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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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37話 ロックの正体

 かずやがガレの気を逸らす目的で投げられた石は本来の標的ではない男の方向へ飛んでいた。

 その方角の先にいる、不意の一撃故にこの後よろめいて倒れ込むことになる、男の名はロック・ダイス。アイゼンの腕利きの護衛の一人であり、2本のサーベルを巧みに操る双剣使いである。

 倒した魔物は数知れず、過去に一度キングコブラ級の難易度であるデザートハイエナの群れを無傷かつ単独で討伐した実績があることから一部の魔獣ハンター達に群れ殺しと呼ばれていたりする。

 そんなロックがいつのまにかアクアヒールの背後に立っていたことも驚きだが、それ以上に気になる点があったのか、アクアヒールとの戦闘中であるにも関わらず、アイゼンは首を傾げた。


「ロック、お前はなぜそこにいる?そしてなぜ動ける(・・・)?」


 本来、アクアヒールの魔圧を受けた人間の男は睾丸を蹴り上げられた時ほどの痛みを断続的に味わうことになる。それゆえに動けなくなるのが普通であるのだが、魔力のないかずやや耐性のあるアイゼンはともかく、ロックが動いているのがアイゼンには不思議で仕方がなかった。優秀な護衛であるがロックも一人の男であることには変わりない。


「余所見ヲスルナ」


 しかし暴力的なまでの魔力を集めながらも休む間もなく攻めてくるアクアヒールに対して、アイゼンは思考を放棄する事を余儀なくされた。

 その時、アイゼンにとっては突飛な方向から飛んできた鋭利な石がまるで吸い込まれるかのようにロックの頭へと直撃した。

 石が当たった衝撃と驚きでよろめきそのまま倒れこむロック。しかしその瞬間。ロックはまるでレンチキュラー印刷のように一瞬だけ女性の姿になると、何事もなかったかのようにロックの姿に戻った。

 だがその時が止まったかのような一瞬の間にアイゼンと目が合ったロックは、フッと不気味に俯きながらまるで壊れた人形のように笑い出した。


「あはは。バレたのならしょうがないわね」


 ロックの低めの声が一転して綺麗なオルゴールのような女性の笑い声へと切り替わり、辺りに響き渡る。

 そのままロックが自らの顔の皮膚を破るように変装を解くと、そこには全身を鱗で身を包んだ妖美な女性がいた。いや、正確には人型のカメレオンと言うべきだろうか。

 鱗の一部がテンパーカラーのように日の光を浴びて虹色に輝き、それ以外の部分は完全に周囲と同化していることからまるで目や舌や腕の一部分が宙に浮いているかのようだ。ルビーのように輝く紅色の瞳がアイゼンやほかの者達をとらえる。

 そして人型のカメレオンは最後にアクアヒールに視線を向けるとどこからか透明の空の容器を取り出した。

 それからは目にも止まらぬ速さで動き出すと、あっという間にアクアヒールが溜めた魔力の水の大きな固まりに飛び込んでいった。


「ウ、何ガ、起キテイル?」


 すると突然、アクアヒールがそれに反応するように苦しみ出した。アクアヒールの魔力の象徴である青い光の粒子が倍以上のスピードでカメレオンが入っていった水の固まりに収束していく。

 やがてカメレオンが持っていた透明の容器に青いサファイアの砂のような魔力が満タンまで溜まると、形を保てなくなった水が真下にいたアクアヒールの上に滝のように落ちていった。

 先ほどまで自分の手で水を操っていたのが嘘のように大量の水の水圧に負けて流されるアクアヒール。

 逆にさっきの水の魔力の固まりがあったところにカメレオンと水の魔力で出来た巨大な鳥がカメレオンを乗せて飛んでいた。



 ◇◇◇



 「ふふ、もうあなた達は用済みよ」


 カメレオンが不敵に笑う。次の瞬間、巨大なカワセミのようなものに乗ったカメレオンは泉精霊アクアヒールの魔力が入ったボトルを大事そうに抱えながら遥か遠い上空へと飛躍していった。


「お主ら何をしとる!早く追うんじゃ!」


 そんな中で即座に冷静さを取り戻したバーチャマがノワキやサインに指示を出していた。アクアヒールの魔力が抜かれたことにより睾丸への痛みが無くなったサインがすぐさま魔力で羽を作って飛び立とうとする。


「は、はい!全員バーチャマ様の指示に従って浮上して……」

「いや、もういい。それよりも早くあの二人を縛りあげろ」

「ですが……」

「いいから早くだ!」

「「はいっ!!!」」


 だがそれよりも先にアイゼンが、顎を殴られて目を回している烏男と宙を見上げてポカンとしている蛇男を拘束するよう命令すると、サインや我に返ったカホらが渋りながらも一瞬で二人を縛りあげた。


「よろしいのですか、アイゼン様?今ならまだ間に合うと思いますが」


 こちらも動けるようになったノワキが先ほどまでアクアヒールと戦闘をしていたアイゼンに駆け寄る。


「やつらの手にはアクアヒールの水の魔力があるんだ。どうせ追った所で雲に同化して紛れこまれれば見失う。それに今は夏だ。だから……」

「そうですね。飛行時の防寒対策がされていません。私の失言にございました」

「いや、お前の考えも分かる。だが、今はそれよりも大事な事がある」


 指輪に手を触れて人間の姿に戻ったアイゼン。彼の鋭い眼光がある人物をとらえると、一直線にその人物に向かって歩みだした。

 戦闘時の荒々しい動きとは異なり、まるで儀式をしているかのような尊厳や気品溢れる歩みで近づいていくと、おどおどと狼狽えているその人物に向かって声をかけた。


「カズヤ、とか言ったな」


 品定めをする目。威厳のある声。その威圧感と圧倒的な存在感に息を呑むかずや。背筋をピンと伸ばして対面しようとするもその佇まいに思わず視線を落としたかずやに向かってアイゼンはある疑問を投げかけた。


「なぜだ」


 その声色に思わず首を窄めたかずや。そんなかずやに一切声を緩めることはなくアイゼンは続けた。


「どうしてあいつの正体が分かった?」



 ◇◇◇



 魔の森の遥か上空。雲の上をゆったりと飛んでいたカメレオンがボソッと呟いた。


「あーあ」


 唇を窄めてつまらなそうに嘆く。


「本当はアクアヒールの魔圧を耐えたあの男の魔力サンプルも欲しかったけど……まぁ、仕方ないよね」


 そう言ったカメレオンを乗せた魔力で出来た青い鳥は、カメレオンの本拠地である国境線の盗賊団のアジトまで飛んでいった。

一応苦手な戦闘シーンが終わって一安心。

さて、アイゼンに目をつけられたかずやは大丈夫なのでしょうか?

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