128 添い寝ってどうなの?
改訂版です。
除夜の鐘を鳴らしている間に新年を迎えた。
そこかしこで新年の挨拶が交わされる。
新国民組も妖精組に、おめでとうが言えていたので一安心だ。
中でもルーリアは自然な感じで挨拶していた。
「明けましておめでとう」
リーシャは月狼の友のリーダーだけあって堂々としているし。
双子のメリーとリリーは常に2人で絶対に離れないけど人見知りなところがあるのかな。
薄い緑の髪を短くしているメリーと水色の髪を伸ばしているリリー。
違う部分があるから双子でも性格が違うのかなと思ったけど、そうでもないみたい。
ノエルを除けば新国民組の最年少で未成年だから俺としては心配していたんだけど孤立している訳ではないので大丈夫そうだ。
双子たちと違って人懐っこいのがダニエラである。
いつもニコニコしてるのでフレンドリーな妖精組と打ち解けないはずがない。
特に子供組には「ポヨンポヨンだー」とじゃれつかれるくらい人気である。
正直に言えば俺も興味はある。
さすがウサ耳さんである。
日本でよく見る白毛ではなく焦げ茶な短髪さんですが。
アニスも周囲がフレンドリーな相手ばかりなので良い笑顔で応対している。
心配すべきは、大人しくて口数が少ないノエルだろう。
が、桃髪ツインテさんは不思議とコミュ障ではない。
どうやって意思の疎通をしたのかと首を傾げるくらいに妖精組と仲良くなっていた。
わずか数日でだから不思議現象と言ってもいい。
ノエル、恐ろしい子!
残るはレイナだ。
ツッコミ体質だから大丈夫かと思っていたら人見知りを発揮していた。
それに加えて黄色の猫耳と虎縞シッポのイメージから俺の中のレイナツンデレ説を急浮上させる。
一度慣れてしまうとベッタリになるだろうかと想像したところで何か違う気がしたけど。
慣れても付かず離れずぐらいかもね。
もっとも妖精組は懐に深く入り込むからレイナの方で大いに戸惑っていた。
あれで悪意のない相手には強く出られないみたいだから心配しなくても良さそうだ。
新年の挨拶が終わったら帰って寝るだけ。
初詣は朝日が昇ってから午前中に行くものだからね。
という訳で城に帰ってきた。
もっとも初日の出を見るためには数時間しか寝られないけど。
「初日の出が見たいかー!」
「「「「「おお─────っ!」」」」」
てな具合に妖精組は全員参加を表明している。
ルーリアとノエルは見る派で月狼の友は寝る派と、新国民組の意見は割れた。
「寝過ごすなよ」
「大丈夫だ」
ルーリアは頼もしい答えを返してきたが、すでに眠そうな目をしているノエルは心配そうに俺を見上げてくる。
子供は睡眠時間も長いし寝不足に抗うのは難しいだろうな。
「起こしに行こうか」
てっきり喜ばれると思った提案だったがフルフルと首を横に振られてしまった。
「賢者さんと一緒に寝る」
なんですとぉ─────っ!!
幼女と添い寝ってどうなんだろうか。
俺はロリコンではないのですが?
でも、断ると傷つくよなぁ。
受け入れると月狼の友から白い目で見られてレッテルまで貼られてしまいそうだけど。
ロリコン野郎とか言われたら傷ついちゃうよ、俺。
そう思ってチラリとそちらの様子を覗うと良い笑顔で「どうぞどうぞ」されてしまった。
「君たちはノエルの姉貴分ではなかったのかね」
動揺しているせいか口調がおかしくなってしまっている。
「なに言うてんねん。今の保護者は賢者はんやで」
それを言われてしまうと反論しづらいものがある。
「それにアタシたちは起きないから」
レイナの追撃に、ぐうの音も出ない。
「休める時に休んでおかないと責任ある行動は取れないですよー」
「「責任ある行動は自立への第一歩だよねえ」」
「せやせや。はよう魔法戦士にならんとあかんし」
アニスの言葉はこじつけにしても意味不明だが、ダニエラと双子の勢いに乗っているせいか押し切られそうだ。
「城の外に家がないと言ったのは誰だったかしら」
レイナが更に追撃してくる。
確かに言ったよ。
今のところ商人枠や一般枠で入ってくる国民はいないからね。
もしかして魔法戦士系はお城に入ってもらうと言った時のことを根に持ってる?
アニスやレイナは慌てていたけどさ。
「ななななんでやの? うちら魔法使われへんでえ」
「ホントよ。無茶言うのも大概にしなさいよね」
「俺とローズが使えるように仕込むから心配すんな」
この返事にレイナが心底嫌そうな顔をしていたけど、これが原因か?
安全マージンは確実に取るつもりなんだが信用が薄いようだ。
「それじゃあ、ノエルのことよろしく頼む」
リーシャにまでお願いされてしまっては、どうしようもあるまい。
結局のところノエルと添い寝することになってしまった訳だ。
あとはロリコンのレッテルを貼られないことを願うばかりである。
「それじゃあ、また後でな」
「「「「「はーいっ!」」」」」
「では、解散!」
シュババババッ
号令と共に妖精組がダッシュで自室へと去って行く。
中には風呂へ向かった者もいるようだけど。
なんにせよ瞬時に消えちゃうもんだから取り残された新国民組が呆気にとられている。
「ぜ、全員、あのレベルの動きができるのか……」
呆然と呟いているリーシャ。
「すごいですね~」
間延びした口調の割に驚いた表情のダニエラ。
「いやはや、先が思いやられる」
ルーリアも硬い表情で呟いていた。
ノエルだけだよ。
「賢者さん、私たちも行こう」
何事もなかったように言ってきたのは。
俺の手を引いてくる。
反対の手はローズが引っ張っているな。
それに逆らわず俺も歩き始めた。
「じゃあ朝食の時にな」
振り返って残った面々に声を掛けた。
「おやすみ~」
手をつないだまま3人で、その場を後にした。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □
普段の就寝時だったら霊体化するローズが気を遣ってくれたお陰で精神をすり減らすことなく眠ることができた。
さすがは夢属性の精霊獣ですよ、ローズさん。
え? 何をしたのかって?
川の字になって寝ただけだよ。
並び順としては左からノエル、俺、ローズといった具合だ。
これが俺とノエルだけだったら夜が明けるまで『俺はロリコンじゃない』と心の中で念仏のように唱え続けただろう。
だって──
「手をつないだままがいい」
とか言われてしまったからな。
幼女と二人きりで添い寝するだけでもハードル高いのに手をつないだまま眠るとか越えられない壁だよ。
これに我が相棒が加わったことで心理的負担が解消されたのだから大いに助かった。
ぼっちじゃないって素晴らしい。
という訳で平穏に時は過ぎ、まだ暗い時間に目が覚めた。
いつもの起床時間より早めだ。
もともと寝不足には強いし、寝ぼけることもなく起きることができる。
むくりと上半身を起こすとノエルも気が付いたようだ。
もそもそと動いて座り込み小さくアクビをした。
うむ、可愛い。
「おはよう」
「ん……」
まだ眠いようで頷いて返事をするので精一杯のようだ。
部屋の明かりを付けると少しまぶしそうにする。
「ちょっと支度してくる」
「ん」
「ローズ、頼む」
「くーくーくぅ!」
任せなさぁい! と胸を叩きながら言ってくれたので顔を洗いに洗面所へと向かった。
ついでに着替えをして寝間着は生活魔法で洗って乾燥させておく。
洗濯乾燥機いらずだな。
作ってドワーフ相手に売ることも考慮してはいるんだけど。
でないと俺があれこれ便利なものを使うことで目立ってしまうからなぁ。
国外の技術水準が上がれば少しはマシになるかもとは思うのだが。
道のりは長そうである。
洗面台から戻るとノエルは着替えを終えたところだった。
「準備はいいか、ノエル」
「ん」
コクリと頷く表情に眠気などは残っていない。
「それじゃあ顔を洗っておいで」
「わかった」
待っている間に城内の状況を気配で確認する。
「ふむ、これはツバキとカーラ、それからキースだな」
この3名は引率者としての責任感からなのか既に庭へと出ていた。
待ちきれなかったというのもありそうだけど、それを言うのは野暮ってものだ。
そして、他の者たちも目覚めて行動を開始している。
ノエルが戻ってきた。
「終わった」
ちゃんと歯も磨いたようだ。
「えらいな」
ノエルの頭を撫でると目を細めている。
こういうのを見ると子供っていいよなって思う。
俺、子供ができたら親バカになるかもしれん。
読んでくれてありがとう。




