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106 感想を聞いてみた

改訂版です。

「そういやハマーたちは静かだな」


 一息ついたら、こちらに来ると思っていたのだが。


「主よ、彼等は私が魔法で眠らせておいた」


 ツバキさんの仕業でしたか。


「なんでさ? バレたら面倒くさいぞ」


 ハマーが怒ってくるのは、ほぼ確実だ。


「彼女たちに我々のことを説明する良い機会と考えた故に」


 あー、ミズホ国民としてスカウトしなさいよってことか。

 ハマーたちを除外したのはジェダイト王国側から派遣された案内兼護衛という立場を考えてのことだろう。

 許可も得ず任務中にスカウトするのはガンフォールを出し抜く格好になる。

 心証を悪くするのは確定的だ。


 その点、女性陣は余計なしがらみや縛りがないと判断したのだろう。

 ルーリアは自分で居場所がないから旅をしていたと言っていたし。

 月狼の友も事情は違えど状況は似たようなものだ。


 ただし、月狼の友はノエルと旅をする理由がある。

 そこんところをツバキには説明していなかった。

 襲われてたので助けたってのと見込みがありそうだから様子を見るってくらい。

 熊男事件の時にそう言ったきりだからなぁ。

 これは俺のミスだ。


「何処まで説明したんだ?」


「特別なことは何も。主が使った魔法についての解説くらいだ」


「うーん」


 腕組みをして少し考えてみる。

 スカウトの成否は分が悪い。

 ルーリアは未知数。

 目的のあるノエルたちは、ほぼ失敗するだろう。

 ただ、将来のための布石と思えば無駄ではないかもしれない。


 今がスカウトの好機とツバキが判断したのは頷ける側面がある。

 平時にミズホ国のことを説明しても与太話の類いだと思われかねないからな。

 ノエルたちも何から何まで知っている訳じゃない。

 特にルーリアは蝗害発生前の予備知識が白紙同然だ。

 今回の蝗害事件を俺が1人で片付けたことで説明する情報の信憑性は高まるはず。

 逆に拒絶的な反応をされる恐れも出てきたと言えるのだけど。


 俺は腕組みをといて全員を見渡した。


「俺たちの話をする前に──」


 そう前置きすると興味深げな目をしていた面々が真剣な表情になる。


「魔法の解説を受けた感想をどうぞ」


 リーシャに振ってみた。


「えっ、ええっ、私?」


 いきなりだったのは否定しないけど動揺が激しいな。

 いや、さっきの魔法は規模が規模だけに修羅場ってたとしても無理ないのか。


「えーと、えーっと……」


 悪印象ではなさそうに見えるのが救いだ。


「じゃあ考えといて」


 即答を求められないなら少しは落ち着いて考えられるだろう。

 無理かな?

 微妙なところだ。


「ノエルはどうだった?」


 この子までテンパるようならダメだよな。

 何故だか周囲のお姉さんたちより遥かに冷静な娘さんだし。

 達観しているというか老成しているというか10歳児とはとても思えん。


「無詠唱なのが凄い」


 少し首を傾げてから答えた内容がそれですか、お嬢さん。

 天然風味はダニエラさんで間に合ってます。

 それとも、あの規模で無詠唱の魔法を連発したのが凄いと言いたいのだろうか。


「お褒めいただき光栄です、お嬢さん」


 何にせよ褒められたんだから礼は言っておかないとな。


「ん」


 無表情で頷かれたが、何気に満足している風である。


「じゃあ次、レイナ」


「アンタらが非常識なのがよく分かった」


「それは否定しない」


「しないんかいっ」


 漫才師ばりのツッコミが入った。

 日本でウサ耳のダニエラと組んだら面白い漫才を披露できそうだ。

 耳とか尻尾に注目が集まるだけで終わりそうな気がするけど。

 いや、連れて行かんけどね。


「俺らの常識、世間の非常識ってな」


 向こうが乗ってきたので俺も合わせてみたのだが──


「もういい……」


 にこやかに冗談を言ったつもりが呆れられてしまった。

 脱力してそっぽ向かれるとは無念。

 やはり、ぼっち歴が長いとこういう所で失敗するよな。


「滑った冗談はさておくとして」


「冗談かよっ」


 ツッコミの才能あるなー。

 ボケたつもりないのに。


「悪い悪い」


 これ以上、意図せぬ漫才をするつもりはないので素直に謝っておく。

 その割には軽い調子だったけどな。


「フン」


 仏頂面でそっぽを向かれてしまった。

 まあ、本気で怒っているって感じではないので大丈夫だろう。


「あんまり緊張されると、これから話すことで更に変な具合になりそうなんでな」


「リラックスさせたかったちゅうことかいな」


 アニスが聞いてくる。


「そういうこと。まあ、失敗してるけどな」


 ハハハと乾いた笑いで返された。

 完全に滑ってるよね。

 穴があったら入りたい。


「それで、これから話すこととは?」


 リーシャが聞いてくる。

 お、復帰してきたな。


「感想は?」


「うっ、そ、それは……」


 真面目な性格が災いして考えがまとまらないみたいだ。

 答えられなくても構わないけど、この先のことを考えると一抹の不安を覚える。


 月狼の友の一同を見てみた。

 話を聞いて動じないのはダニエラだろう。

 こういう時、天然は強いよな。

 ツッコミ体質な関西弁娘のアニスも割と落ち着きがある。


 微妙なのが双子ちゃんたち。

 今のやり取りを見ていた感じからするとレイナよりは動揺しない気はするけど。


 そうなるとブービーがレイナで最下位がリーシャということになる訳だが。

 リーダーが最下位で次がサブリーダーってどうよと思ってしまう。

 まあ、非常時にシャキッとするのは分かっている。

 平時の対応力がグダグダでも、そう心配することもないだろう。


 今回に限っては、しっかりしてほしいと思ってしまうのだけど。

 取り乱せば判断力が低下してしまう訳だし。

 一朝一夕でどうにかできるはずもないので無い物ねだりと分かっちゃいるがね。


 ただ、ノエルがどうにかしてくれそうな気がしてるんだよな。

 子供に頼るのはどうかと思うものの、前もそんなパターンで助けてもらってるし。


 そういう意味では誰のフォローも受けられないソロのルーリアが厳しいな。


「ルーリアはどうだい?」


「魔法の威力や範囲が想像の埒外だった故、驚かされたくらいか」


 実に普通の回答になってしまった。


「ただ──」


 お、やっぱり何かあるか。


「自分としては、あの勝負の方が印象深い」


「そうなんだ」


 普通は逆に感じるものじゃなかろうかと思うのだが。

 本人がそう感じていると言うなら否定するのはナンセンスだ。

 赤イナゴ退治は中継映像で間接的に見たものだから現実感が乏しいのかもな。


「あの勝負で賢者殿に底が知れない凄みを感じた」


 もしかして周囲を威圧しながら戦ったせい?

 ルーリアを威圧した覚えはないけど、周りが圧倒されている空気を間接的に察知していたとか。


 軽率だったかと思いはしたがルーリアを見る限り引いてはいない。

 むしろ前のめりな空気すら感じる。

 相応の覚悟があると見て間違いなさそうだ。


「そうか、なら我々のことを話すか」


「そんなに大層なことなのか?」


 リーシャが緊張の面持ちで聞いてくる。

 何かしら予感めいたものを感じているのかもな。


「聞いてびっくり見てびっくり。誰に聞かせても信じてもらえないこと請け合いだ」


「今更よね。アンタの非常識はよぉーく理解したから」


 レイナが冷めた口調で言ってくる。

 そんなこと言ってるけど後で腰を抜かしても知らんからね。


「じゃあ初っ端から驚いてもらおうか」


「ハリー、中を見せてやれ」


 無言で頷いたハリーが着ぐるみの首を持ち上げてスポンと引っこ抜いた。


「「「「「──────────っ!?」」」」」


 声も出せないほど驚愕されてしまいましたよ。

 目も口も開ききって固まっているし座っていなければマジで腰を抜かしていたかもな。

 人の首がもげれば、こうなってもおかしくはないか。


 首の穴からハリーがヒョコッと頭を出した。


「あら~」


 ダニエラが真っ先に復帰してきた。


「い、犬ぅ!?」


 引きつった表情のままリーシャがどうにか単語をひねり出した。


「いや、ハリーは犬妖精、パピシーだ」


読んでくれてありがとう。

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