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明治妖怪探偵奇譚  作者: 時雨瑠奈
14/23

第十四話 ~転校生は魔を祓う少女~

「――夢・クロフォード。よろしく」

 淡々と、無愛想にもそれだけしか

言わなかった少女に、その場の全員は

目を丸くしていた。

 亜麻色の髪に青い瞳、一見お人形さんの

ように可愛らしい少女は、彼女達には一体

何を考えているのか全く読めない。

「クロフォード、君が、どこに住んでいた

のか話しておいた方がいいぞ」

「アメリカ。だけど、小さい頃にいただけ

で、後はずっとここに住んでいた。……

以上」

「く、クロフォード、言葉が少なすぎるのは、

俺はどうかと思うが……」

 はぁ、とため息をつきながら、男性教師の

案栖誠一郎あずまいせいいちろうは告げたが、夢は

首をかしげただけだった。

 何で、あんなに疲れてるのよあいつ、と桜色の

着物と袴を着た、桃色のリボンで髪を総髪に結った、

服神観音はとりかのんは思った。

 警察関係者の癖に、彼はかなり疲れているように

見える。

 夢と名乗った少女を連れてくる時に、一体何が

遭ったのだろうか。

 そういえば、来るの遅かったわよね、と彼女が

思っているその時だった。

「か、可愛い……! この子、滅茶苦茶可愛い

よお!!」

 いきなり夢の眼前に飛び出したのは、巫女服を

身にまとった、神無月梓かんなづきあずさ

長い黒髪を揺らしながら、そのまま頬ずりする

彼女に、夢が若干迷惑そうに身を引こうと

していた。

 しかし、梓の方が力が強いらしく動けない

ようだ。

「なっ、何やってるんですかぁ! 神無月さん!」

 慌てたように、おかっぱ頭に黒と白の格子模様の

着物を着た、比賀谷月穂ひがやつきほが梓を

夢から引きはがした。

 夢は相当に嫌だったらしく、素早く彼女から

距離を取っていた――。



 その後は、比較的穏やかな自己紹介の

時間となった。

 また抱きつきに行ったら大変なので、梓

だけは、月穂と、髪をまがれいとに結った、

白と桜色の矢絣の着物の、氷名月瞳子ひなつきとうこ

抑えられていたが。

「ま、松形咲良まつかたさくらです」

「服神観音よ。別に、仲良くしなくてもいい

けど、い、一応名前だけは覚えておけば?」

西園寺翠さいおんじみどりです」

「え、えと、八月一日蛍ほずみほたるですぅ……」

 萌葱の着物に紫の袴の咲良、観音、青灰色の

上品な着物の翠、真っ赤なトンボ柄の着物の蛍が

自己紹介していく。

 蛍は少し緊張しているらしく、『自称闇の呪術師』

状態には今回もなっていなかった。

桂紫子かつらゆかりだ、仲良くして欲しい」

「ひ、氷名月瞳子です」

「た、天屯巴たかみちともえと申します!」

「ごきげんよう、クロフォードさん。勘解由小路神菜かでのこうじかんな

ですわ」

樹神菫こだますみれよ」

樋口環ひぐちたまきです、仲良くしてください」

黒葛原汐莉つづはらしおりです。どうか、仲良く

してくださると嬉しいです」

 紺の剣道着の紫子、瞳子、黒髪を後ろで一つに

結わえた、黄色の装飾過多な洋装の巴、水色の

リボンで髪を結い上げた、水色の大人し目な着物の

神菜、蝶々の飾りのついた簪で髪をまとめた、銀色の

蝶の着物の菫、黒髪をお下げに結った、橙色と黒の

格子模様の着物の環、白い装飾の少ない洋装の汐莉が

続いて名乗った。

 その後、「夢っち! あたしとも仲良くして~っ!」と、

抱きつこうとした梓から逃走を図ろうとした夢が、梓共々

女性教師の伊藤伽耶と麻耶に捕まったのは言うまでもない。

 二人は廊下を走った罰として、教鞭でお尻百叩きの

お仕置きを受けたそうな――。


 その後は何事もなく、授業が始まり、そして終わった。

帰宅する間際になっても、怒られた二人の痛みはまだ

消えていないようだった。

「……うぅっ、先生、厳しすぎだよぅ」

「……梓のせい……」

「ご、ごめんってば夢っち。そんなに邪見にしない

でよ~」

 さすがの梓も痛かったらしくお尻をさすりながら

呻いていた。

 無表情でありながら、多少の敵意を込めて

とばっちりを受けた夢は梓を睨んでいる。

 梓が何故か夢を溺愛している様子を見て、いつも

ちょっかいをかけられている月穂が、なんだかすねた

ような様子だったのは余談である。

「……で、どうすんの? どこか、寄って行くの?」

 観音が呆れ顔になりながら口を開く。

今、この場にいるのは、家の手伝いをするからと帰った

瞳子と、遠慮するわ、と言いながら帰宅した神菜、勉強

するから、とそのまま帰宅した汐莉、稽古があるからと

帰った紫子と彼女に付き合って共に帰宅した巴、残念

だけどお稽古事があるからと、帰って行った翠と蛍、

あんたらに付き合ってられないわ、とそっぽ向いて

告げた菫。

 その八人を除いた全員だった。

「――私は、行かない。ここには、遊びに来た訳

じゃない」

「ふん、じゃあ、何でここに来たっての?」

「ここには、魔の気配がある。それを、探りに来た」

 魔の気配、という言葉に反応したのは、この中では

観音と梓だけだった。

 梓は真剣な顔で黙り込み、観音はぎょっとなって

夢を見つめている。

「……私は、ここに魔を祓うためにやって来た」

 最後の言葉は、口数の少ない彼女にしては珍しく、

誰に問われる事もなく自分の意思で発した物

だった。

 こいつ、何か知っているのかしら、と観音は

思う。

 ふいに清心女学校に現れた、妖怪でも幽霊でも

ない物。あれの正体を、彼女は知っているの

かもしれない。

「――ちょっ、ちょっと来なさいよ!」

 気が付くと、観音は彼女の腕を掴んで走っていた。

その場の全員が目を丸くし、梓がはっとなって

「かののん、夢っちを独り占めなんて

ずるい――っ!」と叫んだが、観音は止まる事は

なかった――。



「――観音、早かったな? 今日も、どこかに

寄って来るんじゃ――ってクロフォード!?」

 観音はそのまま夢の腕を掴んだまま、妖怪探偵

事務所兼自宅へと飛び込んだ。

 料理の支度をしていたらしい誠一郎は、夢の姿を

見て目を剥いている。

「……仲、いいの……?」

「いいってほどでもないけど、悪くはないな」

「何よその言い方! ほら、客がいるんだから、

早くお茶の一つくらい出しなさい、誠一郎!」

「……やっぱり、仲、いい……?」

「だ、だから、俺達は別にそんな関係じゃな……」

「つべこべ言わずに、とっととお茶出す!」

 今、夕食の支度中なんだけどな、とぼやきつつも、

渋々誠一郎は奥へと引っ込んで、お茶とお茶菓子を

持って出て来た。

 今日のおやつは、瞳子の店で購入したお団子

である。

 朝あれだけ食べて、お昼もきちんと完食していた

はずだが、夢は観音と共にお団子を頬ぼっていた。

 女性って、お腹の消費の仕方がどこかおかしいん

じゃないか、と誠一郎はたまに思う事がある。

 料理をお腹いっぱい食べた後でも、彼女達は甘い

物は別腹、だとか言いつつ食後の甘味にまで手を

出そうとするからだ。

 観音はそうでもないようだが、特に夢はその小さな

体のどこに入るんだ、と聞きたくなるような量を

食べていた。

 お昼もビーフシチューもたくさんお代わりしていた

ので、料理長の相原太一あいはらたいちと、そして下働きの

少年、百鬼悠翔なきりはるとはかなり喜んでいた

みたいだったが。

 今も、お団子を自分の分を早くも平らげてしまった

らしい夢は、名残り惜しそうに皿を見つめ、鼻をひく

つかせている。

 ――まだ、お腹が空いているようだ。

観音は子供っぽい仕草で、「これはあたしのよ!?」と

奪われないように皿を抱え込みながら食べていた。

 別に取らない、と告げながらも、夢の視線は厨房へと

向いているように見える。

「クロフォード。親御さんが心配するからもう――」

 帰った方が、と告げようとした誠一郎だが、夢は動く

つもりがないらしくまだ目は皿と厨房を彷徨っていた。

(……おい、クロフォード。さすがに、図々しすぎや

しないか?)

 すっかり誠一郎は呆れ果ててしまったが、夢は「今日は、

父も母も帰らない」と告げたので追い返すのもなんだった

ので、つい「一緒に食べていくか?」と告げてしまったの

だった――。

 



 今回は前回出て来た夢が

正式に転校します。

 しばらく出てなかった

伊藤姉妹を微妙に出し

ました。

 なんだか、夢が大食い

キャラを確立しそうな

兆しです。

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