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1016 サービスサービス?

 ラソル様の思惑通りにするなど、やっていられない。

 そんな訳でバカみたいに足掻くのはなしだ。


『おちゃらけ亜神を喜ばせるつもりはないっ!』


 内心でキリッと決め顔をしてみた。

 うん、恥ずかしいだけだ。

 外に出さなくて正解だった。


 とにかく、ここもトモさんに頼ることにしようと思ったら。


「解除してもよろしいですか?」


 フェルトが聞いてきた。


『気が利くね』


「おお、頼む」


「はい」


 返事をしたフェルトが普通に魔法を使う。

 俺の予想通り[幻惑]状態はすんなり解除された。


 ログにも残っている。

 そっちも偽装されていたけど、解除された途端にその旨が出力されていたさ。


「こんなに簡単に?」


 フェルトが困惑していた。


「おいおい」


 真面目にやる気がなかったのかと言いたくなってしまう。

 フェルトに限ってそういうことはないだろうけどな。


「申し訳ありません。

 手強そうだったので様子見で魔法を使ったのですが」


『あ、そういうことね』


 まずは確認目的の弱い魔法を行使した訳だ。

 ところが、どの程度の抵抗があるか確認するまでもなく解除されてしまった。


『そりゃ、驚くよな』


 とはいえ俺にとっては想定内。


「ラソル様のイタズラだからね」


 その一言で充分だった。


「「あー……」」


 フェルトだけでなくトモさんも納得している。

 ルディア様は明らかに不機嫌な表情になっていた。


 不幸中の幸いと言うべきか、ベリルママの機嫌は普通に戻っているようだ。

 背筋の凍るような感覚は既にない。


『助かったー……』


 ほぅっと内心で安堵していると──


[レベルアップしました]


 新たなシステムメッセージが飛び込んできた。


『またか!?』


 そう思った瞬間『やられた』と思った。

 おそらく、ここで俺が驚くこともラソル様の思惑に含まれているからだ。


「サプライズだよ~」


 とかヘラヘラ笑いながら言いそうである。


[新たなスキルを取得しました]


『……………』


 おかわりがあったが、もはや驚くことはなかった。


 そんなことよりステータスの確認だ。

 レベルアップや新たなスキルは気になるが、まずは自分の状態を確認しないといけない。

 場合によっては裏の裏をかかれることだってある訳だし。


 解除されたので[幻惑]状態ではない。


 いや、それは先程も表示されなかったから違いはないはずなのだ。

 しかしながら違和感は消えていた。


 どうやら見抜けはしなかったものの書き割りの存在を察知できていたようだ。

 次があれば対処できそうな気がする。


『で、シーザーズのマスター権限なんだよな』


 これは伏せられていた情報だから確認できるようになった。

 ログにも記載されている。


『このまま送り返すのはマズいよなぁ』


 呼び出されたと思ったらマスター権限が変更されて上位者から命令された。

 シーザーたちには、いい迷惑だ。


 無報酬なのもよろしくない。

 飲食店で他人の名前でツケにするようなものだ。


 支払うべきはラソル様なのだが、きっとこう言うだろう。


「レベルアップとスキルのプレゼントでチャラだよ~」


 要するに貸しがあるから俺が支払えってことだ。

 業腹だがシーザーたちへの報酬と比較した場合、チャラどころの話ではない。


 シーザーたちへの報酬は魔力だから負担は大きくない。

 一方で貰ったものが大きすぎる。


 万札を受け取って安いおやつを買うより酷い。

 いずれにせよ返却不可のお釣りの方が高くつく。


 俺からクレームがつけられないように先手を打っている訳だ。

 地味に腹が立つ。

 押し売りみたいなものだからな。


 念のためにレベルを確認してみた。


[ハルト ・ヒガ /レベル1248 → 1250]


『マジか!?』


 2レベルもアップしている。

 該当する部分のログを確認した。


[亜神の封印に抗い続けたボーナス]


 どうやら自分で気付かぬうちに抵抗し続けていたようだ。

 それが違和感の原因だったのだろう。


 スキルの方は特級の【幻惑耐性】だった。

 こちらも抵抗し続けたことで熟練度がカンストしている。


「サービスしたんだから感謝してよー」


 とか言われそうだ。

 ベリルママを怒らせた分で相殺どころかマイナスだけどな。


 まあ、いつまでもラソル様のことを気にしている場合ではない。

 お仕置きは確定しているのだ。

 迷惑を被った分はベリルママに上乗せをお願いするだけでいい。


 そんなことよりもシーザーたちの方が大事である。

 そんな訳で彼らを呼び寄せようと思う。


「ルディア様」


「どうした?」


「シーザーたちは、どのような形で保護されているんですか?」


「倉に入れた」


 これ以上ないくらいの保護の仕方だ。

 空間魔法ならば誰にも迷惑をかけない。

 場合によっては、いま自分たちがいる公園に呼び出す必要があると思ったのだが。


「どうして、そのようなことを聞く?」


「ここに呼び寄せれば皆の邪魔にならないと思ったので」


「ふむ、確かにな」


「その必要はなくなったようですが」


「そうでもないぞ」


「え?」


「倉は何もない空間だからな。

 充分に広さは確保したが彼奴らも落ち着くことはできんだろう」


「あー、そういうことですか」


 シーザーたちが可哀相になってきた。

 そして申し訳なく思う。


 勝手に呼び出されて、妙な指示に従ったら監禁された。

 事案である。

 いや、事件と言うべきだろう。


『お巡りさん、こっちです』


 そんな文言が頭の中を駆け巡る。

 まあ、それもこれも相手が子供だった場合だろう。


 今回は妖精種のライオンもどきたちなので事件にすることはできそうにない。

 それでも彼らは被害者である。


「では、ここに呼びましょう」


「それがいい」


 俺の提案にルディア様も賛同してくれた。


「しばし待て」


 そう言われて待つこと数分。

 その間、ルディア様は無言で固まっていた。

 念話か脳内スマホを使っているものと思われる。


「リオスたちと話がついた」


 予想通りだった。


「じゃあ、呼びましょう」


「その前に場所を確保してからだ」


「え?」


「あのサイズで数が多いからな」


「はあ……」


 数が多いことは俺も承知している。

 あんなのを見せつけられた後じゃ数頭だとは思う訳がない。


「前に召喚した時は百程度はいましたが」


 それくらいの数なら、どうにかなる。

 倍以上になってくると厳しいか。

 遅い昼食や早めのおやつを青空の下で楽しもうと繰り出してきている国民がいるからな。


 幸いにして俺たちに注目が集まっている。

 話し掛けても、さほど驚かれたりはしないであろう。


「諸君」


 ルディア様が話し始めた。

 大きな声は出していない。

 風魔法で声を届かせているからだ。


「すまないが、これより大規模な召喚を行う」


 本当は倉から呼び出すだけなんだが。

 召喚と言った方が手っ取り早い。


 説明の省略のためにやむなくという訳だ。

 嘘も方便と言う訳だし。


「私の声が聞こえた者は、すまないが場所を空けてほしい」


 ルディア様の呼びかけにゾロゾロと距離を取り始める一同。


「協力、感謝する」


 そう言ってからルディア様は巨大な光の魔方陣を展開させた。


「あ、円形じゃなくて方形なんだね」


 トモさんが、そんなことを呟く。


「その方が合理的だからではないでしょうか?」


 フェルトが自分の推測を述べる。


「合理的なのはそうだけどさ」


 2人は大事なことを忘れているようだ。


「あれは、あの範囲で呼び出すって予告でしかないぞ」


「「え?」」


 思わず俺の方を見てくるトモさん夫婦。


「これは召喚魔法じゃないってこと忘れてないか?」


「「あ」」


 俺のツッコミに2人が赤面した。

 それに気づきはしたが指摘するような真似は野暮というもの。

 当然スルーである。


 そんなやり取りをする間に魔方陣は拡がっていく。


「拡がるね」


「拡がりますね」


 恥ずかしさをどうにかしたくて、とにかく口を開くトモさんたちである。


「更に拡がるね」


「そうですね」


 口調が硬い。

 まだまだ内心では赤面ものの恥ずかしさを抱えているようだ。


 だが、トモさんの表情が怪訝なものに変わる。

 魔方陣が更に拡がっているからだ。


「まだ拡がるのかな?」


「そ、そうですよね」


 フェルトも困惑している。


「あー、割り増し程度じゃ済まなかったか」


 せいぜい5割増しくらいに思っていたのだが。


『どんだけ召喚したんだよ、ラソル様』


読んでくれてありがとう。

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