1322 残りと追加と
ルディア様に対する罰はこれで終わりかは俺には分からない。
個人的には充分すぎると思うのだが。
生憎と処分を決めるのは統轄神様である。
ルディア様に聞いたところで意味はないだろう。
むしろ悪化する恐れすらある。
「さすがに、もう終わりですよね」
「うむ」
なんて会話でもしようものなら……
「反省の色なし」
とかお達しがあって酷いことになりかねない。
たぶん罰ゲーム的な形になるだろう。
少なくとも、はた目にはそう見えるはずだ。
ルディア様にとっては、それが最も堪える罰となるだろうからな。
さっきのアレは強烈だった。
正反対のキャラを無理やりやらされた訳だし無理もない。
『演技指導付きだもんな』
黒歴史は確定しているのだから、これで勘弁してあげてほしいところだ。
故に俺からは何も言わない。
迂闊な言動でルディア様を再び羞恥心の底なし沼へ引き込むようなことになったら……
俺は俺で罪悪感の深海底へ沈むことになるだろう。
ならば話を進めるに限る。
報酬はまだあるようだし。
追加もされたし。
「残りの報酬は何でしょうか?」
ピクリとルディア様が頬を引きつらせた。
その表情は何かを言いたげに見える。
聞いたのだから答えてもらえるはずなんだが。
「……………」
すぐには返事を貰えなかった。
『なんだ?』
ルディア様の表情が陰るというか悩ましげなものになっていくというか。
すぐにいつものキリッとした表情には戻ったけどな。
『いま、同情されてたよな?』
自問するまでもない。
あれは間違いなく同情の目だった。
『なんなの?』
俺が同情していたらルディア様に同情される側になっていた。
嫌な予感しかしない。
さっきの危機感を覚えるような状況とはまったく違う。
知らず知らずのうちに何重もの罠に絡め取られているような……
「称号を見るといい」
その言葉は罠が一気に作動したかのように思える一言だった。
「っ!?」
見なくても碌なもんじゃないのは分かる。
ルディア様の、あの同情的な視線の意味はそこにあったのだ。
途端に称号を見たくなくなった。
が、そういう訳にもいかないだろう。
タップリと時間をかけて心の準備をしてから称号欄を開く。
新規のものを最初に表示させるのではなく取得順にした。
少しでも見るのを遅らせたい気持ちが、こんな形で出てしまっている。
つい先日[命名の達人]を得たばかりだというのにゲットしてしまったからな。
図らずもというか押し付けられたようなものだし。
毎回そんな感じだけど。
今回に限って言えば、いつも以上にと言うべきか。
ラストに近づくにつれお通夜のように気分が沈んでいくのが分かる。
牛歩戦術的にゆっくりと見てきたのも、そのせいだ。
とはいえ限度ってものがある。
とうとう[命名の達人]に到達した。
『いよいよか……』
次からは新規取得分である。
憂鬱な気分のまま次の行を見た。
[統括神のお気に入り]
これだけだ。
数的に考えれば、それは喜ぶべきことのはずだった。
被害の拡大を防げたんだからな。
下手をすれば2桁からなる称号のオンパレードも覚悟していたし。
数だけで言えば肩透かしもいいところである。
数だけで言えばね……
だが、俺は──
『どういうことだよぉっ!?』
全力でツッコミを入れていた。
内心でだけど。
数はたったひとつだが、特大級のヤバい称号だ。
文言に[統括神の]と入っているだけでシャレにならない。
隠蔽するから西方人に知られることはないけれど。
神様たちには通用しないから無意味だ。
見せたくない相手に丸見えじゃあね。
その状態で続く文言が[お気に入り]なんだぜ。
影響力がハンパないどころじゃない。
これで俺に注目していなかった管理神にもあまねく知れ渡ることになっただろう。
『何てことしてくれたんだぁ─────っ!』
全力で叫びたくなったさ。
だが、それはできない。
統轄神様にクレームをつけることになるからな。
俺が全力で拒否すれば、あるいは取り消してもらえるかもしれない。
管理神では無理でも統轄神様ならあるいは、という希望的観測ではあるがね。
しかしながら、それをしても神様たちに認識されてしまった事実は消せまい。
そんな状態になったら余計に面倒なことになりかねない訳だ。
そうなるとベリルママにも迷惑がかかる。
余計なちょっかいを掛けられたくなければ受け入れるしかない。
それに、称号の拒否はルディア様にも迷惑がかかるんじゃないかと思う。
統轄神様が罰を追加しかねないからだ。
俺に旨く説明できなかったとかあたりの理由がつけられることだろう。
あまりに可哀相だ。
それだけではない。
『似合わない物真似を見せられるこっちの身にもなってくれ』
という思いもある。
死ぬほど恥ずかしがるルディア様などレア中のレアだ。
だからといって見たいかと問われれば、答えは否である。
黒歴史の追加とか勘弁してあげてほしい。
『こっちまで恥ずかしくなるっつーの』
それに加えて罪悪感がハンパない。
たった今、羞恥心と罪悪感の両方を味わったばかりだ。
連続で目の当たりにするなど御免被るというもの。
ならば耐える他あるまい。
俺は渋々だが称号を受け入れた。
「あとは追加分だけですか?」
「そういうことだな。
これはハルトと共にこのダンジョンに入ったミズホ国の者たちへの報酬となる」
ちらりと動かない面々を見る。
ビルは報酬を受けられない訳だ。
『運が良いのか悪いのか……』
スカウトを断っていなかったら含まれていたのだろうからな。
「この場で野営している者たちだけではないぞ」
「……随分と多くありませんか?」
妖精組だけで50名からいるのだ。
奥さんたちも全員が来ているし。
守護者組やガンフォールたちもいる。
80人近くになるはずだ。
「めっ、滅多にしないサービスだそうだからな」
『しまった』
こんな形でルディア様の羞恥心を掘り起こしてしまった。
「「……………」」
気まずい沈黙が続く。
ここで謝ると傷口に塩を塗り込むようなものだろう。
かといって、すんなりスルーさせられるほど厚顔無恥にもなれない。
まあ、スルーするしかないんだけどな。
「どのような報酬になるのでしょうか?」
声が裏返らないよう注意しながら声を絞り出して聞いた。
『皆にヤバい称号がついていませんように!』
願うのはそればかりだ。
俺に注目が集まれば皆も見られるとは思うんだけど、それでも願わずにはいられない。
「レベルだな」
内心で安堵の溜め息をついていた。
だが、まだ安心はできない。
+500とかだったらシャレにならないもんな。
さすがにそんなことはないと思うけど。
そんな訳で1人ずつ確かめていった。
まずは守護者組から。
今回ダンジョンに潜った面子の中でレベルが最低と最高を含んでいるからな。
幅があっても、この範疇になるだろう。
[ローズ /神霊獣・カーバンクル /守護者/563 → 603]
[シヅカ・ヒガ/竜 種・聖天龍 /守護者/563 → 603]
[マリカ /妖精種・ハイフェンリル/守護者/520 → 570]
[シーダ /妖精種・シーザー /守護者/235 → 385]
ある意味、予想通りであった。
シーダの伸びが凄いが、それでも+150で安堵する。
続いて妻組だ。
[ミズキ ・ヒガ /人間種・エルダーヒューマン/女/17才/515 → 565]
[マイカ ・ヒガ /人間種・エルダーヒューマン/女/17才/515 → 565]
[ツバキ ・ヒガ /妖精種・ハイアラックネ /女/+1才/366 → 456]
[カーラ ・ヒガ /妖精種・ハイケットシー /女/+1才/362 → 452]
[ノエル ・ヒガ /人間種・ハイエルフ /女/11才/390 → 470]
[ルーリア・ヒガ /人間種・エルダーヒューマン/女/19才/347 → 437]
[リーシャ・ヒガ /人間種・ハイラミーナ /女/17才/343 → 433]
[レイナ ・ヒガ /人間種・ハイラミーナ /女/17才/343 → 433]
[アニス ・ヒガ /人間種・ハイラミーナ /女/17才/343 → 433]
[ダニエラ・ヒガ /人間種・ハイラミーナ /女/17才/343 → 433]
[メリー ・ヒガ /人間種・ハイラミーナ /女/15才/342 → 432]
[リリー ・ヒガ /人間種・ハイラミーナ /女/15才/342 → 432]
[エリス ・ヒガ /人間種・エルダーヒューマン/女/27才/327 → 427]
[マリア ・ヒガ /人間種・エルダーヒューマン/女/22才/327 → 427]
[クリス ・ヒガ /人間種・エルダーヒューマン/女/15才/327 → 427]
[アンネ ・ヒガ /人間種・エルダーヒューマン/女/19才/327 → 427]
[ベリー ・ヒガ /人間種・エルダーヒューマン/女/19才/327 → 427]
[レオーネ・ヒガ /人間種・シャドウエルフ /女/25才/336 → 436]
[リオン ・ヒガ /人間種・シャドウエルフ /女/16才/303 → 403]
微妙な差があるみたいだが、大きな問題は感じない。
[トモ ・エルス/人間種・エルダーヒューマン/男/17才/327 → 427]
[フェルト・エルス/人間種・エルダーフェアリー/女/19才/311 → 411]
トモさんのところもな。
面子が多い妖精組は主立ったものだけ見る。
残りの面子もレベルは変わらないからな。
[キース /妖精種・ハイパピシー /男/359 → 449]
[ハリー /妖精種・ハイパピシー /男/351 → 441]
[ミーニャ /妖精種・ハイケットシー/女/346 → 436]
[ルーシー /妖精種・ハイケットシー/女/346 → 436]
[シェリー /妖精種・ハイパピシー /女/346 → 436]
[ハッピー /妖精種・ハイパピシー /女/346 → 436]
[チー /妖精種・ハイパピシー /女/346 → 436]
[ニャスケ /妖精種・ハイケットシー/男/347 → 437]
[ニャンゾウ /妖精種・ハイケットシー/男/346 → 436]
[ニャタロウ /妖精種・ハイケットシー/男/346 → 436]
最古参で見ようによっては忍者ハザードの被害者とも言えるのだが色はついていない。
残るはガンフォールたち。
[ガンフォール・J・H/人間種・ハイドワーフ/男/66才/327 → 427]
[ハマー ・D・H/人間種・ハイドワーフ/男/52才/327 → 427]
[ボルト ・M・A/人間種・ハイドワーフ/男/22才/327 → 427]
まあ、こんなものだろう。
読んでくれてありがとう。




