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135/1785

135 更に上を狙うなら

改訂版です。

 わずか一ヶ月足らずでノエルがレベル68になった。

 妖精組には一歩及ばないとはいえ西方ならトップ冒険者として活躍できるだろう。

 まあ、本人は英雄視されるくらいまでレベルアップしたかったらしくて全然納得してないんだけど。

 一緒に訓練をしていた新国民組からすると驚きを隠せなかったというのにね。


「嘘でしょぉーっ!?」


 とはレイナの言である。


「これくらいは想定の範囲内だぞ」


「またまたぁ」


 レイナが疑わしげな目を向けてくる。


「せやで。いくら賢者はんでも冗談キツいわ」


 アニスも同意見のようだ。


「ここまでレベルアップできるほどの何かがあったとは思えないんだが」


 リーシャも首を捻っている。


「「影で特訓していたとか?」」


 メリーとリリーがそんな推測をするも──


「そんなはずはない」


 姉であるリーシャに否定されていた。


「このあたりに強力な魔物はいないはずだ」


 訓練中に簡単な狩りもさせたからミズホシティの周辺状況を理解した上での発言である。

 ちなみに魔法実習の一環としての狩りだったので回数も狩る量も少なかったことを付け加えておこう。


「不思議ですねえ~」


 ダニエラが追随するように首をかしげていた。

 西方ではここまでレベルアップするには強い魔物を倒さねばならないと思われているようだ。


「いや、魔物を倒さずともレベルアップはできる」


 そう言ったのはルーリアだ。


「「「「「ええっ!?」」」」」


 驚愕の表情で一斉にルーリアへと視線を向ける月狼の友。


「自分はさほど魔物を倒してきた訳ではないがレベル57になっていた」


「ルーリアはん、魔物は倒した数やのうて強さがレベルアップにつながるんやで」


「おそらく、それも勘違いだろう」


 そう言いながらルーリアが俺の方を見てきたので頷いてみせる。

 月狼の友の面々が目を丸くさせた。

 それだけ彼女らの常識が根強いものだったのだろう。

 だが、驚くのはまだ早い。


「魔法の修行そのものが今回ノエルが急激にレベルアップした要因だよ」


「「「「「ええ───────────っ!?」」」」」


「やはり、そうだったか」


「厳密に言うなら制御の困難な状態で魔法を使ったからだね」


 この言葉に驚愕の表情で固まっていた月狼の友の面々も我に返る。

 彼女らの表情は様々であった。

 遠い目をしたり感慨深い面持ちになったり。

 レイナなんてプラスアルファで渋い表情をのぞかせていたけど。

 飛んで来るつぶてを理力魔法の障壁で止めようとして失敗し続けた挙げ句ボロボロになっていたからね。

 つぶてが当たる瞬間に身体強化を使ってなければ、もっと酷いことになっていたと思う。


「ん?」


 何か違和感を感じたのかアニスが怪訝な表情を見せた。


「あれ?」


「何よ? 勿体ぶるわね」


「そんなつもりあらへんがな。賢者はんの言うたことが引っかかっただけや」


「あー、信じ難い話ではあるけどさ」


「ちゃうねん。そういうことやないんや」


「じゃあ、どういうことよ?」


「うちらノエルと同じ条件で訓練してきたんやで」


「だから何よ?」


 何も気付かないレイナにアニスは呆れた視線を向けながら嘆息した。

 レイナとしては面白くない訳で仏頂面になっている。


「あー、なるほどぉー」


 今のアニスの言葉でダニエラが真っ先に気付いたのとは正反対だ。


「急激にレベルアップしたのはー、ノエルちゃんだけじゃないんですねー」


「そういうことだ」


 上から順にレベルを告げようとしたら初っ端から驚かれただけのことである。


「なっ!?」


 声に出して驚いたのはレイナだけだったが、他にもリーシャたち姉妹がギョッとした顔になっていた。

 想像だにしていなかったのは明白である。

 一方、アニスは諦観を感じさせる表情を見せダニエラはニコニコしている。

 いずれも、やはりそうだったのかという反応ではあるのだけれど。

 ルーリアとノエルは特に変化がない。

 端から予想できていたからだろう。


「次がルーリアでレベル65だ」


 元々のレベルが高かったルーリアだけに誰も驚かない。


「続いてリーシャとダニエラがレベル59。残りは全員レベル58だ」


 ポカーンとしている4人。

 誰であるかは言うまでもないだろう。


 ちなみにノエルが月狼の友を逆転し引き離してレベルアップしたのには相応の理由がある。

 身体強化の訓練時に誰よりも強い負荷を掛けていたからだ。

 途中でその事実に気付いたルーリアが見よう見まねで負荷をかけた結果がノエルに次ぐ形となった。

 制御力ではノエルに及ばないということで一歩譲っているけれど。

 【教導】スキルで導いたとはいえノエルがそれだけ天才だということだ。


 ただ、参考にできる面もある。

 魔法の制御力を鍛えることでレベルアップしやすくなるのであれば妖精組も更なるレベルアップが期待できる。

 そこで俺は妖精組に必須課題を出した。

 生産や採取の効率を落としてでも魔法の制御力を向上させるべし、と。


 レベルが3桁近くになるとさすがにポンポンとレベルアップしなくなるので爆発的な成長はできなかったけど睨んだとおりの結果となった。

 大いに収穫だと言えるだろう。

 ノエル様々である。


 これなら次のステップも難易度高めで挑戦できそうだ。

 という訳で新国民組に国内のダンジョンに挑戦してみないかと提案してみた。

 誰からも反対の声が上がらなかったのには拍子抜けさせられたが。


「なんだよ、意外そうだな」


 間抜け面をさらしてしまったらしく、レイナがからかうように聞いてくる。


「ノエルも一緒なんだがな」


「それやったら心配あらへん」


 俺の懸念している部分を理解して返答を返してきたのはアニスだった。


「うちら朝に体動かして自主練してるけど、ノエルについて行かれへんときあるんや」


「そうだな。ノエルなら心配いらない」


 リーシャも太鼓判を押してくる。


「さすがに力業主体のデカいのとまともに当たれば押し切られるだろうけど」


 その言葉にノエル本人は一瞬だが不満そうな表情を見せた。

 負けず嫌いだよな、ホント。

 おかげで戦闘における質量差の有利不利を説明することになってしまったさ。

 いくら天才といえど無謀な真似をすると足をすくわれるからな。


「分かった」


 ちゃんと説明すれば特に不満な様子を見せることもない。

 ノエルは素直で助かるよ。


 とにかくノエルをダンジョンに連れて行っても反対されないなら好都合だ。

 月狼の友にしてみれば、むしろ普通のことなのかもな。

 彼女らも成人前に外の世界に出て行かざるを得なかったし。

 特に双子たちはノエルとそう変わらない年齢で自立を促されたようなものだ。


 実戦経験が狩りだけというのが不安材料だが、それは誰だって同じこと。

 引率の俺がしっかりすればいいだけだ。


「それじゃあ今回の課題を説明するぞ」


「課題? ダンジョンに行って戦うだけでは?」


 リーシャが疑問を口にした。

 月狼の友の一同がうんうんと頷いている。


「縛りを入れて難しくしないと効率よくレベルアップできないんだよ」


 トライするのは国内の初心者向けダンジョンだからな。


「縛り入れるて、どないするん?」


「武器の使用禁止とか?」


「防具もダメとか?」


 メリーとリリーの考えることは過激である。

 その割に緊張感がないのがいただけない。


「ダンジョン舐めんなよ。痛い目見るぞ」


「せやせや。忘れたんか? 駆け出しの頃に酷い目にあったやろ」


 レイナやアニスの指摘に、ばつの悪そうな顔をして視線を逸らしている双子たち。

 経験があるなら注意点は分かっているだろう。


「メリーやリリーの言ったことは縛りの一部だがな」


「なんやてー!?」


「無茶言いやがる!」


 目の色を変えて怒ってくるところを見ると相当な目にあったようだ。


「落ち着け、2人とも」


「これが落ち着いてられるかいな」


「そうだそうだ」


 リーシャに窘められて若干トーンダウンしたが、目が怒ってるね。

 過去の失敗がトラウマレベルになっているようだな。


「あの頃とは格段にレベルが違うだろう。なにより引率者が普通じゃない」


「う、せやな……」


「それも、そうか……」


 引率者が普通でないって部分で一気にクールダウンしたようだ。

 俺としては引っかかりを感じないではないが、まあいい。


「それより縛りの一部という方が気になる」


 ハッとした表情でレイナとアニスが顔を上げると俺の方にジトッとした感じの目線

を向けてくる。

 彼女らの心の声が聞こえてきそうだ。


『エグいこと考えてるんちゃうやろな』


『シャレになんないわよ』


 あたりだろうか。

 限度はあると言っても信じてもらえそうにないな。


「攻撃も防御も理力魔法オンリーってだけだ」


「「なんですとー!?」」


 今日はテンションの上下が激しいな、この2人。


「理力魔法はまだまだ安定してないやん!」


「そんなのでダンジョン攻略って自殺行為じゃない!」


「誰も完全攻略しろとは言ってない。今日は行ける所まで行くだけだ」


「そうは言うたかて帰りの心配もせなアカンやん」


 引き返すときの余力を残しておかないと帰り着く前に犠牲者が出ることもあるからな。


「俺の転送魔法で帰るから心配無用だ」


「それでも厳しいわよ」


 まだまだ理力魔法がコントロールしきれていないから攻撃も防御も駆け出し冒険者並みだ。

 しかも魔力だってそんなに多くないときている。


「引き際は俺が見極める」


「本気なのだな」


 真剣な表情でルーリアが問う。


「それくらいしないと妖精組には追いつけないからな」


 この一言で全員の目の色が変わった。

 修行の合間に仕事を手伝わせているからな。

 レベルアップして差が縮まったとはいえ植生魔法で段違いの差を見せられれば、ね。


「妖精ちゃんたちには負けてらんないよな」


「せやせや、これは頑張らんとアカンで」


「「はやく追いつきたいよねー」」


 仲良くなったからこそ対等でいたいってことなんだろう。

 リーシャやダニエラも言葉にはしないながらも真剣な表情だ。

 一方でルーリアとノエルには気負いがない。

 2人とも俺より精神的にタフそうだ。


 後は実戦でダメージを受けたときの反応も注視する必要がある。

 ノエルはまだ子供だし脆さを見せるかもしれない。

 それでも強くなれるなら、なっておくべきだろう。

 先々で後悔しないためにも。


読んでくれてありがとう。

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