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1047 イベントを終えて

 俺とノエルが黄昏れた空気を発している間も花火は打ち上がり続けた。


 まあ、直に復活したけどさ。

 せっかくの花火なんだし楽しまないと勿体ないもんな。


[残りの花火だけでも、しっかりと見よう]


[わかった]


 その後は様々に趣向を凝らした花火を楽しんだ。

 比喩ではなく本当に花の絵に見えるようにした花火とか。


 これは複数の花火玉を打ち上げることで緻密な絵になるように計算されている。

 破裂する高さが違ってくるから発射タイミングも違う。

 少しでもズレると何の絵だか分からなくなるシビアな代物だ。


「あー、向日葵だー」


「葉っぱまで再現してるー」


「あれは難しそうだよねー」


 ちょっと技術的に凝った花火になると全力で「ヒガ屋」を叫ぶのは横に置かれるらしい。

 龍モードのシヅカをデフォルメしたのとかも同様の反応だった。


「シヅカちゃんだー」


「格好いー!」


「えー、デフォルメしてるから可愛いさの方が上だよぉ」


「じゃあ可愛くて格好いい!」


「そういう時はカッコ可愛いって言えばスマートだよ」


「「「「「カッコ可愛いーっ!」」」」」


 散々話題にされたシヅカはプルプルと震えていた。


「恥ずかしいのじゃ……」


「それは悪いことをした」


「まったくじゃ」


「カッコ可愛いなどと呼ばれないよう次からはリアル路線に切り替えよう」


「主は分かっておらぬーっ」


「え? 違うの?」


「当然じゃ!」


「何処が?」


「皆に見られて喜ぶような趣味は持ち合わせてはおらぬ」


「あー、そういうことかー」


 スマンことをした。


 そして、締めくくりの花火は白地に薄紅色の八重桜紋にした。

 これはミズホザクラからデザイン化したものである。


 八重桜紋は飛賀家の家紋でもあるけど。

 今はミズホ国の国旗として使われている。


「「「「「キターッ!」」」」」


 絶叫レベルではないが、古参組が喜んでいる。


「八重桜紋だー」


「国旗が来たよぉ」


「ホントだー」


 なぜかバンザイをする一部の古参組。

 国歌とかつくってあったら斉唱を始めそうな雰囲気である。


「後ろの人の迷惑だからバンザイはやめような」


「「「「「はーい」」」」」


 素直に聞いてくれるんだけどウズウズは止められないらしい。

 バンザイ組は花火の余韻が残る中、しきりに体を揺すっていた。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 花火がすべて終わった。


「皆、秋祭りに参加してくれてありがとう」


 俺はマイクに向かって喋っていた。

 秋祭り会場全体に俺の言葉が放送される。


「これで今晩のイベントは終了だ」


 俺の言葉を受けて静まり返る一同。

 目に見える範囲だけではない。

 会場の何処からも声は聞こえてこなかった。


『そこまで落ち込むかー』


 苦笑を禁じ得ないほどのテンションの下がり方だ。


「ただし、各施設はナイターで稼働させている。

 物足りないと感じている者は遊んでいくといい」


 そう言うと──


「「「「「わあっ!」」」」」


 会場のあちこちから歓声が上がった。

 テンション上げ上げである。


『どこまで気に入ったんだか』


 これ以上、長々と話をしても何人が聞いてくれるだろうか。

 現状でもスタート直前って感じでダッシュしそうな面々がいるくらいだ。


「それからな」


 そう言うと「まだ解散しないのー」という雰囲気がそこかしこから伝わってきた。


「土産は買い忘れるなよ」


 ドッと笑いが起きた。

 ノリが良くて助かる。


 これで入れ込み過ぎな面々も少し落ち着いてくれたようだ。


「じゃあ、これにて解散!」


 閉会の挨拶にもなっちゃいないが問題ない。

 身内だけの行事だしな。

 皆、思い思いの行動を取り始めた。


「世話になったな、ハルト。

 そして迷惑をかけたこと本当に済まない」


 改めて謝ってくるルディア様である。


「何を仰いますか。

 いつものことでしょう。

 イタズラをしないラソル様なんてラソル様じゃないです」


「そうだよ。

 ハルトくんは、いいこと言うねー」


 未だに遺影の中に閉じこめられたままのラソル様が余計なことを言う。


「兄者は黙っていろ。

 それとも統轄神様のところへボランティア活動しに行くか?」


「サーセン」


 どう考えても真面目に謝っているとは思えない返事だ。

 まあ、一応は静かになったけど。


「まったく……」


「それも、またラソル様ですから」


 俺がそう言うと、ルディア様が苦笑した。


「楽しかった」


「そう言ってもらえて何よりです」


 その返事にルディア様は爽やかな感じの笑みを浮かべた。

 そして後ろに下がる。


「ハルトはん」


 上機嫌でニッコニコのエヴェさんがやって来た。

 どうやら順番に挨拶をしてから帰るようだ。


「ホンマおおきに」


 エヴェさんは満面の笑みで礼を言ってくれた。


「いえいえ」


「仰山、楽しませてもらいましたで。

 久々にオモロイもんばっかり堪能させてもらいましたわ」


 エヴェさん絶賛である。


「それは良かったです」


 楽しんでもらえたなら俺も本望。

 続いてエヴェさんと入れ替わりに前に出てきたのは、のっぽのリオス様である。


「ハルトさん、ありがとうございますー」


『この人の喋り方は誰かに似ているんだよなぁ』


 と思ったら、うちのダニエラさんだ。


 外見的な特徴はまるで違うんだけどね。

 リオス様はスレンダーだしダニエラはナイスバディ。


 どちらがどうとは一概には言えないけどね。

 美人はスレンダーでもナイスバディでも見ていて飽きないのだけは確実である。


「喜んでいただけたようですね」


「もちろんですよ~」


 おっとりした雰囲気を振りまきながらバイバイをされた。

 背が高いのに可愛い人である。


「今日は楽しませてもらった」


 そう言いながらスッと頭を下げるのはフェム様である。


『相変わらず委員長っぽいよなぁ』


 思わず苦笑が漏れそうになる。

 もちろん我慢だ。

 この人に冗談は通じないだろうし。


「今度は丸1日、楽しんでもらえるようにしますね」


 社交辞令ではないぞ。

 ラソル様のイタズラのせいで見張りとか余計な仕事をすることになったしな。

 せっかく遊びに来たのに仕事が入ってくるとか可哀相だ。


「えっ、いや……、いいのか?」


 アタフタするフェム様。

 返事の内容が予想外だったようだ。


「もちろんです」


 頷きながらそう言うと──


「きっ、期待しているっ」


 何故か顔を赤らめながらの返事が返ってきた。

 たぶん楽しみにしているのを見透かされたとか思っているのだろう。


 真面目な人だから、こういうのは恥ずかしがるのも無理はない。

 なんだかんだ言ってこの人もツンデレっぽいよな。


「やるねー、ハルトくん!」


 ニパッと笑みを浮かべて登場のアフさんである。


 決して子供っぽいと言ってはいけない。

 まして、ちみっこなどと言おうものなら激怒されることだろう。


 怒っても可愛らしいとは思うんだけど。


「予想以上に楽しかったよぉ」


 まだまだ元気いっぱいで遊び足りないんじゃないかと思えるほどだ。


「それは嬉しいですね」


 こういう素直な反応はストレートに響くものだ。

 なんというか清々しい気分になる。


「ねえねえ、また呼んでくれるの?」


 アフさんが前のめりになって聞いてくる。

 その背後に[ワクワク]とか[ドキドキ]の書き文字が見えそうなくらいだ。

 フェム様に言った言葉を聞いていたのは間違いない。


「ええ、もちろんです」


「いつ? いつ!?」


 胸ぐらを掴まれるんじゃないかと思うほどの勢いで聞いてくるアフさん。

 そして、その背後に忍び寄る影。


「そこまでだ」


 そういった影の主はアフさんの首根っこを掴むような感じで襟を持ち上げた。

 宙ぶらりんになるアフさん。


「すまんな、ハルト」


 持ち上げた主であるフェム様が謝ってきた。


「ちょっと、フェムちゃん!

 アタシは子猫さんじゃないよっ」


 プンスカと起こり始めるアフさんだが迫力はまったくと言っていいほど無い。


「子供っぽい真似をするからだ」


「子供じゃないよぉ!」


「あまりしつこいと統轄神様のところへボランティア送りにするぞ」


「うっ……」


 アフさんのプンスカが一気に消沈した。

 ラソル様の顔色を悪くさせるほどだからな。


「まあまあ、それだけ楽しみにしてもらえるのは本当にありがたいことですから」


 俺が取り成そうとするとアフさんの表情がパアッと晴れる。

 本当にちみっこ先生は分かり易い。


「何時になるかは、また連絡しますよ。

 ですから楽しみにして待っていてください」


「わかったー」


 猫つかみされたままなのに上機嫌でバイバイをするアフさんであった。


読んでくれてありがとう。

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