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Legend of brave  作者: たいがー
第三章:神器
36/45

すいません!時間に投稿するのを忘れました!<m(__)m>


今回はちょっと長くなってます。

 港町ポルトス。一応は小国の一部として属しているが、その国の主都よりも発展しており、南大陸と北大陸の玄関口となっている。

「わあ、海だぁ!」 

 秀介は、目の前に広がる大洋に、目を輝かせた。この世界にきて、初めての海である。大小様々な船舶が、世界最大の港に停泊している。豪華な客船や漁船、軍艦のようなものまである。

 ちょうど漁から帰ってきた漁船が、魚をおろしているところだった。日本人の秀介にとって、その光景はなじみ深いものだった。

「マギネアシアへの船はこっちだ」

 レオナールは慣れたように大型な船にむかって歩きだした。

「あれ? レオナールさんは行ったことあるんですか?」

「ああ、昔ね」

 船の乗り場には、一人の大柄な男が立っていた。いかにも船乗りといった格好の男である。

「マギネアシアに行きたいんだがね」

 レオナールがそう言うと、男はまたかというように、顔をしかめた。

「今は海に魔物が発生する時期なんだ。だからあと三日は船が出せねえ。ったく、今日はこればっかりだぜ」

 男は悪態をつき、さっさと行けとぞんざいに手を振った。

「どうしましょうか」

「とりあえず、船が出るまでこの街で待つしかないだろうね」

「それじゃあ、ここで宿を探しましょう」

 三人は宿に向かった。例によって、この街で一番上等な宿である。

 秀介の部屋は、窓から海を一望できた。大きな鳥が連帯を組み、大空を羽ばたいている様子が、実に壮大だ。

 秀介が海に見とれていると、ドアをたたく音が耳に入ってきた。

「シュウスケ様」

「エリー」

 ドアを開くと、相も変わらず美しい少女が佇んでいた。

「まだ船まで三日もありますから、少し街を見に行きませんか?」

「うん。行こう!」

「今度は逸れないようにしてくださいね?」

 秀介は苦笑した。

「レオナールさんは?」

「レオナールは、古い友人のところへ寄ると言っていました」

「へぇー」

「ですから、今日は私たち二人だけですわ」

 エリザベスはそう言って、いたずらに笑って見せた。

 ここ、ポルトスの商店街や市場には、当然のように海鮮物が多い。その他にも、真珠や貝殻を扱ったアクセサリー店、貿易によって入ってきた各地の特産品などが並んでいる。

「すごい人が多いね!」

「当然ですわ。ここは各国の窓口ですもの、様々な国籍の方々が集まります」

 日本で言うところの池袋か。秀介はそんなことを考えながら、物珍しそうにきょろきょろと辺りを見渡した。

「ちょっとそこのお二人さん」

 声をかけてきたのは一人の若い行商人だった。

「少し見てかないかい?」

「何を売っているんですか?」 

 秀介がそう聞くと、行商人は脈ありと見たのか、言葉巧みに商品を勧めていった。

「ここは何でも売ってるよ。これなんかどうだい? 魔法書だ。初級魔法が全部のってる。今なら、そうだな……金貨三枚で売ってもいいよ?」

 金貨三枚と言われても、秀介は高いかどうかよくわからなかった。実際には、金貨一枚もあれば、一般庶民ならば二月は暮らせるほどの金額である。行商人は、秀介が買わないのを承知で進めてきたのだった。

「すいません。僕、魔法が使えないんです」

「ああ、そうかいそうかい。なら役立つ魔道具を紹介しよう。これなんかどうだろう、簡単に火種が作れる魔道具さ。火の魔法陣が組み込まれていてね、『ここに火を』って唱えるだけで火が点くんだよ」

「へぇー!」

 いわばライターであるが、秀介はえらく感心した。レオナールの炎魔法を見慣れている秀介だったが、改めて非戦闘時に魔法を見ていると、凄いように感じてしまうのだ。

「はっはっは、そんなに気に入ってもらえると私も気持ちがいいねぇ。よし、お兄さんにだけこれを銀貨一枚でどうだい?」

 秀介はちらりとエリザベスを見た。それはまるで、おもちゃを買ってくれと母にねだる、子供のような目だった。エリザベスは微笑ましそうに笑う。

「シュウスケ様。別にそれを買わなくても火種なら簡単に手に入りますわよ。レオナールが居るんですもの」

「そっか……」

「そうかい。それじゃあ仕方ないね、他に何か……」

「いえ、もっと見て回る予定なので、遠慮しておきますわ。行きましょう」

「う、うん」

 エリザベスに手を引かれ、秀介は名残惜しそうに振り返りながら歩きだした。

 しばらく商店街を歩いていると、秀介の肩に何かがぶつかり、思わずよろける。

「どこ見て歩いてんだ!」

「す、すいません」

 目の前に居たのは、船乗り風のいかつい男だった。

「この俺にぶつかっておいて、それで済まされると思ってんのか!」

 男は酒に酔っているようで、腰のサーベルに手をかけ、今にも秀介に襲って来そうだった。

「ま、待って。ごめんなさい!」

「うるしゃい! どいつもこいつも俺をっ、馬鹿にしやぁって!」

 男はサーベルを抜き取り、真上から振り下ろした。しかし、秀介は反身になってそれを避け、男は勢い余って転倒した。

「だ、大丈夫ですか?」

 秀介は男に駆け寄った。男はふらふらと立ち上がり、サーベルの切っ先を秀介に向けた。

「ぶ、ぶっ殺してやる!」

 目の焦点が定まっておらず、男は無茶苦茶にサーベルを振り回す。

 その瞬間、男の手からサーベルがすっぽ抜け、エリザベスへと飛んでいった。

「きゃぁああ!」

「エリー!」

 しかし、それがエリザベスに当たることは無かった。

 キンッという甲高い音がしたかと思うと、サーベルは空中で方向を変え、地面に突き刺さった。

「ったく、昼間っから出来あがってやがる。性質が悪いな」

 そこに居たのは、片手に剣を構える、茶髪の少年だった。

「なめやがって!」

 男は素手で少年に襲ってくる。少年は剣を鞘に納めたかと思うと、肘で男の眉間を打ち、鳩尾を殴った。

「うぐぅ」

 男は崩れ落ち、そのまま動かなくなった。

「大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます」

「そっちのお前も」

「……え、ああ、大丈夫」

 少年は肩を回し、満面の笑みを浮かべた。

「やっぱ俺、強いな!」

 秀介は茫然とその少年を見た、自分と同じくらいの年齢だが、オンスロートの特訓を受けた自分よりも、おそらく単純な剣の腕や体術では上だろう。今の短い立ち合いで、それが分かった。

「ちょっとヴァル! 何やってるのよ!」

「そうだぞ、もう腹が減って仕方ねぇよ」

「まったく、ブランドンはそれだけだな」

「どうしたのヴァル?」

 人込みから出てきたのは、少年の仲間と思わしき、四人の男女だった。

「人助けさ」

 少年は得意げに胸を張った。

「人助け?」

 一人の気の強そうな少女が、秀介とエリザベスに目を向けた。

「貴方らしいわね、この間凹まされたと思ったら、もう完全復活?」

「マティルダ。あれは油断しただけでな、俺が本気を出せばあんなやつ……」

「はいはい、もういいわ。早く食事に行きましょうよ。貴方のせいでどれだけ待たされたと思ってるの?」

「わかったよ」

 少年がバツが悪そうに四人と歩き出したとき、エリザベスが声を上げた。

「皆さん。お昼がまだでしたら、ご一緒しませんこと? 先ほどのお礼もしたいですし」

 少年たちはエリザベスの言葉に目を輝かせた。

「い、いいのか?」

 少年が探るように言った。

「ええ」

「やったぁ!」

「今までロクなもの食ってなかったからな!」

「やっとまともなものにありつける!」

「ちょっと三人とも、はしゃぎすぎ!」

「ホント猿みたい」

 エリザベスはそんな彼らの様子に、微笑みを浮かべ、秀介に向きなおった。

「行きましょうか」

「う、うん」



「俺はヴァル・デュノアイエ。このチームのリーダーで、剣士をしてる」

 茶髪の少年はそう言いながら、魚の揚げ物に食らいついていた。ヴァルは背が高く、精悍な顔立ちをしている。腰に携えているのは、片手でも両手でも扱えるごく普通のブロードソードだ。

「私はヴェラ・ファリエール。治癒術師をしてるの」

 ヴェラは濃い茶色の髪を肩口まで伸ばしている、大人しい印象の少女だった。

「俺はブランドン・ゴベール。斧とかハンマーとかいろいろ使ってる、まあ重戦士ってやつだな」

 大柄な少年は自慢げに力瘤を作って見せた。

「私はマティルダ・ランブラン。魔法使いよ。よろしく」

 大人びた長い金髪の少女だ。格好はまるで戦士のようだが、魔石が埋め込まれたロッドを持っていたので、魔法使いと分かる。

「俺は斥候をやってる。本名は明かせないが、許してくんな。まあ……シーフとでも呼んでくれりゃあいい」

 シーフは小柄で、あまり存在感が無い少年だった。しかし、秀介は他の四人に準ずる実力があることを悟った。

 五人は幼馴染で冒険者パーティを組んでいるらしい。

「シーフはあとから入ってきたんだけどな。これでも俺たちは将来有望なチームって言われてるんだぜ」

 ヴァルは自慢げに言った。

「あんたたちは何でこの街に来たんだ?」

「私たちはこれからマギネアシアに行くつもりなんです」

「マギネアシア?」

 ヴァル達の顔が曇った。ヴァルは憎々しげな顔をしている。

「どうしたんですの?」

 エリザベスがそう問うと、ヴェラが苦笑しながら言った。

「いや、実はヴァルがね……」

「言わなくていい!」

 ヴァルがヴェルを睨みつけ、鼻を鳴らす。ヴァルはエールを一気飲みした後、ジョッキをテーブルに叩きつけた。

「あれは油断しただけだと言ったろう」

「ふふ、強がっちゃって。けちょんけちょんだったじゃない」

 マティルダが意地悪そうにヴァルの肩を叩いた。

「何かあったんですか?」

 今度は秀介が質問した。話の流れからして、ヴァルが誰かに負かされたのだと分かったが、ヴァルに勝てるほどの実力者が他にも居たという事が、秀介の関心を引き付けた。

「実はね」ヴェラが話し始めたが、今度はヴァルが止めることは無かった「一昨日この街の冒険者ギルドで仕事を探していた時、一人の男の人がヴァルを押しどけて来たの。それにヴァルが「順番を守れ」って怒っちゃって、男の人も「何でお前みたいな雑魚に譲らなくちゃいけないんだ」なんて言ったもんだから、ヴァルが剣を抜いちゃったのよ」

「マナーを守らんあいつが悪い」

 そう言うヴァルに、他の四人は苦笑した。

「で、そこで決闘になっちゃったんだけど……」

「負けちゃった?」

 秀介の言葉に、ヴァルは秀介をキッと睨んだ。

「ヴァルが負けるなんて珍しいよな。俺ぁ見たこと無かったぜ、ヴァルの剣が相手に届かない所なんて」

「ホントだよな。多分ヴァルを殺せるのはあいつだけだろうぜ」

 そんなに強かったのか。気づいた時には、秀介は身を乗り出して聞いていた。

「どういう人だったのですか?」

 ヴァルは憎々しげに言った。

「人を小馬鹿にしたような態度で、ほんっとに嫌な奴だったよ。あの銀髪野郎」


 ついに銀髪の男の情報が! そして秀介の前に、あの子が現れ、秀介の心に変化が訪れる。

 次回、「朝焼けの春」※注 サブタイは普通に「10」です(笑)

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