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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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36話 突破口

 でたらめな数の水の砲弾がアイゼンに襲いかかる。飛んだり身体を捻ったり、時々毛先を掠めながら躱すアイゼンはこの攻撃の突破口を考えていた。

 アイゼンの戦闘スタイルは近接向きでそのスピードやパワーはどちらかというと短期戦に適している。

 出来るだけ自分の土俵に持ち込みたいが、アクアヒールはその圧倒的な魔力量を武器に常に遠距離からの攻撃を徹底している。はっきり言って分が悪い。何より相性が悪い。

 流れ弾がバーチャマ達に当たらないように自分のポジションを確認しながら避け続けるも、アイゼンは止めどなく撃たれることに苦戦していた。


「さて、どうすっか」


 このまま避けていても何も進展はないし反撃のために近づいてもすぐに距離を取られる。何よりも被弾する確率が跳ね上がる行動に無駄を感じていたアイゼンは、アクアヒールにどんな事をすればダメージを与えられるかを考えた。

 水を蒸発させることが出来ればいいが生憎ここはアクアヒールの泉で言わば相手のホーム。無限に湧き出てくる水を止めることなど出来ないし、今後の事を考えても泉の水が無くなったりするような事態は避けたい。

 ならば、この戦闘が無駄だと交渉するのはどうだろうか?いやアクアヒールは聞く耳を持たないし、そもそもそんなことが可能なら今さらこんな戦闘をしているはずがない。

 では、水に土や葉っぱを混ぜて動かしにくくするのは?確かに一瞬テンポを遅らせることはできるかもしれないが結局水は魔法のようにアクアヒールに吸収されてしまってまるで意味がない。


「ん、魔法?そうか、その手があったか」


 アイゼンは名案を思いついたとニヤリと笑うと、アクアヒールから距離を取ってこう呼びかけた。


「おい、さっきから俺をナメてんのか?さっきから全然当たってねーじゃねーか」


 アイゼンの挑発的な発言にアクアヒールの怒りが爆発する。


「ウルサイ。今当テテヤルカラジットシテイロ!」

「そうか、でも今までの生ぬるい攻撃じゃちっとも効かないだろうな」

「ナニヲ?」

「アクアヒール。お前の全力をぶつけてこい」

「オ望ミ通リ、コレデ木ッ端微塵ニシテヤル」


 アクアヒールは先ほどまで砲丸サイズの水玉模様のように散らばっていた水の球体を一箇所に集約させると、そのまま全魔力をそこに注ぎ出した。


「覚悟ハイイカ?」


 これから憎っくきアイゼンが水の中で溺れる姿を想像してアクアヒールは高笑いを始めた。



 ◇◇◇



 一方その頃、カホとマイは蛇男であるガレに対して有効な一撃を与えられないまま向かいあっていた。

 確かにパンチやキックなどは当たってはいるのだが、ガレの身体はまるで骨がないかのように打撃を吸収し、衝撃を受け流している。

 元々が蛇だったことも影響しているのだろうか?その人間離れした動きにカホ達は翻弄されていた。

 いっそのことマキやアカリに援護を頼もうかとも思ったがマキはチャイのケアをしているし、そもそも蛇が苦手なマキにこの蛇男ガレとの戦闘は酷であろう。

 アカリは何かあの烏男を縛るものはないかとバーチャマのところに戻っているし、アイゼンはアクアヒールと対峙している。

 サインやロックもアクアヒールの魔圧により使い物にならないし、バーチャマに激しい戦闘はさせたくない。

 増援に頼れないとなると自分達の手でどうにかしなければいけないが、カホとマイの二人がかりでガレの動きを止めてもするりと抜け出されてしまう。


「何か方法は……⁈」


 カホが手を緩めずに色々と仕掛けながら辺りを見渡すと、その視界の先には先ほど待っていてくれと言ったはずのかずやが、大きく振りかぶって何かを投げる構えをしている姿があった。



 ◇◇◇



 俺は木の陰からカホさん達の戦闘を見ていた。正直カホさんとはあまり関わりはない。一応姉妹達が集まっていたあの食事の場にいたことは覚えているが、俺が部屋に入ってきた時に入れ替わりに出ていったから直接会話は交わせていない。

 綺麗な金髪だなと思っていたら、アントワンヌさんに


「カホはこれから任務だから後日改めてね」


 と言われたことは記憶している。

 まぁそれは置いておくとして、現状は特にいいというわけではなかった。

 明らかにあの王様もカホやマイ達も手こずっている。それほどまでに敵は手強いらしい。かくいう俺も側から見ているだけで参戦できる余地などなかった。

 いやね、特に格闘技を習っていた訳でもないしケンカが強い訳でもない。頭が切れる訳でもないし、運動神経も一般的なレベルで俺は何かが秀でている訳じゃない。それゆえにこうやって遠いところから見ているのだけれど。

 自分が守られている人という自覚はあった。現にカホさんにここで待機するよう言われたし、余計なことをすればもしかしたら迷惑をかけるかもしれない。

 でもこのまま指を咥えて見ているだけでいいのだろうか?何もせずにただ黙って彼女たちに任せていてもいいのだろうか?

 俺にはどうせ何も出来ないのだからでしゃばるな、という気持ちと何か手助け出来ることをしたい、という二つの気持ちの板挟みにあう。

 実際のところ俺は無力で大人しくしているのが最大限に出来ることなんじゃないかと思う。

 ここは言われた通りにしよう、と自分に言い聞かせるも俺は悔しさのあまり地面に転がっていた石を蹴り上げていた。

 蹴った石が近くの木に跳ね返って自分の足元に帰ってくる。


「何か俺に出来ることは……」


 ただ突っ立っている不甲斐ない自分に嫌気がさす。

 そんな間にもカホさんやマイが寝技や関節技を決めようと蛇男に近寄るが、蛇男はクネクネと気持ち悪い動きで躱してはカホさんやマイの力を利用してお互いに攻撃させあっていた。

 あの中に入っても俺はな、と顔を俯ける。俺の視線の先には先ほど蹴った石が転がっていて、それを見ているとあることを思いついた。


「一瞬だけでもあいつの気を逸らすことが出来たら……」


 石を手に取り、あの蛇男の後頭部…より後方に狙いを定める。

 別に野球部やソフトボール部だった訳ではないが、小さい頃はよく川に石を投げたりストラックアウトを何度も成功させたりとコントロールにはそれなりの自信がある。カホさんやマイに当たるかもしれないという心配はあるが、あくまであの蛇男の気を引きつけることが出来ればそれでいいのだ。

 大丈夫。そんなに狙わずにやれば……ってあれ?

 俺が思いっきり投げた石は予想していた地点から大きく軌道を逸れ、たまたまアクアヒールに近づいていたある人物に当たった。

























 そう。密かにアクアヒールの背後にまわっていた双剣使いのロック・ダイスの頭に。

次回、ロック・ダイスの正体やいかに?

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