1424 ゴーレム、次の段階へ
今のところ偵察に出した自動人形は異変を察知していない。
追い詰められたゴーレムの登録者たちが次々と捕まっては取り込まれているがな。
だが、これは既に確認済みのことである。
何を目的としているかは既に分かっていることだ。
故に異変とは認識していない。
自業自得な連中を助ける気にはなれないしな。
それに、ゴーレムたちは登録外の面子には見向きもしなかった。
使用人やメイドたちを回収する時も妨害されずに済んだし。
それでも何かある。
俺はそう感じていた。
登録者だけとはいえ無理やり操縦席に押し込められているからな。
ある意味ゴーレムに食われたも同然だ。
ただ、阿鼻叫喚の地獄絵図と言うには生易しいと感じるのだけど。
それは流血がないせいだろう。
容赦なく引きずり込まれるせいで腕や脚の骨折とかは普通にあるがな。
今のところ首ポキはないけれど。
そんなものを目撃すれば、さすがに注意喚起くらいはする。
え? 今回は放任主義で行くんじゃないのかって?
それで行きますよ。
でも、言葉で警告くらいはしたっていいじゃないか。
何かが減ったりする訳じゃないんだし。
現状は報告するほどの何かは発生していないから何もするつもりはない。
起きているのは皆も知っているようなことばかりだ。
あえて言うなら、そろそろ強制収容が終わりそうということくらいか。
だが、これを皆に教えることはない。
訓練もかねているのだ。
自力で察知してもらわないとな。
決してエリスが怒るからではない。
これで対応できないようなら笑顔で怖い感じになるだろうけど。
え? やっぱり怒るんじゃないかって?
対応できないならね。
できると思うからエリスが怒るような結果にはならないと確信している。
もしも、対応できなければ特訓コースは確定だ。
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どのくらいの時間が経過しただろうか。
ゴーレムたちが誰も追わなくなった。
追い詰められていた連中の姿もない。
すべてゴーレムの操縦席に引きずり込まれた。
触手じみたコードでグルグル巻きにされているので体の自由は利かない状態だが。
昔のアニメ、銀河の騎士レッカマンの変身シーンを思い出してしまった。
古すぎてリアルタイムでは見ていないがね。
とにかく登録者をすべて取り込み終わったということだろう。
ようやくという気がする。
が、すべてのゴーレムに登録者が取り込まれた訳ではない。
城の出入り口を固めるゴーレムはずっと動かないままだったし。
まあ、あれは単なる壁と考えた方がいいのかもしれない。
とはいえ、向こうにとっては万全とは言い難いだろう。
需要と供給のバランスが取れていないせいだ。
ザッと見て登録者を取り込んだのはゴーレムの総数からすると3割程度か。
『さて、どうする?』
俺なら何か他にも用意したくなる状況だ。
魔法だけで攻撃すると、あっと言う間に魔力が尽きるだろうし。
せめて武器くらいは欲しい。
人よりも確実に上背があるのだから大剣を持つだけでも確実に攻撃力は上がる。
間合いも深くなるから並みの兵士では相手にならなくなるし。
少々の攻撃ではゴーレムの装甲を傷つけることさえ困難だし。
それにダメージを気にしないどころか恐怖心もない。
中に放り込まれた連中がどうかは知らないが。
防御無視の攻撃一辺倒。
しかも恐れを知らない。
一般兵にとっては、これほど恐ろしい者もないだろう。
殺戮マシーンと言ってもいいかもしれない。
だとすると、そのまま襲いかかってくることも考えられるか。
こちらは魔力で力量差を見極められないよう抑えているからな。
というより内包型の魔法を使う俺たちは普段からそういう状態だ。
それでも集団で集まると、今回のように察知されたりはするのだけど。
いずれにせよ古代人がゴーレムをどう仕上げているかで決まってくるだろう。
用心深ければ、いま考えていたように武器を持たせるはず。
その場合は剣ではないことも考えられる。
あのゴーレムはそこまで器用なようには見えないし。
刃筋を立てて切るという行為はかろうじてできる程度のはずだ。
棒立ちの相手なら、それでも通用するだろう。
が、戦闘行動中に完全に動きを止めてしまう兵士がどれほどいるのか。
結果として、あっと言う間に剣をダメにしてしまうことになる。
それならば槍を持たせて突く方がマシだろう。
ただ、長柄の武器は取り回しが悪い。
密集した戦闘になると非常に高度な練度が要求されてしまう。
他にも刺さり具合によって抜けなくなるトラブルが起こりうる。
ゴーレムの膂力であれば頻発してもおかしくない。
そうなると棍やハンマーが無難なところか。
刃が欠けることを気にしなくて良いのは大きいからな。
折れたり曲がったりといったことも少なくなるだろうし。
剣や槍と違って、そういう状態になっても使えない訳ではない。
扱いにくくはなるけれど。
そんなことを考えている最中にゴーレムは動き始めた。
『ようやくか』
いくつかのグループに分かれて整列し始める。
が、それは予想外な整列の仕方であった。
『んんっ?』
思わず声に出してしまいそうになったさ。
先頭は狭めのV字なんだが後方でも更に枝分かれするような感じなのだ。
しかも、枝分かれの方は真横に伸びている。
『訳が分からんな』
奇妙な整列の仕方に困惑せざるを得ない。
だが、ゴーレムたちの奇行はそれだけでは終わらなかった。
『ふぁっ!?』
今度は先程よりも更に訳が分からない。
せっかく隊列を組んだのに寝転がり始めたのだ。
何が何やらサッパリだ。
【千両役者】スキルの助けを借りて、どうにか声は出さなかったがね。
『何をするつもりだよ?』
真っ先に思いついたのは小学生の時に運動会でやった組み体操だ。
そのまんまというわけではないが、それっぽい雰囲気だったのでな。
昨今は危険度が高いということで簡略化されているみたいだが。
地区によってはやらない所もあるようだし。
ただ、ゴーレムたちは運動会に参加するのではない。
これから始まるのは戦闘だ。
俺たちにしてみれば過剰反応なんだけどな。
それでも向こうは防衛行動に入ろうとしている。
かなり遅いと言わざるを得ないが。
そんな状況下で組み体操を始めるとか意味不明すぎる。
しかしながら、他に何が思いつく訳でもない。
考える猶予時間はそれほど与えられなかった。
俺が予測しようとしている間もゴーレムは次の段階へ移ろうとしていたからな。
ゴーレムの関節の隙間からコードが伸びていく。
触手のように蠢いていて実にキモい。
そして別々のゴーレムから伸びたコードが重なり合った。
ただ重なるだけではない。
複雑に絡み合い、やがて結合していく。
ついには、どの部分までがどちらのゴーレムから伸びたコードなのか分からなくなった。
だが、そこで終わらない。
更にコードが増えていく。
またしても絡み結合する。
それの繰り返しだ。
どのゴーレムも例外なく、そこかしこで際限なくコードを増殖させていた。
気が付けばゴーレム本体がザワザワと蠢くコードで覆われている。
ここまで来ると見た目では個々のゴーレムの判別がつかない。
もはや毛で覆われたひとつの塊と言うべき状態だ。
そして絡み合ったコードが境目をなくしていく。
『触手の次は液体金属かよっ』
思わず内心でツッコミを入れていた。
盛りすぎだ。
触手テイストに比べれば気持ち悪さは控えめなんだが。
この段階まで進めば何をしていたのかは嫌でも分かる。
数だけで勝てそうにないなら大きくなればいい。
そう、合体による巨大化だ。
本来であれば燃えるキーワードがふたつもあるのに、まったくテンションが上がらない。
相手が敵だからではない。
燃えるはずの合体シチュエーションでここまでキモいと思ったのは初めてだからだ。
そんなのが、そこかしこで行われている。
『あれはないだろう!』
憤りすら感じたさ。
形が安定してスッキリした姿に変身しても関係ない。
せめて腕や脚は折り畳むとかの変形ギミックが見たかった。
まあ、向こうは見せるために合体した訳じゃない。
俺がいくらクレームをつけても変わることはないしな。
ちなみにデザイン的には悪役系である。
機甲警察パトレイダーに出てくるグリフィーっぽい。
サイズ的には大中小で分かれてはいるが。
小でグリフィーとほぼ同等か。
これが最も多い。
中はグランダムに近いのが数体。
大はサイキックグランダムくらいか。
これは1体のみである。
当然と言えば当然か。
いくら何でもデカすぎるからな。
まあ、大きさだけで脅威などは感じなかったが。
読んでくれてありがとう。




