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「国王陛下!」
「何事だ!」
帝国西部の都市が壊滅したという情報が入って王宮内は対策に追われていた。
「上空に怪しげな紋章が!」
セドリックは急いで外に出て空を見上げた。城の上空で、双頭の蛇の紋章が禍々しくうねっていた。
『愚かなる人間達よ』
それは綺麗な青年の声だった。
『お前たち人間たちは長い間この世界を我が物顔で闊歩してきたようだな。だがそれも今宵終止符を打つことになるだろう。そして我ら魔族がこの世界を支配するのだ。
今から一時間後に、世界各地を襲撃する。我々の軍門に下るというのなら見逃してやろう。だがもしも楯突くというのであれば、その命を散らすことになるだろう。お前たちの懸命な判断を期待する』
「……」
青年の声は止んだが、怪しげな紋章は未だ上空でうごめいている。
「お、王よ、いかがいたしましょう?」
側近の一人がセドリックに訪ねた。
「……世界各国に伝令を送り、この布告が他国にも出ているかを調べろ」
「はっ」
「国民たちの様子はどうだ?」
セドリックがそう尋ねると同時に、一人の兵士が入ってきた。
「大変です、城の前に民衆が!」
「本当かそれは」
セドリックは窓から門の前を見下ろした。門の前には大勢の人々が集まっていた。
「先ほどの声と、上空の紋章は何なんだと、説明を求めています」
(もはや、隠し通すのは無理か)
セドリックは全てを、自分の守るべき国民に告げることを決意した。
「すべての兵を臨戦態勢にしろ。民衆は私が対処する。……エリザベスに伝言を頼む、今すぐ仕度をしろとな」
セドリックは数万人もの民衆を前に、力強く言い放った。
「我々は今、未だかつてない脅威にさらされている」
人々はセドリックの言葉に、静かに耳を傾けた。
「それは全世界を揺るがし、恐怖へと突き落とすものだろう。古くから慣れ親しんできた童話の中に登場する魔族、その王である魔王が出現したのだ。
今の今まで平和に暮らしてきた諸君にとって、これはあまりにも突飛で、滑稽な話なのかも知れん。だがこれに嘘偽りはない。あと一時間足らずで、驚異的な力を持った魔族と戦うことになるだろう。
奴らは人類が及びもつかない魔法を使い、人類が辿りつけないほどの身体能力を有している。だが我々は絶対に彼らに屈しはしない。結果を約束することはできない。しかし、戦わずして我々が負けるようなことはしない。今日、我々の結束が試されることになる。見せつけてやろうではないか、人類の結束を、人類の誇りを、人類の強さを!」
セドリックの言葉に、人々は割れんばかりの歓声で答えた。
「シュウスケ様!」
「エリー! あの声何だったの!? 」
「残念ながら説明してる暇はないのです、今にも魔族が攻めてきます。聖剣を片時も離さないでください」
秀介はその言葉を聞き、恐怖が湧きあがる感覚を覚えた。
(つ、ついに来た!)
秀介は煌びやかに装飾された鞘に入っている聖剣を手に取った。この鞘はセドリックが、ルノワール王国で最も腕の立つ魔道具職人に作らせたものだった。一見宝石だらけで実用性の欠けるものに見えるが、実際には複数の魔法陣が刻み込まれており、鏤められているのは魔石である。
「シュウスケ様、こちらへ」
「う、うん」
エリザベスの格好は、装飾がされていないドレスに銀色の胸当て、そして革のブーツをはいている。はっきりいってミスマッチである。
「こちらを身につけてください」
そう言ってエリザベスは秀介に銀色に光る鎧を渡してきた。鎧には幾つもの筋が通っている。
「この鎧は着けている間重さを消し、物理攻撃は勿論、魔法による攻撃も軽減してくれます」
「へぇー……」
秀介はその鎧を身に着け、聖剣を腰にさした。その瞬間、空から再び声が聞こえてきた。
『お前たちは、我々の要求を拒んだ。これより制裁を開始する』
これで第一章は終わります。第二章はついに魔王討伐の旅に! 乞うご期待!




