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1278 特撮談義?

 ゲームはKOでは決着がつかずにタイムオーバー。

 残HPからトモさんの勝ちとなった。


 弱攻撃で削り続けたお陰だろう。


「ふうっ」


 ゴーグルを外し大きく息を吐き出すトモさん。


「もういいのかい?」


「ちょっと休憩~」


 自嘲気味に苦笑している。


「レースゲームかと思ったら格ゲーなんだもんなー」


 意外な組み合わせに戸惑った分、疲れやすかったようだ。


「たまたまラインナップにあったんだよ」


「普通のパッドが使えないって、あり得ないことを考えるね」


「あー、1号機と2号機だけね」


「なんだ、そりゃー」


「アイデアを貰った特撮の設定がそんなだからね」


「無茶苦茶だなぁ」


「ちなみに1号機は飛行機の操縦桿で操作するから」


「マジかっ」


「コントローラーがリンク状態でないと選択できないようになってる」


「マジだった」


「それから──」


「まだあるのかいっ!?」


「最初は電車と船で4号機まで考えてた。

 操作方法を考えるのが面倒になったから3号4号は作らなかったけど」


「作らなくて正解だよ」


「えー、トモさんなら気に入ると思ったんだけどなぁ」


「嫌いじゃない」


「だろ?」


「でも、疲れる」


「そこは慣れかな」


「できれば永浦くんにやってみてほしい」


「あー、それは面白そうだね」


 問題があるとすれば、拒否られるんじゃないかなってこと。

 本能的に操作で疲れるのを見抜かれそうなんだよね。

 そのあたりはトモさんが頼み込めば1回くらいは遊んでくれるとは思うけど。


 こっちで作ったゲーム機を向こうには持ち込めないって問題もある。

 だから向こうで開発し直さないといけない。


「向こうで開発するかい?」


「やめとくよ」


 あっさり即答された。


「際物すぎて売れないって」


「あー、それはあるかな」


 聞いて納得の理由だった。

 このゲームは俺もネタとしてラインナップに入れたようなものだし。


「だけど、隠しモードで潜り込ませておくのは面白いかもね」


 実に楽しげな笑みを浮かべるトモさん。


『あー、これは作る気満々だな』


「何やら悪巧みをしておるのう」


 シヅカが呆れたような視線をトモさんに向けた。


「わるだくみー」


「ごろごろ」


「くーぅくくっくーくうくーくっくぅ」


 友達に遊ばせて楽しむつもりでしょ、とローズ。


「人聞きが悪いなぁ」


 そう言いながらもトモさんの笑みはより深くなっている。

 ちょっと怖くなってくるような笑みだ。


「俺はこの感動を永浦くんにも味わってほしいだけだ、よ?」


「断言しないのか」


「その語尾は何じゃ」


 すかさず俺とシヅカからツッコミが入ったのだが。


「些細なことだ

 気にしてはいけない」


 そう言って「ハッハッハ」と乾いた笑い声を上げた。


『どう見ても誤魔化しているとしか思えないんですがね』


 その言葉は飲み込んでおいた。


「それにしても……」


 トモさんがモニターでリプレイされている動画を見る。


「自機はこんな感じだったのか」


 自己視点だと己が操るキャラの全身を見ることができないのが欠点だ。

 VR式にしたのはそのためだ。


「プレー中は顔が見られなかったからなぁ」


 顔面は無理でも、ある程度までは見られるからね。


「こうして見るとレトロなデザインだね」


「元になってる特撮へのオマージュを込めてるからね」


「へー、じゃあオリジナルの顔なんだ」


「違うよ。

 デザインはあえて変えてある」


「どうしてさ?」


「トモさんが向こうで開発する時に著作権で引っ掛からないように」


「そう来たか」


 そう言ってトモさんは楽しそうに笑った。


「にしても斬新だよな。

 1号機が飛行機だって?」


「そう、セスナ機だよ」


「戦闘機じゃないのか」


「車は軽四だし」


「ぶはっ、凄いセンスだな」


「センスというより予算の問題だよ」


「あー、それはね……」


「大昔の特撮だからCGなんて使えないし」


「聞いてると悲しくなってくるね」


「当時は斬新だったみたいだよ」


「今でも斬新だよ」


 吹き出すように失笑するトモさん。


「セスナとか軽四がどうやってロボットに変形するんだい?」


 苦笑しながら首を捻っている。


「変形なんてしないよ」


「は?」


 怪訝な表情で俺を見てくる。


「ロボットになるんじゃないの?」


「なるね」


「どういうこと?」


 トモさんは完全に困惑していた。


「まさか、手足だけ別に飛んできてドッキングするって訳じゃないよね?」


 今の特撮やアニメを見慣れていると、そう考えてしまうのも無理はない。

 最初から玩具化されることを想定したデザインになっているし。


「変身するんだよ」


「うわー、そう来たかー」


 一瞬にしてトモさんはしてやられたという顔になった。


「どんだけ昔の特撮なんだよぉ」


「俺たちが生まれるよりずっと前みたいだね」


 もちろん、日本人だった頃の話である。


「マジかー……」


 トモさんが天井を仰ぎ見ている。


 やがて視線を戻すと──


「昔の人は凄いよな」


 ポツリとそう漏らした。

 俺もそう思う。


 アイデアの元になったものはあるんだろうけど、アレンジの枠をはみ出している。

 予算のことを気にせず新しいものを生み出そうとしていたのかもね。

 番組の後半で新しい着ぐるみが出てこない作品もあるみたいだし。


「てか、なんでハルさんはそんな昔の作品を知ってるんだい?」


「ミズキに教えてもらって調べた」


「うちの姉さんがっ?」


「知らなかったんだ」


『無理ないか』


 最初から姉弟って訳じゃないからな。


「君の姉さんは特撮ファンだぞ」


「なんですとー!?」


 本日、何度目かの「なんですと!?」だ。

 流行ってるのだろうか。

 もしくは流行らせようとしているのか。


『まあ、期間限定だろうけど』


「モフラーじゃないのかい!?」


「それはマイカの方。

 ミズキは特撮ファンなんだよ」


 まあ、マイカのモフモフ病ほどのめり込んでいる訳じゃないけどな。


「OH!」


「ちなみにトモさんが変身アイテムの声で出演してるのも見てたよ」


 硬面ライダー・ファングだったか。


「あ、ファング見てたんだ」


 トモさんは今までのテンションから数段落ちた感じで受け止めていた。

 真面目モードのスイッチが入ったようだ。


「身内なんだから、内心で手を合わせてありがとうとか言わなくていいんだよ」


「なんで分かったんだいっ?」


 驚愕の表情を向けられてしまった。


「ホントにやってたんだ」


 適当に言ったことがド真ん中に直撃したらしい。


「うわーっ、鎌かけられたのかー」


 トモさんは頭を抱えて仰け反りながら、そう言った。


「そんなつもりはないよ。

 無意識で言ったら当たっただけだって」


「それはそれで微妙だな。

 読みやすいってことだよね」


「別にそうは思わないけど。

 たまたまなんだからさ」


「うーん……」


 トモさんは考え込んでしまった。

 思った以上に落ち込んでいるように見える。


『そんなにショックだったのか』


 あまり考えさせない方がいいかもしれない。

 そう思って話題を振ることにした。


「ミズキはドラグーンサイトも見たって言ってたよ」


 海外へ設定が輸出された別のライダー作品を逆輸入したバージョンだ。


 元になった作品は硬面ライダー竜威。

 シャドウワールドなる仮想空間でライダーが最後の1人になるまで戦う話だった。

 視聴した当時は本当に子供向け番組でいいのかなんて思ったものだ。


「現実の理不尽さと厳しさを子供に教えるのも悪くないんじゃないかな」


 なんてミズキは特に気にした風もなく語っていたが。

 まあ、トモさんは吹き替えで出演しただけだ。


「それは確かに特撮ファンだね」


 予想した通りだ。

 トモさんはフラットなテンションの真面目モードで受けた。

 鬱々と考え込まれるより、ずっといい。


「そんな訳だから、特撮のことで分からないことがあったらミズキに聞くといいんだよ」


「ほほー」


 感心したように返事をするトモさんだが、ふと何かに気付いたような表情になった。


「まさかマイカ姉のように止まらなくなるなんてことはないよね?」


「あー、それは大丈夫」


 思わず苦笑が漏れた。

 何が問いたいのか一瞬で分かってしまったからね。


「うんちくを語り出して止まらないとかはないから」


 マイカのようにモフモフ愛を語られて何時間も付き合わされるのは俺も御免被るさ。


読んでくれてありがとう。

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