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1055 どんな感じだった?

 残りの奥さんたちも集まってきた。


「「ごめんなさい」」


 ABコンビはシュンとしながらもハッキリした声で謝ってきた。


「いいよ、気にしてない」


 何でもないように言うと、ようやく安堵した表情になった。


「旦那よ、すまない」


「申し訳ありません」


 ツバキやカーラも謝ってきた。


「「すみません」」


 レオーネとリオンもだ。


「分かったから、気にしないように」


 そうは言ったものの神妙な雰囲気は残ったままだ。

 落ち込んでるのとは微妙に違う。

 反省して畏まっているのだと思われる。


『可変バフの効果はちゃんと出ているようだな』


 とはいえ砕けた雰囲気には持っていけそうにない。

 この調子では縫いぐるみのリクエストを受け付けても遠慮するんじゃなかろうか。


 無理に聞き出そうとしても失敗すると思う。

 そんな訳で今日は無理という結論に達した。


『しょうがないなぁ』


 だから、ほとぼりが冷めてから注文を受けることに決定。

 日を改めれば大丈夫だと思う。

 たぶん……


 後はタイミングだ。

 あまり日にちを空けると良くない。


『縫いぐるみを持ってる側から突き上げが来るだろうしな』


 特にマイカあたりはうるさく言ってくる気がする。


「モフモフを心置きなく楽しめないじゃない!」


 とか言いそうだ。

 それも明日の朝一くらいで……

 面倒見がいいのか、単にせっかちなだけなのか。


『まあ、両方かな』


 マイカにはキーキー言わせないようにメールで予定を伝えておこう。

 勝手に暴走されるとマズいのでミズキ経由にした方が良さそうか。

 根回しができれば、残りの奥さんたちの様子を探ることに集中できるだろう。


『頃合いを見計らって呼び出して……』


 ここが気を遣うところだ。

 気にしないようにとは言ったが反省が何処まで続くかは読めない。

 重く受け止めてそうにも見えるしな。


 一晩の睡眠でどれだけ心の整理がつけられるかが鍵となりそうだ。

 なんにせよ反省組は帰って寝るようだ。


 あれだけ神妙になれば遊ぶ気分が消え失せるのも分かる。

 もちろん宴に参加して酒を飲むような気にもなれないだろう。


 すべては明日以降だ。

 そう思っていると──


「陛下ー!」


 笑顔で手を振りながら食堂3姉妹の長女スーが小走りでやって来た。

 もちろんシーオやミーンも一緒だ。

 姉ほどテンションは高くないが。


 むしろ恥ずかしそうにしている。

 その証拠に、やや後ろを迷いの感じられる表情を見せながら走っている。

 姉と行動を共にする意思はあるのだが、周囲から注目は集めたくない。

 そんな感じなんだろう。


 まあ、本人たちが思うほど妹2人は注目を集めていない。

 視線はスーが集めていたからな。


 騒々しく呼びかけてきたせいで目立ったのは切っ掛けに過ぎない。

 今日の服装は割とゆったり目なんだが揺れるのだ。

 何処かのウサ耳さんほどのダイナマイトバディではないが揺れるのだ。


 2回も揺れると言ってしまったが大事なことだろうか?

 俺的には眼福で大事なことなんだけどね。


『ナイスバディ!』


 心の中でサムズアップしてグッジョブ認定。

 俺はスーが目の前に来るまで眼福タイムを堪能させてもらった。

 元気いっぱいだとポヨンポヨンな揺れも弾み具合が違う気がする。


『うーん、天国』


 とはいえスーが立ち止まれば、至福の時間は終わるのだが。

 できれば長く堪能したいところではあるが、それはそれでリスキーである。


 鼻の下を伸ばしていると奥さんたちから説教されかねんからな。

 ならば、こちらから声を掛けて疑念を抱かれないようにしよう。


「どうやら、まだまだ遊び足りないようだな」


「え、そうですか?」


 俺の前までやって来たスーに首を傾げられてしまった。

 凄く不思議そうである。


「そんな風に聞き返されてもな」


『自分のことだろうに』


 俺に分かるとでも?

 自分の奥さんのことですら、分かりかねることがあるというのに。


 食堂3姉妹は顔を合わせることが多い面子ではある。

 しかしながら城に常駐する面子よりは会話をすることも少ない訳で。

 完全に理解していると思われている風なのは理解しがたい。


『筋金入りの天然さんだよな』


 しかも俺の周囲には何故か多い気がするのだ。

 そういう天然女子が。


 嘆いても減る訳じゃないけどさ。

 それどころか、それを口にしたら逆に増えそうだ。

 フラグが立つってやつだな。


 もちろん言うつもりはない。


「スー姉は、はしゃぎすぎ」


「そうなの?」


 追いついてきたミーンのツッコミにも聞き返すとは……

 シーオが頭痛がしているかのようにこめかみを押さえながら頭を振った。


「スー姉はどうしたいの?」


 そして問いかけた。


「どうしたいって、何が?」


「今日は充分に満足できた?」


「ええ」


 質問の意図が理解できないらしくキョトンとしながらも頷いて返事をするスー。


「だったら、もう帰りたい?

 それとも残って遊んでいきたい?」


 シーオはスーがどちらを選ぶかで、そのはしゃぎっぷりが分かると言いたいのだろう。

 生憎とスーには伝わっていないようだが。


「仕込みがあるから帰るに決まってるじゃない」


 さも当たり前のようにスーは即答した。


 が、それはシーオの求めた答えではない。

 どうするかという行動を聞いたのであれば正しい答えだ。

 しかしながら、シーオが聞いたのはどうしたいのかという願望である。


『さすがは天然さん』


 とはいえ、この返答は容易に推測できた。

 スーは真面目さんでもあるからな。

 それはシーオも同じ。


 いや、姉妹だから問う前から想定していたかもしれない。

 やっぱりと言いたげに嘆息した。


「明日の分は終わってるでしょ。

 間に合わないといけないからって余分にやってたじゃない」


 淡々とした様子でツッコミを入れている。

 これで話の流れは戻るだろう。


 が、俺はそう思いながらも妙なことで感心していた。


『予定が立てづらいから前もって仕込みのことも考えていたんだな』


 倉庫で管理すれば劣化もしないし。

 食堂で使う1日分の仕込み量なら彼女らの管理する亜空間倉庫でも仕舞っておけるはず。


「あ、そうだったわね」


 テヘペロな感じで自分の頭をコツンと軽く叩く真似をするスー。


『おいおい、自分でやったことを忘れるな』


 思わず内心でツッコミを入れる。

 俺も人のことを言えた義理ではないので言葉にはしなかったが。

 せめて前日にやったイレギュラーな仕事くらいは覚えておいてほしい。


 シーオとミーンも俺と同じ思いなのだろう。

 諦観を感じさせる溜め息をついていた。


 が、スーは意に介さないようで平然としている。

 というより妹たちが嘆息する理由に気付けないようだ。

 首を傾げて戸惑い気味である。


 ただ、その困惑顔もすぐに解消されるのだが。

 分からないなら考えてもしょうがない的な楽観的思考だと思われる。


「それで、何だっけ?」


 その場にいた全員がズコーっとズッコケた。

 凄まじいボケっぷりである。

 破壊力満点と言わざるを得ない。


 それにもめげず少し離れた所でトモさんがボソボソ言い始めた。


「あー、ぬぁんだっけ?」


 岩塚群青さんの物真似だ。

 ガックリした姿勢から立て直すよりも優先されるらしい。


「連想ボケ?」


 同じくガックリしたままのミズキに問われて──


「うん、そう」


 と嬉しそうに答えていた。


『どんだけ好きなんだよ』


 分かっていたことだけどさ。

 脱線している間に復帰する者が出始める。

 真っ先に復帰したのはミーンであった。


「シーオ姉がスー姉に聞いたのは、どうするかじゃなくどうしたいか」


 肝心な部分だとばかりに指摘する。


「あら?」


 小首を傾げるスー。

 考え込むことしばし……


「そうだったわね」


 苦笑しながら肯定した。


「で、どうなの?」


 疲れをにじませた表情で返事を要求するシーオ。


「今日は満足できたわ。

 だけど、もう少し遊びたい気もするわね」


 素直に心情を語るスー。

 満足そうに頷くシーオ。


「やっぱり、はしゃいでるじゃない」


「そう?」


「「そう」」


 妹たちに断言されるスーであった。


『あのあたりは姉妹でないと分からんな』


 なんにせよ、長女の希望により遊んでいくようだ。


「さて、そろそろ帰ると──」


「「「「「陛下ーっ」」」」」


 冒険者の集団がやって来た。


『千客万来だな』


 来たのは風と踊るを含む女子組の面々だった。


「おう、楽しめたか?」


「「「「「はいっ!」」」」」


 体育会系のノリがあるせいか返事がハキハキしている。


『夜になっても元気だね』


 まあ、例外もいる。

 体力的な面では問題ないが、そういうのが苦手なウィスなんかは代表格だ。


 その割に俺の近くに寄ってきてアピールするのは忘れないというチャッカリさんである。

 アピールと言っても単にチラチラ俺の方を見てくるだけだが。


 最前列でそれをすると目立つのは間違いない。

 とはいえ体育会系な面子の勢いには勝てないんだけど。


読んでくれてありがとう。

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