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1185 つくって確認して仮眠を取ったら……

 どうにかベッドと寝具を仕上げることができた。

 数が増えると工房に発注しました風という条件は意外に難しかったけれど。


「ちょっと高級品っぽいか」


 微妙な不揃い感の分は職人の技で分かりづらくしました的な処理をしたせいだろう。

 遠目には均一に見えるが、近くでよく見ると違いがあった。


 デザイン的には地味だからゴージャスな感じではないんだけど。

 自然な感じを残しつつもシックな出来だ。


 単に形になるよう仕上げた無骨な代物とは一線を画している。


「これはマジでヴァンに何か言われそうだな」


 苦笑を禁じ得ないが反省するようなことでもないだろう。

 もちろん、後悔もしていない。


 ヴァンにどういうことかと詰め寄られる恐れはあるけどね。

 作業を始めたときと違って一気に仕上げたから短時間で用意できてしまったし。


 言い訳は「眠れなくてつい作ってしまった」ぐらいしか思いつかない。

 その後に「後悔はしていない」と言うのはありだろうか。


 つい、益体もないことを考えてしまった。

 できればそういう事態に陥りたくないという軽い逃避である。


 バレたときは仕方がない。

 開き直るとしよう。


 仕上げたベッドと寝具は適切と思われる場所に転送魔法で放り込んでいく。

 サクッと完了。


 が、気合いを入れて物作りをした余韻が尾を引いているような感じだ。

 微妙に高ぶっているのを感じる。

 仮眠のための暇つぶしで何やってんのってツッコミを自分に入れてしまいそうだ。


 まさに本末転倒としか言い様がない状態になってしまった。

 我ながらアホである。


 とはいえ、悔いたり苛ついたりはしている訳じゃない。

 満足度は高いので落ち着けば気分よく眠れるだろう。


「さて、次なる暇つぶしは何かないかな」


 物作りは回避の方向で。

 連続で同じミスは御免被る。


 そうなると一気に幅が狭まるが、仕方あるまい。

 あれこれ考える気分でもないのが困ったところだ。


『今回は腹立たしい話が続いたからなぁ』


 苦境に立たされていたのはフランク一家だけじゃなかったし。

 他の借金奴隷だった者たちの家族も少しは報われると良いのだが。


 そのあたりはジュディ様が上手くやってくれるようなので俺は気が楽なんだけど。

 今回はグロ注意なものばかり見せられ続けたから、ようやくイーブンな気もするが。


『あー、でも皆がレベルアップしたのは朗報か』


 アンデッドスライムは女子組全員で倒したから上がり幅は少ないみたいだけど。

 少し確認しておこう。


 まずはベルたちのチームから。


『おっ、そうきたか』


[ベル   /人間種・エルダーヒューマン/レベル104]

[ナタリー /人間種・エルダーヒューマン/レベル102]

[シャーリー/人間種・ヒューマン+   /レベル 89]

[シーニュ /人間種・ヒューマン+   /レベル 90]


 ベルとナタリーが進化してヒューマン+からエルダーヒューマンに進化している。

 見た目に変化はなかったが、これは外見を自然に見せるための魔道具の効果だ。


『ちょっと高度に作りすぎたか』


 本人たちの様子に変化が見られなかったからな。

 なにより、ちゃんと確認するまで俺も気付いていなかったくらいだし。

 俺がそちら方面は気にしていなかったというのもあるだろうけど……


『こまめに魔道具をバージョンアップしてたらやりすぎたか』


 何事も程々が一番である。


 肝心のレベルの方は、やはり上がりが少ない。


 ベルやナタリーで1だけ。

 神官ちゃんも2アップ止まり。


 シャーリーは3レベル上がっていたが、レベルアップ前の状態が影響しているだろう。

 レベルアップ寸前だった訳だ。


 残りの女子組にもそういう者が何名かいる。

 風と踊るの面子ではウィスが該当するようだ。


[フィズ/人間種・ヒューマン+/レベル82]

[ジニア/人間種・ヒューマン+/レベル80]

[ローヌ/人間種・ヒューマン+/レベル79]

[ナーエ/人間種・ヒューマン+/レベル79]

[ライネ/人間種・ヒューマン+/レベル79]

[ウィス/人間種・ヒューマン+/レベル83]


 フィズたちは4レベルアップだが、ウィスは6レベルだからな。


『あるぇ?』


 2レベル差にはならないはずなんだが。

 変だと思ってウィスの詳細を確認してみたら称号持ちになってましたよ。


『マジかー』


 ちょっと呆然。


 称号は[見極める者]となっている。

 おそらくレヴナントを仕留める際に聖烈光で必要なダメージを探っていたあれだろう。


 あの時の成果として経験値が余分に入ったようだ。

 上級スキルの【魔力操作】もゲットしているし。


『こちらは、むしろ当然か』


 あれだけ細々とやっていたからな。

 口で説明するのが面倒だからって難易度の高いことをしようとするのがよく分からんが。

 今のウィスのレベルでは聖烈光の5本同時制御の方が神経を使うはずなのだ。


『まあ、それだけ説明するのが負担なんだろう』


 フィズとジニアは面倒くさがっているとか言っていた気がするけどな。

 人前で喋りたくないのを、そう評しているといったところか。

 人見知りをこじらせた結果だと見ているみたいだし。


 学校に通っても、そこは治らないようだ。

 そういうカリキュラムを組んでいる訳じゃないからな。


 仮にそういうものを導入しても容易には結果に結びつかないと思う。

 なんにせよ、手間をかけたことでウィスは得をした訳だ。


 レベル的にはそこまで得をしたとは言い切れないが、上級スキルはお得である。

 本人が納得するかは分からないが。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 女子組のレベルを確認した後は仮眠を取った。

 翌早朝までは何もない状態。


 あんまり眠る時間は取れなかったが、仕方あるまい。

 日が昇るにはまだ早い時間に起床する必要があるからね。


『でないと爺さん公爵がうるさそうなんだよなぁ』


 何の言伝もなく朝帰りだから、既にうるさく言われるのは確定的とは言えるがね。

 そこはカーターに頑張ってもらうしかあるまい。


 事後承諾とか言ってたけど、果たしてあの爺さんに通用するかどうか。

 火に油を注ぐ結果になりそうで怖い。


 そしてヴァンは板挟みにあう訳だ。

 同情を禁じ得ないが、俺にはどうしようもない。


 それどころか俺にまで飛び火してきそうな気がするんだけど。

 カーターを連れて行ったのは俺だから充分にあり得る話だし。


 そんな訳で、なるたけ早く帰った方がいい。

 爺さん公爵から受けるお小言攻撃の時間を少しでも少なくするためにな。


 ずっとワシのターンみたいな状況にだけはさせてはならない。

 もし、そうなったら全力で逃げよう。


 とにかく今はそうならないように早めに残りの処理を終わらせて帰るだけである。

 睡眠時間が少々短いくらいで、どうこう言っている場合ではない。


 それに少しでも眠れば意外にスッキリするものだ。

 だからといって不規則な生活はお薦めできないがな。


 時差ボケみたいになって体調を崩すし。

 それを解消できるジェットラグキャンセラーみたいな魔法があれば話は別だけど。


 西方には該当する魔法はない。

 もちろん、類似効果のある魔法もね。

 【諸法の理】先生はウソつかない。


 とにかく仮眠の時間は終了だ。

 ムクッと起きてササッと寝袋を片付ける。

 他の皆も起き出してきた。


「ハルト殿っ!」


 興奮した面持ちのカーターが不格好にピョンピョン飛び跳ねながらやって来た。


「凄いよっ、大変だよっ、訳が分からないよっ!」


 こんなに興奮したカーターはレアどころの話ではないだろう。


「少しは落ち着け。

 訳が分からんのは俺の方だ」


 何しろ寝袋から出ることなく文字通り跳んで来たからな。

 寝袋から出てくるのさえ、もどかしく感じるほどとは何があったのか。


「それどころじゃないんだって!」


 カーターの興奮ぶりときたら、少々の説得では焼け石に水となってしまいそうだ。


「だとしても、自分の格好を確かめてからにしろ」


 そう言いながら胸元を指差した。

 釣られて下を見るカーター。


「あ……」


 これはさすがに効果があったようだ。

 慌てて寝袋からの脱出に取り掛かる。

 いつものカーターとは思えないくらい乱暴にババッと脱ぎ捨てるように出てきた。


「大変なんだよっ、ハルト殿!」


「靴も履こうぜ」


「それは後でいいよ」


 苦笑を禁じ得ないほどの即答ぶりである。


「で?」


「神託があったんだ!」


 ジュディ様が仕事をした証拠だ。


「ああ、そうなんだ」


 カーターにも神託を下すことはルディア様との打ち合わせで知っていた。

 故に驚きは何処にもない。


「神官でもない私にだよっ」


 俺の冷めた返事に興奮を上乗せして強調してくるカーター。


「別に必要とあれば神官に限らず神託は下るぞ」


 今回はそういうケースだ。

 西方の常識で照らし合わせて考えると希少な体験になるんだろうけど。


 カーターが怪訝な表情になった。


「もしかしてハルト殿も神託を受けたのかな?」


「まあね」


 俺の場合は事前にその内容を知らされていたと言うべきなんだけど。


「それにしては落ち着いているよね」


「神託なら何度か受けてるからな」


「な─────っ!」


 ピョーンと跳び上がるカーター。


『アニメかよ』


 内心でツッコミを入れておいた。


「実にうらやましいね」


「そうでもないぞ。

 慣れると仕事を依頼されるんだなって感じだし」


「そんな風に言えるのが、うらやましいよ」


「そうなんだ」


「そうだよ!」


 鼻息も荒く拳を握って力強く語るカーター。


「夢の中とはいえ、神にも等しい存在と話ができるんだからっ」


 そこでカーターの表情が何かに気付いたような感じに変わった。


「そうだよっ!」


「2度も言わなくても、言いたいことは分かるぞ」


「そうじゃなくて、そうなんだよ」


「訳が分からん」


 言ってることが正反対で支離滅裂だしな。


「ハルト殿の言った通りだった」


 俺、カーターに何か言ったっけ?


読んでくれてありがとう。

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