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1320 報酬って言われてもな

 会ったことどころか話をしたことすらない統轄神様に注目されるとかシャレにならない。


「それで、報酬ってどういうことなんですか?」


 投げ遣りになってルディア様に質問をぶつけていた。

 自棄クソにもなろうというものである。


「済まんな。

 クエスト報酬と言うべきだったか」


「はあ」


 生返事になってしまったが、それで想像はついた。


「石碑の謎を解くのがクエストだ」


「あー、そういうことでしたか」


 予想通りであった。

 こう言ってしまうとなんだが、随分と間怠っこしいことをすると思っていたのだ。


 碑文の解読がクエストだったというのであれば納得できる。


「ハルトが謎を解き明かしたのだ。

 報酬はハルトに受け取る権利がある」


「それにしては変な部分もありましたよ」


「変だと?」


 ルディア様が訝った顔で聞いてきた。


「ダンジョンの構造を変える必要はあったのでしょうか?」


 石碑の設置だけでも俺には真似のできない大変なことなのに。

 更に大変なダンジョンの改変である。


『ゲームの自動生成マップじゃあるまいし』


 実際に手を加えるとなると……

 少なくとも俺は誰かに依頼されても絶対に断る。


 面倒くさいどころの話じゃない。

 それもここのダンジョンだけではないのだ。


『世界中ってなぁ……』


 そこまでしなければならないようなクエストだったのだろうか。

 だとしても、俺はマップを把握していた。

 より複雑にして難易度を上げるはずが、それでは意味をなさなくなる。


『どういうことよ?』


 訳が分からない。

 俺の困惑ぶりが伝わったのだろう。

 ルディア様が苦笑した。


「そのあたりは依怙贔屓みたいなものだ」


「はあ……」


 依怙贔屓と言われてもピンと来ない。

 統轄神様がそうしたのだけは理解できるが。


「何のためにでしょう?」


「他の誰かに謎解きをさせぬためだな。

 ダンジョンの構造を理解しているのはミズホ国の者だけだ」


 そういう風にあれこれした訳だ。


「よく、西方人たちに違和感を抱かれませんでしたね?」


 もしかしたら騒ぎ出すのがいたかもしれない。

 が、そういうことなんだろうと思って聞いてみた。


 少なくともビルは特に変だとは思っていなかったようだしな。

 途中ですれ違った冒険者たちも当たり前のようにマッピングしていた。

 彼らが例外とは考えにくい。


 もし俺の想定が間違っていたのだとしても、今の質問で訂正されるはずだ。


「統轄神様が張り切っておられたそうだからな」


 訂正はされなかった。


「……………」


 されなかったが故に微妙な気持ちになったけれど。

 神様じゃなかったら不可能なことだもんな。


 自重の気配が見当たらない。

 エリーゼ様のやる気のなさとは正反対と言っていいだろう。


「あー、それは確かに依怙贔屓かもしれませんね」


 かもしれないではなくて依怙贔屓そのものだ。

 一応は気を遣ってオブラートにくるんだ表現にしたつもりである。

 言ってる内容はド真ん中のストレートなので大した差はないとは思うが。


「それでもハルト以外の者が謎を解くかもしれなかったがな」


「ミズホ国民限定で、ですよね」


「そこは仕方あるまい。

 世の中、何が起きるか分からんからな」


 確かにそうだ。

 ビルのふとした仕草がなければ俺も未だに謎を解くことはできなかったかもしれないし。

 そういう偶然が他の誰かに起こっていたかもしれないのだ。


 その場合は、その誰かへの報酬という形になっていたのだろう。


『誰でも良かったような気はするけどな』


 ……さすがにその考え方は失礼か。

 統轄神様の厚意であることは明らかなんだし。


 感謝の心を忘れてはいけない。

 ありがたく報酬を受けておくことにしよう。


 厚意というには過分な報酬のような気はするけどな。

 何となく想像はつくが確認しておくことにした。


「それで報酬は転送の魔道具ですか」


 謎を解かないと使えない仕様だったみたいだし。

 ルディア様が現れた時点で使い方が完全に分かってしまったからな。


 こんなことができるのは神様だけだ。

 これ以上の碑文集めをしなくて済むのは時間の無駄にならなくて助かる。

 まあ、そう複雑な使い方じゃなかったけど。


 パーティの誰かが魔石を手に握った状態で階段を上り下りする。

 その途中で魔石を持った者が行きたい階層を強く念じるだけだ。

 それだけで階段の出口から出れば指定した階層に辿り着く。


 最初は石碑に触れる必要があるのだと思っていたんだが違ったようだ。

 どうやら階段の上と下を門に見立てているらしい。


『石碑前での混雑を防ぐためかな』


 転送時の階段内は亜空間につながる仕様になっていた。

 亜空間では出口に人が殺到しないように時間の流れが変わる。

 転送開始順に出てこられるようにするためだ。


 あと、石碑周辺の広間はやはりセーフティーゾーンになっていた。

 ただし人がいる場合に限りだ。


 ダンジョンに制限をつけすぎると暴走を引き起こす頻度が上がってしまうんだと。


『こんだけ魔改造して頻度が変わらんことに驚くよ』


 ツッコミどころは多々あるとは思ったが、統轄神様がどうにかしてくれたんだろう。

 やぶ蛇になっても嫌なのでスルーしておいた。


 だというのに──


「うむ、それもある」


 とか言ってくれるんだぜ。

 転送の魔道具がセットされたのって惑星レーヌの階層型ダンジョンすべてなんですがね。


 現状でも過剰だと思うのに「それもある」ってどういうこと?

 統轄神様の辞書に自重という言葉は抹消されているのだろうか。

 人のことは言えないかもしれないけどさ。


 スケールが違うだろう。

 他の報酬が少ないことを願うばかりである。


「では、まずレベルを確認するといい」


「レベルですか?」


 どうやら経験値ボーナスがあるようだ。


「統轄神様は迷惑料も込みだと仰っていた」


 俺としては「まず」と言われたことの方が気になるんだけど。


「分かりました」


 だが、物事には順番というものがある。

 先程はジョブ欄ばかりが気になってスルーしていたというのもあるしな。

 単なる報酬ならともかく迷惑料込みというのが、ちょっと怖い。


『今までがレベル1268だったから……』


 報酬分と迷惑料でアップするのはそれぞれ1か2くらいだろう。

 レベル1270から1272くらいになっているものと思われる。


 常識的に考えれば、だ。

 何故か統轄神様に気に入られたっぽいからオマケがつきそうな気がした。


『だとすると、ボーナスがつくとかありそうだよな』


 レベル1275になっていても不思議ではないかもしれない。

 想定しているレベルアップから最大で+5されることになる。

 +3だったとしても過分だとは思うがな。


『さすがに1275は欲張りすぎか』


 内心で苦笑した。

 そしてステータスを確認する。


[ハルト・ヒガ/レベル1268 → 1300]


 一瞬にして固まった。

 もう一度、見直す。


 無意味な行動である。

 夢や幻ではないのだ。

 何度、見直そうが結果が変わることはない。


 事実が受け入れられずに時間を必要としたようなものである。

 理解した途端に卒倒するんじゃないかと思うくらい頭から血の気が引く思いがした。


「──────────っ!?」


 ルディア様の目の前だというのに声にならない悲鳴を上げてしまう。

 絶叫しなかっただけマシだと思ってもらえれば幸いである。


「そうだな、それが常識的な反応だろう」


 然もありなんとルディア様が頷いていた。

 その表情には呆れが入り交じっている。

 亜神の目から見ても非常識なのが分かって安堵している自分がいる。


「どう考えても32レベルアップはやりすぎだと思うのですが」


「うむ」


 ルディア様も渋い表情をしている。


「兄者が行ってきた数々のイタズラに対する詫びを含むそうだ。

 古くは妖精たちに忍者の仕込みをした分から今に至るまでということでな」


「それは統轄神様が謝られるほどのことでしょうか?」


 というより筋違いという気がするのだが。


「あのやんちゃ坊主を管理神に昇格させると決めた以上は自分に責任があるとのことだ」


「それにしたって過去に遡ってというのは……」


「まだまだ仕置きが足りぬが故、一から精査して罰を与えなおすことになった」


「全部ですか……」


「そうだ」


 既にお仕置きされた分も含めてやり直しとか理不尽すぎる気もするんだけど。

 あまり、同情する気になれないのは普段の行いのせいなんだろう。


 順を追ってラソル様のイタズラを思い返してみた。

 妥当かどうかを考えなきゃならんからな。


 忍者の仕込みとかバーグラーでのこととか色々あったとは思うけど……

 それにしたって多すぎる。

 このレベルになれば必要経験値も跳ね上がるからな。


「それでも妥当とは思えません」


「もうひとつ詫びがあるそうだ」


「見当もつきませんが?」


 思い当たる節などない。

 気に入られたことでさえ本当なのかと思うくらいなのに。

 ラソル様のこと以外で詫びと言われてもな。


 だというのにルディア様は大きく溜め息をついた。

 直後に何故か悔いるような苦しげな表情になったのは気のせいではない。


「過去に遡るということは例の件も含む訳だ」


 それだけで何を言っているのか分かってしまった。


「魂を半分喰われた件ですか」


「そういうことだ」


「充分以上なことをしてもらったと思っています」


 が、それをルディア様たちから統轄神様に向けて言うことはできないだろう。


「魂喰いをセールマールへ行かせてしまったのは自分の責任でもあると仰っていた」


 だとしても今頃になってというのはねえ。


「他の世界のゴタゴタを片付けるのに時間がかかって遅れたこと誠に済まないと」


 遅れた理由があるみたいだ。


「いえ、お忙しかったのでしょうし」


「……ますます気に入ったと仰っている」


「うえぇっ!?」


 どうやらモニターされていたようだ。


『見てるなら、見てると言ってよ!』


読んでくれてありがとう。

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