当たることがあるという顔になる。
そして次の言葉で苦笑した。
「今の時代だってクズはクズだし、そうでない者たちもちゃんといる」
「そうだね」
それは、どうして忘れていたのだろうかという自嘲が含まれた肯定だった。
「碌でもない連中は嫌というほど見てきた」
「ああ、そうだな」
俺の知る限りでは、まずエーベネラント王国を支配しようとしていた自国の貴族。
トーテムポールみたいな名前の奴だった。
俺は骸骨野郎として認識していたけど。
自らをヴァンパイアにしてまですべてを手に入れようとしていたバカだ。
分不相応な野心を抱いていた上にカーターの姪であるフェーダ姫を付け狙っていた。
他にはスケーレトロ王国やラフィーポ王国の連中だな。
スケーレトロは戦争を吹っ掛けてきたり。
あの時は戦闘狂の脳筋が面倒だった。
称号に[真の殺人鬼]なんてつくような輩だからな。
ラフィーポはあわよくばと乗っ取りを企てたり。
まともに制御しきれないアンデッドを使おうという神経がどうかしていた。
確かに碌でもない連中ばかりだ。
生き残った両国のクズ連中は山送りこと強制スローライフの刑にするしかなかったし。
死ぬまで過酷な環境で苦しまねば、虐げられてきた人たちが割に合わないもんな。
ただ、今回の場合はそれを実行しようにもできない輩が多い。
地方の領主連中以外はすべて死んでしまっているからな。
家族は残っているか。
まともな人員が残るとは思えないが、そこは確かめないといけない。
万が一にもまともな者がいるなら即座に貴族として採用することになる。
どう考えても、今回の件で人手不足になるのは目に見えているからな。
そうでない場合は、もちろん山送りである。
地方領主でアウト判定された連中共々な。
それに関しては後から合流した面々がジャッジしてきたので確保済みだ。
魔法で眠らせて共用の倉に放り込んである。
その連中に関してはローズが判定済みだ。
全員がアウトで山送りが確定している。
自業自得なのは言うまでもない。
読んでくれてありがとう。




