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1349 お正月の過ごし方?

 正月休みは満喫したと言えるだろう。


 お節を食べて餅も色んな食べ方をした。

 定番のお雑煮もお汁粉も堪能したさ。


 焼いて食べるだけでも味付けは様々。

 醤油、ポン酢、きなこ、蜂蜜、マヨネーズなどなど。


 え? 焼き餅にマヨネーズはないって?

 そんなことはない。

 ちょっと人を選ぶ味付け方法だとは思うがね。


 え? ちょっとどころじゃない?

 マヨネーズライスを知らないのか。

 御飯に適量のマヨをかけて食べる至福の時間。


 確かに受け付けない人がいるのは知っているが。

 食べ慣れれば、チキンライスに匹敵する旨さがあると思うんだけどな。

 そこに醤油を少し垂らせば初心者も抵抗なく食べられるはずだ。


 それでもダメっていう人にとっては、マズ飯テロかもしれんがね。


 とにかく、御飯に合うなら餅もオッケーってことだ。

 俺も何個かはマヨネーズで食べたよ。

 それだけじゃなくて他の食べ方もしたけどね。


 なんにせよ、3が日は食っちゃ寝生活だった。

 お陰で城内では体重計恐怖症な面々が急増。

 乗れば悲鳴が上がる恐怖の時間の始まり。


 キャーなんてのは可愛い方だ。

 仲間内でじゃれ合いながら、ちょっと増えた体重に軽く悲鳴を上げる。

 そんな感じだったからな。


 深刻ではないのでダイエットすれば、すぐに取り戻せる領域だからこその反応だ。


 酷いと、ギャーである。

 ちょっと頑張ったくらいでは落ちない恐怖。


『まあ、自業自得の結果なんだけど……』


 俺は増えも減りもしていない。

 程々に食べていたからな。


 ちなみに本人たちの名誉のためにも誰が「ギャー」だったのかは内緒だ。


 え? それは秘密を暴露する前振りだろって?

 バカ言っちゃいけない。

 俺はまだ死にたくはないぞ。


 秘密を明かせば俺の身にも危険が迫るのは、ほぼ確定的だ。

 言える訳がない。


 それに根掘り葉掘り聞こうとするのは嫌われる元だぞ。


 え? 中途半端に話す方が悪い?

 そりゃ、ごもっとも。

 口が滑ったのは俺のミスだ。


 だからこそ、引き際は俺が決める。

 この話はここまでだ。


 他にもネタはあるさ。

 例えば羽子板とかな。

 どちらかというとハズレの話題ネタである。


 年末にあれだけ練習したのに、年が明けてからはサッパリだった。

 潮が引いたように熱が冷めたというか。

 城内の面子は誰もやろうとしなかったんだよな。

 ツッコミを入れたくなったさ。


 まあ、何をして遊ぶかは個人の自由である。

 コマを回したりとか。

 凧を揚げたりとか。

 カルタと百人一首もやったな。


 でも、城内で一番盛り上がったのは将棋大会だった。

 超早指しでトーナメント戦になってテレビ中継もされたさ。


 当初、俺はそういうことになったことを知らなかった。

 ガンフォールに呼び出されて知ったくらいだからな。


「で、誰が放送局の者たちを呼んだんだ?」


 廊下でガンフォールたちドワーフ組から話を聞く。

 会場はすぐそばの大広間だ。


 俺も顔を出さねばならないだろうからな。

 城で主催するのに王がいないのは問題がある。


 休んでいるところを呼び出されて何事かと思ったよ。


「ワシだな」


 俺の問いに答えたのはハマーであった。


「どうせやるなら盛り上げて普及させようと思ったのだ」


「バカ者がっ」


 ガンフォールがハマーを叱りつける。

 同時にゴスッという音がした。


「────────っ!!」


 声にならないうめきを漏らしてハマーがしゃがみ込んでしまった。

 ハマーが頭を抱えて座り込んだまま奇妙な踊りを踊っている。


 ガンフォール渾身の拳骨が落とされたようだ。

 これが漫画であったなら目から星か火花でも飛び散ったシーンとなっただろう。


「城内でそういうことをするならハルトの許可を先に得てからにせい」


 ガンフォールの叱責はボリュームが絞られたものになっていた。

 そして、放送局のクルーは将棋トーナメントの会場にしかいない。

 防音は完璧なので、怒鳴っても聞かれることはないんだけどね。


 城住まいでない者たちがいることに対する条件反射なのかもしれない。

 それはそれとして、だ。


「おいおい」


 ガンフォールをたしなめる。

 でないと、2発目が入りそうな雰囲気だったのでね。

 正月早々から鉄拳制裁はどうかと思うし。


「此奴が踏むべき手順を無視するからじゃ」


 ガンフォールが不満をフンと鼻息に乗せて吐き出した。


「放送局の者たちも戸惑っておったであろうが」


「そうなのか?」


 俺は迎え入れるところを見ていないので、そのあたりは分からない。


「最初はビクビクしておったわ」


「なんでさ?」


「この大馬鹿者は何の説明もなく取材中の者たちを呼びつけたと言うのじゃ」


「あー、それはビクビクもするか」


 取材には周囲に気を遣うよう口を酸っぱくして言い聞かせてあるからな。


 絶対に迷惑をかけないこと。

 意図せずそうなった時は丁寧に説明し謝罪すること。


 そういうことも徹底させている。

 故に、城から呼び出しを受けたとなれば……


「何かミスをして叱責を受けると思うだろうし」


「であろう」


 言いながらガンフォールは憮然とした表情を見せた。


「将棋のこととなると、これじゃから……」


 未だにうずくまったままのハマーを見下ろしながらガンフォールは大きく嘆息した。


「で、今は大丈夫そうだけど?」


「ボルトが説明して誤解を解いてくれたようじゃな」


「いえっ、自分では止められませんでしたので……」


 ボルトは恐縮しつつ落ち込んでいる。

 ハマーのそばについていながら、その無茶を止められなかったことを悔いているようだ。


『そりゃ、無理だ』


 ハマーとは実質的に師弟のような関係だからな。

 ボルトの性格では目上の人間を殴ってでも止めるなんてできやしないし。


 ましてハマーは将棋のことで夢中になると周囲が見えなくなるからな。

 最近は少し自制が効くようになってきたかと思っていたのだが……

 正月の雰囲気に流されて暴走してしまったようだ。


「いや、ボルトはよくやった」


 扇子を倉庫から引っ張り出してババッと広げる。


「天晴れなり」


 暗い雰囲気になったので、少しでも戻ればと思ってやってみたんだが……


「え?」


 絵に描いたようなポカーン顔で固まるボルト。


「……………」


 ガンフォールも無言で俺のことを見ている。

 ハマーはまだまだダメージが抜けていないので、こちらを見てすらいない。


『滑った』


 それも盛大にな。

 逆にそのお陰で暗い雰囲気は薄まった気がしないでもないが。

 割に合うかどうかは微妙なところだ。


 おもむろに扇子を閉じて倉庫に仕舞う。


「似合わんことはするもんじゃないな」


「じゃな」


 ガンフォールが同意した。


 ボルトは無言だ。

 無難なコメントが見つからないのだろう。

 困った顔をしている。


「とにかく、ボルトは気にしなくていい」


「ですがっ」


「ですがもよすがもないっての。

 己のできる範囲で被害が拡大しないように動いてくれたんだからな」


「……………」


 今度は何も言わなかったが、ボルトは何か言いたげである。

 決して納得した訳ではないのだろう。


 休みなのに皆の確認を取る前に強制参加にしてしまったことを悔いているようだ。

 ある意味、急な呼び出しによる休日出勤になってしまった訳だからな。


『そうは言っても、放送局のクルーを呼びつけておいてショボいとね』


 そっちの方が問題あるだろう。


「咄嗟の判断は決して間違いではないぞ。

 後になって最善を思いついたとしても意味がないしな」


 拙速は巧遅に勝るってことだ。

 これ以上を求めるのは酷というもの。


 騒動の張本人であるハマーを止めようとしてくれたし。

 止められないからガンフォールにスマホで報告しつつ次善の策で動いた。


「変に放送局のスタッフを追い返すよりは良いと思うんだがね」


「そうじゃな。

 褒められこそすれ咎められはせぬ。

 何処かの考えなしとは比べるべくもないわ」


 ガンフォールの言葉にも困った顔をするしかできないボルト。

 そばにハマーがいるからだろう。


「とりあえず、騒動を起こした犯人はハマーだけだ」


「うむ」


「よって、ハマーには今日を含め当面の間、将棋の対局禁止を申し渡す」


「妥当じゃな」


 この決定に不服申し立てしようとしたのだろう。

 ハマーが立ち上がろうとしたところで──


「─────っ!」


 痛みがぶり返したのか、再びしゃがみ込んでしまった。


「頭蓋が割れてるんじゃないのか?」


「割ってはおらぬよ。

 痛みが持続する殴り方があるんじゃ」


 器用な技を持っているものだ。

 とはいえ罰の延長になると考えれば都合がいい。


「それじゃあ、俺たちはトーナメントに参加するとしよう」


「うむ、これ以上は待たせぬ方が良かろう」


 俺たちは会場へと向かう。

 といっても、目と鼻の先の大広間だけどな。

 ボルトが不安げな面持ちでガンフォールの方を見た。


「ハマーは放置で構わぬ。

 体調不良とでも言っておけば良いのじゃ」


 現に痛みでダメージがある状態だからな。

 そんな訳でハマーは置き去りだ。


 結局、ハマーの対局は時間切れによる不戦敗ということで処理した。


 ちなみに俺とボルトは初戦敗退。

 豆腐メンタルだから勝負に集中できなかったというのはある。

 ガンフォールは準々決勝敗退。


「悔しがらせねば罰の意味が薄れるからのう」


 終わってからそんなことを言っていた。


『容赦ないなぁ』


 それくらいしないと将棋を前にした時のハマーは反省の効果が薄れるんだけどさ。

 困ったものだ。


読んでくれてありがとう。

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