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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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30話 カホの違和感

また新たな人物の名前が出てきます。

 アイゼンがバーチャマに呆れ、マキがアカリに対して少しだけ恐怖を感じている最中。カホは一人自分の思考に浸っていた。


「アカリ姉様はチャイの救助。大叔母様は鍵の保管。盗賊団に関しては、はじめはお父様が交渉、上手くいかなければノワキ達らが戦闘をして出来る限りの人数を捕らえることになっていて、かずやとか言う男はマキ達が回収する。そして私は相手に逃げられた際に背中を追う、と」


 面識のないかずやや大人しいチャイを任せるのは構わないとして、人数の分からない盗賊団を相手にするのは流石のカホでも腰が引ける。

 ちょっとした不安の表れからか、いつの間にか考え事をする時のカホの癖で、両手を組んだり合わせたりしていた。

 しかし今不安を感じている暇がないことくらい分かっているカホは、意識を仕事モードに切りかえると、作戦や人材にミスがないか自己流の分析を始めた。


「チャイは人見知りの激しい猫。いくらか慣れ親しんだ者でないと救出は無理だろうからアカリお姉様は適任だ」


 手を合わせて目線を下げ、ぶつぶつと呟きながら歩く様子はまるで祈りを捧げる修道女のようだ。

 本人は慣れているのか、あまり整っているとは言えない道のりでも集中を欠かさずに思考に浸っていた。

 よくミサの手伝いをしているアカリはチャイが心を開いた数少ない人間の内の一人だ。鍵保管要員よりふさわしいのは確かだろう。


「マキとマイは大叔母様と一緒にいた訳だし、かずやとかいう男と面識があるから大丈夫か」


 面識があるかないかならカリンやカエデなども候補に挙がっていただろうが、かずやよりもおそらく城やアントワンヌを守ることを優先したアイゼン。父による人選なら大丈夫だろう、と思ったカホはマキとマイの事を頭のすみに置いておくと、お次に自分とノワキ達の役割を確認しだした。


「私はいつも通り敵が逃走した際に追跡すればいい訳だけど……」


 その前の戦闘で活躍するであろう、アイゼン達に目を向ける。アイゼンの重量級の身体は向かう所敵なしと言っても過言ではなく、彼だけでも敵の数は随分と削られるであろう。ノワキは心配性で戦闘力こそ皆無だが、視野の広さと情報処理の速さで右に出るものはおらず、軍師や指揮官としては優れている。それに加え、アイゼンの護衛の中でも腕利きの双剣使いのロック・ダイスと、縄の達人サイン・レイモンドの組み合わせによりほぼ無敵だ。そう思っていたカホが肝心のノワキとその部下に目を向けると僅かだが、違和感を感じた。


「重心のかけ方が違う……」


 ロックの歩き方が以前覚えていたものと異なっていたのだ。

 カホはほんのわずかに脚を引きずるようにして歩く彼が心配になり、近づくと声をかけた。


「どうしたんですか?」


 道が狭いからかカホが近づいた途端に脇にそれるようにして距離をとるロック。そのまま少し立ち止まった彼はズボンの裾を少しだけ持ちあげると、何処かおどけた様子で右側の脚を前に出した。


「あぁ、この脚かい?ちょっと道中で捻ってしまってね」


 足首の包帯を見せながらニカッと笑うロック。普段笑みを見せない彼が見せない表情に驚愕すると同時に、何故彼ほどの凄腕が足首を捻ったのかと疑問に思うカホ。しかし、怪我をしている、と言われれば納得せざるを得ない。それ以上詮索するのは失礼かと思い直したカホは分析終わり、とばかりに一旦気を緩めると、器用に眠りながら隣を歩くマイに視線を送った。

 グースかぴー、と全く緊張感をかんじさせないその寝顔にリラックス効果を得たカホは、癒しをもらうためにそっと近寄ると、エイ、と小さな声をあげながらほっぺをつついた。

 ぷるるん、とゼリーのように震えるマイの頬はその弾力をここぞとばかりに活かしている。

 束の間の一時をマイで思いっきり満喫したカホは魔の森の深部に差し掛かる道で意識を変えた。

 先ほどまで歩いていた道は幅こそ狭かったが、歩けない道では無かった。しかし、今度の道は流石王族と一部だけが知る裏道だけあり、非常に分かりづらい。獣道のように最低限踏みならされているだけの簡素な道だ。


「ここから先は一列に並ぶんじゃよ」


 アイゼンの背後を歩くバーチャマが、やけに真剣な表情で振り向きながらそう告げた。



 ◇◇◇



「出来るだけ速度を落とさないようにの」


 まるで家の廊下を歩くような速さで進むアイゼンとは対照的に、バーチャマやノワキは慎重かつ正確にアイゼンの足跡を辿っていく。

 草を踏み、枝を避け、蜘蛛の巣をかいくぐりながら進んでいると、突然ノワキとサインが胸を抑えて苦しみだした。

 意気揚々と歩いていた二人の変貌ぶりにアイゼンが若干表情を歪ませながら言葉を絞り出す。


「魔圧を放ったか、アクアヒールのやつ」


 その言葉を聞いた瞬間、ロックも我慢の限界といったように息を乱して片膝を地に着けた。魔圧とはその名の通り、対象の魔力に圧力をかけるものの総称である。


「全くアクアヒールの魔圧は流石と言うべきか相変わらずと言うべきか、迷うところじゃの、ホホホ」


 バーチャマが魔圧の発信源である泉の方向を苦笑混じりに見つめながら溜息を吐く。アイゼンと彼の部下達はアクアヒールに受けた圧により、程度の違いはあれど、苦しんでいたり、不快感を覚えていた。だが、不思議なことに、同じ魔圧を受けたはずのバーチャマはまだピンピンとしている。更にマイやマキ、カホやアカリも同様にケロリとした様子でその場に突っ立っていた。

 それもそのはず。なぜなら泉精霊アクアヒールが放つ魔圧はある特殊な効果を孕んでいるからだ。


「アントワンヌにはじめて会った時もそうだが、やつの魔圧は男に対して加減というものを知らないし、何よりたちが悪すぎる」


 手を膝について下半身を抑えながら話すアイゼン。何を隠そう。アクアヒールの魔圧は男にのみ、男性の精巣が蹴り上げられた時ほどの痛みを与える極悪非道で非情なものだった。

 アイゼンがその場で軽くジャンプをしながら痛みを分散していると、いつの間にか背後に立ったバーチャマがりんごをもぎ取る仕草をしながらそっと耳打ちした。


「やはり男にしか効かないのはアクアヒールの性格が悪いからかのお、ホホホ。ほれ、私が揉んで痛みを和らげようかの、アイゼン?」

「頼むからやめてくれ。なんならノワキのを……」

「たった今痛みが引いた気がいたします。私はいいのでサイン達を……」

「「丁重にお断りさせていただきます!!」」


 皆必死に痛みを堪えてバーチャマに安心感を与えるために満面の笑みを浮かべる。ノワキなどは歯を食いしばって冷や汗を流しながら微笑んでいるが、バーチャマは一人、


「男の強がりはたまらんのぉ、ホホホ」


 とあまりその事実には目を向けずに怪しげに笑っていた。チャンスだとにらんだアイゼンはその話題を避けるかのようにまた泉に向かって進みだす。

 サイン達は遠慮するでないぞと呟くバーチャマからなるべく距離をとって歩いていた。

 そろそろ痛みが引いてくる、と思われたその時。


「ナンデ人形デハナク人間ノ男ガイルンダ~!!」


 小さな鳥が飛びたつと同時に遠くから巨大な咆哮が聞こえてきた。


「クッ!! また魔圧を放たれる前に行くぞ!」


 完全に警戒態勢になったアイゼンが行列の速度を速めて駆け出す。一刻を争う事態なのか、その後に続く9人の仲間達の表情には緊張感が走り、焦りが生じていた。

 なりふり構わず草を踏み鳴らす音と荒い呼吸音が辺りを包み込む。

 やがて、泉のほとりに着いたアイゼンはアクアヒールを視認すると、ただ真っ直ぐに泉の主目掛けて叫んだ。


「待て。アクアヒール!!!」


 その声につられて振り返る泉精霊アクアヒール、何処か薄気味悪い蛇とおとことその腕に捕らわれたチャイ。そして腕と足を縛られ、何故かびしょ濡れのかずやの姿がそこにはあった。

今回内容がパッとしなかったかもですね。


なぜかずやが濡れていたのかは次回で。

また書きあがり次第投稿します。

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