表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1065/1785

1054 オーダーメイドでつくってみた『縫いぐるみ各種』

 とりあえず並んでいた面子の注文は聞き終わった。


『全部で7人分か』


 とは言いつつもクリスとルーリア、それからレイナの分は既に終わっている。

 聞きながら並行作業していたからね。


「まずはクリスだな」


「はい」


「ワシミミズクだったな」


 そう言いながら完成品を引っ張り出して手渡した。


「ありがとうございます」


「ちょっと魔力を流してみな」


「はい?」


 首を傾げながらもクリスが言う通りに軽く魔力を流した。

 バサッと翼を拡げるワシミミズクの縫いぐるみ。


「わっ、大きい」


 ちょっと驚きながらもクリスが笑った。


「もう一度、魔力を流すと翼を閉じるぞ」


 再び魔力を流すクリス。


「ハルったらズルいー」


 とかマイカが言ってきたが。


「マイカちゃん、私達のも動くよ」


 ミズキからツッコミが入った。


「ナンデスト!?」


「ほら」


 人化したシヅカの縫いぐるみを披露するミズキ。


「なっ!?」


 驚いたのはシヅカだった。

 みるみる顔が赤らんでいく。


「あー……」


 失敗したという顔をしてミズキが魔力を流した。

 あっと言う間に龍モードへと戻る縫いぐるみ。


「へー、変身しちゃうんだー」


 マイカは感心している。


「主よっ、凄く恥ずかしいのじゃがっ」


 抗議されてしまった。


「そう言われても作ったものを取り消すことはできんしな」


「ぐっ」


 さすがに没収とはいかないようだ。


「スマンな。

 これしか思いつかなかったんだ。

 クネクネ動かすと気味が悪くてな」


「……むぅ」


 それを想像したのだろう。

 シヅカの勢いが急速に萎んでいった。

 そこに片手でスマンとジェスチャーを入れる。


「しょうがないの」


 諦観のこもった溜め息をついてシヅカは引き下がってくれた。


「ただし、外への持ち出し禁止じゃ」


 ミズキに条件をつけることも忘れなかったが。


「何よ、これぇ!?」


 騒々しいったらありゃしない。

 マイカが受け取った縫いぐるみを見せてくる。


 鉤爪を伸ばしたローズが不敵に笑っていた。

 もちろん縫いぐるみの話だ。


「格好いいだろ?」


「可愛くないー」


 抗議してくるマイカ。

 モフモフこそが至高なマイカにとっては戦闘モードのローズは不要なのだろう。


『さっきから抗議してばっかだな』


 まあ、気持ちは分からんでもないが。

 確かに可愛さは大幅減だ。

 薄暗い部屋とかで見せられるとホラーチックかもしれない。


「モデルになった本人はどう思う?」


 ローズに振ってみた。


「くくっくぅ!」


 グッジョブ! だそうで。

 腕を曲げて顔の前でサムズアップしながらシャキーンと鉤爪を伸ばしている。

 なかなか気取ったポーズをしているが、これは気に入った証拠だ。


「だそうだぞ」


「くそー」


 悔しそうに唸るマイカ。


「別に引っ込められない訳じゃないぞ」


 そう言うとマイカはハッと気付いたように魔力を流した。


「鉤爪は封印よ」


 鼻息も荒く宣言するマイカ。

 本人らしさよりモフモフが優先される訳だ。


「好きにしてくれ」


「くーくぅ」


 勿体ないと言いつつも肩をすくめるに留めるローズ。

 モフモフの要求が減るであろうこととトレードオフしたようだ。


「シヅカはどうだ」


 イルカのヒレを動かすだけなので微妙かとも思ったのだが。


「充分じゃ」


 そう言いながら理力魔法で浮かせながら魔力を流している。

 すると縫いぐるみのイルカが泳いでいるかのように見えてきたから不思議なものだ。


「へえ」


 俺も予想しなかった遊び方である。

 とにかく満足してくれたなら、それでいい。


「さて、次はルーリアだな」


 思わぬ脱線となったが待たされたというような空気にはなっていない。

 むしろ期待感が増していた。

 動く術式が込められているとは思わなかったからだろう。


「フワモコのタヌキさんだったな」


「っ!? タヌキさん……」


 さん付けしただけでルーリアが赤面した。

 普段キリッとしてる彼女が赤面すると、なんだか可愛い。


 ちなみにタヌキさんは魔力を流すと小さめの抱き枕になる。

 教えた訳じゃないんだが、ここで試すつもりはないようだ。


「レイナは襟巻きフェレットだったな」


「っ!? どうしてそれを?」


 驚愕しつつ赤面しているレイナ。


「首に巻けるサイズって言ってる時点でバレない方がおかしいっての」


 そう言うと縫いぐるみを受け取りはしたんだけど……


「うにゅにゅにゅにゅう」


 奇妙な声を発しながら身悶えし始めてしまいましたよ?


「何やってんだよ」


「だって恥ずかしいじゃない」


「何処が?」


「縫いぐるみなんて首に巻くようなものじゃないでしょっ」


 キレ気味に言われてしまった。


『解せぬ』


「じゃあ、なんで巻き付けようと思ったんだよ?」


「か、可愛いから……」


 どうやらマフラーとしてよりアクセサリー的な感覚らしい。


「縫いぐるみをアクセサリーにするのはマイカぐらいだろうな」


 俺がそう言うと「ホラ、やっぱり」という目を向けてくる。

 ちなみにマイカはドヤ顔だ。


『マイカはディスられていることに気付け』


 モフモフがらみの話になるとポンコツになるのな。

 とりあえずマイカは放置する。

 今はレイナをフォローすべきだろう。


「だが、俺は襟巻きフェレットと言ったはずだ。

 アクセサリーだなどと言った覚えはないんだが?」


「どういうことよ?」


 ドスを利かせた声で威嚇するように聞いてくるレイナ。


「首に巻いて魔力流してみな」


 話はそれからだとばかりに強気の姿勢を貫く。


「……………」


 しばらく睨み合いの格好になったもののレイナが折れる格好となった。

 恥ずかしさがあるせいか渋々といった感じだがフェレットぐるみを巻き付ける。


 そして魔力を流す。

 するとフェレットぐるみがモゾモゾ動いて己の尻尾に抱きついた。


「え?」


 ポカンとしているレイナ。


 が、フェレットぐるみはまだまだ変形中だ。

 レイナの首回りに合わせてフワッと膨らむ。

 その時には尻尾も足も胴体と一体化してリング状になっていた。


「ちょっと、生きてるみたいに温くなってきたんだけど?」


 困惑の表情を浮かべるレイナ。


「今の季節だとそのうち蒸し暑くなるだろうが、冬にはいいと思わないか?」


「ホントに襟巻きなの?」


 驚きを露わにするレイナに不機嫌さは微塵も感じられなかった。

 襟巻きという用途に納得できれば恥ずかしさは霧散するらしい。

 それどころか感動しているくらいだ。


「だから、そう言ってる。

 冬場以外は縫いぐるみモードでモフモフすればオールシーズン対応だ」


「ふわわわわ……」


 顔を真っ赤にしてレイナさん撃沈。

 ルーリアに支えられてフラフラと下がっていく。


『後でデレデレになりそうだな』


 まあ、次だ。

 そうこうしている間に他の縫いぐるみも仕上がってきているからな。


「アニスはスナネズミたくさん」


「うわー、みんな少しずつ違うやん」


「同じ方が良かったか?」


 ブルブルと頭を振るレイナ。


「魔力流してもええ?」


「ああ」


 アニスが魔力を流すと縦列でドッキングしていった。


「どういうこっちゃの?」


 訳が分からんと困惑の表情を浮かべるアニス。


「首に巻けば完成する」


「あ!」


 後はレイナのフェレットぐるみと同じだとアニスも気付いたようだ。


「おおきに、ハルトはん」


「どういたしまして」


 次はメリーとリリーの番だ。


「双子ちゃんたちはマゼランペンギン」


 こちらは同じものにした。

 ただし胸元に蝶ネクタイをしており、彼女らの髪の色とお揃いにしている。

 メリーが薄い緑で、リリーが水色。


 こちらは魔力を流すとフリッパーと呼ばれる翼の部分をパタパタと動かすだけだ。

 仕掛けに差があるかとは思うが、そうそう思いつかないので勘弁してほしい。


「「ありがとうございまーす」」


 双子ちゃんたちは素直にお礼を言ってくれたけどね。

 続いてダニエラとリーシャ。


「親子のコアラと、お任せで狼だったな」


 同時に仕上がったのでまとめて渡す。


「ひゃあっ、可愛いですね~」


「格好いい……」


「ハルトさん、ありがとうございます~」


 ダニエラは嬉しさを抑えきれないらしく跳びはねるように礼を言われた。

 いいものを持ってるダニエラさんですから──


『ポヨンポヨンだー』


 目の保養をさせていただきましたよ。


「ありがとうございます」


 リーシャも礼を言ってきた。

 ただし、硬い表情で。


 デレ顔を披露したくないからというのは皆も理解している。

 だから沢山の生暖かい視線を向けられていたけどね。


読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記リンクをクリック(投票)していただけると嬉しいです。

(投票は1人1日1回まで有効)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ