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1263 無理難題?

 ルディア様がやって来た。

 だとすればラソル様の件についてだろう。


『電話で充分なんだけど』


 などと思ってしまったのは驚かされたことを根に持っているせいか。

 我ながら小さい男である。


「むぅ、すまぬ。

 直前まで慌ただしかったのでな」


「いいですけど、何かありましたか?」


 余程のことがなければ直に来たりはしないだろう。


「うむ、統轄神様からの言伝だ」


「ふぁっ!?」


 思わず変な声を出してしまっていた。

 予想外すぎる用件だったからなのは言うまでもない。


 だが、納得もできてしまう。

 ルディア様はメッセンジャーを任された訳だ。

 確かに電話で済ませる訳にはいかない用件である。


 それにしても、面識のない偉い神様が俺に何の用があるというのか。

 そもそも接点がないはずだ。


「ん?」


 間接的な接点はあるか。


「もしかして、ラソル様の一件ですか」


「そうだ」


 ルディア様はおもむろに頷いた。


「まずは、済まないと」


「は?」


 変な声を出すのは、どうにか堪えられた。


「意味が分かりませんが」


 統轄神様から謝られるようなことにはなっていなかったはずだが。


「責任があると仰っていた」


「はあ……」


 皆目、見当がつかない。


 別にラソル様をけしかけた訳ではないだろう。

 それとも実はファンキーな性格で「ヘイ、やっちゃいなYO」なんて言ったりするとか?


 いくら何でもそれはないはずだ。


「自重を知らぬバカ者に制限をつけず課題を与えたからだそうだ」


「あー、そういうことですか」


 監督指導する立場として責任があるということなのだろう。

 そこまで気にするようなことでもないと思うのだが。


 なんにせよ、律儀な神様である。


「それは御丁寧にどうもすみません。

 ですが、悪いのはラソル様です。

 お気になさらずとお伝えください」


「うむ、分かった」


「それでラソル様はどうなりましたか?」


「確保して統轄神様の所に連行された」


「そうなりますよねー」


 統轄神様が責任を感じておられるというのだから。

 きっと凄いお仕置きになることだろう。


 であるならば、俺がとやかく言う必要もない。


「あのバカ兄者については、あれこれ考えなくても良いだろう」


 ルディア様も俺と同意見らしい。

 余計なことを言わなくても充分に罰が与えられるはずだとね。


 なんだかお墨付きをもらった気分だ。

 不満も不安も残ることはなさそうである。


『一件落着ってことだな』


 これにてルディア様もメッセンジャーとしての役割を無事完了。

 俺は無事に温泉で休暇を楽しむことができるって訳だ。


 そう思っていたのだけれど……


「それよりも、だ」


 ルディア様が話を切り替えてきた。


「はい?」


 紅茶好きの警部殿風のアクセントで返事をしてしまう。

 まだ何かあるらしい。


「統轄神様から頼まれてな」


「はいぃ!?」


 今度は警部殿どころか驚きの入り交じった素っ頓狂な声を出してしまった。


「俺、なんか咎められるようなことしましたっけ?」


 戦々恐々である。


「ああ、いや、そうではないのだ」


 珍しくルディア様が少し取り乱した感じで否定してきた。


「すまない。

 誤解を招いてしまったか」


 ルディア様が苦笑しながらも謝ってきた。


「いえ……」


「詳細を先に言うべきだったな」


「はあ……」


 どうやら、叱られたりする訳ではないらしい。

 そのことに安堵するも不安が残る。


 俺はドキドキしながらルディア様の言葉を待った。


「今回の詫びとしてハルトが望む願いを叶えよう」


「詫びですか!?」


 思わず聞き返してしまったさ。


「そうだ」


「統轄神様が仰ってるんですよね」


 念には念を入れて聞いてしまう。


「ああ」


 確認するたびにルディア様が肯定してくれるのだが。


『なんだかなぁ』


 信じられない訳ではないのだ。

 疑うつもりなど毛頭ないからね。


「大袈裟すぎませんか?」


 そう思ってしまうが故に確認せずにはいられなかったのだ。


「そんなことはないと思うがな」


 ルディア様は何でもないことのように返事をしたけれど。

 俺は素直に頷けない。


 統轄神様と言えば、管理神であるベリルママの上の更に上の神様である。

 直の上司がエリーゼ様だって言ってたから間違いないだろう。

 どのくらい上なのかが分からないのが不安材料だ。


 以前はエリーゼ様のすぐ上くらいに思っていたのだが。

 どうも、そんな感じじゃないんだよな。


「遠慮することはないのだぞ」


「無茶言わないでくださいよ」


 母親の上司である。

 それも上から数えた方が早そうな地位にいると思われる上司だ。


「俺はラソル様みたいに大胆にはなれませんって」


 そこだけは本当に感心する。

 尊敬してもいいくらいだ。


 まあ、こんな話はおちゃらけ亜神には聞かせられないがね。

 絶対に調子に乗るだろうし。


「何を言うかと思えば……」


 ルディア様が呆れたと言わんばかりに頭を振った。

 溜め息までついている。


「ハルトは被害者ではないか」


「いや、まあ……」


 それは事実だから否定はできない。

 が、そういうことではないのだ。


「被害者に対する保証だと考えればいい」


 そういう意味合いのものだということは理解できる。

 できるけれど、言いたいことが伝わっていない。


「その保証が恐れ多いんですけど」


「は?」


 なに言ってんだコイツの顔をされてしまった。

 やはり、認識に大きな差があったようだ。


『勘弁してくださいよぉ……』


 思わず内心で嘆いてしまう。


 とはいえ嘆いている訳にはいかない。

 誤解されているなら説明しなければな。

 でないと、いつまでたっても誤解されたままだ。


「ですから──」


 俺は丁寧に説明した。

 どう感じているのか。

 どう考えているのか。


 そしたら溜め息をつかれてしまった。

 一瞬、俺が呆れられたのかと思ったが──


「兄者にそれくらいの謙虚さがあればな……」


 ということだった。


『知らんがな』


 思わず関西弁でツッコミを入れたくなったさ。


 ラソル様のあの性格を変えるなんて俺には無理だ。

 いや、他の誰にもできないだろう。

 統轄神様だって詫びてくるくらい苦慮しているのだから。


「とにかく、遠慮も気兼ねも無用だ」


 無茶を言ってくれる。

 気にしない訳にはいかないだろう。

 これなら制限をつけてくれた方がマシである。


「何でも良いのだぞ」


 ルディア様はフォローのつもりで言ったのだろう。


 だが、そんな訳はない。

 逆にハードルを上げられた気がする。


 死んだ人間を生き返らせてほしいとか言ったら却下されるはずだ。

 被害とのバランスが取れないからな。


 そこは無視して、どんな願いもひとつだけというなら話は別だが。


『どんな願いもって……』


 何処かで聞いた感じがする。

 すぐに思い出した。


 願いを叶えるために龍の球を7個集めるアニメ。

 最初はギャグのカラーが濃かったが、バトルものへシフトしていったやつだ。

 原作は漫画だけど。


 なんにせよ、アニメや漫画みたいに都合良くかなえたい願いなんてあるはずもなく……

 そういうのが咄嗟に思い浮かぶなら苦労はしない。


 あのアニメだとギャルの下着なんてお願いしてたこともあったけど。

 そういう変態的な趣味は持ち合わせていないので参考にはならない。


 如何に色気のある下着であろうとも着用してこそ。

 単なる布きれは言いすぎだとしても、魅力の主体は下着ではなく着用者の方だ。


『さて、困った』


 詫びの内容は適当に決めてくれれば気が楽なのだが。

 それはそれで微妙なものだったりするのかもしれないけどね。


 だったら3択ぐらいにするとか。

 比較して選べるなら、こちらとしても大いに助かるところだ。


 まあ、それを要求するのも図々しいってことになるのだが。

 となると八方ふさがりってことになるんだよね。


『こういうの困るんですけど』


 とは言えないし。


『ん?』


 困っていることならあったよ。

 出来たてホヤホヤの悩みが。

 解消できるなら、すごく助かる。


『果たして聞き入れられるかどうか……』


 これも図々しいと言われそうな気がするんだけど。


読んでくれてありがとう。

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