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Legend of brave  作者: たいがー
第二章:旅立ち
17/45

3

「お待ちしておりました。エリザベス王女、お怪我は?」

 爆音の響く中、駐屯地に着いた秀介とエリザベスは、強固な対魔法素材でできた建物に

「ええ、大丈夫です。シュウスケ様が守ってくださいましたの。ところでチャールズお兄様は……?」

「……恐れながらエリザベス王女、チャールズ殿下はただいま行方を眩ませております」

「……そう、ですか」

 平然とするように心がけてはいるようだが、やはりショックを隠し切れていないと、秀介は思った。

実際にチャールズが生きている可能性は低いだろう。

「陛下からすぐにでも出発せよとの命令です」

「ですが、街には魔族がいるのですよ? 私は聖女として戦わなくてはなりません」

「姫、ルノワール軍の力を嘗めてもらっては困ります。すでに住民の避難は完了して、魔族も大半は……」

 その部屋に耳を劈くような爆音が響いた。近くで魔族の魔法が炸裂したようだ。

「急ぎましょう。ここで議論していては出発するチャンスを潰すことになる」

 秀介とエリザベスは、兵士に連れられ馬車へと詰め込まれた。

「御武運をお祈りしております。エリザベス王女」

「あ、まっ……」

 馬車は猛スピードで走りだした。

「……エリー」

「仕方ありません、まずこの街を出なければ」

「あの、エリー?」

「大丈夫です。魔族が襲ってきたらまた戦いましょう」

 秀介には魔族よりも今、目先の不安があった。

「いや、エリー」

「はい?」

「この馬車って誰が運転してるの?」

「……」

 秀介とエリザベスは馬車の後部座席に乗っている。二人とも手綱は握っていない。

「……あ」

 その瞬間、馬車のすぐ横で爆発が起き、車体が傾いた。

「魔族!? 」

 窓の外を見ると、黒く禍々しいオーラを放ちながら、一人の魔族が近づいてきていた。魔族は不敵な笑みを浮かべ、魔法を唱えた。

「『幻影の炎(ファントムフレア)』」

「キャァ!」

「うわぁ!」

 魔族から放たれた炎が、馬車を包む。秀介は死を覚悟した。しかし、いつまでたっても不思議と熱さを感じなかった。

「『妨害魔法(ジャミングマジック)』……」

 馬車の御者台から、男の声が聞こえた。

「ちっ、糞が!」

 魔法を防がれた魔族が悪態をつく。

「この世に害をなす邪悪なる存在よ、その穢れた心と共に散って行け。『大地の大槍(アースランサー)』!」

 男がそう唱えると、魔族の足元から土の槍が飛び出し、魔族の胸を貫いた。

「うぐぁぁぁ!! 」

 地面から突き出す槍に貫かれ、苦しそうにもがいていた魔族は、しばらくするとピタリと動かなくなった。

「ふん、汚らわしいオブジェだな」

 秀介は馬車を降りて、御者台を見た。そこには魔族の遺体を冷たく見つめる一人の男の姿があった。

「え、あ、あなたは……」

 秀介は彼に見覚えがあった。

「魔法陣の……」

「レオナール!」

 後からでてきたエリザベスが、嬉しそうな声を上げた。

「一緒に来てくださるの!? 」

「ええ、怪我はありませんか、王女?」

「大丈夫ですわ、それにしてもその口調どうにかなりませんの?」

「ここはまだマルギザーニャですよ? 陛下になんて言われるか」

「あ、あのう……」

 居た堪れなくなった秀介は勇気を振り絞り声をかけた。

「シュウスケ様、この方はレオナール・カルリエ。宮廷魔術師です」

「父の代わりに君たちの旅についていくことになった、よろしく頼む」

「よろしくお願いします。あ、レオナールさんって強いんですね」

「まあ、曲がりなりにも宮廷魔術師だからね、あれくらい倒せないとやっていけないよ。それよりも、早く出発したほうがいい。あの忌々しい魔族が来る前に」

 秀介にはレオナールの表情が、どこか不安そうで、暗く影がさしているように感じた。

(……気のせいかな)


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