表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Legend of brave  作者: たいがー
第一章:伝説の始まり
7/45

「あなたがシュウスケね?」

 秀介は目の前にいる美少女に見とれた。ゆったりとウェーブのかかた鮮やかなブロンド、クリッとした青い目に、シャープな顔立ちがとても魅力的だった。

「……はい」

 彼女は秀介のことをまじまじと見つめた。

「私はエリザベス・マギア・ルノワールです。お友達になりませんか?」

 彼女はそう言って微笑んだ。秀介は数秒固まった後、自分が泣いていたことに気づき、あわてて涙を拭った。

「えっと」

「あなたシュウスケ・イヌイでしょう?」

「はい……」

「お友達になりませんか?」

「……はい」

 秀介がそう言うと、彼女は眩しいほどの笑顔になった。秀介は頬を紅く染め、彼女のことを見た。

年は秀介より二、三歳ほど上に見える。綺麗な水色のドレスを着て、豪華なティアラをしている。

(エリザベス・マギア・ルノワールってことは、セドリックさんの娘さんかな)

 しかし秀介はあの怖い顔をした王様が、こんな綺麗な人の父親だとは思えなかった。

「私のことはエリーと呼んでください」

「うん、じゃあ僕は秀介で」

「はい、シュウスケ様」

「いや、エリーさん、様はちょっと……」

「あら、では私もさんはいりませんわ、堅苦しい敬語も聞き飽きました」

「わか……った?」

 秀介としては年上に敬語を使うのは抵抗があったが、エリザベスの笑顔を見てしょうがないと割り切った。

「……不安ですか」

「え?」

「いえ、先ほど泣いておられたようなので」

 泣いてる所を見られて秀介は赤面した。

「……なんか、わけわかんないんだ、いきなり魔王と戦えって言われても」

 エリザベスは悲しげな表情を浮かべた。

「……申し訳ございません、この世界のことですのに」

「魔王って強いんでしょ? 僕なんか戦えるわけないよ」

 秀介がそう思うのも無理はなかった。秀介は前の世界で、喧嘩もろくにしたことがなかったからだ。

「……少し、付き合ってもらえますか? 私たちの街を案内しますわ」



 秀介とエリザベスは、王都の街中を歩いていた。秀介は、ヨーロッパ風の町並みに、市場で売っている見たこともない果物や香辛料を見て、まるで海外旅行に来たような気分になった。

(まあ、海外じゃなくて異世界なんだけど……)

「シュウスケ様、私のとっておきの場所を紹介しますわ」

 結局様をつけてるじゃん。そんなことを言おうと思ったが、言う前に彼女に手首をつかまれた。

「いきましょう」

 エリザベスについていくと、そこは小高い丘だった。そこからは王都〈マリギザーニャ〉が一望することができた。

「うわー」

 秀介は思わず感嘆の声を漏らした。

「すごい」

 赤い屋根の家々がそこかしこに立ち並んでいて、時折子供たちの声が響いてくる。中央にルノワール城が、街を見守るように聳え立っている。

「これが私たちの街ですわ。この街を守るためだったら、この街の人々を守るためだったら、私のこの命なんて安いものですわ」

「……エリー」

 秀介は彼女の目が奥底が見えないほど深く、そして力強いように感じた。

「この〈マギア〉と言う世界には、数多くの種族、数多くの人々がいますわ。種族の違いに偏見や差別を持つ人もいますが、やっぱり同じ世界に住む仲間なんですもの」

 エリザベスは優しげに微笑んだ。

「そこに種族や国があると思ってはいけない、一つ一つの命があると思わなければならない。童話の中の勇者様が言っていた言葉です」

「いい、言葉だね」

「ええ、私のモットーとしている言葉ですわ」

「モットー……か」

「……私はその一つ一つの命を守りたいんですの、でも私だけでは無理ですわ」

 エリザベスは秀介に向き直り、真剣な顔をした。

「シュウスケ様、あつかましいお願いだと承知しておりますが、この世界を守るために、お力をお貸ししてくださいませんか?」

 秀介は目に涙をためた彼女の顔が、今まで見てきた誰より真剣な顔のような気がした。

 秀介は覚悟を決めた。自分のいた世界じゃない、この世界の人たちとは何の関係もない、だけどこの世界の一つ一つの命を守ろうと……。

「わかった、この世界は僕が守るよ」

 彼女のために守ろうと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ