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1410 処遇と方針

 結局、モースキー組は全員が合格とはならなかった。

 本人たちは問題なかったんだけどな。

 やはり身内込みでとなると話は変わってくる訳だ。


 碌でもない親を持ったものの反面教師にしたとか。

 幼馴染みが悪い仲間と連むようになって変わってしまったが縁が切れないとか。

 概ね問題ないが遠い親戚筋に重犯罪を厭わない盗賊がいたとか。

 他にも色々。


 事情が各々で違ってくるのはむしろ当然だろう。

 共通して言えるのは身内が多いほど何かしら問題が出てくるってこと。


 まあ、それは仕方のないことだとは思うが。

 ローズが合格判定を出したのは生き残ったモースキー組の3割から4割の間くらい。


 身内がいる中でこの数字は予想以上だ。

 シュワちゃんのようなぼっち系が何人かいたのも影響しているとは思うけどね。


 そういう面子は元からシュワちゃんの部下だったのが、ちょっとした驚きだった。

 ぼっちだけ集めてどうするんだと最初は思ったさ。


 が、鑑定して調べてみたら理由があった。

 有り体に言ってしまうと似たもの同士で上の連中から煙たがられていたのだ。


 故にひとつの部隊に集めて監視していたらしい。

 話を聞いた限りでは、される側が普通に気付くぐらいだった。

 嫌がらせも兼ねていたのかと最初は思ったくらいだ。


 が、よくよく話を聞くと嫌がらせのレベルを超えていた。


 馬車が足りているのに何かしら理由をつけて重量物の運搬をさせるとか。

 大事な物資なので直接守るためという理由を聞かされたときは心底呆れたさ。

 そんなの馬車で運んでそれを守ればいい話である。


 それと長時間の夜番を連日のように押し付けるとか。

 しかも、これは記録に残らないような方法がとられていた。

 次の交代の相手が大幅に遅刻したり。

 急に口頭で交代を命じられたり。


 食事においても酷いのがあった。

 普通に配給されるものではなく何日か前の残飯を食べさせられたとか。

 前日のものでも充分に悪意を感じるというのに、これである。


 それから実際に暴力が振るわれることもあったようだ。

 耐久訓練と称して一方的に滅多打ちにするとか。


 訓練ということにしておけば何をしても許されると思っているのだろうか。

 真意を問おうにも実行していた連中は跡形もなく消えてしまった。


 今となっては調べようがない。

 命令していたであろう上の連中も現場に任せっぱなしだったろうしな。


 他にも嫌がらせを超えた仕打ちの数々を聞かされた。

 聞いているだけで反吐が出そうになったのは言うまでもない。


 しかも、これらが単体で行われることは希だったという。

 組み合わせて実行するとかシャレになっていない。


 これが現代日本であったなら職場内イジメだと言われただろう。

 ただ、イジメ止まりである。


 証拠不十分で指示していた大本を訴えることはできない。

 そういう環境に置かれていたのは生き残った面子だけだし。


 そんな訳でブラック企業とは言い切れないんだよな。

 より悪質であるとは思うがね。


『よく我慢できたものだ』


 そんなのが続けばキレてもおかしくない。

 ただ、やり返すと処罰されるというから我慢するしかなかったのだろう。

 処罰というのが極刑しかないそうだし。


 どう考えても、それが目的としか思えない。

 実に陰湿だ。


 そうなると脱走する方が生き残れる可能性が高いのだが……

 簡単にできるなら、とっくに逃げ出していただろう。

 露骨に監視されていたから無理があった訳だ。


 というより脱走させるように仕向けていたっぽい。

 それならそれでキレたとき以上に処罰しやすくなるからな。

 脱走兵だから言い逃れはできないし。


 敵前逃亡なんて処刑するには格好の理由付けになる。

 それが分かっているから耐えるしかなかったのかもな。

 イジメをする側もそれを承知しているからエスカレートしていったらしい。


 消滅した連中のクズぶりが、またひとつ明らかになった。

 耐え抜いた面々は本当に辛抱強いと思う。


 うちに来ても頑張ってくれるだろう。

 是非とも来てほしいと思った。


 彼らはこの一件が終わってから声を掛ける予定である。

 ちなみに不合格者も惜しいと言わざるを得ない面子が多かった。


 近親者に問題のある面子は全体の1割もいなかったからな。

 ただ、この面子は意思確認して希望するなら本人のみ他国に亡命させる予定である。


 残るは近親者に問題のない面々である。

 こちらも亡命を呼びかける。

 問題のない家族だけで遠い場所へ移住すれば妙なことにも巻き込まれなくなると思うし。


 絶対とは言えないけどな。

 何かの拍子に居場所が特定されて問題ありの連中が押し掛けてくる恐れは皆無ではない。

 確率的には恐ろしく低いとは思うがね。


 それと別の問題がある。

 亡命の候補地だ。


 現状でモースキーから可能な限り遠くとなるとゲールウエザー王国しかない。

 大商人であるモルトに手伝ってもらえば、余所の国も考えられるとは思うが。


 それでもゲールウエザー王国より遠い国はないだろう。

 特定されても来られないくらい遠く引き離すにはね。


 それとゲールウエザー王国だと国が事情を知った上で亡命させられる。

 国王同士で話が通せるからな。

 他の国とは国交がないから、そういうことができない。


 他にそれができるのはエーベネラント王国だけだ。

 だが、距離的な問題から隣国は避けたい。

 思わず溜め息が漏れるかと思ったさ。


 ただ、今回の事情を知らないクラウドやダニエルに話を通さないといけない。

 これは頭の痛い話だ。


 手間がかかるということもあるが、そんなことは些細なことだ。

 それよりも丸投げに近い格好になってしまうのが問題である。


 今回の件にゲールウエザー王国は関わっていないからな。

 友好国の危機であったことは間違いないがね。

 ファックスで速報ぐらいは流しているが、それだけだ。


 まさか自国に何か支援要請があるとは思っていないだろう。

 今までだって、そうだったからな。

 ミズホ国が手助けしているから大丈夫と思われていそうである。


 今回に限っては助力を求めることになるんだけどな。

 せめてカーターが借りを作る形になるのだけは避けるべきだろう。


 まあ、これに関しては俺が考えすぎていた。

 あとで判明したことだけどな。


 素行に問題がないなら歓迎するって言われたのだ。

 変な連中は自国民を保護する観点からも排除するってさ。

 国民の候補者がまともで職人候補者までいるというのが大きかったみたいだな。


 最終的に誰も誘いは断らなかった。

 誘いをかけた面々は、自国の酷い政治に辟易していたようだ。

 一部の問題ある身内を抱える者たちはそれに加えて、そういう身内にも。


 逃げ出せるなら逃げ出したいと思っていたらしい。

 今の時点で俺はそこまで読んでいなかったんだけど。


 まあ、結果オーライだ。

 ちなみにシュワちゃんもオーケーした。


 スカウトされたのは自分だけじゃないというのが効いているみたい。

 しかも部下の家族ごとだと知った時は唖然としていた。


 そこまでフォローするとは思っていなかったんだろうな。

 全員と面談して家族会議もしてもらった上で意思確認もしたのが驚きだったようだ。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 物資や馬を輸送機に積み込んで先に飛び立たせる。


「「「「「……………………………………………………」」」」」


 モースキー組は唖然呆然である。

 ポカーンと大口を広げて空を見上げるものが多数いた。


「さて、諸君はこちらだ」


 俺たちが乗ってきた輸送機を指差す。


「「「「「えっ!?」」」」」


 まさか自分たちが乗るように言われるとは思わなかったみたいだな。

 物資や馬を先に持ち去る格好になったのが良くなかったのだろうか。

 俺としては先に問題なく飛び去るのを確認させたつもりだったのだが。


 不安感が取り除けるかと思ったら逆効果だったかもしれないとはね……


「何を驚いてるのかな。

 これには俺たちが乗ってきたんだから心配は無用だぞ」


「「「「「……………」」」」」


 物凄く不安そうな顔をされてしまった。

 おそらく無自覚だと思う。


 無理もないかもしれないな。

 生まれて初めて空飛ぶ魔道具を見せられたのだから。


 ここで俺たちが乗ってきたのだから墜落することはないと言っても意味はないだろう。

 いくら言葉で説明しても本能に根ざしたものは動かせまい。

 彼らにとっては得体の知れないものだからな。


「とにかく乗ってもらおうか」


 そう言うと、一応は従ってくれた。

 シュワちゃんが先頭に立ったのは言うまでもない。

 それでも足取りは重かったけどな。


 全員が乗り込んだところでハッチを閉じると、更に不安そうな空気が拡がっていく。


『そんなに嫌なものかね?』


 下手に下の映像とか見せない方がいいのかもしれない。

 高所恐怖症の者がいたらストレスで心臓がどうにかなってしまう恐れも出てきたからな。


読んでくれてありがとう。

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