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1420 放火魔はそこにいる

「ニャー!」


 突如、ミーニャが興奮した声を発した。


「放火魔ニャ!」


「何だと!?」


 聞き捨てならない言葉だ。

 放火魔と言うからには、ゴーレムではないだろう。


 まあ、ゴーレムが積極的にそんな真似をするとは思っていなかったが。

 むしろ人間である方が納得できるというものである。


 ただ、そうなると火をつける相応の理由が必要になってくる訳で。


「貴族が火魔法でゴーレムを攻撃したニャー」


 そんなことを言いながらモニターの片隅を指差した。

 その声に皆が一斉に視線を向ける。

 小さく分割された映像のひとつだ。


 そのためか元から注目していた者は限られていたようだ。

 子供組だけだったと言った方が正確か。


 そのせいだろうか。

 皆が見た時には炎の痕跡は何処にも見当たらなかった。


 何処かに火がついた様子もない。

 周囲が石造りで木材が使われていない場所だったからというのもあるだろう。


「放火魔って感じはしないわね」


 レイナが言った。

 信じていないというよりは、火の手が上がっていないと指摘する感じだ。


「ホントなの。

 ゴーレムには弾かれてたの」


 ルーシーがミーニャの目撃情報が本当だったと証言した。

 両手を広げてブンブンと振っているあたり必死さを感じさせる。


 ただ、同時に可愛らしさまで伝わってくるので微笑ましかったりするんだけどな。

 映像の向こうの状況が状況だけに笑みを浮かべる者は誰もいなかったけど。


「城の奥に逃げながら使ってたよ」


 シェリーもそれに続く。

 ルーシーと同じように腕をブンブン振っている。


『くっ』


 抗いがたい何かを感じるが、どうにか我慢した。


「「なり振り構わない感じだった」」


 ハッピーやチーもだ。


「「自殺行為なことするよね」」


 やはり腕はブンブンで必死である。


『くうーっ!』


 震えがきそうなくらい我慢して子供組の愛らしさに抗しましたよ。

 決してローズの真似をした訳ではないのだ。


 そんなことより何だかプルプルしている者たちが大勢いるんですけどね。

 きっと内心で噛みしめているのだろう。


 俺もそんな感じだったりするので気持ちは分かる。

 ちょっとコメントはできそうにない。

 この状態から抜け出すのに、ちょっと時間が欲しいところである。


 そんな中でも復帰するのが早い面子がいた。


「どうやら火災の原因はゴーレムではないようですね」


 エリスだ。

 さすがと言うべきか。

 プルプル状態に陥らなかった訳ではないのにな。


「自殺行為というのは、とてもよく分かります」


 ハッピーとチーの意見に同感だとばかりに嘆息しながら続けた。

 その意見に反対する者はいない。


「擁護するつもりはありませんが、現場は想像以上に混乱しているのでしょう」


 マリアが前置きを入れつつ評した。

 それは客観的に見ているだけだと言いたかったからか。


「あの人たちは火魔法しか攻撃手段がないんじゃないでしょうか?」


 クリスが小首を傾げつつ言った。

 その意見には頷かざるを得ない。


 あの連中であれば、物理攻撃でゴーレムに傷を負わせるのは難しい。

 そのくらいの判断力は残っているようだ。


 まあ、結局は通じないんだけどな。

 そこで魔法の出番となる。


 本来であれば火属性以外でも攻撃手段になり得る魔法はいくらでもあるのだが。

 攻撃魔法イコール火魔法。

 そんな図式が固定概念としてあるのだろう。


 西方人なら充分に考えられることだ。

 特に貴族なんかはな。

 攻撃魔法といえば火属性しかないと短絡的に考えている節がある。


「それにしても、よく魔法なんて使えたね」


 トモさんが感心していた。


「貴族が絶対に魔法を使えないという訳ではないと思いますよ?」


 フェルトが首を傾げながらもツッコミを入れる。

 自分で言っておいて、微妙に信じ切れないようだ。

 今まで見てきた敵対貴族で魔法が使えたのっていなかったからな。


「使い捨ての杖を使ってたニャ」


 ミーニャが言った。


「魔法が出た後は杖に填め込まれた魔石が粉々になってたの」


 ルーシーが補足説明する。


「あんなに効率の悪い魔道具、見たことないよっ」


 シェリーがムプーと鼻息荒く怒っている。


「「魔石が勿体ないよね」」


 ハッピーとチーが同意する。

 シェリーがしきりに頷いていた。


「勿体ないのは分かるがな」


 嘆息するツバキ。


「所詮は余所の国のことだ」


 同感である。


「もし、この国が友好国だったなら問答無用でその貴族をぶちのめしに行ったがな」


『もしもしぃ?』


 なかなか不穏なことを言ってくれるものだ。


 友好国の貴族をぶちのめすとか、関係悪化一直線だろうに。

 気持ちは分かるけど。


 被害を顧みない姿勢はいただけないからな。

 幸いにして逃げているだけの使用人やメイドに大怪我をした者はいないけどさ。

 せいぜいが転んで怪我をした程度である。


 火魔法の巻き添えを食らったような者はいない。

 まだと言うべきかもしれないが。


 いずれにせよ、現状でこの国と友好関係が築けるとは思ってはいない。

 腐った考えの上層部をそっくり入れ替えた後なら考えるがね。


「それより気にすべきは、あちこちで上がっている火の手の方でしょう」


 そう言ったのはカーラだ。


「同じような魔道具がいくつかあるようですが」


 シュワちゃんの方を見るカーラ。

 それに気付いたシュワちゃんが慌てて頭を振る。


「そんな恐ろしいものがあったとは知りませんでした」


 ウソをついているようには見えない。

 まあ、この状況でウソをつくメリットは何もないだろう。

 それ以前に、この男がウソをつく状況が想像できないけれど。


「では、貴族で魔法が使える者は?」


 続けざまのカーラの問いに、すぐ答えを返そうとしたシュワちゃんだったが。


「何人かいると聞いたことは……」


 途中でハッと何かに気付いたような顔をしたかと思うと、言葉が止まってしまった。


「その様子だと火魔法の使い手として噂されていた程度の話ですね。

 今の状況を鑑みるに、自力で魔法が使えるか怪しくなってきたというところですか」


「はい」


 硬い表情で答えるシュワちゃん。


「おそらくは魔道具だよりなんだと思います。

 魔法を使っているところを見た訳ではありませんので」


 推測の域を出ないが、シュワちゃんの言う通りなのだろう。

 それは魔道具の数だけ被害が出る恐れがあることを意味する。


 逃げ惑う使用人やメイドからすれば迷惑な話だ。

 何時、火災に巻き込まれるか分かったものじゃないからな。


 とはいえ俺たちにとっては都合が良い流れになっている。

 使用人やメイドたちは屋外の広い場所へと避難しつつあるからだ。


 一方でゴーレムに追われている連中は屋内の奥へ奥へと逃げている。

 現状は完全に分断できている。

 人質や人間の盾にされる恐れはなくなったものと考えていいだろう。


 え? 自国の人間を人質にするバカはいない?

 火災が発生することを厭わず火魔法を使う連中に理屈は通じないからな。


 侵攻作戦を実行するにあたり碌でもない作戦を考える連中だし。

 錯乱していなくても、やりかねない。


 現に──


「こっちでも火魔法を使ぉたアホがおるで」


 アニスが別の分割画面を指差しながら言った。


「私も見た。

 やはり使い捨ての魔道具だ」


 リーシャが補足するように証言する。


「見逃したー」


 地団駄を踏みそうな勢いで歯噛みするレイナ。


「ひとつの映像に集中しすぎ」


「そうだな」


 ノエルとルーリアに指摘されていた。


「そんなこと言われたって、つい見ちゃうんだからしょうがないでしょ」


 ぷぅと頬を膨らませるレイナである。


「まあまあ、たぶんまた見られますよ~」


 ダニエラがなだめている。

 が、それは城内の被害が増えることを意味しないだろうか。

 同感ではあるんだけどさ。


 本格的な火災になれば使用人やメイドたちにも被害が出そうなのが問題だ。

 それと火の粉が風に乗って城の外へ飛び散ることも懸念される。


『考えなしにやらかしてるみたいだからなぁ』


 モースキーの貴族連中が自分の首を絞めているだけだから知ったことではないがね。


「レイナちゃんは、こういうところが子供っぽいよね」


「ねー」


 メリーとリリーが顔を見合わせて追い打ち的なツッコミを入れていた。


「くっ」


 悔しそうに声を漏らすレイナ。

 ここで目くじらを立てるとカウンターで更に子供扱いされると踏んだようだ。

 賢明な判断である。


読んでくれてありがとう。

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