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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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39話 これから

 アイゼンは次から次へと出てくる問題に頭を抱えていた。

 まずはこの石版。幼少期に王位継承権を獲得したアイゼンは今は亡き先代に連れられて一通りこの宝物庫にあるものを見せてもらったことがある。国の宝物庫に保管されていたものの中で一つだけ地味だったこの石版のことはよく覚えていた。


 古代文明の遺品と言われて何の為に作られたのかも定かではないが、遥か昔に使用されていた言語が記されたこの石版を守っていくことは後に解読してくれる学者のために出来ることなのだと先代に言われた。

 しかし、歴史を紐解く唯一の鍵であると思われた石版が二つもあることやそれが合わさることにより「ロックが解除された」という音声が鳴ったことなど、アイゼンには分からないことだらけだった。


 考古学者であるバーチャマでさえ石版から音が出た時は腰を抜かしていた。けれども驚きよりも長年研究していた石版の謎に少しでも近づけた嬉しさの方が強かったのだろう。バーチャマは目をキラキラさせて石版を傾けてはどこから音が鳴ったのかや、また同じように鳴らすことが出来ないかを調べていた。

 とりあえず石版のことはこの叔母に任せれば大丈夫だろう。そう判断したアイゼンは次の問題に思考を移した。


 バタバタと翼を動かしながらこちらを睨んでくるアクアヒール。白鳥だった時の迫力に比べて明らかに間の抜けた泉の精霊を果たしてどうするか。正直、思考を放棄したくなるほど色々あったせいで、アクアヒールに関しては後回しにしたい気分だったが、そういう訳にもいかないだろう。アイゼンは自身の娘にアクアヒールの保護を頼むとマイとマキがそれに取りかかった。


「やめろ。それ以上近づくと暴れるぞ!」


 先ほどまでの覇気のこもった声を上げることが出来ずに、アクアヒールは見た目通りのアヒルのようなダミ声で牽制する。それを聞いたマイとマキはお互いに顔を見合わせた。ニヤリと頬が緩んだのも束の間、かわいい〜と黄色い悲鳴をあげながら襲い掛からんとばかりに近づく娘たちにアクアヒールは冷や汗が止まらなくなった。ジリジリと後ずさりながら逃げ出そうにも連携を取られ、退路を塞がれてしまう。


「おい聞いてるのか、お、おい。やめろ!わ、分かったから羽根をむしるな!」


 そのままなす術もなく捕まってしまったアクアヒールは羽根と足をパタパタとしながら抵抗したが、マキの羽根むしり攻撃によりあえなく撃沈してしまった。


 あっけなく捕まってしまったアクアヒールに心の中で合掌しながらアイゼンは次に捕まってから妙に大人しい侵入者の蛇男と烏男達をみた。オジー王国への不法侵入に客人かずやの誘拐、王族を危険に晒した罪など本来極刑にしてもいい二人だが国境線の盗賊団と関わっていた二人だ。

 二人を縛り上げていたカホとサインに目配せをするとそのまま村の男どもの待つ陣営に連れていけるように縄以外の拘束器具をつけたりと動き出した。これから尋問や場合によっては拷問を通して出来るだけの情報を抜き出すつもりだ。あのカメレオン女に置いて行かれたのを見るに下っ端にすら及ばない重要ではない二人かもしれないが、それでも国境線の盗賊団の一味と関わりを持っていたのだ。多かれ少なかれ奴らの尻尾を掴むための手がかりになることは間違いないだろう。


 国境線の盗賊団。未だ謎の多い犯罪集団だが、今回の件であのカメレオンのように、人やアクアヒールのような精霊の魔力を奪い、それを使って化けることの出来る者がいることが判明した。今後の彼らの活動範囲や変身することによるあらゆる犯罪の可能性を考えるとそれはそれで頭を抱えたくもなるが、魔力によって化ける、という情報を得たことによって確実に彼らを捕えるために一歩前進出来た、とアイゼンは前向きに考えることにした。ひとまずは他に魔力を奪われたものがいないかを国を上げて調査する必要が現れたがそのあたりはノワキに任せることにしよう。アイゼンはノワキにそう伝えると最後に地面になぜかへたり込むかずやに視線を落とした。


 カズヤ。正体不明のどこからともなく現れた謎の男。本来身元の分からない輩は排除するのが通例であるが、この男には助けられた。もしカメレオン女があのままロックに化け続けて護衛についていたらそれこそ暗殺や宝物庫の存在が知られて本当に取り返しのつかないことになっていただろう。だがその正体を暴き、捕えることこそ出来なかったものの、被害をあまり出さずに撃退することが出来たのだから、対価としてそれなりの報酬を与えるべきであろう。それに加えて魔力が全くない、と言うのも戦場などでは全く役に立たないだろうが、国境線の盗賊団に魔力を奪われることがない、という点に置いては身近に置いておくことにも意義がありそうだ。アイゼンは熟考の後そう結論付けると、かずやを見下ろしながら口を開いた。


「カズヤよ。俺の義理の息子になれ」


 言われたことが理解出来ずに目が点になるかずや。その意味を即座に理解し止めにかかるノワキをアイゼンは手で制する。


「俺の娘の中から一人と婚姻を結ばせてやる」


 どうせ冗談だろうと思ったかずやだったがアイゼンの真剣な眼差しを見るに本気なのだということが伝わる。そしてアイゼンが告げた言葉の意味を徐々に理解するとかずやはその事の重大さに圧倒され思わず唾を飲み込んだ。

 かずやの返答を固唾をのんで見守る一同。あのおしゃべりなアカリですらチャイを抱き抱えたまま今は驚きのあまり片手で口を覆っている。不穏な静けさが場を包み込む。

 その空気を破ったのは二人の様子を真剣に眺めていたバーチャマだった。














「なんじゃ、嫌なら私と結婚してもよいんじゃよ?」

「その提案ありがたくお受けいたします、お義父様!!!」


 かくしてカズヤこと竹田かずやがアイゼンの娘達の中から婚約者を選ぶことが決まった。

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