1289 投票はSNSで
子供組はどうにか自分たちのネーミング案を思い出せたようだ。
プチライブで時間を稼いだお陰か。
それとも頭真っ白状態から脱したからか。
とにかく思い出せたのだから良しとしよう。
問題は中身の方だ。
冗談で決めた名前とかだったらガンフォールの提案が台無しになるところだったしな。
アミュージング・メイト。
それが子供組が考えた家庭用ゲーム機の名前だった。
愉快にさせる仲間といったところか。
略称は[アメイト]だってさ。
『そこまで考えてたのに思い出せなかったか』
どんだけ緊張を強いられていたのだろうかと思う。
まあ、ほぼ自滅なんだけどさ。
なんにせよ、ちゃんとした名前で良かった。
俺はいい線いってる名前じゃなかろうかと思うのだが。
センスが微妙な俺が太鼓判を押しても説得力はないかもだけど。
ただ、ガンフォールが辞退したことを知ると他の面々もすべて辞退してしまった。
あわよくば皆が追随することを期待していたみたいだな。
『食えない爺さんだ』
ただ、問題が発生した。
ガンフォールの読みは途中までしか当たらなかったのだ。
「辞退するニャ」
「するの」
「するしかないよね」
「「するです」」
子供組までもが辞退してしまったのだ。
『どうしてこうなった!?』
もはやグダグダである。
こうなっては辞退を却下しても元には戻らない。
結局、誰のネーミング案が良いとは決められなくなってしまった。
少なくとも当事者にはね。
そんな訳で、当事者以外の国民全員にアンケートをお願いした。
背景事情を知らない面子が相手ならグダグダにはならない。
どんな状況で提案された名前かは説明してないからな。
それに、これなら公平だ。
こういう家庭用ゲーム機を作ったんだけど候補の名前に投票してねってだけだからな。
当事者にも不満は出ないだろう。
回答はスゴい勢いで集まった。
SNSを使った結果だ。
その名もウィスパー。
何処かで聞いたような違うような名前だが気にしてはいけない。
参考にしたSNSの影響は受けているものの他のも混ぜているし。
というか、いいとこ取りをしたつもりだ。
例えばアカウント名は本名しか使えないようになっている。
あるいはシールと呼ばれるグラフィックをメッセージに貼り付けられたり。
そのせいか元日本人組には色々と言われた。
「ゴッターって名前の方が良かったんじゃない」
マイカの意見は何のことか最初は分からなかった。
「ごった煮ってこと?」
ミズキが聞くと──
「そうよ」
と返事が返ってきて、ようやく分かったくらいだからね。
ミズキはミズキで困惑していたし。
「慣れないと使いにくいかなぁ」
「操作性はは気を遣ったつもりなんだけどな」
「混ざってるから混乱するのよ」
もっともだと思った。
一緒になったことでどれがどれやら訳が分からなくなったってことだな。
日本人として、あれこれSNSを使っていたが故の弊害だろう。
「それは慣れてくれとしか言えない」
そう言いつつも、修正はしたよ。
根本的なシステムじゃなくて入力画面とかでね。
デザインが変わるだけでも意外に既存のものを意識しなくなったりするものだ。
あんまり様変わりさせてしまうと使いにくくなるのがネックだけど。
そして、トモさんからもクレームがあった。
「便利すぎるよ」
「ありがとう?」
返事が疑問形になったのは、トモさんの表情が台詞とマッチしてなかったからだ。
便利と言った割に渋面だったんだよね。
「高機能なのに使いやすいじゃないか」
褒めているのに苦情とはこれ如何に。
「そういうのを目指して開発したからね。
見る者に与える心理的影響まで考慮したと言えば分かってもらえるかな」
「何処かのロボットアニメの──」
途中まで言いかけたトモさんが頭を振った。
ナレーションみたいだと言いたかったのかもしれない。
一部の台詞は意識したからね。
「違うんだよっ。
そうじゃないんだよ!」
身振り手振りを交えて訴えてくるトモさん。
「どう違うのさ?」
俺にはよく分からない。
「あー、分かんないかなぁ」
トモさんはもどかしげだった。
「とにかく親切設計なんだよ」
「いいことだと思うけど?」
他に何があるのだろうか。
「分かり易すぎるんだって」
焦れったそうに言われてしまう。
「それの何処がダメ出しポイントになるんだろう」
サッパリ分からない。
こちらとしては首を傾げるばかりである。
「日本に行った時に不自由するのがマイナスなんだって」
「あー、そういうこと」
ようやく言いたいことが分かった。
トモさんは日本に行かなきゃならない身だからな。
便利なものに慣れてしまうと古いものが扱いづらいと感じてしまう訳だ。
メールに慣れた現代人がポケットベルを不便に感じるようなものか。
いや、さすがにポケベルは言い過ぎだとは思うが。
そこまでの差はない。
数字の羅列だけで文章を表現するなど今では考えられないからな。
[084]で[おはよう]となるが、これで入門編。
[841]は似てるけど[欲しい]になる。
[4649]で[よろしく]とかも簡単な部類だろう。
[10105]で[いま何処]もよく使われた基礎中の基礎だ。
問題は地名は表現できるところが限られているので返事は期待できないところか。
例外的に[428]で[渋谷]とか[4580]で[横浜]なんかがあるけどな。
[49106]で[至急TEL]なんかは携帯が普及した時点で死語も同然となった。
[88946]で[早くしろ]のように同じ数字が続いても読みが異なったり。
[14106]で[愛してる]とかもあった。
[500731]で[ごめんなさい]とか。
こんな具合にこじつけである。
暗号読解能力が必要なんじゃなかろうかってくらいだ。
ここまでするほどの不自由さがあるとは言わない。
そこまでの差がある訳でもない。
それでも、便利な状態から少しでも不自由になると人は窮屈に感じる。
「言いたいことは分かった」
「分かってもらえて何よりだよ」
トモさんの表情から不満げな色が消えた。
「気持ちは分からんでもない」
「そうだろう、そうだろう」
大いに頷くトモさんである。
「が、そこは諦めてもらうしかないかな」
後発だから改良されて普通だと思うし。
色々と参考にできるという強みがあるからな。
何と言っても世界が違うから権利関係でとやかく言われなくて済む。
いいとこ取りしても苦情が殺到することはない訳だ。
まあ、約3名からはクレームが来たけどね。
全体の利用者からすれば無いも同然だ。
現に今のところ他のクレーマーはいない。
開発が完了してまだ間がないからかもしれないが。
ただ、今回のアンケートの集計がスムーズに行ったのは事実である。
『公開したばかりだっていうのになぁ』
トモさんの言うように扱いやすいのは間違いあるまい。
うちの国民の適応力が高いが故とも言えるがね。
「ぐぬぬと言っておこう」
「愚痴くらいは聞くけどね」
「では、ぐぬぬと言っておこう」
「なんで繰り返すんだよ」
「大事なことだから2回言いました」
「何処がだよっ」
「フヒヒ、サーセン」
『それが言いたかったんだな』
「あー、はいはい」
「シャッター、ガラガラ」
「言うだけ言ったら閉店するのかっ」
何処かの漫才師のようなネタまでぶっ込んでくるし。
「フヒヒ、サ──」
「もう、ええわっ」
トモさんの台詞を途中で止めた。
「大事なことだから2回言いましたを2回言うつもりだっただろう」
「いいや」
真顔で頭を振るトモさん。
「大事なことじゃないけど2回言いましたと言うつもりだったんだよ」
「おい」
「あなたには功夫が足らないわ」
「古いネタを持ってきたな。
しかも2の方の台詞にするとか微妙に新しくしてるし」
指摘すると、ニヤリと笑った。
気付いてほしかったらしい。
お陰でそれ以上の愚痴を聞くことはなかったけれど。
『やれやれだ』
さて、肝心のアンケート結果だが。
上位陣はなかなかの接戦だった。
黒猫3兄弟のバイザー5は健闘して6位。
5だけに5位とはいかずに3兄弟は悔しがっていた。
「「「ニャんで5位じゃニャいんだーっ!」」」
『悔しがるポイントはそこかよ』
ニャー語になってるところを見ると本気で悔しかったのだろう。
その直後に発表した妖精組のゴーグルゲーマーが5位というのが皮肉に思えた。
まあ、俺の勝手な思い込みではあるが。
『ゴーゲー侮りがたしっ』
マイカのサボーンもアンケートに入れてみたけど、ぶっちぎりで最下位だった。
「なんでよーっ」
「意味不明だってさ」
「ギャフン」
ガンフォールのHGSは2位。
惜しくも優勝は逃していた。
ちなみに3位と4位はハリーと弟子組であるツバキ&カーラの案だ。
それぞれゲームGとGG。
似ているが故に票を食い合った格好である。
そして、優勝はアミュージング・メイト。
略称が支持されてのことなのでアメイトで呼ばれることとなった。
読んでくれてありがとう。




