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Legend of brave  作者: たいがー
第三章:神器
34/45

第三の試練です。一日おきとか言っておきながら不定期でなんだかすいません。

 巨大な扉の前で、若い三人組が立ちすくんでいた。

 一人は長身の垢ぬけた魔術師風の美男子。一人は立派なドレスを着た美少女。そして銀色に輝く鎧を着て、豪華な装飾の施された剣を携えている小柄な少年である。

「次で、最後だね」

「は、はい。頑張ってください」

 秀介は自分より声が震えているエリザベスに、苦笑を洩らした。

「シュウスケ君、ちょっと待ってくれ」

「はい、なんですか?」

「部屋の中の時間の進行を操る魔術を見て思い出したんだ。君に強化魔法をかけよう」

 レオナールはニコリと笑った。

「強化魔法ですか?」

 強化魔法とは、人体に付与することで、一定時間一つの能力を高めることができる魔法だ。一般的には、冒険者などのパーティで、魔法使いが前衛に対して用いる魔法である。

「君の聖剣や、鎧にも同じような効果があるけど、『加速(アクセル)』という魔法が君の戦い方に合っていると思うんだ」

「『加速』……どういう魔法なんですか?」

 『加速』は、強化魔法の中でも高度な魔法である。掛けられた者の時間の進行を早めることができ、はたから見た素早さが上がるというものだ。他の強化魔法――力を強くする、足を速くする、体を固く頑強にする、など――とは根本から違うものなのだ。

「じゃあ、君に今からその魔法をかけるけど、最初のうちは馬車に酔ったようになると思う。でも、すぐ慣れるはず……」

 扉の開く耳障りな音が聞こえたかと思うと、三人は強烈な風によって部屋の中に引きずり込まれてしまった。

 地面に背中から落ち、そのまま何メートル引きずられただろうか。起き上がった秀介の目の前には巨大な犬の顔があった。

「あれが、聖獣ですか……?」

 背後からエリザベスの声が聞こえる。どういうことだろうか、これまでは部屋に入れたのは自分だけだったはずだ。しかし、今この部屋にはレオナールやエリザベスの姿があるではないか。背中の痛みに耐え、混乱する頭でエリザベスの方へ駆けた。

「エリー、何でここに入れるの?」

「分りませんわ」

「……おそらく」レオナールがローブをはたきながら言った「第三の試練は、我々が居ないと始まらない試練なのかも知れない。そして、あの巨大な三つ頭の犬が、今回の聖獣だ」

『然リ……』

 巨大な犬は立ち上がり、三つの頭をこちらに向けた。

『我ハ、第三ノ試練『サーベラス』ダ』

 サーベラス。古来より、聖なる獣として讃えられてきた魔獣の一種である。一般的にはケルベロスの名で呼ばれる。神のように祭り上げられていたサーベラスだが、一個体の戦闘力が非常に高く、災害級魔獣として指定されている。過去には、一体の若いサーベラスが、三万人からなる軍団を壊滅させたという記録が残されている。

『我ニ与エラレタ命令ハ、タダ一ツ。勇者ヲ殺ス事ノミ。覚悟ハ、イイナ、勇者達ヨ』

 サーベラスはそう言い捨てると、三つの首がそれぞれ雄叫びを上げ、空気を轟かせた。

「シュウスケ君は前衛で思うように戦ってくれ。エリザベスは回復に重視。私はシュウスケ君を援護する!」

「はい!」

 秀介はレオナールが言い終わる頃にはもう走り出していた。聖剣を右下に構え、正面にある真ん中の首目掛けて飛びかかる。

 しかしサーベラスは、その巨体に似合わないスピードで後ろに飛び、すかさず右前脚を秀介に叩きつけた。

「シュウスケ様!」

「くっ」

 秀介はそれをバックステップで何とか避けたが。

(ちょっと、肩にかすったな)

 秀介は右肩を回す動作をし、もう一度聖剣を正面に構える。

「制限時間は五分だよ、シュウスケ君。『加速』」

「え?」

 レオナールがぽつりと言った瞬間。秀介の体が赤く光る。

「レオナールさん、これ……」

 周りの風景が止まっているように感じる。エリザベスやレオナールも、ゆっくりとしか動かない。その時、突然車酔いのような、感覚が秀介を襲った。

(自分だけの時間が速まるって、オナールさんが言っていた。多分、その周りとの違いがこの酔いの原因になってるんだ)

 秀介はサーベラスに向き直った。五分経つまでに、あいつを倒す。急いで背後に回り込み、サーベラスの腹に切りつける。が、刃は深くまで入り込まず、浅い傷を付けただけに留まった。それどころか、サーベラスは突然の攻撃に驚き、とび跳ねながら秀介に牙を突き立てた。

「遅い!」

 秀介はラッパほどもある牙に蹴りを入れ、その反動で後ろへ跳んだ。着地と同時に剣を振りかぶり、サーベラスへと突っ込む。左の首の喉元に袈裟切りを仕掛けたが、今度も同じように深手には及ばなかった。

(聖剣の攻撃が通らないなんて、どんだけ固いんだよ)

 秀介は呆れと、焦りの入り混じったような溜息をついた。

 秀介はもう一度サーベラスの懐へ踏み込み、前足の付け根を切り裂いた。やはり切断が出来ない。今度は喉元を突き刺そうと、重心を低く構えたとき、唐突に横からの衝撃が走った。

「ぐっ!」

「シュウスケ様! 大丈夫ですか?」

 吹き飛ばされた秀介の元に、すかさずエリザベスが駆けつけてきた。

「『聖治癒結界(ヒーリングフィールド)』」

 秀介の体は半球状の青い光に包まれ、たちまちに体の痛みが消え去った。

「シュウスケ君、大丈夫か?」

 レオナールがサーベラスと対峙し、杖を向けていた。今にも魔法が放てそうな雰囲気だ。

「大丈夫です。すいません」

「今は休んでおくといい、私が時間を稼ぐ」

 そう言った瞬間、レオナールは駆け出した。

 サーベラスの攻撃を避け、炎を放つ、凍りつかせる、電撃で貫く。その様子は正しく、異世界の戦闘と実感させられる。秀介はレオナールの姿に見入った。

「『大地の大槍(アースランサー)』!」

 地面から巨大な土の槍が、左の首の喉元目掛けて飛び出す。サーベラスは余裕を持ってかわした……かに思えた。サーベラスの踏み切った足もとの地面が、突然陥没し、足を取られたのだ。サーベラスの首は、巨大な槍に喉を貫かれ、苦しそうに呻いた。

「魔法には二つの種類がある。魔力を他の物質に変え、それを操作する魔法。そして、もともと周囲にあった物質を、魔力によって変化させる魔法だ」

 レオナールは『大地の大槍』を発動したとき、地中にあった土を変形させ、巨大な槍を作っていた。そのため、土台を無くした一部の床が、サーベラスの体重によって陥没したのである。

「す、すごい……」

 秀介は思わず声が出た。自分の攻撃が、まるで歯が立たなかった相手に、やすやすとダメージを与えたのである。そう、そこに居るのは紛れもない、戦闘のエキスパートなのである。

 しかし、サーベラスは喉を貫いている槍を無理やり折り、殺意むき出しでレオナールに飛びかかった。

「レオナールさん!」

「あ、まだ終わってません!」

 エリザベスの声は耳に入らず、秀介は結界から抜け、サーベラスへと駆けだした。

 サーベラスの突進を、レオナールは土の壁で防ぐ。

「僕に『加速』を!」

「え?」

「早く!」

 サーベラスは土の壁に当たり、勢い余って少しよろける。が、こちらに向かってくる秀介を叩き潰そうと、前足を振り上げた。

「シュウスケ様!」

「シュウスケ君! くっ、『加速』!」

 レオナールが叫ぶと、秀介の体が赤く光った。両手に持った聖剣も、それに呼応するように輝き出す。秀介は目にも止まらぬ速さで懐に入り込んだ。

(聖剣、僕に力を……貸せ!)

「うああぁぁ!」

 秀介は勢いをつけるように低く構え、逆袈裟の要領で、真ん中の首を切り上げた。

「ェアアァァア!」

 気管を切り裂かれ、声にならない叫び声を上げるサーベラスに、秀介は追撃を加えようと後ろ足の付け根に踏み込んだ。

 しかし、秀介が振り抜く前に、サーベラスは前足を支点にして回転し、秀介に向き直った。すさまじい反応速度である。

「グルアァァア!」

 相手に向ける明確な殺意を乗せた雄叫びが、激しく空気を振動させた。

「エリー! レオナールさん! 伏せて!」

 加速した秀介の声は聞こえない。しかし、エリザベスとレオナールは何かを察したのか、すでに地面に伏せていた。

 秀介は覚悟を決め、聖剣を振りかぶる。すると、聖剣はこれまでにない程の輝きを放った。世界が銀色に染まる。

 オンスロートとサエルミアから盗んだ技、聖剣の正しい使い方。全てをこの一太刀に乗せる。

「『神聖天撃』!」

 そう叫んだとき、秀介の頭上に巨大なもう一つの剣が現れた。サーベラスは秀介を自慢の牙の餌食にしようととび跳ねる。

「くらえ!」

 サーベラスの抵抗も空しく、秀介は相手の脳天目掛けて振り下ろした。巨大な銀の剣が、天井を切り裂き、向こうの壁を切り裂き、サーベラスの体を真っ二つに切り裂いた。地面が砕け、轟音が鼓膜を震わせる。

 土煙が辺りを立ち込めた。しばらくの静寂の後、秀介はポツリと呟いた。

「勝った……」

 目の前でサーベラスは光の粒となって消える。後に残ったのは、真ん中でたたずむ勇者と、立ち上がって状況を把握しようとする聖女と魔導師。そして、部屋の奥で粉々に砕けた、無残な祠の姿だった。

「加速」はただの素早さupではありません。わかる人はクロックアップと思ってください。


この頃思うように筆が進みまなくて焦ってます。入学までにできるだけ書き溜めておかなければ。

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