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13 確認は大事です

改訂版バージョン2です。

 色々あった。

 生まれ変わって異世界に引っ越し丸1年。

 1日で建国して家建てた後はずっと寝てただけなのに。


 女神様に泣かれるとかあり得ねー。

 その上、俺が女神様の息子ですよ?

 お陰で神様をママと呼ぶことが確定。


「まるでアニメの世界だ」


 思わずぼやくが現実である。

 黒歴史級の出来事だったが消去も封印もできない。


『そんなことしたら泣かれてしまう』


 アレは反則だろう。

 まあ、ベリルママは帰ってしまったので当面はその心配もないとは思うが。


「さて、現実逃避は終了だ」


 建国したからには発展させていかなきゃならないだろ?

 まあ、国民もいない状態では何をしていいのやらだ。


「とりあえず、確認からかな」


 家の外に出て周囲の草原を見渡す。

 1年前と変わらぬ景色の中に見慣れた実家の屋敷がぽつんと建っていることくらい。

 俺が錬成魔法で仕上げたレプリカだ。

 なのに原材料の関係でこちらの方が遥かに頑丈だったりする。


「うーん、違和感しかないな」


 風景写真に無理やり合成した感が満載だ。


 が、眺め続けても何も変わらない。

 まずは周囲を歩いてみることにした。


「ふむ、歩いたくらいじゃ地面が陥没しないか」


 これは屋敷では確認できなかったことだ。

 あっちは魔法で結界と同化させてるからね。

 おそらく本気でやらないと壊せない。


「これなら無意識で災害級の被害は出さないかな?」


 え? 何の冗談かだって?

 冗談じゃなくてマジなんだな、これが。

 一気にレベル1024になったからさ。

 ベリルママが言ってたんだよ。

 今の俺が本気になれば自然災害にも対抗できるって。


「人間じゃねえだろ」


 まあ[女神の息子]で[亜神の友]なんですがね。

 ……マジ人間じゃなかった。

 種族的には人間であるという太鼓判はもらっているけど。


『怖いから考えるのはよそう』


 とりあえずジョギングペースで軽く走ってみる。


「これも大丈夫」


 以前の俺と何が違うのかってくらい変わらないように思える。

 だが、今ので分かってしまった。

 その気になれば漫画やアニメみたいに現実離れしたことができると。


 試しに手頃な大きさの石を拾って投げてみる。


「せえのっ!」


 次の瞬間「ベキャッ」という音と共に粉砕された石の破片が飛んできた。

 気合いの入れすぎで石を握りつぶしてしまったようだ。

 結構な勢いで顔面に当たったが痛くはない。


「どわっ!」


 痛みのないのが驚きだ。

 石が砕けたことなど気にもならない。


「マジか……」


 これがレベル1024なのか。

 だけど【剛健】のスキルもあるから何とも言えないところだ。


 気を取り直して再び投石にチャレンジ。


「ピッチャー、第1球……投げました!」


 今度は割ることなく石を投げることができた。


「って、なんじゃそりゃあ─────っ!!」


 近くの山の方へ向かって投げたら弾丸のように飛んでったよ。

 俺がプロ野球の投手だったら誰も打てんわ。

 受けられるキャッチャーもいないけどな。


「自分で加減できるのが救いか……」


 次は垂直跳びで、そのあたりを確認してみよう。

 まずはバスケでダンクシュートするくらいの高さ。


「これは余裕」


 初めてのせいかNBAのスター選手並みの跳躍になってしまったが。

 まあ、調整はできそうだ。


「次は20段の跳び箱だ」


 テレビの番組で見たアレを垂直跳びで軽々とクリア。


「じゃあ庁舎越えだ」


 戌亥市役所は5階建てだった。

 屋上に上ったことなんてないが、およその高さは分かる。

 特に気負うことなくジャンプした。


「うおっ、景色が変わるぅ」


 ちょっと楽しくなった。

 落下し始める直前のふわっとした感覚も心地よい。

 その感覚の余韻を楽しんでいたら着地の瞬間にちょとした衝撃が来た。

 ズシンッって感じの派手な音もした。


「うわぉっ!」


 地面が揺れたように感じたがHPは減らない。

 普通は凄惨で悲惨な状況になるんだろうがな。


 実際、着地の衝撃で地面が少し凹んだからね。

 それで俺自身はノーダメージ。


『どんだけ頑丈になったんだか』


 地面は地魔法で元の状態に戻した。

 が、この程度ではMPも減らない。

 厳密に言えば減っているけど、この程度なら瞬時に回復するのだ。


 問題は地面が凹んだこと。

 ジャンプするたびに、こんな状態になるのは気に入らない。


「そんな訳で」


 再びジャンプした。

 同じ高さを飛んで落下していく。

 今度は着地の瞬間に集中。


『衝撃は完璧に殺してみせる!』


 いつか見たアニメの真似をして爪先から降り立った。

 踵が地面につく前に落下の勢いを殺しきる。

 今度は音も衝撃もなかった。

 もちろん地面も凹んではいない。


「完璧だ」


 自画自賛の気持ちが自然と笑みとなって出てしまう。

 他人に見られたら気味悪がられても不思議ではないというのに。


 しかも満足し足りず、再び何度となく跳ぶ。

 着地を決めては悦に入るというサイクルを繰り返す。


 そのうち物足りなくなってきて宙返りだの捻りだのを加えていくようになった。


「OH!」


 最初は軽く数回だったのが徐々に増えていく。


「最っ高ぉ!!」


 グルグルが思いの外、楽しくて止められない。

 が、そのうち派手に風を巻き込み始めた。


「……っと、ヤベッ」


 続けてたら昔のアニメみたいに竜巻を発生させてたかもしれない。

 とにかくジャンプは終了だ。


 あれだけ派手に動いたのに息切れを感じないどころか目も回っていない。

 内臓や毛細血管にもダメージはなさそうだ。

 自分の体だけど呆れるばかりである。


 しかも、それだけじゃない。


「これは身体制御を極めてしまったか?」


 周囲の地形に影響を及ぼさない力加減。

 精密機械にも等しい正確さ。

 それらを高速で動きながらコントロールできると確信を持って言える。


 まあ、言うだけなら誰にでもできる。


「こういうのを確認するのはキャッチボールに限るよな」


 何かのアニメで見た気がする。

 それを再現しようという訳だ。


 と思ったら、手頃な石が見当たらなかった。


「しょうがないなぁ」


 地魔法で野球のボールサイズの石を作ってみた。

 堅さ重さ共に申し分ない。


 だが、唐突に本物のボールにしてみようと思い立つ。

 果たして本物を触ったことがある程度の代物を完璧に再現できるものなのか。

 内部構造なんて知らないし。

 錬成魔法で確認というか実験だ。


「……できた」


 あっさり成功。

 片手間程度の制御負担で成功した上に内部構造まで理解してしまった。


『なんでだ?』


 とか思っていたら【諸法の理】が向こうの世界にアクセスしたからのようだ。

 俺が一度でも触れたことがあるもの限定らしいけど。

 その程度で可能というのが怖い。


 屋敷に再挑戦したら大幅に時間短縮できそうだ。

 予備なんか不要だけど。


 そんなことより今は1人でキャッチボールだ。

 まずは抑えた速度になるよう山形で投げる。

 ダッシュしてボールを追い越して落下地点で待ち構えて素手でキャッチ。


「楽勝だな」


 徐々に距離を広げ、球速を上げながら繰り返す。

 何度も何度も投げて受けてを続ける。

 そのうち投擲のコツを完璧に理解していた。


「こんなもんか」


 切り上げようとして、ふと思った。

 せっかくだからボールを攻撃魔法の標的にしようと。


 身体的な検証だけで終わらせてはいけない。

 魔法も酷いことになりそうだし。


「確かめておいて損はないよな」


 ボールは海の方へ向けて遠投の要領で投げることにした。

 火魔法で周辺に被害を出さないためだ。

 念のため放つのは拳大の火球だ。


 今までに得た情報で飛距離を調整するべく力を加減して投げた。

 つもりだった……


「ボール速っ」


『魔法が追いつくか?』


 考えている暇はない。

 さっさと火魔法を撃ち出した。


「ボンッ!」


 あっさり命中。

 ボールは跡形もなく爆散した。


「……………」


『次からの参考にはなったか』


 無理やりでも、そういうことにしておく。


 ここでスキルを確認してみた。

 思った通り【軽業】と【投擲】の熟練度がMAXになっている。


「今の俺なら銭を投げる十手持ちにも負けん!」


 ぼっちがドヤ顔で言っても虚しくなるだけだ……


 気を取り直して次の実験だ。

 続いては水中戦だ。

 潜水可能な時間が気になったのでね。

 あと【軽業】は水中でも有効なのかという疑問が湧いたというのもある。


「そうなると川より海だよな」


 思い立ったら、即実行。

 海へ向かって走り出した。

 徒歩では到着まで時間がかかりすぎてしまうからだ。

 生まれ変わる前の俺なら迷わずバイクに乗っていただろう。

 今の俺が走れば、それよりも早く到着するんだけどな。


「到着したはいいが……」


 物足りない。

 乗り物に乗ることで得られたであろう充足感のようなものが感じられなかったせいか。


『そのうち車とかバイクを作ろう』


 きっと楽しいはずだ。

 ただし、家を錬成したときのように丸々コピーは却下。

 公害を撒き散らしたくはないので魔力ベースの乗り物を作るつもりだ。


 ノウハウがないので時間がかかりそうだけど。

 せっかくだからアニメの真似をしてみたい。

 変形とか超加速なんてロマンがあるだろ?


「さて……」


 妄想で物足りなさを補う時間は終了だ。


 眼前に拡がるは白い砂浜に青い海。

 澄んだ色の空に白い雲。

 太陽は照り付けると言うほどでもないけど。


 そりゃそうだ。

 夏じゃないんだし。


『それはそれとして、だ』


 まずは深呼吸。

 そして軽く準備運動の真似事をする。


「おいっちにぃさんしー」


 はい、終了。

 律儀に最後まで続けてなどいられない。

 小学校の臨海学校以来の海に俺はワクワクしていたのだ。


 え? 友達や彼女と来たことはないのかだって?

 称号にぼっちがつくような俺に聞くなよ。


 とにかく海は久しぶりだし時間もある。

 ガッツリ満喫しないとね。


読んでくれてありがとう。

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[一言] ネタが古い〜(ノブ)
[一言] 元おっさんがママとか気持ち悪いw
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