表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

今は誰といますか?

作者: 花燈

とりあえず、男の子が、ポロポロと自分の過去話をこぼす話です。拙い文かもしれませんがよろしくお願いします。

:起:


今年もこの季節がやって来た。


風の冷たさが増し、景色の色が少しずつ減っていく。


この季節になるとどうしても思い出してしまう。


冷たい季節にあった僕だけの温かい記憶。


あの人は覚えていてくれているだろうか…




:少し付き合ってください:


僕だけの記憶だからあなたが知るはずがないと思う。


知っているとしたらあなたは超能力を使えるのかも知れない。

それともただ僕の記憶がありきたりのものなのかも知れない。


知らないのなら説明ということで、知っているのなら答え合わせも含めて改めて聞いてほしい。


…………だから少し付き合ってください。


僕が中学3年生のころ、一人の女の子を好きになった。


彼女とは中学校に上がってから会った。


1年生のときから同じクラスで仲のいいクラスメイトのようなものだった。


彼女はバレー部で僕は野球部だった。


一つ言えば、互いの部活友達が恋仲でよく相談にのったりしていた。


2年生になってから、僕は自分に好きな人がいることを彼女に教えた。


少し前から好きだったと。たまに話せるだけでも満足だとも。


それから彼女はたびたびその事について聞いてきた。


どこが好きなのか、どうして好きになったのか、なんという名前をしているのか。


僕は少しずつヒントを出した。

そして願うならば、僕の気持ちに気付いて欲しかった。


……自分から言い出す勇気がなかったのだ。







しばらくして、彼女に好きな人がいることを知った。野球部に入っているとも。


もともと、彼女はよく彼氏をつくっていた。


浅はかな僕は、もしかしたらその想い人が自分なのではと思った。


だってその頃はよく話していたし、クラスの席替えでは何度も前後になったりして、お互いに話す回数も増えていたんですよ?

そう思ってもしょうがないと思いませんか?



………しかしそれは勘違いだった


惨めだった。


勝手に期待して、一人浮き足だって、あまりにも滑稽に見えたことだろう。


………それでもやっぱり彼女が好きだった。


諦めることなんてできなかった。


それから彼女との会話の内容は、その野球部の友人と彼女との近況についてがほとんどだった。


彼女からののろけ話や愚痴を聞いたりした。


彼のことを話すときの彼女は本当に楽しそうだった。


綺麗な笑顔で最近の出来事を話してくれる。


昨日初めて一緒に帰っただの。

こんなところがカッコいいだの。


初めて手を繋いで歩いただの。



苦しくなかったと言ったら嘘になるかもしれないが、それでも苦しいだけではなかった。


彼女と話せる。

彼との時間の一部でも自分に割いてもらえる。


そう思うだけで十分だった。


気になったのは彼だ。

彼とは仲も良く、一緒に帰り、良く話していた。


彼の口からは

面倒。よくわからない。どうでもいい。

そんなことをたびたび聞いた。


もともと彼は誰それと付き合うなどという色恋沙汰にほとんど興味はなさそうだった。


しばらくすると、彼女の口から愚痴がこぼれることが多くなった。


嫌われてるのかな、と彼女から聞かれることが増えた。


僕はその度に、そんなことはない。と言った。


そしてこんなことをしてみてはどうだろうか、などどうにかして二人の仲を取り持とうとした。


そんな僕をみて、彼女は、


君は優しいね、ありがとう…


と言うのだった。


そんな僕らを見る彼女の友人からは、


君は何でそんなことしているの?


と言われた。その友人は僕の彼女に対する気持ちを知っていた。

だからことさら不思議に思ったことだろう。


自分でも不思議だった。

ただ理由があるとするのなら、それは単純に彼女から見た自分をより良く見せるためだ。


変なことを言って、彼女からの評価を落としたりしたくなかった。


だから僕は必死に取り繕って、彼女の恋路を手伝おうとした。


季節はそろそろ冬になり、風が冷たく吹いていた。




彼女らの距離は離れるばかりだった。


彼女の相談は昼休みにあるのがほとんどだった。


ほとんどの人がグラウンドで遊んだり、図書室などに行くため、教室内に人はあまりいなかった。


相談中に彼女が泣くことが何度かあった。

だから僕は彼女を励ました。


大丈夫だよ。心配ないよ。などと……


その度に彼女は


ありがとう…優しいね………


もう少し頑張ってみるよ……


なんてことを言う。



違うんだ僕は優しくなんかない。ただズルいだけなんだ。君に嫌われたくない。君に悪く言われたくない。そんなことしか考えていなかった。



彼が、僕の部活の友人が、そろそろ別れたいと言っていたことを知りながら……


しばらくたったころのある日。放課後部活が終わり、下校しようとしている時に二人が話しているのを見かけた。


なにやら話していると、彼女が目元を押さえながら離れていった。


彼は僕に気づくと、


「よう。一緒に帰ろうぜ」


「いいよ」


「何を話してたの?」


「別れてきたんだよ」


「え?ホントに?」


「まぁな。そろそろ別れようと思ってたし」


僕は少し喜んでいた………


「そうなんだ…その…何て言ったの?」


「ん?あぁ…『フレンドリーに戻ろうぜ』って」


僕は笑ってしまった。その振り方はないだろう、と。いくらなんでもそれは彼女が哀れだと。


あれだけ距離を縮めようと頑張っていながら、彼には全く届いてなかった。


「なんだよその振り方。笑っちゃうよ」


「仕方ないだろ。何て言えばいいかわからなかったんだから」


「もう彼女のことは良いの?」


「まぁな、俺にはやっぱりこういうことは合ってないな」


そんなことを話しながら並んで帰った。




翌日、いつもの昼休み。


変わらずに僕たちは話した。


「どうしたの」


「昨日ね、振られたの」


僕はこの時少しだけ迷った。その事はもう知ってる。けどここで知っていると答えてもいいものなのだろうか。

結果僕は………


「ホントに?」


彼にしたのと同じ反応をした。


「そうなの。『フレンドリーに戻ろうぜ』だってさ。笑っちゃうよね。そんな振られ方したの初めてだよ。あまりにもバカバカしすぎてなんとも思えないよ」


「大丈夫?」


「なんとか。まぁ、これで私の恋愛?は終わった訳だし、もう相談なんてしなくて大丈夫だよ。いままでありがとう。助かったわ」


………………あ…そうだ…


僕は全くわかっていなかった。

彼女が彼と別れてしまえば、彼女が僕と相談する必要がなくなる。

そうなれば、彼女と話す機会は減ってしまう。


僕はそんなことを考えていた。しかし、


「次は君の番じゃないかな?好きな人がいるんでしょ?ん?」


「え、やまぁ確かにいるけど…」


「だったら告白しちゃえばいいじゃん。がんばりなよ」


「そう…だね…頑張ってみるよ……」


それからは僕の想い人の話になった。


それでもやっぱり彼女に想いを伝えることなんてできなかった。


僕の気持ちをしる人からは、


何をしているの?


そろそろ告白したら?


などと言われる。でも僕は彼女の傷心につけこむみたいで嫌だと、言っていた。


……………………ただの言い訳だ……


そんな時、彼女とこんな話をした。


「何で告白しないの?」


「いろいろあるんだよ。君にもあるだろう?」


「まぁ、確かに一回あったね」


「そうなんだ。相手は?」


「教えないよ」


「残念」


何気ない話だったけど、なんとなく気になった。


そうして何日かすると、定期試験が近づいてきた。

僕はチャンスだと思った。


「ねぇ、勝負しない?」


「何の?」


「今度の試験でどっちの方が高得点を取れるか」


「へぇ、面白そうね。何か賭けるの?」


「僕が勝ったら、この前話した君が告白できなかった人を教えてもらう。君が勝ったら僕の好きな人を君に教える。これでどうかな?」


「いいわ。絶対教えてもらうから」


彼女は塾にも通っているし、きっと僕よりも賢いだろう。だから僕は負けるはずだ。


だからこれで彼女に告白する。


僕は本当に弱虫だ、臆病者だ。そう思わずにはいられなかった。




試験の結果は予想外のものだった。


僕が彼女に勝ったのである。


勝ってしまった…どうして…これじゃ告白できない…どうしたらいい…


そんなことを考えていた。そしてその放課後。


部活に行く前だった。


「負けちゃったわ。君は頭が良いのね」


「そんなことはないよ。偶然だよ」


「次は負けないから。じゃ」


「約束は?」


「もうよくない?別に君もそこまで興味ないでしょ?」


「気になるよ」


「そう…そうね…なら教えてあげる。私が告白できなかったのは…………君」


「は?」


「だから君よ。私が告白できなかったのは」


訳がわからない


「どういうこと?」


「君とは良く話していたでしょ?あの頃だったかな?君と話しているのは楽しかったから。それで」


「どうして告白してくれなかったの?」


「何でだろうね…その頃はそれが一番楽しかったからかも知れない。それでそのままにしてたら消えちゃった」


「そう………」


「これで満足した?まったく…恥ずかしいな」


そう言って彼女ははにかんだ。それはとても綺麗に見えた。


「あのさ…僕は勝ったけど…好きな人を教えてもいいかな」


「ホントに?ぜひ教えて欲しいな。君の好きな人」


「君だよ。君のことが好きだ」


彼女は目をそらさずに、僕を見つめていた。


「君と話しているのはとても楽しい。

もっともっと話したい、そう思うくらい君のことが好きなんだ」


僕は伝えた。途中で何を言ってるかわからなくなったけど、伝えられることを伝えた。

彼女は、


「そうなの。嬉しいありがとう。私も振られたばかりで、こういうのを言っても信じてもらえるかわからないけど、私も君が好き」


僕は胸が苦しくなった。彼女にこんなことを言ってもらえて、歓喜で胸がいっぱいになった。


「ごめん、僕部活行かなくちゃ」


「私も行かないと。二人揃って遅刻かな」


彼女は笑っていた。そして二人ともそれぞれの部活に行った。


その夜、僕は気づいた。


付き合ってって言ってない……






次の日の昼休み。僕はいつも通り、彼女のところに行った。


僕はなかなか言葉を出せなかった。


すると、彼女から、


「どうしたの?」


「別に、何でもないよ」


「緊張しているの?」


それは当然しているよ。誰かと付き合うなんて初めてなんだし……ってそうだ、そこの確認からしないとダメじゃないか


そこでようやく気がついた。


「あのさ、僕昨日付き合ってって言ってなかったよね?」


「そうだった?」


「言ってなかったと思う」


「それで?」


「付き合ってください」


「いいよ。ていうか、そのつもりだったし。昨日好きって言った時点でそういうことにならないの?」


それもそうだった。だから僕は動転して、


「いや、その、こういうのはしっかりしないとダメかなって……思ったんだけど……」


「ふぅん…そう…いいと思うよ。確かに大事だものね」


僕はホッとした。変なやつと思われていないだろうと。


「それじゃこれからよろしくね」


彼女が手を出してきた。僕もそれにならって、


「こちらこそ」


そう言って、握手をした。僕と彼女の物語の始まり方は、そんなちょっと変わった始まり方だった。


それからの日々はとても楽しかった。

彼女とは変わらずに昼休みに話をした。

話題がなくても二人でいるだけで、僕は幸せだった。


授業中も彼女の方を見ていると、彼女が気づいて振り向き、見つめあった、そしていつも僕が先に恥ずかしさで目をそらし、彼女はそれを見て微笑むのだ。


一緒に帰ったりした。彼女の家は僕の家の反対方向だったけど苦にはならなかった。

僕たちは部活をしているため、帰るのはいつも暗くなってからだった。

冬の空は空気が澄んでいて、星がよく見えた。二人でよく上を見ながら帰っていた。


そして年が明けて、四月になり僕たちは3年生になった。


一番不安だったクラス替えも彼女とは同じクラスになった。


「また同じクラスだね」


「そうね」


「いっぱい話ができるね」


「別に同じクラスにならなくても話はたくさんできるでしょ」


「それでも毎日君と同じ教室にいれると思ったら嬉しいよ」


「まったく、大袈裟すぎよ」


二人して笑った。


互いに3年生。部活も夏には引退だ。練習が忙しくなったが、彼女と一緒に帰ることはやめなかった。


そして夏休みが近づいてきた。


僕はひどく不安だった。

それは彼女と会えないこと。学校もなくなり部活の時間も一緒になることは少ない。僕は携帯を持っておらず、メールもできないため、なおさら不安になった。


「そんなことを考えてたの?」


彼女にこの事を話すと笑われた。


「私は携帯持ってるから、たまに電話してくれる?」


もちろん僕は首を縦に振った。


「そう。ふふっ…楽しみにしてるね」


彼女は笑った。




そして夏休みになった。


その日、僕は初めて彼女に電話をかけた。


プルプル…プルプル…


コール音が何度かなり、


「もしもし?」


誰かが電話をとった。


「あ、あの、僕は…その…」


「あぁ、あの子のクラスメイトね。ちょっと待って、すぐ変わるから」


まさかの母親だった。


何で娘さんの携帯に出てるんですか!


「あ、ごめん今変わったよ。あれ?もしもーし、どうしたの?」


「あ、ごめん、あのさ…」


今思ったことを彼女に伝えると、彼女は大笑いした。


「はははっ!ごめんごめん、言ってなかったね。君に教えた番号はお母さんの電話のなんだ」


「何でお母さんの電話番号を?」


「お母さんの携帯を借りてるんだよ。ごめんね、私の言い方が悪かったかな?」


「いや、大丈夫だよ。ちょっとびっくりしたけど」


「ふふっ…電話ありがとう。色々話しましょ」


そう言って、彼女と僕は話し出した。


そうやって彼女とは何度か電話をした。僕は携帯を持っていないため、電話をかけるのはいつも僕だった。


そして一度だけ彼女とあった。彼女の家の近くの公園で、塾に行く彼女とばったりあったから。


「久しぶり」


「うん、久しぶり」


「最近何かあった」


「この前、友達とお祭りに行ったの。夕方ごろだったんだけど、けっこう焼けちゃって」


ほら、と彼女は言いながらTシャツで隠れている胸元を僕に見せた。


僕は驚いてあわてて目をそらした。しかしほんの少し見えた彼女の胸元は、確かに日に焼けて赤くなっていた。


「何で目をそらすの?」


「いや、だって……そんな…」


「君は真面目だね」


彼女は笑っていた。

僕はからかわれたのか。


そして彼女は立ち上がり、


「ごめんね、せっかく会えたんだけど、そろそろ時間だから」


「いや、こっちこそごめん、急に引き止めたりして」


「久しぶりに会えて嬉しかったよ。じゃ、またね」


彼女は手を振りながら歩いて行った。


彼女にあったのはその一回きりだった。


部活は夏休みが残り半分の頃に引退した。

そしてその時から、何故か緊張して彼女に電話をすることができなかった。


そして何もしないまま夏休みが終わった。




夏休みが終わって、初めての登校日の9月1日。


その日、彼女の友人から彼女からの手紙をもらった。


僕はそれを家に帰ってから開いた。

今思えば、あれを学校で開いておけばと後悔している。


それは別れを告げる手紙だった。


僕は一瞬それがなんだかわからなかった。しかし何度か読み直すうちにようやく理解した。


そして次の日の昼休み、いつも通り彼女と話をしに行った。


「どうしたの?」


彼女は目を見ずに言った。


「手紙…読んだよ…どうして……」


彼女は僕の方を見ながら、


「ごめんなさい、なんだか急に冷めちゃったのよ。だからこれからは前と同じ友達でいましょ」


僕はこんなときに彼が彼女を振った時の言葉を思い出した。


『フレンドリーに戻ろうぜ』


………あんな振られ方じゃないだけましかな……でも


「できたら………直接言って欲しかったかな……」


彼女はまた僕から目をそらして、


「ごめんなさい…………」


とだけ言った。


「もう一度考え直してくれないかな?どうしてもダメかな?」


彼女はまた


「ごめんなさい…………」


「そっか……わかった。仕方ないよね冷めちゃったんだから…」


僕は笑った。精一杯笑った。

内心はもうむちゃくちゃだったけど、無理矢理笑った。


そんな僕を彼女は見てくれなかった。


「今まで、ありがとう。君と付き合えて、君の彼氏になれて、僕は本当に幸せだった」


彼女がこっちを向いた、やっと向いてくれた。

ようやく彼女顔が見れた。


その顔を見ながら僕は


「大好きだよ」


そう言ってやった。





彼女と別れてからしばらくはお互いに話せなかった。


しかしそんな時に限って、クラスの席替えで前後になったりする。


最初はお互いに気まずかったけど、すぐにまた話すようになった。


僕はやっぱり彼女と話せるだけでもよかった。


しばらくして、彼女が誰かと付き合っていることを知った。


そいつは学年でも人気者で、よく色んな女子と付き合っては別れていた。


一緒に帰ったりするのを何度か見た。


彼氏の方から告白したらしい。


僕はとくになんとも思わなかった。彼女が幸せそうならそれでよかった。


ただ、彼が告白した理由を聞いたときは驚いた。


友人からの話で、彼らは昼休みによくやるゲームで賭け事をしていたらしい。

それは、負けたやつが他の参加者が指定した女の子に告白すると言うものである。


………………………


何とも言えなかった。本当に。


彼女は楽しそうで、とくに気づいている様子もなかった。僕から言えることなんて何もなかった。

だから僕は、何も知らないフリをしていつも通りに接した。


そして、高校受験が迫って来ていた。推薦をした人たちは早いうちに合格発表等があっていた。僕は一般受験だったため、その頃は塾にも行っていた。


推薦組の彼女は何やら本を読んでいた。


「何を読んでるの?」


「入学式の時に読書感想文を提出しろって言われたの」


「どんな本?」


「読んでみる?」


「いいの?」


「ええ、かまわないわ」


それは、恋愛小説だった。僕があまりにも熱心に本を読んでいたせいか、


「よかったら先に読む?」


と彼女が言った。


「いいの?感想文書かなきゃいけないんでしょ?」


「君は本を読むのが早いから、君が読み終わっても時間はありそうだし。読み終わったら感想教えて?参考にするから」


「わかった」


僕はその本を読んだ。その物語は最後はハッピーエンドだった。


僕が彼女に言った感想は当たり障りのないものだった。参考になるかならないかで言えば、多分後者だろう。

それでも彼女は、


「ありがとう。参考になるわ」


そう言ってくれた。


あと少しで卒業式だった。

桜の咲き具合は中途半端だった。



:それからのお話:





ここからはほとんど今の話です。もう少しだけお付き合いください。



それから僕たちが会う機会はめっきり減った。


本当に、年に二、三回くらいだった。


たまにあっても僕はなかなか話せなかった。


高校に入ってからは部活もしなかったせいか、前よりも人と話すことに耐性がなかった。


卒業して2年がたったと時、彼女と何度目かの再開をした。


彼女はその間にも何度か付き合っては別れていた。


「久しぶり」


「あ、うん、久しぶり」


「元気だった?」


「それなりに……」


「彼女とかはできたの?」


「いや、彼女どころか女子と話すことも滅多にないかな」


「はははっ。頑張んないと、あっという間に高校生活終わっちゃうよ」


彼女は笑っていた。

彼女と別れてから、誰かを好きになるというのはなかった。


それに彼女のことが本当に好きだったことも。


ただ、彼女と会って話をすると、内心では喜んでいるのか、頬が熱くなる。


そして先日、久しぶりに会った。

高校3年生になって、まもなく冬本番になる頃に。

会ったのは電車の中だった。


僕はいつも通りに音楽を聴きながら本を読んでいた。そして自分の降りる駅に近づいたため、本を直し顔を上げた。


すると目の前に彼女がいた。久しぶりに会った。


彼女はこちらを見ていた。そして軽く会釈をした。

僕もそれにならった。


僕はそれから彼女の方を見ることはできなかった。


なぜなら、急に頬が熱くなり、汗が出てきたからだ。


訳がわからない。


そして駅に着いたとたん、僕は電車から飛び降りた。急いで改札を抜けて、駅の階段でホッと一息ついて、ゆっくりと階段を降りた。


すると後ろからいきなり肩を叩かれた。


僕は驚いた。


それが相手にもわかったのか、


「そこまで驚かなくても…」


彼女だった。


「ああ、ごめん」


「もうすぐセンターだね。勉強してる?」


「まぁ、それなりに」


「そう。もう大学は決めたんでしょ?どこに行くの?」


「まだ決めてない」


嘘だ。もう決めてる。


「嘘でしょ。もう決めたんでしょ。教えてよ」


「本当に決めてないんだよ」


「まぁ、そういうことにしときましょ」


彼女は何もかもわかっていると言わんばかりだ。


「勉強頑張りなよ。」


「わかってる」


「そっか。じゃあね」


彼女は手を振ってくれた。


また僕の顔が熱くなる。

彼女がいなくなったせいか、より熱い。


やっぱり僕は彼女のことが好きなのだろうか………


わからない。

ただ、彼女が誰かと付き合っているかどうかは気になってしまう。

我ながら気持ち悪い。


彼女はもう僕のことを好きではないのだ。


今さら望んでも、何も戻らない。


だから僕は一つだけ思い、彼女に聞きたい。






………今誰といますか?幸せですか?


………あなたが幸せなら、私も嬉しい…


………あなたの幸いを心から願います…


ここまで読んでくださってありがとうございます。


何か感想でも、御指摘でも御座いましたら、是非とも言ってください。


本当にここまで読んで頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ